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平成30年1月19日判決言渡名古屋高等裁判所
平成28年(行コ)第59号退去強制令書発付処分等取消請求控訴事件(原
審・名古屋地方裁判所平成27年(行ウ)第135号)
口頭弁論終結日平成29年10月19日
主文
1原判決を取り消す。
2名古屋入国管理局長が平成27年8月26日付けで控訴人に対し
てした出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく異議の申出に
は理由がない旨の裁決を取り消す。
3名古屋入国管理局主任審査官が平成27年8月27日付けで控訴
人に対してした退去強制令書発付処分を取り消す。
4訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
主文と同旨
第2事案の概要
1本件は,中華人民共和国(以下「中国」という。)国籍を有する外国
人男性である控訴人が,名古屋入国管理局(以下「名古屋入管」とい
う。)入国審査官から,出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」と
いう。)24条4号ロ(不法残留)に該当する等の認定を受けた後,名
古屋入管特別審理官から,上記認定に誤りがない旨の判定を受けたため,
入管法49条1項に基づき,法務大臣に対して異議の申出をしたところ,
法務大臣から権限の委任を受けた名古屋入国管理局長(以下「名古屋入
管局長」という。)から,平成27年8月26日付けで原告の異議の申
出には理由がない旨の裁決(以下「本件裁決」という。)を受け,引き
続き,名古屋入管主任審査官から,同月27日付けで退去強制令書発付
処分(以下「本件処分」という。)を受けたため,本件裁決及び本件処
分の取消しを求める事案である。
原判決が控訴人の請求をいずれも棄却したため,控訴人が控訴した。
2前提事実,争点及び当事者の主張は,原判決「事実及び理由」第2の
2及び3に記載のとおりであるから,これを引用する。
第3当裁判所の判断
1控訴人の退去強制事由該当性について
前提事実によると,控訴人は,入管法24条4号ロ(不法残留)の退
去強制事由に該当し,かつ,出国命令対象者(同法24条の3)に該当
しない外国人であることが認められる。
2認定事実
前提事実に,証拠(甲2,3,10,11,乙4,5,7,8,10,
13の1・2,19,認定事実末尾記載の書証,証人A,控訴人本人)
及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実(顕著な事実を含む。)を認め
ることができ,この認定を左右するに足りる証拠はない。
(1)控訴人は,平成25年5月3日に「技能実習1号ロ」の在留資格
で本邦に上陸し,愛知県,長野県及び新潟県の実習実施機関で技能実
習生として技能実習に従事していたが,遅くとも平成26年1月末ま
でには実習実施機関を無断で離れて愛知県岡崎市に移り,同年1月3
1日頃からは,同市内でとび職人として勤務を始め,月額約20万円
の収入を得るようになり,在留期限である同年5月3日が経過した後
も本邦に残留していた。(乙1)
(2)Aは,昭和54年(西暦1979年)6月●日生まれの中国国籍
の女性であり,中国で生まれ育ったところ,平成13年に前夫(B)
と婚姻し,平成14年8月,本邦に入国した。Aは,前夫との間に子
供ら(平成16年生まれの長女及び平成18年生まれの長男。いずれ
も日本国籍)をもうけ,愛知県西尾市a町の住宅(以下「前夫宅」と
いう。)で前夫及び子供らと同居して生活してきた。Aは,平成17
年9月に永住者の在留資格を取得しており,就労制限はなく,マッサ
ージの仕事に従事している。(乙1,18)
(3)控訴人とAは,平成26年3月頃,インターネットを介して知り
合い,同年4月28日頃,岡崎市内の飲食店で初めて会い,その後は
頻繁に電話やメールで連絡を取って,定期的に会うようになった。な
お,Aは,控訴人と初めて会った際,結婚していること及び子供らが
いることを控訴人に話した。控訴人は,同年7月頃からAと恋人とし
て交際するようになり,同年8月頃,在留資格がないことをAに話し
た。控訴人とAは,その後も頻繁に電話やメールで連絡を取り,1週
間に1回程度会って,買い物や遊びに行くなどして交際を続けた。控
訴人は,同年12月頃,Aに対し,婚姻の申込みをした。
(4)Aは,平成27年2月,前夫に対し,好きな人ができた旨を告げ,
単身で前夫宅を出て,西尾市b町の賃借アパートで,控訴人との同居
生活を始めた。Aは,その約1週間後,前夫から子供らに会わせるこ
とはできないと言われたことから,子供らに会いたいという気持ちが
強くなり,控訴人とも相談の上,前夫宅に戻ることとし,上記アパー
トの賃貸借契約を解約した。そして,Aは,前夫宅に行き,前夫及び
子供らに対し,戻りたいという気持ちを伝えた。しかし,Aは,前夫
宅から一旦上記アパートに帰った後,前夫の母から戻らなくてもよい
と言われ,その後,前夫の母らに前夫宅に戻ることを認めてほしいと
頼んだが許されず,同年3月1日からは新たに賃借した控訴人肩書住
所地のアパート(以下「自宅アパート」という。)で控訴人と同居し
て暮らすことになった。控訴人とAは,家事については分担し,二人
の収入はAが管理していた。
(5)Aは,平成27年4月7日,前夫に対し,子供らとの面会交流を
求める調停を名古屋家庭裁判所岡崎支部に申し立てた。Aは,同調停
事件係属中である同年6月中旬頃,子供らと面会交流することができ
た。同調停事件については,同年7月2日,前夫がAに対し,毎月第
1及び第3土曜日の午前10時から午後6時30分まで子供らと面会
することを認めること等を内容とする調停が成立した。(甲18,1
9)
(6)控訴人とAは,同居開始当初は円満に暮らしていたが,Aは,控
訴人と同居を続ける中でも,子供らと会いたいという気持ちが募り,
控訴人の前でも子供らに会いたい気持ちを強く示すことがあり,控訴
人は,自分がAを強く愛しているのに,Aの気持ちが子供らに行って
いるように感じた。控訴人とAは,そのような時に口論をするように
なり,控訴人が携帯電話や冷蔵庫などの家財道具を投げたり叩いたり
したことがあり,Aの髪を引っ張ったこともあった。また,上記(5)
の面会交流調停事件係属中にAと子供らが面会した後である平成27
年6月下旬頃には,諍いになった際,控訴人がAの首を絞める形にな
ったことがあり,控訴人の行為によりAの左上腕部などに赤黒い痣が
残ったこともあった。
(7)Aは,控訴人と諍いになった際,愛知県西尾警察署に匿名で電話
相談をしたことがあったところ,平成27年7月中旬頃,同警察署を
訪れ,控訴人から暴力を受けていることを話して相談した。
(8)控訴人は,平成27年8月●日,愛知県西尾警察署の警察官によ
り入管法違反(不法残留)の被疑事実で逮捕された。その後,前提事
実(3)イないしオのとおり,同日から同月19日にかけて,収容令書
の発付及び執行,名古屋入管収容場への収容,違反調査,審査,退去
強制事由に該当し,かつ,出国命令対象者に該当しない旨の認定,口
頭審理及び上記認定に誤りがない旨の認定,これに対する異議の申立
て等がされた。
そして,前提事実(3)カのとおり,同月26日に本件裁決が,同キ
のとおり,同月27日に本件処分がそれぞれなされた。
(9)控訴人は,平成27年8月5日の名古屋入管入国警備官による違
反調査及び同月14日の名古屋入管入国審査官による審査において,
恋人ないし婚約者であるAと同居していること,市販の妊娠検査薬の
検査によりAは控訴人の子を妊娠していることが分かっており,控訴
人はAと前夫との離婚が成立すればAと結婚するつもりなので,日本
で生活したいことなどを供述した。(乙4,7)
(10)Aは,平成27年8月5日,名古屋入管入国警備官の取調べに対
し,控訴人から暴言,暴力を受けて恐い思いをしてきたこと,控訴人
を一日も早く中国に送還してほしいこと,自分は今妊娠していないこ
と,この取調べでAが話したことを控訴人に漏らさないでほしいこと
などを話した。(乙5)
また,Aは,同月19日,名古屋入管入国審査官の事情聴取に対し,
同月11日に産婦人科に行ったところ,妊娠していることが分かった
こと,お腹の中の子供は控訴人の子であることに間違いないが,この
子供は堕ろすつもりであること,前夫と離婚する予定はないこと,控
訴人を中国に送還してほしい気持ちに変わりはないことなどを話した。
(乙13の1・2)
Aは,同年9月2日,お腹の子を中絶した。(乙19)
(11)Aは,控訴人が平成27年8月5日に名古屋入管に収容されてか
ら後記の同年10月3日付け陳述書(乙19の資料2)を作成するま
での間に,①同年8月12日,②同月13日,③同月18日,④同月
19日,⑤同月25日,⑥同年9月1日,⑦同月4日,⑧同月7日,
⑨同月9日,⑩同月11日,⑪同月14日,⑫同月15日,⑬同月1
7日,⑭同月24日,⑮同月29日及び⑯同年10月1日の合計16
回,名古屋入管を訪れて,控訴人と面会した。Aは,控訴人に対し,
上記①の同年8月12日に3万円を,⑤の同月25日に2万円を差し
入れ,これらを含め合計6回現金を差し入れた。また,Aは,控訴人
に対し,⑨同年9月9日の面会の際は,仮放免許可申請書を交付した。
なお,Aが控訴人との面会・物品授与許可申出書に記載した控訴人と
の関係は,①が「ともだち」,②ないし⑨が「友人」,⑩が「未婚妻
(婚約者)」,⑪ないし⑯が「婚約者」であった。(乙20)
(12)Aは,平成27年8月25日,控訴人が日本に在留できるかどう
かに関する法律相談をするため,控訴人訴訟代理人佐竹靖紀弁護士
(以下「佐竹弁護士」という。)の事務所を訪れた。Aは,これに前
後して,Aが控訴人のことを警察に通報したことを控訴人に話し,控
訴人は,自分にも非があったとして,Aの行動を許した。(甲15)
Aは,佐竹弁護士が文案を作成した平成27年10月3日付け陳述
書(乙19の資料2)に署名押印した。同陳述書には,控訴人が名古
屋入管に収容されてからも控訴人に帰国してほしいと話したが,控訴
人と何度も話合いをするなどし,控訴人の気持ちも理解できるように
なったこと,控訴人と結婚したい気持ちは交際していた頃と変わりな
く,今後は控訴人と共に生活し,いずれは夫婦となることを考えてい
ることなどが記載されている。(乙19)
(13)前夫は,平成27年9月14日,Aに対し,離婚を求める調停を
名古屋家庭裁判所岡崎支部に申し立てた。同調停事件については,同
年12月14日,前夫とAは調停離婚すること,子供らの各親権者は
前夫と定め,前夫において監護養育すること,前記(5)の面会交流調
停の条項については,前夫はAが子供らと月2回程度面会することを
認め,子供らが希望する場合には,宿泊を伴うものとすることができ
ることなどに変更すること等を内容とする調停が成立した。(甲13,
17)
なお,Aは,その後現在に至るまで,子供らとの面会交流を続けて
おり,後記(17)のとおり仮放免を受けた後は,控訴人も子供らと交流
している。(甲12)
(14)控訴人は,平成27年11月21日,本件訴えを名古屋地方裁判
所に提起した。
(15)控訴人は,佐竹弁護士を代理人として,平成28年1月6日,同
年2月12日及び同年5月24日,仮放免許可申請をした。なお,控
訴人は,2回目の申請から3回目の申請の間に,名古屋入管から入国
者収容所大村入国管理センターに移送された。これらの申請書におい
ては,Aが身元保証人になる旨が記載されている。(乙21の1~
3)
Aは,1回目の仮放免許可申請の後である同年2月5日,名古屋入
管入国審査官の調査に対し,控訴人が名古屋入管に収容されてしばら
くは中国に帰ってほしいという気持ちだったが,控訴人と面会を重ね
るうち控訴人がAを愛していることが分かったこと,控訴人が日本に
居続けることが一番良く,将来結婚したいと考えていることなどを供
述した。(乙19)
(16)原審である名古屋地方裁判所は,平成28年7月6日終結した口
頭弁論に基づき,同年8月31日,控訴人の請求をいずれも棄却する
旨の原判決を言い渡した。控訴人は,同年9月6日,本件控訴を提起
した。
(17)控訴人は,平成28年7月20日,仮放免の許可を受けて,大村
入国管理センターを出て,自宅アパートに行き,身元保証人となった
Aとの同居を再開した。
Aは,マッサージの仕事をして,平成28年には報酬として約33
7万円(経費約46万円)を得た。控訴人は,食事の支度,掃除,買
い物等の家事に従事している。(甲9)
控訴人とAは,平成28年12月2日,婚姻した。(甲4及び5の
各1・2)
Aは,平成29年7月●日,控訴人との間の子であるCを出産した。
(甲20,21)
3本件裁決の違法性について
(1)控訴人とAとの関係及びその評価について
ア控訴人は,控訴人とAは夫婦同然に平穏な生活を営んでいたもの
であるから,在留特別許可に関し,この内縁関係を積極要素として
評価すべきである旨主張するのに対し,被控訴人は,Aは永住者で
あり,日本人配偶者ではない上,控訴人とAの同居期間,Aと前夫
との婚姻関係,控訴人の暴力及びAがこれを警察に相談したため控
訴人が逮捕されたことなどに照らせば,控訴人とAとの関係は積極
要素にはならないなどと主張する。
イそこで検討すると,前記認定事実によれば,控訴人は,平成26
年7月頃からAと恋人として交際し,同年12月にはAに婚姻の申
込みをしたところ,控訴人とAは,平成27年2月には西尾市b町
の賃借アパートで同居し,同年3月1日からは自宅アパートで同居
生活をし,家事については分担し,家計についてはAが管理してい
たものであり,加えて,Aが同年8月には控訴人の子を妊娠してい
たことを併せ考慮すると,本件裁決がされた当時,控訴人とAは,
事実上の婚姻関係にあったものということができる。このことは,
本件裁決後の事実ではあるが,控訴人とAは,控訴人が仮放免許可
を受けた平成28年7月20日以降,現在に至るまで同居し,同年
12月2日には婚姻し,Aは,平成29年7月●日,控訴人の子を
出産していることによっても裏付けられる。なお,これも本件裁決
後の事実であるが,Aは,平成27年9月2日,当時懐胎していた
控訴人の子を中絶しているものの,当時は,子の父である控訴人が
名古屋入管に収容されたばかりで,仮放免や在留が許される目処も
立たない状況であり,中絶を選択することがやむを得ない状況にあ
ったといえるから,これをもって,Aと控訴人との内縁関係の存在
を否定する事情と評価することはできない。
ウもっとも,Aは,平成27年12月14日に調停離婚するまでは,
前夫との間の婚姻関係が継続していたものである。
しかしながら,Aは,同年2月に前夫宅を出た後,子供らに会い
たいという気持ちから一旦は前夫宅に戻ろうとしたものの,前夫の
母から戻ることを拒否され,前夫宅に戻ることを許されないまま,
控訴人との同居生活を続けることを選択していたところ,同年3月
以降,Aと前夫との間の婚姻関係が修復される兆しがあったことは
全くうかがわれない。そうすると,本件裁決当時には,Aと前夫と
の婚姻関係が修復される見込みはなく,客観的に見て既に破綻して
いたというべきであり,このことは,本件裁決後の事情ではあるが,
前夫が離婚調停を申し立てた同年9月14日から僅か3か月の同年
12月14日に調停離婚に至っていることからも容易に推認するこ
とができる。
エまた,Aは,控訴人から暴力を受けたことがあり,そのことを愛
知県西尾警察署に相談し,これが端緒となって控訴人が逮捕され,
また,Aは,平成27年8月5日及び同月19日の2回にわたり,
名古屋入管の入国警備官及び入国審査官に対し,控訴人を中国に送
還してほしいなどと話していたものであり,これらの事情からは,
同月当時,控訴人とAとの内縁関係が悪化していたことは否定でき
ない。
しかしながら,控訴人とAとの喧嘩は,前夫との間の子供らに会
いたいというAの感情が募り,それが控訴人に伝わって,気持ちの
行き違いが生じたことが原因であり,Aと前夫との婚姻関係が円満
に解消され,Aと子供らとの面会交流が順調に進めば,その原因が
解消される性質のものであったといえるところ,その後の離婚調停
に至る経過や面会交流の状況に照らしても,本件裁決時点で既に,
客観的に見て,内縁関係を悪化させる事由がいずれ解消されること
が十分に期待できる状況にあったといえるから,内縁関係の悪化は
一時的なものにとどまるということができる。そして,Aは,名古
屋入管の係官に対し,控訴人を中国に送還してほしいと話す一方で,
前記2(11)及び(12)のとおり,控訴人と面会するため頻繁に名古屋
入管に赴き,控訴人に金員を差し入れ,さらに本件裁決の前日であ
る同月25日には,控訴人が日本に在留できるかどうかに関する法
律相談をするため,佐竹弁護士の事務所を訪れていた上,本件裁決
後の事情ではあるが,その後は一貫して控訴人が在留できるように
するための行動を続けてきたものであって,客観的に見れば,Aの
名古屋入管係官に対する上記発言は,一時的に控訴人との内縁関係
が悪化したことに起因する感情の発露にとどまり,必ずしもAの真
意に基づくものではなく,かえって,前記2(12)で認定した平成2
7年10月3日付け陳述書の記載内容が同年8月当時においてもA
の真意であったと考えられる。
オ被控訴人は,Aは永住者であり,日本人配偶者の場合と比較して
内縁関係を保護する必要性は低い旨主張する。
しかしながら,Aは,日本人である前夫との間に二人の子供らが
おり,本件裁決当時,子供らと同居しておらず,その後の離婚に際
して親権者とはならなかったものの,子供らと面会交流を続けてお
り,Aが日本に在住して面会交流を続けることは,日本人である子
供らの健全な成長にとって重要なことであるから,Aが日本国籍を
有しないからといって,控訴人とAとの内縁関係を保護する必要性
が低いとはいえない。
カ以上で検討したところによれば,本件裁決当時において,控訴人
とAとの同居期間は約6か月であり,その内縁関係の一時的な悪化
は認められるものの,控訴人とAとの内縁関係は,安定かつ成熟し
ていたということが可能であるから,在留特別許可を付与すべきか
否かを決する上での積極要素に当たるというべきである。
(2)消極要素の評価等について
被控訴人は,消極要素として,控訴人が不法残留をして,逮捕され
るまでの約1年3か月間,不法就労をして月額約20万円の収入を得
ていたことを主張する。
しかしながら,控訴人は,当初から不法就労を目的として本邦に入
国したものではない上,不法就労の態様が特に悪質であったというよ
うな事情のあったこともうかがわれないから,被控訴人が指摘する点
は,前記(1)で検討した積極要素と比較して,著しく小さいものとい
うべきである。そして,他に前記積極要素を減殺するほどの消極要素
が控訴人にあることを認めるに足りる証拠もない。
(3)小括
以上によれば,本件裁決は,上記(1)の積極要素を全く考慮せず,
上記(2)で被控訴人が指摘する消極要素を過大に考慮したものであり,
その判断の基礎となる事実の認識又は評価において,明らかに合理性
を欠き,社会通念に照らし著しく合理性を欠くから,裁量権の判断を
逸脱した違法があり,取り消されるべきものである。
4本件処分の違法性について
本件処分は,名古屋入管局長から本件裁決をした旨の通知を受けた名
古屋入管主任審査官が,入管法49条6項に基づいてしたものであると
ころ,上記3で説示したとおり,本件裁決には裁量権の範囲を逸脱した
違法があって取り消されるべきものであるから,これを前提としてされ
た本件処分も違法であって,取り消されるべきである。
5結論
よって,控訴人の請求はいずれも理由があるから,これを棄却した原
判決を取り消した上で,控訴人の請求をいずれも認容することとして,
主文のとおり判決する。
名古屋高等裁判所民事第4部
裁判長裁判官藤山雅行
裁判官朝日貴浩
裁判官金久保茂

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