弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○主文
一原告らの請求をいずれも棄却する。
二訴訟費用は原告らの負担とする。
○事実
第一当事者の求める裁判
一原告
1被告が昭和五七年一月一二日付で原告らに対してした相続税に係る各更正処分(ただ
し、昭和五七年六月一〇日付異議決定により一部取消がされた後のもの)はいずれもこれ
を取消す。
2訴訟費用は被告の負担とする。
二被告
主文同旨
第二当事者の主張
一原告の請求原因
1原告Aは、昭和五四年一二月四日に死亡した亡Bの妻であり、原告C、同Dは、いず
れも亡Bの子である。
2亡Bの死亡により相続が開始し、その相続人である原告らは各自被告に対し昭和五五
年五月二九日それぞれ別紙一ないし三の各課税処分経緯表(別紙一は原告A、別紙二は原
告C、別紙三は原告Dについてのものである。以下、一括して「経緯表」という)の各。
「申
告」欄記載のとおり右相続に係る相続税の申告をし、同年一二月二六日それぞれ右申告に
ついて経緯表の各「修正申告」欄記載のとおり各修正申告をしたところ、被告は昭和五七
年一月一二日付をもつて経緯表の各「更正」欄記載のとおり各更正(以下「本件各更正」
という)をした。。
3原告らは、本件各更正についてそれぞれ昭和五七年三月一一日付で被告に対して異議
申立をしたところ、被告は同年六月一〇日付をもつて経緯表の各「異議決定」欄記載のと
おり本件各更正の一部を取消す旨の決定をした。
4次いで原告らはそれぞれ昭和五七年七月九日国税不服審判所長に対し審査請求をした
が、国税不服審判所長は昭和五八年一月七日付をもつて原告らの審査請求をいずれも棄却
する旨の裁決をし、同裁決書の謄本はいずれも同年一月二五日ころ原告らに到達した。
5しかしながら、本件各更生(異議決定により一部取消された後のもの、以下同じ)は
いずれも原告らが取得した相続財産中に含まれる澤田紡績株式会社の株式の相続財産とし
ての評価を誤り、過大に評価した違法があるから、その取消を求める。
二請求原因に対する被告の認否
1請求原因1ないし3の各事実は認める。
2同4のうち、裁決書謄本到達の日時は不知。その余は認める。
3同5は争う。
三被告の主張
1原告らの各修正申告に係る相続財産、相続税の計算過程は、それぞれ別表一の相続財
産の種類別価額表、別表二の相続税の総額の計算表及び別表三の原告らの納付すべき相続
税額の計算表の各「修正申告額」欄の記載のとおりである。
2原告らは右相続税の修正申告において、別表一の「有価証券」欄記載の取引相場のな
い株式(澤田紡績株式会社の株式)を純資産価額方式によつて評価する場合に、右澤田紡
績株式会社(以下「評価会社」という)の一株当たりの純資産価額の計算において、被。

続人の死亡に係る生命保険金一億〇〇七三万八四四三円を評価会社の資産の部に計上し、
かつ、それを源資として支払われた被相続人の退職手当金七〇〇〇万円を負債の部に計上
しながら同じく負債の項目に該当する未払法人税未払住民税及び未払事業税以下未、、(「
納法人税額等」という)を算定するについては、源資となつた右生命保険金は正当にも。

金に算入しているが、右退職手当金は評価会社の損金の額に算入しないで算出している。
3右の評価会社の一株当たりの純資産価額の計算は、右退職手当金を評価会社の損金の
額に算入しないで算出している点において未納法人税額等の額が過大に計上されていると
いうべきである。すなわち、
(一)評価会社は、被相続人を被保険者とする生命保険契約に基づき被相続人の死亡に
伴い生命保険金一億〇〇七三万八四四三円を取得し、これを源資として被相続人に対し、
昭和五五年三月一五日開催の臨時株主総会の議決に基づき同年五月三〇日に死亡退職手当
金七〇〇〇万円を支払つている。
(二)相続人が相続する取引相場のない株式の一株当たりの純資産価額の算定の前提と
なる評価会社の純資産価額は、課税時期における総資産価額から同時期における各負債の
金額の合計額を控除した金額となるところ、評価会社が取得した前述の生命保険金は、評
価会社の総資産価額の計算上、資産となり、他方、被相続人に対して支払われた本件死亡
退職手当金も相続税法三条一項二号により、相続により取得したものとみなされるので、
被相続人の死亡の時点でみなす相続財産として課税対象になるのであるから、評価会社の
一株当たりの純資産価額の計算上、負債に該当するものとして総資産価額から控除すべき
ことについてはいうまでもない。そして、
評価会社の一株当たりの純資産価額の計算に当たり負債とされた前述の退職手当金が、同
じ負債項目である未納法人税額等の計算においても損金に該当するものであることは前述
の理由と同様である。これは、死亡に伴う退職手当金は、相続税法三条一項二号の規定に
より、みなし相続財産とされ相続開始時(課税時期)に取得したものとみなされている関
係上、退職手当金を支払う評価会社の会社計算上も損金とし、損金処理を行うのが妥当で
あることによるものである。
4退職手当金を損金として計算した場合における未納法人税額等は、別表四の「異議決
定」欄「被告主張」欄記載のとおり、一株当たりの純資産価額は七七〇五円となる。、
なお、これを損金としないで計算した場合の未納法人税額等は右別表の「修正申告」欄記
載のとおり、一株当たりの純資産価額は三四九四円となる。
また、本件各更正は、被相続人の死亡に伴つて評価会社の支出した社葬費用三三七万九〇
六〇円を一株当たりの純資産価額の計算において評価会社の負債として計上せず、また、
未納法人税額等の計算に当たつても損金の額に算入しないで計算していたが、本訴におい
てはこれを原告らに有利に計算し、評価会社の一株当たりの純資産価額を算出した。
5被告の本件各更正に係る原告らの相続財産、相続税の計算過程は、それぞれ別表一、
別表二及び別表三の各「更正額」欄記載のとおりであり、評価会社の株式の評価を除く原
告らの相続財産はすべて原告らの修正申告額と同一である。
6以上のとおりであるから、本件各更正に違法はない。
四被告の主張に対する原告の認否、反論
(認否)
1被告の主張1、2は認める。
2同3について
(一)同3柱書は争う。
(二)同3(一)の事実は認める。
(三)同3(二)のうち、未納法人税額等計算上、退職手当金を損金の算入すべきこと
は争う。その余は認める。
3同4、5は認める。
、、、原告らは本訴において評価会社の株式の評価をなすについて未納法人税額等の計算上
被相続人たる亡Bに支払われた死亡退職手当金を損金とするべきでないことを主張するも
のであり、その余の計算関係は、右退職手当金を損金として計算した場合における未納法
人税額等及び評価会社の株式の一株当たりの純資産価額の各計算も含めてこれを争うもの
ではない。
4同6は争う。
(反論)
1被相続人の退職手当金を評価会社の一株当たりの純資産価額の計算上、評価会社の損
金に算入せずに未納法人税額等を算出することは、次のとおり妥当な取扱いである。
2相続税財産評価に関する基本通達(昭和三九年四月二日直資五六、直審(資)一七、
ただし、昭和五八年四月一九日直評六による改正前のもの、以下「評価通達」という)、。
一八八の(六)の(注一)は、課税時期の属する事業年度に係る法人税額等のうちその事
業年度の開始の日から課税時期までの期間に対応する金額を発行会社の純資産価額の計算
上負債の部に計上する取扱いを示しているが、右評価通達にいうそれぞれの期間に対応す
る未納法人税額等を計算するに当たつては、相続税の法定申告期限内に発行会社の決算の
確定が期待できない場合には、その事業年度開始の日から課税時期までの期間を一事業年
度と仮定して仮の決算を組み、それによつて得られる所得金額に対する法人税額等を未納
法人税額等とする方法によることが合理的であり、この仮決算を組む場合の所得金額の算
定及び法人税額等の計算の方法については各事業年度における法人税の計算方法と同一の
計算方法、すなわち一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つた収益、原価、費
用及び損失の額の計算をし、それに法人税法上別段の定めがあるものはその定めに従つて
計算をするのが妥当である(評価通達一八八の(六)の(注一)の(一)は「事業年度に
係る法人税額」と定めており「清算所得に対する法人税額」と定めてはいない。、。)
そこで、右に従つて未納法人税額等を計算する場合における課税時期後に支払債務の確定
する退職金の支給に係る経費の取扱いであるが、法人税法二二条三項二号によれば、各事
業年度の所得の計算に当たつて、減価償却費を除き当該事業年度終了の日まで確定してい
ない債務は損金の額に算入されないのであるから、課税時期までには確定していない債務
である右退職金の支給に係る経費は損金に算入しない取扱いをすべきである。
右取扱いは、本件相続開始当時公刊されていた東京国税局直税部資産評価官蔵坪達男監修
にかかる「改正された株式評価の実務」に示されている取扱いでもあるのみならず、次の
諸点からみても妥当な取扱いである。すなわち、
(一)会社が役員の死亡を保険事故とする生命保険に加入するのは、
保険金収入を退職金支払の源資とすることだけを期待しているわけではなく、主要な役員
の死亡による経営の渋滞、営業の不振等によつて惹起されるかもしれない資金不足に対処
する等の配慮もなされていること。
(二)会社にとつて本件のごとき保険金収入がない場合において課税時期までの期間に
対応する未納法人税額等を計算するときも未払退職金を損金の額に算入するべきものとす
れば、その場合仮決算の結果はおおむね欠損となると考えられるが、その場合、当該会社
が青色申告法人であれば、純損失の繰戻しによる前事業年度以前に納付した法人税の還付
を請求できることになるにもかかわらず、評価通達において発行会社の課税時期における
純資産価額を計算するに当つて、このような還付請求権を資産の部に計上する取扱いは示
されていない。
(三)発行会社が役員の死亡直前にその死亡による退職金の支給その他の臨時出費の増
加を見越して遊休不動産を売却して多額の利益を得ているような場合に、その取引による
収益の額は未納法人税額等の計算上益金の額に算入するが、課税時期の後に確定する退職
金を損金の額に算入する取扱いはされていないのであつて、発行会社における保険金の受
取りと退職金の支払とは、右と同様法律上の因果関係はないのであるから、保険金収入の
ある場合に限つて右と異なる取扱いをする理由はない。
3従つて、本件各相続税の課税時期後である昭和五五年三月一五日に評価会社がその支
払を議決した亡Bに対する退職手当金は、評価会社の一株当たりの純資産価額の計算上、
未納法人税額等を算出するについて損金の額に算入すべきではない。
4以上のようにして算定される未納法人税額等は課税時期現在における発行会社の純資
産価額を計算するための予測に基づく税負担であつて、その後実際に事業年度が終了し、
、。確定決算に基づいて申告納付される法人税額等と直接的な牽連関係を持つものではない
なお、評価会社は昭和五四年八月一日から昭和五五年七月三一日までの事業年度において
利益の額として金二九五一万〇九一一円、課税所得金額として金四四一四万〇三八六円の
確定決算をしており(この決算においては本件保険金収入を益金の額に算入し、社葬費用
及び支払つた退職手当金を損金の額に算入している)この所得金額に対する評価会社の。

人税額等は次表上段記載のとおりであり、
課税時期において前記原告主張の方法により計算した未納法人税額等の額は同表下段記載
のとおりである。
5仮に被告主張の評価会社の一株当りの純資産価額の計算方法が正当であるとしても、
前記のとおり本件相続開始当時の公刊物には原告ら主張の取扱いが示されており、右公刊
物の監修者は前記のとおり東京国税局直税部資産評価官である(このような書籍を公刊す
る場合には所属機関の長の承認が必要であり、それは当然にそれまでの税務実務において
承認されている取扱いである)こと、本件相続開始当時、右公刊物のほか依拠すべき資。

が存しなかつたことからすれば、右公刊物に示された取扱いに従つてされた納税者の税務
処理を、右取扱いを変更する旨を明確に表明しないで個別的に否認することは、納税者の
信頼を破壊しその利益を害すること著しいから許されないと解すべきである。
原告らは本件相続税の申告をするについては、右公刊物に示された取扱いに従つて申告を
しているのであるから、仮に被告主張の評価会社の一抹当りの純資産価額の計算方法が正
当であるとしても、本件各更正は違法である。
五原告らの反論に対する被告の再反論
1原告ら主張の公刊物に原告ら主張のとおりの取扱いが示されていることは認めるが、
右公刊物昭和五三年公刊が公刊された当時は本件のような事例は発生しておらず保()、(
険契約者・保険金受取人を法人、被保険者を当該法人の役員とする保険制度が保険会社に
よつて取扱われるようになつたのは、昭和四六年八月以降である、右取扱いの是非に。)

いて議論が尽くされていなかつたのであり、その後、国税当局の見解が統一されて、原告
らの本件相続税の申告より約一年前の昭和五四年六月には被告主張と同様の取扱いが「財
産評価基本通達の解説(9」として国税速報に登載され、国税庁資産税課長等の編集に)

る相続税法基本通達・財産評価基本通達逐条解説(昭和五四年七月公刊)五二三頁にも明
記されるに至つている。
従つて、原告ら主張の公刊物はいわば過度期における一国税職員による解釈見解の表明に
すぎず、現に右公刊物を改訂して発刊された昭和五五年八月版(東京国税局資産評価官吉
松希四郎編)においては原告ら主張の取扱いを示した部分の記述は削除されているのであ
るから、原告らの主張は失当である。
2また、原告らの主張は、
被告の部下職員が原告らの本件相続税の申告に際し、具体的にその取扱いにつき指導した
というのではなく、単に東京国税局の相続税財産評価事務担当官が公刊した書籍中の記述
を取り上げて本件各更正の違法を主張するものであつて、被告の部下職員の誤指導がない
以上、本件各更正に信義則違反の点は存しない。
第三証拠関係(省略)
○理由
一原告らの請求原因1ないし4(原告らの身分関係及び課税の経緯)の各事実及び被告
の主張1、2(原告らの申告内容一、同3(一(評価会社の保険金取得及び退職手当金)

支払い、同4(評価会社の一株当りの純資産価額について原告ら主張の計算方法によつ)

場合と被告主張の計算方法によつた場合の数額、同5(本件各更正の計算関係)の各事)

は、原告らの請求原因2の事実中の、国税不服審判所長の裁決書謄本が昭和五八年一月二
五日ころ到達しな事実を除き、すべて当事者間に争いがなく、右裁決書謄本の到達日時は
弁論の全趣旨によつてこれを認める。
、()()、また被告の主張3二評価会社の一株当たりの純資産価額の計算方法については
未納法人税額等の計算上、亡Bに支払われた退職手当金を損金に算入すべきであるとの点
を除き、当事者間に争いがない。
右各事実によれば、本件の争点が相続財産に含まれる取引相場のない評価会社の一株当た
りの純資産価額を計算する場合、負債の項目に計上すべき未納法人税額等の計算上、本件
相続開始時期以後に評価会社が被相続人亡Bに対して支給を決定し、かつ、支払つた退職
手当金七〇〇〇万円を損金に算入すべきか否かの点にあることは明らかである。
二そこで右争点について判断するに、
1まず、取引相場のない株式の一株当たりの純資産価額を算定するには、評価会社の純
資産価額判定時期(すなわち課税時期)における総資産価額から同時期における各負債の
、、合計額を控除した金額を発行済株式総数で除してこれを算出することは当然でありまた
右計算をなすに当たり評価会社が亡Bを被保険者とする生命保険契約に基づき、亡Bの死
亡に伴い取得した生命保険金が評価会社の総資産価額の計算上資産となるものであること
は明らかである(前記のとおりこの点は当事者間に争いがない。。)
2一方、役員の死亡に伴い株主総会の決議により支給が決定された退職手当金は、
相続開始当時はその支給が未確定であるところから本来は相続開始時における被相続人の
相続財産の範囲には含まれないのであるが、実質上、相続によつて財産を取得したのと同
視すべき関係にあるので、相続税法三条一項二号は、被相続人の死亡により相続人その他
の者が当該被相続人に支給されるべきであつた退職手当金等で被相続人の死亡後三年以内
に支給が確定したものの支給を受けた場合においては、右退職手当金等は相続人が相続に
より取得したものとみなす旨定めている(いわゆる、みなす相続財産。したがつて、右)
退
職手当金等は、相続財産として課税されるのであるが、他方、右退職手当金等を、課税時
期に債務が確定していないという理由で、評価会社の純資産価額の計算上負債として取り
扱わないとすれば、実質上の二重課税を生ずる結果となることなどから、右退職手当金等
は、評価会社の一株当たりの純資産価額の計算上は負債として取扱うのが相当である(評
価通達一八八の(六)の(注一)参照。)
3ところで、評価通達一八八の(六)の(注一)は、課税時期の属する事業年度に係る
法人税額等のうちその事業年度の開始の日から課税時期までの期間に対応する金額を発行
会社の純資産価額の計算上負債の項目に計上する取扱いを示している(右取扱いが合理的
であることはいうまでもない)が、相続税の法定申告期限内に発行会社の決算が期待で。

ない場合には、その事業年度開始の日から課税時期までの期間を一事業年度と仮定して仮
の決算を組み、それによつて得られる所得金額に対する法人税額を未納法人税額とする方
法によることもまた一つの合理的な方法である(原告らが右方法によつたものであること
は原告らの自認するところである。そして、原告の採用した右方法により未納法人税。)

等の計算をなすに際しては、原則として各事業年度における法人税の計算方法と同一の方
法、すなわち、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるべきであ
る(法人税法二二条四項)が、右計算は、あくまでも相続税額を算出するためなすもので
あり、相続財産に含まれる株式の時価を適正に評価するためのものであることを念頭に置
かなければならない。
そこで、原告は、右未納法人税額等の計算に当たつて、課税時期後に支払債務の確定した
本件退職手当金の支給に係る経費は、損金の額に算入されるべきではないと主張するので
あるが、
右主張は、原告の採用した仮決算方式を前提としても、次の諸点に照らし、採用し難い。
すなわち、前記のとおり、被相続人の死亡により相続人に支給することが確定した退職手
当金については、相続開始当時、支給が未確定であるにもかかわらず、相続税法上、これ
を相続によつて取得したものとみなして相続財産に含ましめ、相続税の課税対象とする旨
の規定(同法三条一項二号)が置かれているため、前記二重課税を避ける趣旨から、相続
財産に含まれる取引相場のない評価会社(右退職手当金を支給した会社)の一株当たりの
純資産価額を計算する場合においても、課税時期(相続開始時)には、未だ支払債務の確
定していない退職手当金の支給に係る経費を負債として計上する取扱いが是認されている
のである。したがつて、右取扱いを是認する限り、これと同様に負債の項目に計上さるべ
き未納法人税額等の計算においても、右退職手当金の支給に係る経費を、原告が採用した
前記「仮の決算の事業年度」における損金に算入することが右取扱いと首尾一貫する会計
処理というべきである。仮に、原告主張のような会計処理を是認するとすれば課税時期に
おいて、退職手当金支給の原因である死亡退職の事実が発生し、その支給が予定されてい
るにもかかわらず、これを無視し、評価会社が課税時期の属する事業年度において、現実
に負担するべき法人税額等とは著しく垂離した金額を未納法人税額等として負債に計上す
ることになり、課税時期(相続開始時)における株式時価の適正な評価という観点からし
て、妥当な会計処理とはいい難い。
したがつて、課税時期において、本件退職手当金の支給が未確定であることを理由に、未
納法人税額等の計算に当たつて右支給に係る経費を損金に算入すべきではないとの原告の
主張はその理由がない。この点に関し、原告は、未納法人税額等の計算上退職手当金を損
金に算入すべきでない理由として(一)役員の死亡を保険事故とする生命保険契約に加、

するのは、退職手当金支払いの源資とするという理由に限られないこと(二)退職手当、

を損金に算入した結果、仮決算が欠損となつた場合において、青色申告法人について認め
られている純損失の繰戻しによる前事業年度以前に納付した法人税の還付請求権について
は、評価通達上、資産の部に計上する取扱いとはされていないこと(三)一般の場合に、
は、
課税時期後に確定する退職手当金の支給に係る経費は損金に算入されていないのに保険金
収入のある場合に限つてこれと異なる取扱いをするのは理由がないことを各主張する原、(
告の反論1、2参照。)
しかしながら、右(一)及び(三)の点については、前記取扱いは退職手当金支払いの源
資が保険金であるか否かを問うものではなく、保険金収入が存することが、退職手当金の
支給に係る経費を未納法人税額等の計算上損金に算入すべきことの理由ではないこと、右
(二)の点については、課税時期において純資産価額の計算上仮決算の結果欠損が生ずれ
ば常に同様の問題が生ずるのであつて、未納法人税額等の計算上退職手当金を損金に算入
するか否かということとは直接の関係はなく、原告主張のような取扱いが評価通達に示さ
れていないからといつて、未納法人税額等の計算上、退職手当金支給に係る経費を損金に
算入する前記取扱いが不当なものとはいえないことなどから、原告ら主張の右(一)ない
し(三)の主張は、いずれも採用の限りではない。
4以上のとおりであるから、未納法人税額等の計算上、評価会社が課税時期後に支給を
決定した亡Bに対する退職手当金を損金に算入した被告の算定方法は正当である。
三次に原告らは、本件相続税の申告時においては、原告ら主張の公刊物が本件税務処理
の唯一の指針であり、当時の税務処理も原告ら主張の方法によりされていたから、右処理
に従つた申告を個別的に舌認することは許されない旨主張する。
しかしながら、成立について争いのない乙第一一、一二号証によれば、本件相続開始前に
公刊された国税速報(昭和五四年六月二五日発行)及び相続税法基本通達、財産評価基本
通達逐条解説(同年七月九日発行)には、いずれも被相続人の死亡を保険事故として評価
会社が生命保険金を取得した場合の計算として、被告主張の方法と同様の方法が示されて
いる事実を認めることができる(右認定に反する証拠はない)のであつて、右事実から。

れば、却つて本件当時の税務処理も被告主張の方法によりされていたものと推認される。
そうすると、原告らの右主張は既にその前提において失当である。
また、本件においては、原告が本件申告をなすに際して、被告の税務担当者が右公刊物の
記載を根拠として、若しくは、右記載と同様の見解に立つて、原告に対し、申告内容を誤
つて指導した旨の主張、立証はないので、
申告時における一般の税務処理の実情を理由とするにすぎない原告らの右主張は失当なる
を免れない。
四したがつて原告らの主張はいずれも失当であり、評価会社の一株当たりの純資産価額
の計算は、未納法人税額等の計算上亡Bに支給を決定した退職手当金を損金に算入すべき
ところ、右方法を前提として計算された評価会社の一株当たりの純資産価額が被告主張の
とおりであることが当事者間に争いがないことは前記のとおりであり、本件各更正のその
余の計算関係が正当であることは前記のとおり当事者間に争いがないから、結局、本件各
更正は適法であるに帰着する。
五以上の次第であるから、原告らの本訴請求はいずれも理由がなく失当であるから、棄
却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三
条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官加藤義則高橋利文綿引穣)
別紙一∼三、別表一∼四(省略)

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