弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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      主        文
1 本件抗告を棄却する。
2 抗告費用は抗告人の負担とする。
理        由
第1本件抗告の趣旨
1 原決定を取り消す。
2 相手方が抗告人に対して平成17年3月2日付けでした医師法7条2項に基づく医師免
許取消処分の効力は,本案事件(東京地方裁判所平成17年(行ウ)第94号医師免許取消
処分取消請求事件)の判決が確定するまで停止する。
3 申立費用及び抗告費用は相手方の負担とする。
第2 事案の概要
 本件は,産婦人科を専門とする医師であり,産婦人科医院を開設していた抗告人が,医
師法4条4号所定の非違行為の存在を理由として,相手方から平成17年3月2日付けで同
法7条2項に基づく医師免許取消処分(以下「本件処分」という。)を受けたため,相手方を
被告として,その取消しを求める上記本案事件を提起するとともに,これを本案として,本件
処分の効力について,本案事件の判決確定までの停止を求めた事案である。
 原決定は,抗告人の本件執行停止申立ては,行政事件訴訟法25条2項所定の「重大
な損害を避けるため緊急の必要があるとき」に該当するとはいえないとして,本件申立てを
却下したため,抗告人が不服を申し立てた。
 そのほかの事案の概要は,原決定の理由欄の「第2 事案の概要」に記載のとおりである
から,これをここに引用する。また,本件抗告申立ての理由は,「抗告理由書」,「反論書」及
び「反論書(2)」のとおりであるが,要するに,本件においては,抗告人は,本件処分により回
復し難い損害を被ることになるから,行政事件訴訟法25条2項所定の「重大な損害を避け
るため緊急の必要があるとき」に該当するものであって,これに該当するとはいえないとして
本件申立てを却下した原決定は違法であり,申立ての趣旨記載の執行の停止が認められ
るべきであるというものと解される。これに対する相手方の意見は,その提出に係る「意見
書(1)」に記載のとおりである。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も,抗告人がした執行停止申立ては,理由がないから却下すべきものと判断
する。その理由は,次のとおり付加するほかは,原決定の理由欄の「第3 当裁判所の判
断」に記載のとおりであるから,これをここに引用する。
(1) 原決定7頁21行目末尾の次に行を改めて次のとおり加える。
「 抗告人は,重大な損害が生ずるか否かを判断するに当たって,処分の内容及び性
質をも勘案するのは,本件のように,非違行為があったとされた時から約30年もの長きにわ
たり,地域医療に貢献してきた抗告人に対する処分には当てはまらない旨主張する。
 しかしながら,本件処分が本件非違行為から約30数年も経てから行われたことにつ
いては,後記(3)のとおり合理的な事情があることに加えて,医師の業務が,国民の健康や
安全に直結するものであり,適格性を欠く者がかかる業務に従事することが本来許されない
事柄であることは,上記説示のとおりであるので,たとえ抗告人が地域医療に長年にわたり
貢献してきたとしても,本件処分が濫用となるものではないというべきである。
 したがって,抗告人の上記主張は採用することができない。」
(2) 原決定8頁15行目末尾の次に行を改めて次のとおり加える。
「 抗告人は,最低限の衣食住の確保のみでは医師としての資質を維持することはでき
ず,また,抗告人の開設していた産婦人科医院であるAクリニック(本件クリニック)は,主に
抗告人個人を信頼する患者により成り立っていたことなどから他の医師で代替できるもので
はなく,さらに,本件クリニックを一旦完全に閉鎖すると,再開することは実際には新規開設
に等しくなることなどから,本案訴訟で勝訴した場合に抗告人が医師としての活動を再開す
ることは困難であるから,抗告人は,本件処分によって,回復し難い損害を被ることになる旨
主張する。
 しかしながら,上記のとおり,医師免許取消処分である本件処分の効力を停止すべ
きかどうかを判断するに当たっては,医師の業務内容にかんがみ,処分の内容及び性質を
も勘案する必要性があるものであって,本件においては,抗告人主張の上記事実を十分考
慮してもなお,本件処分の効力停止を正当化するほどの『重大な損害』の疎明がされている
ということはできないから,抗告人の上記主張は採用できない。」
(3) 原決定9頁5行目末尾の次に行を改めて次のとおり加える。
「 抗告人は,本件非違行為の刑法的評価である傷害罪が不起訴処分になっているか
ら,この事実を斟酌すれば,本件非違行為は『濡れ衣』である可能性が極めて高い旨主張
する。
 しかしながら,刑事事件について公訴提起をするかどうかという観点から不起訴処
分がされたからといって必ずしも直ちに当該事実が存在しなかったということはできない上,
本件においては,上記説示のとおり,本件非違行為の存否が争点となった損害賠償請求
訴訟である別件訴訟において審理が尽くされ,本件非違行為に相当する事実がある旨の
認定がされ,抗告人については一審において,勤務医らについては上告審においてその
判断が確定していることに照らし,抗告人の上記主張は採用することができないものといわ
ざるを得ない。
 また,抗告人は,本件非違行為から27年ないし31年以上もの長期間が経過した後
に医師の資格を失わせるという重大な処分をすることは,処分権の濫用になる旨主張する。
 しかしながら,上記のとおり,本件非違行為の存在が確定された別件訴訟は,抗告
人については一審において確定していたものの,勤務医らについては,医学鑑定を含む膨
大な証拠調べを経た長期間の審理の後に平成16年7月13日にその敗訴が確定したもの
であり,この間,各患者に対する手術の適応の有無等についての主張立証の応酬がされて
いたことからすると,相手方が,抗告人に重大な影響を及ぼす本件処分をするかどうかを決
定するに当たり,別件訴訟の審理結果をも見極めようとしたことにはそれなりの合理的な事
情があったものと考えられること,また,医師免許の取消処分は,国民の健康や安全に直結
する医師の業務について適格性を欠く者を排除する重要な意義を有するものであること等
に照らし,抗告人の上記主張は採用の限りでない。」
(4) 原決定9頁10行目末尾に続けて「抗告人は,その他縷々主張するが,いずれも『重
大な損害を避けるため緊急の必要』があるとはいえないことについての上記判断を左右す
る内容のものとはいえない。」を加える。
2 よって,抗告人の本件抗告は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり
決定する。
平成17年7月15日
東京高等裁判所第20民事部
裁判長裁判官宮   崎   公   男
裁判官上   原   裕   之
裁判官今   泉   秀   和

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