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平成15年(ネ)第1591号 特許権侵害差止等請求控訴事件(原審・大阪地方裁
判所平成13年(ワ)第10456号)
判決
控訴人(1審原告)   A
(以下「原告A」という。)
控訴人(1審原告)   B
           (以下「原告B」という。)
両名訴訟代理人弁護士  増 井 和 夫
同           橋 口 尚 幸
被控訴人(1審被告)  株式会社亀山
           (以下「被告」という。)
代表者代表取締役    C
訴訟代理人弁護士    中 島   敏
補佐人弁理士      一 色 健 輔
同           黒 川   恵
主文
1 本件控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は、原告らの負担とする。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被告は、原判決添付別紙イ号物件目録、同ハ号物件目録及び同ニ号物件目録
記載の各物件を製造、販売してはならない。
3 原告Aが、被告に対し、1271万7600円及びこれに対する平成13年
10月20日(訴状送達の日の翌日)から福岡地方裁判所久留米支部平成14年
(再)第5号の民事再生手続開始決定の前日まで年5分の割合による金員の再生債
権を有することを確定する。
4 原告Bが、被告に対し、1271万7600円及びこれに対する平成13年
10月20日(訴状送達の日の翌日)から福岡地方裁判所久留米支部平成14年
(再)第5号の民事再生手続開始決定の前日まで年5分の割合による金員の再生債
権を有することを確定する。
5 訴訟費用は、1、2審とも被告の負担とする。
第2 事案の概要
1 本件は、発明の名称を「ドリル装置」とする特許発明に係る後記特許権の共
有者である原告らが、被告に対し、被告の製造、販売するドリル装置は同特許発明
の技術的範囲に属すると主張して、製造、販売の差止めと損害賠償及び特許法18
4条の10第1項前段の規定に基づく補償金の支払を請求した事案である。
原審は、原告らの請求をいずれも棄却したので、原告らが控訴を提起した。
   なお、原判決言渡し後、被告の再生手続開始の申立てに基づき、平成15年
2月5日に再生手続開始の決定(福岡地方裁判所久留米支部平成14年(再)第5
号)がなされ、原告らが届出をした再生債権(本件各請求中再生債権に該当する損
害賠償及び補償金請求部分)の内容について被告がこれを認めなかったため、原告
らの申立てにより、同年4月30日、原審において当該部分についての訴訟手続を
被告に受継させる旨の決定がなされた。これに伴い、原告らは、前記控訴の趣旨3
項及び4項のとおりに訴えを変更した。)。
2 争いのない事実等、争点、争点に関する当事者の主張は、次のとおり付加、
訂正等するほかは、原判決「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」1、2及び
「第3 争点に関する当事者の主張」に記載のとおりであるから、これを引用す
る。
(1) 4頁20行目から同21行目にかけての「主張している。」の次に「ま
た、被告は、原判決別紙ハ号物件目録及び同ニ号物件目録につき、本判決別紙のと
おり当初の認否を変更した。」を加える。
(2) 5頁21行目の「いない、」を「いない。」と改める。
(3) 8頁15行目の「リングビット」の次に「(以下「アウターリングビッ
ト」ともいう。)」を加える。
(4) 10頁末行の「噴射路6a」の次に「によって導かれる噴射剤」を加え
る。
(5) 16頁1行目末尾の次に改行の上、次のとおり加える。
「5 当審における付加主張
(原告ら)
(1) 甲22、23からも、本件発明の実施例のような噴射孔の位置であっ
ても何ら問題を生じないことは明らかであるから、被告が主張するような、穿孔屑
がイ号物件の噴射孔に詰まるなどというトラブルはあり得ず、被告によるイ号物件
の設計変更は本件特許権の侵害を逃れるためであったと考えざるを得ない。
(2) 公知技術(乙1英国特許公報、乙2英国特許公報、乙7米国特許公
報)と比較した場合の本件発明の特徴は、①インナービットとリングビットとを他
の何らの部材も経由せずに直接結合しているため、構造が単純かつ堅牢であるのみ
ならず、インナービットの有効直径を相対的に大きくできること、②リングビット
の内周面に設けられたバヨネット原理による結合のための突起アセンブリを通過さ
せるためにインナービット外周面に設けられた溝を穿孔屑の排出溝として利用する
無駄のない構造となっていること、③リングビットとインナービットは穿孔作業を
行う間は、回転方向にも軸方向にもー体化して動くとともに、軸方向の移動につ
き、リングビットはパイプと連動しない構造となっているため、衝突動作の伝達が
完全になり、インナービットでリングビットを引き上げることができること、の3
点にある。
 したがって、これらの特徴を備えない公知技術の存在は、何ら本件発
明の構成要件を限定的に解釈する根拠となり得るものではないし、他方、本件発明
の構成要件の解釈は、本件発明の特徴が以上の3点にあることを十分考慮した上で
なされなければならない。
(3) 構成要件(8)にいう「穿孔表面」の意義は、これを実施例の形状のみ
に基づいて「ドリルビット(4)の表面」と形式的に解釈するのは妥当ではなく、ハ
号・ニ号物件における噴射孔60aの設けられた凹部41も、「穿孔表面」に該当
すると解されるべきである。
(被告)
(1) 噴射孔の位置がドリル先端に近いと穿孔屑が詰まる支障が生じること
は、甲10の記載に加えて、甲11にも「かなり柔らかい粘土層では、ビットは前
面のフラッシングホールだけですと、ホールが詰まりやすく、穿孔中に中断や作業
低下を引き起こします。」(15頁)とあり、被告の考案に係る実用新案(考案の
名称「ボーリングロッド」)の明細書(乙3の1)にも「考案が解決しようとする
課題」が示され、従来例の欠陥として「・・・インナーロッドとアウターロッドと
の間の排水路に土砂・スライムが詰った場合、詰り解消の為にボーリングロッドを
引き上げて分解せねばならないという欠点があった。本件考案が解決しようとす
る・・・第二の課題は、インナーロッドとアウターロッドの間の排水路の詰りが少
なく且つ排出能力の高いボーリングロッドを提供することにある。」(3欄5行~
18行)と明記されていることから明らかである。
(2) 本件発明の特徴に関する原告らの主張は、いずれも本件発明の特許請
求の範囲に記載された構成に基づくことなく、独自に本件発明の特徴を論ずるもの
である上、本件発明の出願時に既に公知となっていた技術を新規な特徴点として主
張しているものにすぎない。
(3) 被告は、ハ号・ニ号物件における噴射孔60aの設けられた凹部41
も構成要件⑧にいう「穿孔表面」に該当する旨主張しているが、かかる解釈は構成
要件⑧の文理に反する上、本件明細書上にもこれを裏付ける記載が全く存在しな
い、不当な解釈である。」
第3 当裁判所の判断
1当裁判所も、原告らの本件各請求はいずれも理由がないものと判断する。
 その理由は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決の「事実及び理由」
中の「第4 争点に対する判断」1及び2に記載のとおりであるから、これを引用
する。
(1) 16頁11行目から12行目にかけての「平成8年7月に」を「平成8年
4月に」と改める。
(2) 17頁13行目の次に改行の上、次のとおり加える。
「 なお、この点に関し、原告らは、ドリルの先端部に噴射孔を設けたとし
ても目詰まり等の支障が生じることはあり得ないから、被告がそのような設計変更
をしたのは本件特許権の侵害を免れるためである旨主張し、ドリルの先端部付近に
噴射孔を設けた本件発明の実施品(甲22)と報告書(甲23)を提出している
が、仮に、本件発明の実施品である製品に目詰まり等の支障が生じていないことが
事実であるとしても、ハ号・ニ号物件は、甲22、23記載の製品とはドリル先端
の溝状凹部の大きさ、形状等が大きく異なることや、甲11、乙3の1の記載に照
らせば、直ちにハ号・ニ号物件においても同様に目詰まり等の支障が生ずることが
あり得ないとまで推認することはできず、他に上記原告らの主張を認めるに足りる
証拠はない。」
(3) 17頁16行目の「平成8年7月に」を「平成8年4月に」と、同19行
目の「6年以上」を「7年以上」と各改める。
(4) 18頁5行目末尾の次に改行の上、次のとおり加える。
「 なお、上記にいう「穿孔表面」とは、穿孔が「孔をあけること」、表面
が「物の外面」の意味であること(いずれも広辞苑第4版)からして、ドリルの先
端部分の形状、構造等によっては多少の幅はあり得るとしても、穿孔の対象である
地盤の側からみれば、まさに穿孔されようとし又は現に穿孔されつつある部分、穿
孔するドリルの側からみれば、回転及び衝突等の作用によって穿孔作用を行うドリ
ルユニットの先端部分付近を指すものと解される。」
(5) 19頁4行目末尾の次に改行の上、次のとおり加える。
「 また、構成要件⑧が、上記のように、「第1の機構(6a)」自体が穿
孔表面を通るように構成されていることを規定するものであることは、構成要件⑨
においては、「第2の機構(6b)は、穿孔屑を・・・穿孔表面を経て導くように
構成される」という、機能的な表現による記載がなされていることとの対比上も明
らかというべきである。」
(6) 19頁17行目から21頁6行目までを次のとおり改める。
「  しかし、構成要件⑧の構成は、噴射剤ではなく、「第1の機構(6
a)」自体が穿孔表面を通るように構成されていること、換言すれば、「第1の機
構(6a)」を構成する「流路」(この場合の「流路」とは、水流等の意味ではな
く、水を一定の方向に導くことを目的として設置された通路の意味であると解され
る。)自体が「穿孔表面」に到達している必要があることは既にみたとおりである
から、仮にハ号・ニ号物件の長手軸流路6b、偏心流路(a)6c及び噴射孔60aと
凹部41及びその外周を囲むリングビット5とが相まって、結果的に噴射剤が「穿
孔表面」に導かれたとしても、これをもって構成要件⑧を充足するものということ
はできない。
  また、原告らは、ハ号・ニ号物件における噴射孔60aの設けられた
凹部41も「穿孔表面」に該当すると解されるべきであるとも主張しているが、そ
のように解することが前記した「穿孔表面」の意義にそぐわない点をおいても、少
なくとも、ハ号・ニ号物件におけるように、溝状の凹部41内の、直接的には穿孔
作用に関係せず、本来はドリルの穿孔作用によって破砕等され崩落した穿孔屑が入
り込む部分と考えられる噴射孔60aの付近まで「穿孔表面」に含めるのは無理が
あるものといわざるをえないし、明細書中にも、特許請求の範囲に記載された「穿
孔表面」なる用語がそのような特別の意味を有することを示唆し、又はそのような
解釈を支持する記載は存在しないから、この点の原告らの主張も採用できない。
ウ さらに、原告らは、ハ号・ニ号物件におけるように、噴射孔をビット
の側面に設けることは当業者にとって周知の事項にすぎないとも主張しているが、
仮にその点が周知であるとしても、「第1の機構(6a)」を構成する「流路」
が、ハ号・ニ号物件のように溝状の凹部の相当奥まった位置に開口している場合
と、本件発明のように「穿孔表面」まで到達している場合との差異が、何らの技術
的意義も有さない、無意味な差異であるとまで断定することができるかは疑問であ
って、少なくとも本件においては、その点を認めるに足りる証拠は提出されていな
い。また、前記のように、構成要件⑧に、「第1の機構(6a)」を構成する「流
路」が「穿孔表面」にまで到達する構成が明示されているものと解さざるを得ない
以上、これと異なるハ号・ニ号物件のような構成が原告らが主張するほど周知であ
ったとすれば、かえって、本件発明の特許請求の範囲においては、そのことを熟知
するはずの原告らが、あえて上記のような限定を付した記載をしたことになるか
ら、特許請求の範囲の解釈としても、そのとおり限定して解すべきはむしろ当然の
ことであるといわなければならない。
エ なお、原告らは、本件発明の特徴が前記(第3、5「当審における付
加主張」(原告ら)(2))の①ないし③の点にあるとした上、本件発明の特許請求の
範囲の解釈に当たってもその点が考慮されるべき旨るる主張しているところ、原告
ら主張の点が本件発明の特徴であるとみるべきか否かの議論はひとまずおき、原告
ら主張の点をもって本件発明の特徴であると仮定するとしても、特許請求の範囲に
記載された事項はいずれも発明の構成に欠くことができない事項であるから、それ
らの事項が上記本件発明の特徴とする点以外の点に係るものであるからといって、
これを付随的要件にすぎないとか、格別の意味がないとか主張することが許されな
いのはもとより、そのことのみをもって、特許請求の範囲に特定の構成を示すもの
として明記された事項について、これと異なる構成をも含むものと解すべき根拠と
することもできないものというべきである(なお、原告らは、原審以来、これらの
点を一貫して構成要件の解釈ないし構成要件該当性の判断において考慮されるべき
事項として主張してきているものであり、被告においても、原告らの主張がそのよ
うなものであることを前提として反論等をしてきたものであることは、本件記録上
明らかである。)。」
2 その他、原審及び当審における当事者提出の各準備書面記載の主張に照ら
し、原審及び当審で提出、援用された全証拠を改めて精査しても、引用に係る原判
決を含め、当審の認定、判断を覆すほどのものはない。
3 以上によれば、原告らの本件各請求は、その余の争点について判断するまで
もなく理由がなく、いずれも棄却すべきところ、これと同旨の原判決は相当であっ
て、本件控訴はいずれも理由がない。
 よって、主文のとおり判決する。
(平成15年7月8日口頭弁論終結)
    大阪高等裁判所第8民事部
       裁判長裁判官  竹  原  俊  一
              
            裁判官  小  野  洋  一
              
            裁判官  中  村     心
(別紙)

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