弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 弁護人山本政喜の上告趣意第一点について。
 所論違憲及び判例違反の主張は、原審で主張なく従つてその判断を経ていない事
項であるから、適法な上告理由に当らない。(なお記録について検証調書を調べて
みると、なるほど所論のように、検証現場において立会人に検証の目的物その他の
状態につき指示陳述せしめた供述のほか、犯罪事実自体に関する供述も記載されて
いるが、第一審判決はこの供述部分を訴拠として採用したものとは認められないか
ら、所論は前提を欠くことに帰する)。
 同第二点について。
 所論は、いずれも法令違反の主張に過ぎず刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
(所論(1)について、当裁判所の判例〔昭和二四年(れ)第三一一五号同二五年
四月一四日第二小法廷判決、集四巻四号五七八頁〕によれば、受命裁判官が証拠決
定を施行するに当つては、検証現場のいずれの地点において証人調を行うかを決す
ることは、もとよりその権限に属するところであり、また特段の理由ある場合、現
場附近のいずれかの地点においてこれを行うことも、自由に裁量し得べき権限に含
まれると解すべきであつて、かつ右の趣意における地点において行われた証人調に
つき、当事者がいずれも異議を述べず、その調書が公判に提出された際にも異議を
述べた形跡がないような場合は、かかる調書を証拠とすることは違法でないという
趣旨を判示しているから、この判例の趣旨に副う本件も違法とは認められない。ま
た所論(2)について、記録によると、所論指摘の証人の供述調書中に所論のよう
な伝聞証言が認められるが、この伝聞証言を除いても判示事実を認めるに十分であ
るから、当裁判所の判例〔昭和二七年(あ)第五六九四号同二九年二月一八日第一
小法廷判決、集八巻二号一四五頁〕の趣旨に徴し、違法とはいえない)。
 同第三点について。
 所論は単なる事実誤認の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そ
して第一審判決挙示の証拠と判示説明とを比照して調べてみると、原審の認定は正
当であつて事実誤認があるとはいえない。
 被告人本人の上告趣意について。
 所論は、事実誤認の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして
弁護人の論旨第三点について説明したとおり事実誤認があるとはいえない。
 その他記録を調べても同四一一条を適用すべき事由は認められない。
 よつて同四〇八条、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決す
る。
  昭和三〇年四月一九日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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