弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     当審における未決勾留日数中六〇〇日を本刑に算入する。
         理    由
 弁護人大野雄二郎上告趣意第一点について。
 原審の認定した所論共謀の事実は、原判決挙示の証拠を綜合すればこれを肯認す
るに難くないのである。原判決が被告人に対する司法警察官代理巡査部長の聴取書
中同被告人の供述記載を綜合認定の一資料となしていること、そして右供述の一部
に論旨の摘録するような記載の存することは所論のとおりである。しかし、該供述
の一部も所論の如き意味ではなく、被告人が本件強盗の見張中、共犯者の実行現場
を確認した趣旨と解し得るのみならず、その供述の全趣旨によれば被告人が本件強
盗に加担したことを窺い得べき証左たることを否定し得ないのである。しかも原審
はこの供述記載の外に、被告人が本件強盗をなすにつき予め謀議したことを明確に
陳述している原審相被告人Aの原審公判廷における供述及び同人に対する司法警察
官代理巡査部長の聴取書中の供述記載をあげて所論共謀の事実を認定しているので
あるから、原判決に所論のような違法があるとはいい得ない。所論は畢寛原審の採
用しなかつた原審公判における被告人の弁解に基ずき、原審が適法になした事実の
認定を非難するに帰着し上告適法の理由とならない。
 同第二点について。
 強盗をなすことを謀議したものが、その犯行現場において、他の共犯者が被害者
に対し暴行脅迫を加え財物を強取する間、ただ見張をしただけであるとしても、な
おその実行に加担したものというべく、従つてその共犯者が暴行により被害者に傷
害を加えた場合においては、強盗傷人の罪責を負わなければならない。この見解は
既に屡々当裁判所の判例の示したところであり、今ここにこれを改変する必要を認
めない。原審認定の事実によれば判示被告人の所為が前説示の場合に該当すること
勿論であるから原判決には所論のような違法はなく、論旨は理由なきものである。
(なお上告趣意第三点は、相被告人Aにのみ関するものであり、同人は既に死亡し、
同人に対する公訴は棄却されたものであるから、判断を加えない。)
 よつて旧刑訴四四六条、刑法二一条に従い、裁判官全員の一致で主文のとおり判
決する。
 検察官 十蔵寺宗雄関与
  昭和二六年一一月一五日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔

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