弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

○主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
○事実
控訴人は「原判決を取り消す。本件を浦和地方裁判所に差し戻す」との判決を求め、、。

控訴人は控訴棄却の判決を求めた。当事者双方の主張及び証拠関係は、次のとおり付加、
訂正するほかは、原判決事実摘示及び当番記録中の書証目録記載のとおりであるから、こ
れを引用する。
(控訴人)
1差押処分と通告処分とは、一方が他方を前提とするとか、あるいは一方が他方の結果
であるとかいう関係はなく、両者は目的及び対象を異にした別個の行政処分である。した
がつて、差押処分の違法は通告処分の適法違法とは別個に、それ自体として独立するもの
であり、通告処分を履行したからといつて差押処分の違法がなくなるわけがなく、またそ
の違法を主張することができなくなるものでもない。
2本件に先立つ同種の別件において、控訴人が差押処分は違法であり、このことについ
てはあくまで行政訴訟で争いたいので通告履行はできないと主張したのに対し、昭和五七
年四月関東信越国税局間税部担当者のAは、控訴人が通告履行をしてもその事実を差押処
分の効力を争う行政訴訟で援用しないと約束したため、本件においても、右約束に従い通
告履行の事実を被控訴人が本件差押処分無効確認の行政訴訟で援用しないことを条件とし
て通告に従い本件酒類を納付してこれを履行したものであつて、右約束は訴訟上の合意で
あるから、被控訴人は、控訴人が通告履行したことを理由に本件差押処分無効確認の訴え
の却下を求めることは許されない。なお、訴訟要件に関する訴訟上の合意も有効であるこ
とは不起訴の合意、不控訴の合意等が有効とされていることからみても明らかである。
(被控訴人)
控訴人の主張2のうち、昭和五七年四月に国税局担当者が控訴人に対して通告履行をして
もその事実を本件差押処分の効力を争う行政訴訟において援用しないとの約束をした事実
は否認し、その余の点は争う。
控訴人が主張する「通告履行の事実を犯則行為の成立を争う訴訟において主張しない」と
いう訴訟上の合意は、同じ訴訟要件に関する訴訟上の合意といつても、不起訴の合意、不
控訴の合意等のように当事者間に3いて任意に処分しうる事項に関するものではなく、通
告履行により客観的には権利保護の利益が消滅しているのに、
その効果を訴訟上排除して不適法な訴えにもかかわらずその本案につき審理、判決を求め
得ることとするものであつて、かかる合意を当事者の任意に処分しうる事項として許容す
ることはできない。
○理由
一当裁判所も、控訴人の本件訴えはいずれも不適法であるから却下すべきであると判断
するものであるが、その理由は次のとおり付加、訂正するほかは、原判決理由説示のとお
りであるから、これを引用する。
1原判決八枚目表七行目の「争いがない」の次に「本件差押物件が納付申出のなされ。

本件酒類に含まれていることは弁論の全趣旨により認めることができる」を加える。。
2原判決一〇枚目表六、七行目の「本件酒類の所有権は右納付の申し出により確定的に
国庫に帰属したものと解すべきである」を「これにより本件差押処分の効力は消滅す。、

とともに、本件酒類の所有権は確定的に国庫に帰属したというべきであり、したがつて、
その後において本件差押処分の効力を争う行政訴訟を提起することは権利保護の利益を欠
き、許されないというべきである」と改める。。
3原判決一〇枚目裏二行目の「あるとする」を「あるとし、その終了までは差押処分の
無効確認を求める訴えの利益が失われないとする」と改め、同行目末尾に「また、通告履
行により差押処分の効力を争う訴えの利益が失われるのは、前記のとおりの理由によるも
のであるから、差押処分の違法の存否は右判断に影響する余地はなく、もはやこれについ
て判断の限りではない」を加える。。
()。4原判決一〇枚目裏二行目末尾前項の加入部分の次に行を改めて次のとおり加える
「控訴人は、本件通告処分に従い控訴人が本件酒類を納付して履行したのは、国税当局と
の間に「通告履行の事実を本件差押処分の効力を争う行政訴訟において被控訴人が援用し
ない」との訴訟上の合意が成立したからであり、被控訴人が右合意に反して通告履行の事
実を主張することは許されない、との主張をするが、控訴人が成立したと主張する右訴訟
上の合意は、前記のとおり通告履行により本件差押処分の効力は消滅して、本件酒類の所
有権は確定的に国庫に帰属したため、客観的には差押処分の効力を争う訴えの利益はなく
なつているのに、当事者の合意により本案の審理、判決を可能にするという効果を生じさ
せることを目的と有するものであり、
このように客観的には訴えの利益のない訴訟について本案判決を得る途を当事者の合意に
よりひらくことは許されないというべきであり、このような訴訟上の合意にその効力を認
めることはできないから、右合意の存否について判断するまでもなく、控訴人の右主張は
採用しがたい」。
4原判決一〇枚目裏五行目から同一一枚目表九行目までを次のとおり改める。
「三本件予備的請求は、控訴人の納付により国庫に帰属した本件酒類の返還と損害金の
支払を求める民事訴訟であるが、かかる請求は権利義務の帰属主体である国を被告とすべ
きであつて、国の一機関にすぎず、権利能力の主体となり得ない行政庁を相手に右のよう
な請求をすることは許されない。
したがつて、本件予備的請求は不適法というべきである」。
二したがつて、これと同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを
棄却することとし、控訴費用の負担について行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条
を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官森綱郎高橋正小林克已)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛