弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決及び第一審判決中被告人らに関する部分を破棄する。
     被告人Aを懲役六月に、同Bを懲役三月に処する。
     第一審における未決勾留日数中各五五日を右本刑に算入する。
     この裁判確定の日から三年間孰れも右刑の執行を猶予する。
     押収物件中第一審判決別紙第一目録記載のものは、被告人Aに対し、同
第四目録記載のものは、被告人Bに対し、夫々没収する。
     第一審における訴訟費用中証人Cに支給した分は、その三分の一、当審
における訴訟費用はその二分の一を被告人Bの負担とし、第一審における証人Dに
支給した分及び当審における訴訟費用中二分の一を被告人Aの負担とする。
     本件公訴事実中占領目的阻害行為処罰令違反の点については、被告人等
を免訴する。
         理    由
 弁護人川崎広洋の上告趣意第一点は、事実誤認の主張であつて、朝鮮に行く積り
はなかつたというのであるが、原判決挙示の証拠によれば被告人らは、朝鮮から密
入国して来て帰国する積りであつた第一審相被告人E・、F等と同船していたもの
であつて、事実誤認又は理由不備とはいえない。
 第二点は、憲法一四条違反をいうけれども、記録によれば人種的偏見に捉われて
裁判をしたとは認められないから違憲の主張は、その前提を欠く。
 職権で調査すると本件公訴事実中占領目的阻害行為処罰令違反の点(第一審判決
判示第二の事実中被告人らに関する部分)は、昭和二七年政令一一七号により大赦
があつたから、刑訴四一一条五号、により、原判決及び第一審判決中被告人らに関
する部分を破棄し、同法四一四条、同一三条但書、四〇四条、三三七条三号により
右事実については、被告人らを免訴すべきものとする。
 よつて、第一審判決が確定したその余の事実に法令を適用すると被告人らの判示
所為中各外国人登録令違反の点(第一審判決判示第三の事実)は、回令九条、一三
条四号に、各関税法違反の点(第一審判決判示第四の事実)は、同法七六条一項に
各該当するから、何れも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるか
ら同法四七条、一〇条によつて重い関税法違反の罪の刑に法定の加重をし、孰れも
その刑期範囲内において被告人Aを懲役六月、被告人Bを懲役三月に処し、同法二
一条、二五条によつて第一審における未決勾留日数中各五五日を右本刑に算入し、
この裁判確定の日から三年間何れも右刑の執行を猶予するものとし、主文第五項記
載の物件は、関税法八三条一項によつて夫々各被告人に対し没収するものとし、訴
訟費用は、刑訴一八一条により主文第六項のように被告人A同Bの負担とする。
 この判決は、裁判官全員一致の意見である。
 検察官 神山欣治出席
  昭和二八年一一月一〇日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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