弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人草野勝彦ほかの上告受理申立て理由について
1本件は,宗教法人である上告人が,死亡したペット(愛がん動物)の飼い主
から依頼を受けて葬儀,供養等を行う事業に関して金員を受け取ったことについ
て,被上告人から,上告人の行う上記事業(以下「本件ペット葬祭業」という。)
が法人税法施行令(別表記載のものをいう。以下同じ。)5条1項1号,9号及び
10号に規定する事業に該当し,法人税法2条13号の収益事業に当たるとして,
平成8年4月1日から同13年3月31日までの5事業年度に係る法人税の決定処
分及び無申告加算税賦課決定処分を受けたため,その取消しを求めている事案であ
る。
2原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1)上告人は,昭和58年ころから本件ペット葬祭業を行っており,現在は,
「X動物霊園」の名称で,境内にペット用の火葬場,墓地,納骨堂等を設置し,
引取りのための自動車を数台保有して,死亡したペットの引取り,葬儀,火葬,埋
蔵,納骨,法要等を行っているほか,本件ペット葬祭業のあらましを写真入りで説
明したパンフレットを発行し,ホームページを開設するなどして,その周知に努め
ている。
(2)上告人によるペットの葬儀及び火葬は,ペット専用の葬式場において,人
間用祭壇を用いて僧りょが読経した後,死体を火葬に付するというものであるとこ
ろ,前記パンフレット及びホームページには,その料金につき,第1審判決別表2
記載のとおり,動物の重さ等と火葬方法との組合せにより8000円から5万円の
範囲で金額を定めた表が「料金表」等の表題の下に掲載されている。この表は,上
告人の代表役員が,同様の事業を行う有限会社の料金表を参考にして作成したもの
である。また,上記ホームページには,「上記は一式全てを含む費用です(引取・
お迎え費用等は別)」との記載がある。なお,上告人によるペットの葬祭を希望す
る者が上告人の自動車でペットの死体を引き取ってもらうときには,3000円の
支払を求められる。
上告人の保管している帳簿に記載されたペットの供養による収入金額は,いずれ
も「料金表」記載の金額又はこれに引取りの際の支払金額を加えた金額に合致して
いる。
(3)ペットの死体を境内のペット専用の墓地に埋蔵するに当たり,合同墓地を
利用する場合には,上告人にペットの葬儀等を依頼した者であれば無料であるが,
個別墓地を利用する場合には,年間2000円の管理費のほか,3年の使用期限を
3回更新した時に1万円の継続利用料の支払を求められる。また,納骨堂を利用す
る場合には,納骨箱の大きさに応じて3万5000円又は5万円の永代使用料,年
間2000円の管理費等の支払を求められる。前記ホームページには,「合同のお
墓は上記費用にて無料でお使いいただけます。また,納骨堂・石墓地(個別墓)な
どのご利用の場合でもお手頃にご用意できます。」などと記載され,合同墓地,納
骨堂,石墓地の説明と費用が示されている。さらに,上告人は,遺骨を納めた飼い
主からの依頼に基づいて初七日法要や七七日法要を行う際に,あらかじめ定められ
た額の金員を受け取っている。このほか,上告人は,ペットの葬祭に関連して,塔
婆,位はい,墓石等を希望者に交付し,あらかじめ定められた額の金員を受領して
いる。
(4)ペットの供養や葬祭を行うことは,我が国では昭和50年代くらいから広
まり始めたとされている。このような事業を行う事業者の数は,平成16年現在,
全国で6000ないし8000に及ぶとされ,仏教寺院によるものだけでなく,倉
庫業,運送業,不動産会社,石材店,動物病院等によるものも見られる。
3上記事実関係によれば,本件ペット葬祭業は,外形的に見ると,請負業,倉
庫業及び物品販売業並びにその性質上これらの事業に付随して行われる行為の形態
を有するものと認められる。法人税法が,公益法人等の所得のうち収益事業から生
じた所得について,同種の事業を行うその他の内国法人との競争条件の平等を図
り,課税の公平を確保するなどの観点からこれを課税の対象としていることにかん
がみれば,宗教法人の行う上記のような形態を有する事業が法人税法施行令5条1
項10号の請負業等に該当するか否かについては,事業に伴う財貨の移転が役務等
の対価の支払として行われる性質のものか,それとも役務等の対価でなく喜捨等の
性格を有するものか,また,当該事業が宗教法人以外の法人の一般的に行う事業と
競合するものか否か等の観点を踏まえた上で,当該事業の目的,内容,態様等の諸
事情を社会通念に照らして総合的に検討して判断するのが相当である。
前記事実関係によれば,本件ペット葬祭業においては,上告人の提供する役務等
に対して料金表等により一定の金額が定められ,依頼者がその金額を支払っている
ものとみられる。したがって,これらに伴う金員の移転は,上告人の提供する役務
等の対価の支払として行われる性質のものとみるのが相当であり,依頼者において
宗教法人が行う葬儀等について宗教行為としての意味を感じて金員の支払をしてい
たとしても,いわゆる喜捨等の性格を有するものということはできない。また,本
件ペット葬祭業は,その目的,内容,料金の定め方,周知方法等の諸点において,
宗教法人以外の法人が一般的に行う同種の事業と基本的に異なるものではなく,こ
れらの事業と競合するものといわざるを得ない。前記のとおり,本件ペット葬祭業
が請負業等の形態を有するものと認められることに加えて,上記のような事情を踏
まえれば,宗教法人である上告人が,依頼者の要望に応じてペットの供養をするた
めに,宗教上の儀式の形式により葬祭を執り行っていることを考慮しても,本件ペ
ット葬祭業は,法人税法施行令5条1項1号,9号及び10号に規定する事業に該
当し,法人税法2条13号の収益事業に当たると解するのが相当である。
これと同旨の原審の判断は是認することができる。論旨は採用することができな
い。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官津野修裁判官今井功裁判官中川了滋裁判官
古田佑紀)
(別表)
法人税法施行令5条1項1号平成12年政令第416号による改正前のもの
法人税法施行令5条1項9号現行の規定
法人税法施行令5条1項10号平成14年政令第104号による改正前のもの
本件に係る事業年度である平成8年4月1日から同13年3月31日までの間に
施行された法人税法施行令の改正の経緯については,説示に影響しないことから,
上記の表においてはこの点に関する記載を省略した。

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛