弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人等六名の弁護人松永東、同名尾良孝、同真室光春の上告趣意について、
 本件犯行当時は食糧管理法九条に基く同法施行令八条に従い、制定された同法施
行規則二三条により、小麦を含む米麦等の所有者は、その所有する米麦等を政府食
糧配給公団その他農林大臣の指定する者以外の者に売り渡すことは禁止し処罰され
ていたのであるが、昭和二七年五月三一日農林、運輸省令第二号による前記施行規
則の改正により同年六月一日以降は、右売り渡しを禁止し処罰されるものは米穀だ
けとなり、小麦はこれが禁止を解かれ処罰されることがなくなつたことは所論のと
おりである。しかし右禁止が解かれたからといつて、既にその前に成立していた、
右施行規則二三条違反の小麦不正売り渡しの罪に対する刑が廃止されたものといえ
ないことは、物価統制令第三条違反の行為があつた後に主務大臣の告示が廃止され
ても刑の廃止とならないとした当裁判所大法廷判決(昭和二三年(れ)第八〇〇号
同二五年一〇月一一日大法廷判決、集四巻一〇号一九七二頁)の趣旨からも明らか
であるのみならず、小麦の買受行為が犯罪を構成しなくなつたからといつて、刑の
廃止があつたものとはいえないとする当裁判所の判例(昭和二七年(あ)第三三五
八号同二九年一月一六日言渡当裁判所第二小法廷判決)に徴しても論のないところ
である。論旨は採用することはできない。
 よつて、刑訴四〇八条により主文のとおり判決する。
 右は裁判官栗山茂を除く裁判官の一致した意見による。
 裁判官栗山茂の少数意見は次のとおりである。
 本件第一審判決の確定した被告人等の所為は、その犯行当時においては、食糧管
理法九条一項に基く、同法施行令八条により制定された同法施行規則二三条に違反
し、同法三一条により処罰されるものであつたのであるが、その後昭和二七年五月
三一日農林省運輸省令第二号による前記規則の改正により同年六月一日以降は処罰
されないものとなつたのである。そこで右規則改正を見るに、前記規則二三条は、
食糧管理法九条一項の「政府ハ主要食糧ノ公正且適正ナル配給ヲ確保シ其ノ他本法
ノ目的ヲ遂行スル為特ニ必要アリト認ムルトキハ政令ノ定ムル所ニ依リ主要食糧ノ
配給、加工、製造、譲渡其ノ他ノ処分、使用、消費、保管及移動ニ関シ必要ナル命
令ヲ為スコトヲ得」との規定に基き制定された政令たる同法施行令八条の「農林大
臣又ハ都道府県知事は……主要食糧を所有する者に対し、その者の行う主要食糧の
譲渡に関し、その相手方又は時期を制限することができる」との規定に従い農林大
臣が制定したものであつて、本件犯行当時は、「食糧管理法第三条第一項令第四条
令第七条又は令第九条の規定により売り渡すべき場合を除いて、米麦等又はでん粉
の所有者はその所有する米麦等又はでん粉を政府、食糧配給公団、その他農林大臣
の指定する者以外の者に売り渡してはならない。……」と規定されていて、小麦は
右にいう「米麦等」といううちに含まれていたのである。(本件犯行当時の右規則
一条参照)然るに、右規則二三条は、数次の改正を受け、同条の適用される主要食
糧の範囲は次第に縮少されたが前記昭和二七年五月三一日農林省運輸省令第二号に
よる改正で右二三条は(右改正当時は前記二三条は、同規則三九条となつていた)
「食糧管理法又は同法に基く命令の規定により定める場合及び農林大臣の指定する
場合を除いて何人も米穀を政府以外の者に譲り渡してはならない。」と規定される
に至り、同条により売渡の制限される主要食糧は、米穀だけとなり、小麦は何等制
限されることはないことになつたのである。なる程、右規則三九条(本件当時は同
二三条)の基本法たる食糧管理法九条は、今日もなお存続していて、同条に違反す
る者を処罰する旨定めた同法三一条も依然存在するけれども、同法九条は、如何な
る主要食糧に関する如何なる行為を禁止するかは、命令に委任し、右委任に基き制
定された、前記食糧管理法施行令も亦その第八条でその具体的禁止行為を農林大臣
の定むるところに譲つているのであるから、食糧管理法施行規則の前記条項は、右
施行令八条の規定を通して食糧管理法九条の具体的内容をなす、禁止規範(準則)
を定めた法令なのである。故に前記規則の改正は、小麦の自由売買を禁止するとい
う本件犯行当時存した禁止規範の内容を変更し、小麦の自由売買は、何等これを禁
止しなくなつたのである。そして、右改正にあたり右禁止規定の関係においては「
改正前の行為はなお従前の例により処罰する」旨の規定も存しないし、又右従前存
した小麦の売買を制限する規定は、これをいわゆる限時法と解すべき要件も理由も
ないのであるから、本件は原判決後に刑の廃止があつたものとして第一審判決及び
原判決を破棄し被告人等に対しては免訴の言渡をなすべきものである。
  昭和二九年五月一四日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    谷   村   唯 一 郎
 裁判官 藤田八郎は出張につき署名押印することができない。
         裁判長裁判官    霜   山   精   一

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