弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人を懲役4年に処する。
未決勾留日数中60日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は,法定の除外事由がないのに,平成16年6月22日午前10時40分
ころ,京都府舞鶴市ab番地のc所在のサウナ「A」前駐車場において,回転弾倉
式けん銃1丁(平成16年押第75号の1)をこれに適合する火薬類であるけん銃
実包5発(同押号の2及び3。ただし,うち2発は鑑定のため試射済みのもの)と
共に,自動装てん式けん銃1丁(同押号の4)をこれに適合する火薬類であるけん
銃実包7発(同押号の5及び6。ただし,うち2発は鑑定のため試射済みのもの)
と共に,自動装てん式けん銃1丁(同押号の7)をこれに適合する火薬類であるけ
ん銃実包6発(同押号の8及び9。ただし,うち2発は鑑定のため試射済みのも
の)と共に携帯して所持するとともに,前記実包合計18発(同押号2,3,5,
6,8,9。ただし,うち6発は鑑定のため試射済みのもの)をけん銃に使用する
ことができるものとして所持したが,同日時ころ,同所において,B県警察本部司
法警察員Cに前記けん銃3丁を提出して自首したものである。
(証拠の標目)―括弧内の甲,乙で始まる数字は検察官請求証拠番号―
 省略
(補足説明)
1 銃砲刀剣類所持等取締法(以下「銃刀法」という。)31条の5所定の自首が
成立すると判断した理由を補足説明する。
2 関係各証拠によれば,次の事実が認められる。
(1) B県警察本部司法警察員Cらは,平成16年6月22日午前8時43分こ
ろ,被告人を被疑者とする銃刀法違反容疑で捜索場所を判示サウナAの1階(ただ
し,客室及びサウナを除く。)及び2階倉庫とする捜索差押許可状に基づき,同所
の捜索を開始した(以下,この捜索を「本件捜索」と,その捜索場所を「本件捜索
場所」という。)。
(2) 捜索に立ち会った被告人は,C警察官に対し,「あるところを知っている。
3日後に出しますわ。」などと申し出たが,同警察官は,本件捜索により本件捜索
場所からけん銃が発見されるものと確信していたためか,「我々は,自分(被告
人)のけん銃のことで来ている。他人のけん銃まで段取りしなくていい。」などと
述べて相手にしなかったため,被告人は「分かりました。この話はなかったことに
して下さい。」と答えた。
(3) 被告人は,本件捜索場所の捜索が終了しようとしていた同日午前9時57分
ころ,C警察官から「車も捜索するので,立会してほしい。」といわれるや,「も
う出しますわ。」「死んだ親父(親分)から預かって持っていた物で,処分に困っ
ていた。今,家の近くの他人のところにわしが勝手に置いている。」「懲役に行く
ことも分かった上で出すんです。他人の物ではありません。処分に困っていたんで
す。」などと本件けん銃等の隠匿場所その他の具体的事情にも言及して,C警察官
らに対し再度けん銃等の提出を申し出た。   
(4) その後,被告人は,C警察官らの了承を得て,被告人の車に同警察官ら捜査
官二名を同乗させて前記サウナを出発し,同日午前10時7分ころ,被告人の自宅
約50メートル手前付近において,「ここで待っていてもらえますか。」と述べ
て,捜査官らを降車させて,一人で車を発進させた。約8分後に同所に車で戻って
きた被告人は,助手席のビニール袋を示して,「この中にけん銃が3丁入っていま
す。」旨C警察官らに述べ,同警察官の指示にしたがって,同車で本件捜索場所で
ある前記サウナに戻り,同日午前10時40分ころ,同サウナの駐車場において判
示けん銃及び実包等(以下「本件けん銃等」という。)の入った前記ビニール袋を
同警察官に任意提出し,同警察官らは,同サウナ建物内の被告人が使用していた部
屋内で,被告人とともに,同ビニール袋を開披し,本件けん銃等を確認した上,同
日午前11時2分ころ,同所において,被告人を銃刀法違反容疑で現行犯逮捕し
た。
(5) なお,このビニール袋(本件けん銃等)は,同市de番地所在のD敷地内に
ある倉庫脇の石材等が積み重ねられた石材の下の土の上に隠匿されていたものであ
る。その隠匿場所(以下「本件隠匿場所」という。)は,本件捜索場所からは車で
約5分,被告人の自宅から南東約80メートルの位置関係にあって,同所は雑草等
が茂っており,木製の柵が立てかけられているほか,その上部には前記石材を覆う
形でトタン板等が被せられており,容易には発見することのできない状況にあっ
た。
3 銃刀法31条の5の自首が成立するためには,けん銃等の所持者が当該けん銃
等を提出して自首することが必要であるところ,前認定の事実によれば,被告人が
C警察官に本件けん銃等を提出し,けん銃等所持の犯罪事実を申告したと認められ
るのであるが,これがいわゆる提出自首であるというためには,被告人による犯罪
事実の申告が自ら進んで自発的になされたことが必要となる。
  そこで,検討するに,本件においては,捜査機関が被告人において本件捜索場
所でけん銃等を所持しているのではないかとの嫌疑を抱いて本件捜索に及び,これ
を契機に被告人が捜査機関に本件けん銃等の提出を申し出たものであるけれども,
本件けん銃等は,前認定のとおり本件捜索場所とは全く別の本件隠匿場所に隠匿さ
れていたもので,捜査官が被告人において本件隠匿場所でけん銃等を所持している
との嫌疑をもっていたものではなく,あるいは,その旨の追及をしたわけでもなか
ったこと,被告人の前記申告がなければ,本件捜索はけん銃等を発見することなく
終了し,本件けん銃等を発見することは不可能であったと認められること,前認定
のとおり,被告人はC警察官に対し二度にわたり本件けん銃等の提出を申し出た
後,本件けん銃等の隠匿場所付近まで同警察官ら2名を同行させて案内した上,最
終的には一人で本件隠匿場所から本件けん銃等を取り出し,直ちに捜査官のもとに
戻った上,同警察官らの指示にしたがってこれらを任意に提出したことなどの事情
が認められるから,前記被告人の本件けん銃等の提出及びこれに伴う犯罪事実の申
告は,被告人の自発的な意思に基づくものであったと認めるのが相当である。
  以上のとおり,被告人には銃刀法31条の5所定の自首の成立が認められる。
(法令の適用)
 被告人の判示所為のうち,けん銃3丁を適合実包合計18発と共に保管して所持
した点(以下「けん銃加重所持」という。)は包括して銃砲刀剣類所持等取締法3
1条の3第2項(その長期は,行為時においては平成16年法律第156号による
改正前の刑法12条1項に,裁判時においてはその改正後の刑法12条1項による
ことになるが,これは犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑
法6条,10条により軽い行為時法の刑による。),1項,3条1項,同法施行規
則3条の2に,けん銃実包所持の点は銃砲刀剣類所持等取締法31条の8,3条の
3第1項に,火薬類所持の点は火薬類取締法59条2号,21条にそれぞれ該当す
るところ,これは1個の行為が3個の罪名に触れる場合であるから,刑法54条1
項前段,10条により1罪として最も重いけん銃加重所持の罪の刑で処断すること
とし,被告人はその所持に係るけん銃等を提出して自首したものであるから,銃砲
刀剣類所持等取締法31条の5,刑法68条3号により法律上の減軽をした刑期の
範囲内で被告人を懲役4年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中60日を
その刑に算入することとする。
(量刑の理由)
 本件は,判示のとおり,被告人がけん銃3丁を適合実包合計18発と共に保管し
て所持した銃砲刀剣類所持等取締法違反及び火薬類取締法違反の事案である。
 被告人は元暴力団幹部であったものであるところ,その供述によれば,平成7年
3月ころ,当時の直属の暴力団組長から本件けん銃等を預かってほしい旨依頼され
てこれを受け取り本件けん銃等を入手したというのであるが,その供述によって
も,当時は,所属暴力団の武器保管担当者として本件けん銃等を預かり保管してい
たことに帰着する上,その理由がいかなるものであったにせよ,被告人はその後長
期間にわたり本件けん銃等の保管を続けたあげく,犯行直前には発見を免れるため
他人の管理する場所に無断でこれを隠匿所持して本件犯行に至ったもので,犯行に
至る経緯や動機に格別斟酌すべき事情はないというべきである。そして,被告人
は,人畜殺傷能力の十分なけん銃3丁のほか,合計18発の適合実包を,自動装て
ん式けん銃2丁について
は合計13発の実包が現に弾倉2個に装てんされた状態で,本件けん銃等を保管所
持していたものであり,銃器を使用した凶悪犯罪が多発し社会不安が増大している
近時の社会状況にも照らすと,本件は反社会的で危険な犯行であるといわざるを得
ない。
 以上の諸情状に加え,被告人は,長期間にわたり暴力団組員として活動し,一時
期は自ら暴力団を結成して組長となる等し,その間服役前科6犯を含む多数の前科
を有していることを併せ考慮すると,被告人の刑事責任は相当重いといわなければ
ならない。
 そうすると,本件につき銃刀法上の自首が成立すること(ただし,本件捜索を契
機に提出自首するに至った前記の事情に照らせば,量刑上過大にしん酌すべきでは
ない。),本件けん銃等が具体的に使用された形跡はなく,最近においてはその危
険も少なかったと窺われること,すでに自己が結成した暴力団を解散し,正業に就
いていること,長男が今後の被告人の監督を誓約していること,被告人には扶養す
べき妻子がいること,被告人の健康状態,その反省の情など,被告人のために酌む
べき事情を十分に考慮しても,主文の刑は免れない。
 よって,主文のとおり判決する。
  平成17年2月10日
神戸地方裁判所第1刑事部
裁判長裁判官   杉 森 研 二
   裁判官橋 本   一
         裁判官三重野 真 人

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