弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     被告人両名に対する原判決を破棄する。
     被告人Aを懲役六月、被告人Bを懲役四月に処する。
     原審における未決勾留日数中各二十日を右各本刑に算入する。
     但し各被告人に対し、この裁判確定の日から三年間右各刑の執行を猶予
する。
         理    由
 被告人Bに関する弁護人桐田喜久造の控訴趣意は、
 原判決は被告人等は共謀の上法定の除外事由がないのに管海官庁である運輸大臣
の許可を得ないで荷主某との傭船契約に基き昭和二十五年九月上旬頃被告人Aの保
管にかかるC船舶D丸(船籍港北海道茅部郡a町、登録番号○×△△△△△△)を
運航して日本水域外で北緯b度以南のc島に入港し以て無許可で日本水域外に航海
したものであるとの事実を認定し、被告人両名に対し各懲役実刑を科したるものな
る処、被告人Bは単に船員として同船に乗込みたるに過ぎざることは第一審公判調
書中(記録十頁裏十一頁)被告Aの供述中、問、積荷のことに関しBはどんな立場
にあつたか、答、Bは船員として乗組んだ丈で荷物のことは何も関係がありませ
ん、問、Bは被告人の相談役と言う立場にあつたのでないか、答、別に左様な立場
があつたのでありません」(中略)問、Bは何をしていたか、答、甲板員でありま
す、同公判調書中被告人Bの供述中(同記録十四頁裏)問、c島に廻航することに
ついて承諾を求めたことはなかつたか、答、船乗と言うことで乗込んだのでありま
して左様な相談を受けたことがありません、勿論私はc島が何処にあるのか全く名
も判りませんでした」の供述記載に徴し明瞭なり、方も同公判調書中被告人Bの供
述中(記録十五頁)問、AがEの仲介でc島に廻航することにしたことを知らない
か、答、契約したことは知つて居ります(中略)私は知つているのはc島えの廻航
を契約したこと丈であります」との供述あるも、右は被告Bの関与したるものにあ
らざるのみならず船員たる関係上船長其他船舶保管者の指揮命令に服すべき義務あ
るにより其指揮に随順したる迄にして共同謀議に関与したりと言うこと能はざるに
ょり被告人Bに於て犯罪ありと言うことを得ざるものなり。
 というのである。
 然し船長以外の船舶所有者又は保管者は船員を指揮命令する権限なく、従つて船
員はこれらの者の指揮命令に服従する義務ははいのであるが、記録を調べると、相
被告人AはD丸の船長ではなく、同船の賃借人文は管理人の地位にあるものと認め
られるので、被告人Bは右Aの指揮命令に服従する義務はないといはねばならな
い。従つて、右被告人がAの指揮命令に服する義務があることを前提とする所論は
失当で<要旨>ある。尤も船員たる被告人が船長の指揮命令に服する義務があること
は勿論であるが、然しその命令権が法令の禁止する事項を犯す範囲にまでは
及ばないことも言を待たないところであつて、本件において仮に船長がc島え行く
ことを命じたとしても、之は法令において禁止する事項を犯すものであるから、被
告人は之に服従する義務はない。且つ原判決挙示の証拠によれば、被告人はD丸が
c島え赴く目的を以て鹿児島港を出帆する以前に同船が同島え赴くことを知つてい
たと認められるから、その出帆前に同船を退離することも不可能ではなかつたとい
はねばならない。従つて被告人は船長や船舶保管者の命に服従したまでで何等の責
任がない旨の所論は採用し難い。
 而して共謀とは数人相互の間に共同犯行の認識があることをいうのであつて、原
判決挙示の証拠によると、相被告人Aが被告人B等約十名乗組のD丸によつてc島
え行くことを企図し、被告人Bは予め同人乗組の同船が右AとEとの契約によつて
同島え行くことを知つて居り、且つ両名とも同船に乗つて同島え行つたことが認め
られるので、右被告人等の間に共同犯行の認識があつたことが明らかであるから、
被告人Bはc島え行くことについて相被告人Aとの間に所論のようないわゆる共同
謀議をした事実がなくても、共謀があつたと認めるのに少しも妨げとならない。従
つて右論旨は理由がない。
 然し職権を以て按ずるに、被告人は失職中親戚である相被告人Aに就職を依頼し
た結果昭和二十五年七月下旬頃はじめて船員となつて本件D丸に乗組んだものであ
りc島え渡航することが法令により禁止されていることを必ずしも明確に知つてい
たとは認め難く、且つc島え渡航するようになつた事情並びに本年九月八日米国サ
ンフランシスコ市に於て我が国及び四十八個国政府代表者等によつて調印された対
日講和条約によると、右条約発効後我国の領土は南方において北緯二十九度以北と
決定され、本件c島はわが領土内に包含されて将来自由に渡航できるようになつた
こと等諸般の情状を綜合すると、同被告人に対しては実刑を科するの要なきものと
考えられるから、原判決はその量刑失当であつて破棄を免れない。
 (その他の控訴趣意及び判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 原和雄 判事 井上正弘 判事 百村五郎左衛門)

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