弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を取り消す。
     被控訴人の請求を棄却する。
     訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴人ら訴訟代理人は主文と同旨の判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決
を求めた。
 当事者双方の主張ならびに証拠の関係は左記を附加するほかは、原判決の事実摘
示のとおりであるから、これをここに引用する。
 証拠(省略)
         理    由
 公文書であるから真正に成立したものと推定される甲第一号証ないし同第三号
証、同第五号証、乙第一号証、同第二号証、弁論の全趣旨により真正に成立したも
のと認める甲第四号証、原審証人A、同B、同C、同Dおよび同Eの各証言を総合
すると、被控訴人が亡Fの実弟で同人を相続すべき地位にあること、控訴人Gが右
Fの内縁の夫訴外Cの孫で、控訴人HはGの夫であること。昭和四三年三月一八日
午後にFと控訴人両名との養子縁組届が館山市長に提出され、即日受理されたこと
およびFは昭和四三年三月一八日午前零時前後頃便所に行くため廊下に出かかつた
とき自室の入口附近で脳溢血で倒れ、同日午前一時頃医師の往診を受けたが、その
ときは既に意識消失昏睡状態等の重態であつて、その後も右のような状態を続け翌
一九日午前九時二〇分死亡したこと。本件の養子縁組届はCの長男Iの妻であるD
が同月一八日午後四時少し前頃館山市役所に戸籍係を訪れ戸籍係Aに代書を依頼
し、持参したFらの印鑑を用いて縁組を作成して戸籍係に提出し受理されたもので
あることがそれぞれ認めうれ他に右認定を左右し得る証拠はない。
 被控訴人は、Fと控訴人らとの間には養子縁組についての話合いないし、Fが縁
組届出の意思を表示したことがない。したがつて本件養子縁組は縁組の意思および
届出の意思を欠く無効のものであると主張する。
 しかしながら、いずれも真正に成立したものと認める甲第二号証、同第五号証、
第九号証、乙第十二号証の一、二、乙第二八号証および同第二九号証の各一、二原
審証人C、同J、同K、原審並びに当審証人Dの各証言および原審での控訴人H本
人尋問の結果を総合すると次の各事実を認めることができる。
 Fは大正一〇年頃千葉県下で茶屋の女中奉公をしていたがCにいわゆる身請をさ
れて同人と内縁の夫婦となり館山市内で同棲するようになつた(Cは養子であつた
関係上、養親の反対でFを入籍することは許されなかつた)。Cは終戦時までは牛
馬商をしていて出稼ぎをしていたが、その後館山市内に落付き、F所有名義の土地
建物でFと共に料理店、旅館等を経営し、Fの死亡当時はアパートを経営するなど
して約五〇年来右両名は事実上の夫婦として生活を共にしてきた。
 Fは昭和三一年九月七日被控訴人の四女Bと養子縁組をし、その届出をしたが、
事情があつて昭和三四年六月二六日協議離縁し、さらに昭和三七年一二月一九日再
度養子縁組をしてその届出をしたところ昭和三九年一月二〇日同女が結婚すること
になつたため再び協議離縁をした。その後Lや控訴人Gの妹Mを養子にしようとし
たがいずれも実現するに至らなかつたところから、老後その他将来のことを慮りC
と相談のうえ同人の孫である控訴人G夫婦を養子にしようと考え昭和四二年一一月
頃JやNを介して控訴人Gの両親や控訴人らに対しその交渉をした。始め控訴人ら
は右Fの申出を断つていたが、再三に亘る申出により結局同年一二月中頃控訴人ら
はFの養子となることを承諾した。そこで、Fはさつそく建物を増築して控訴人夫
婦を住まわせる用意をし、早急に養子縁組の届出をすることにしてGの母であるD
に印鑑を預けてその届出をすることを依託した。しかし、その頃控訴人Gは妊娠中
で翌年三月一八日頃が出産予定(三月五日出産)であつたので、出産してから届出
をするつもりでいたところ、Fが同年三月一五日までに所得税の申告をするため、
判が必要であるというので、同月一日頃Fから預つていた印鑑を一たん返還するこ
となどの事情があつてその届出が遅れていた。そうしている内に前示のように昭和
四三年三月一八日未明Fは脳溢血で倒れ、介抱していたCに対し控訴人らの入籍の
ことを口走るなどしたので、同日午後四時少し前頃前記のようにかねてFの依頼を
受けていたDがさらにFの印鑑を預つて館山市役所に至り戸籍係に依頼して本件養
子縁組届を作成して届出をなしそれが受理された。
 以上の事実が認められ原審証人Bの証言中右認定に反する部分は信用し難く他に
この認定を左右し得る証拠はない。
 右認定の事実によるとFと控訴人両名との間には昭和四二年一二月中既に養子縁
組の合意が成立していたものと認むべきである。
 被控訴人は、Fは上記養子縁組の届出がなされた昭和四三年三月一八日には意識
を消失し、意思能力を有しなかつたのであるから右届出は無効であると主張する。
 <要旨>しかし、養子縁組の届出は他人にその届出人の氏名を代書させ若くは押印
を代行させることによつてすることも許される(戸籍法施行規則第六二条)
ところであり、Fが控訴人らと養子縁組をする意思を有し且つその届出をDに依託
していたものであることは前記認定のとおりであるから、本件届出が受理された昭
和四三年三月一八日当時Fが意識消失の状態に在つたとしても届出の受理前に死亡
した場合と異りその届出の受理前にFが控訴人らと養子縁組をすることを翻意する
など特段の事情の認めうれない本件においては前記認定の養子縁組届の受理によつ
てFと控訴人らの養子縁組は有効に成立したものと解するを相当とする。
 以上のとおりであるから、昭和四三年三月一八日館山市長宛届出られたFと控訴
人両名との養子縁組の無効確認を求める被控訴人の請求は失当として排斥を免れな
い。
 よつて、右と異る見解のもとに被控訴人の本訴請求を認容した原判決は不当であ
り本件控訴は理由があるから民事訴訟法第三八六条第九六条第八九条を適用して主
文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 石田哲一 裁判官 杉山孝 裁判官 矢ケ崎武勝)

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