弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人らの上告趣意について。
 第一審判決によれば、その確定した罪となるべき事実は、被告人両名は、法定の
除外事由がないのに、原審相被告人AおよびBと共謀のうえ、右AとB、被告人両
名の二組に分かれて、「四十五年の危機迫る!!国民よ決起せよ!!C会本部」な
どと印刷したビラ合計二六枚を大阪市屋外広告物条例(昭和三一年大阪市条例第三
九号)によりはり紙等の表示を禁止された物件である大阪市内の一三箇所の橋柱、
電柱および電信柱にのりではりつけたというのであり、右各所為に対し刑法六〇条、
大阪市屋外広告物条例一三条一号、四条二項、三項各一号等を適用し、被告人Dを
罰金八、〇〇〇円に、被告人Eを罰金五、〇〇〇円に処しているのである。
 論旨は、まず、原判決は、なんら営利と関係のない純粋な思想・政治・社会運動
である本件印刷物の貼付に大阪市屋外広告物条例の右各条項を適用した第一審判決
を是認したが、右各条項は憲法二一条に違反すると主張する。
 よつて、右論旨を検討すると、前記大阪市屋外広告物条例は、屋外広告物法(昭
和二四年法律第一八九号)に基づいて制定されたもので、右法律と条例の両者相待
つて、大阪市における美観風致を維持し、および公衆に対する危害を防止するため
に、屋外広告物の表示の場所および方法ならびに屋外広告物を掲出する物件の設置
および維持について必要な規制をしているのであり、本件印刷物の貼付が所論のよ
うに営利と関係のないものであるとしても、右法律および条例の規制の対象とされ
ているものと解すべきところ(屋外広告物法一条、二条、大阪市屋外広告物条例一
条)、被告人らのした橋柱、電柱、電信柱にビラをはりつけた本件各所為のごとき
は、都市の美観風致を害するものとして規制の対象とされているものと認めるのを
相当とする。そして、国民の文化的生活の向上を目途とする憲法の下においては、
都市の美観風致を維持することは、公共の福祉を保持する所以であるから、この程
度の規制は、公共の福祉のため、表現の自由に対し許された必要且つ合理的な制限
と解することができる。従つて、所論の各禁止規定を憲法に違反するものというこ
とはできず(当裁判所昭和二四年(れ)第二五九一号同二五年九月二七日大法廷判
決、刑集四巻九号一七九九頁、昭和二八年(あ)第四〇三〇号同三〇年三月三〇日
大法廷判決、刑集九巻三号六三五頁、昭和二八年(あ)第三一四七号同三〇年四月
六日大法廷判決、刑集九巻四号八一九頁、昭和二八年(あ)第一七一三号同三二年
三月一三日大法廷判決、刑集一一巻三号九九七頁、昭和三七年(あ)第八九九号同
三九年一一月一八日大法廷判決、刑集一八巻九号五六一頁参照)、右と同趣旨に出
た原判決の判断は相当であつて、論旨は理由がない。
 その余の論旨は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて(記録を調べても、
被告人らの所論供述の任意性を疑うべき点は見出されない。)、刑訴法四〇五条の
上告理由にあたらない。
 よつて、刑訴法四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決す
る。
  昭和四三年一二月一八日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    岩   田       誠
            裁判官    下   村   三   郎
            裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    松   本   正   雄
            裁判官    飯   村   義   美

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