弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 弁護人山内公明の控訴理由は
 第一点
 一、 原判決には事実誤認がある。
 本件の喧嘩に付てAを喧嘩の現行犯と認定したのは事実誤認である。
 被告人Aは喧嘩をしてみないことは本件記録上明かである。然るに同人は喧嘩を
したと断じ現行犯と断じたのは正に事実誤認である。
 第二点
 一、 尚ほ同人を職務執行妨害と断じたのも事実誤認である。
 巡査Bが喧嘩の現場に到着した時、先ず喧嘩をしたのは何者か、何故喧嘩になつ
たか等の事につき一応関係者を問い正し、喧嘩をした当事者を明確にして然る後逮
捕すべき者は逮捕するという順序に出ずべき筈のものである。然るに同巡査は此の
挙に出でず直ちに同被告人を逮捕せんとしたことは同巡査の職務執行の範囲内の行
為と認めることができない。
 該範囲以外の行為である。
 被告人Aは同巡査がAのオーバーをつかみ連行せんとしたに対し、拒絶したのは
当然である。巡査の職務執行の範囲を逸脱した行動に対し拒絶するのは少しも違法
ではない。
 Aは拒むにも不拘同巡査は強行に連行せんとしたから同巡査とAとの格闘が発生
したのである。これは同巡査とAとの私闘である。決して職務執行妨害として断ず
べきでない、CはAがオーバーと靴を脱ぎB巡査に飛び付いて行つたと証言してい
るがこれは信を措けない、何となれば噛み付くといふ行為は通念上からすると弱い
者が強い考からの攻撃に対し防禦の手段がない時に行われることで攻撃手段に出た
場合などには考え得られない行為である。さればAから先きに攻撃的に出たという
証言は信を措けない。
 第三点
 一、 三ケ月カという刑は重きに失する。
 前述のようにAは喧嘩をして居らぬ。而してB巡査外一名のもみ合いは私闘であ
る。原判決はAがB外一名に噛みついて傷害を与えたと認定しているが、Aも同巡
査等からあごをしたたかなぐられて舌を噛み切つている。されば傷害もお互であつ
てAのみを責めるわけには行かない。
 Aが前科があるとは云うものの青少年を更生せしめる上から再度の執行猶予を許
す法律案が目下議会に提出せられている今日であるから前科の点を断罪の種にとる
のは酷である。
 同人は目下大へんに悔悟して居ります。而して本年三月頃からやつと職業にあり
ついて真面目に働いて居ります。よつて何卒もう一度御考え直しを賜らんことを御
願い申上げます。
 というのである。
 弁護人の論旨第一、二点について。
 原判決摘示事実に引用の証拠を対照吟味すれば、次の関係事実が認められる。即
ち被告人はDと共に判示日時判示Eに立寄つた際折柄同所で飲酒していたFに対
し、ビールを飲ませよと要求したが、同人がこれを拒絶したので、DがF連れ出し
の口実を設けた上三人がEを出たが、同亭の女給Cは被告人等三名の言動を怪しみ
喧嘩でもするのではないかと思い、外へ出て被告人等三名の動静を見ていたとこ
ろ、三名はその附近で何か争つた後Dはオーバー、マフラを脱いでFの肩を突いた
り、足をかけて投げ付けたりし、被告人はその間Dが脱いだオーバー等を持つてそ
の傍で右の様子を見て居り、更にFに対しDに謝れと要求したりなどしたので、C
は附近の交番所へ行き私の店から出たお客が喧嘩していると届けた。折柄同交番所
に巡視に来ていた判示B巡査部長がこれを聞き、現場へ馳せつけたところ、かんに
んして呉れとの声が聞えて一人の男(F)が倒れて居り、二人の男(被告人とD)
が立つて居り、誰が殴られたのかと聴くと、Cがこの人ですと云つてFを指したの
で、同巡査部長は一応事情を聴くため被告人等三名に交番所までの同行を求め、両
手を開いて三名を押すようにした。
 すると被告人は何もしていないと云つたが、Dはその場から逃げ出じたので、同
巡査部長は被告人とDとを暴行罪の現行犯と思料し、逮捕しようとして被告人のオ
ーバーを掴んだところ、被告人はどうしても連れて行くのか、来るなら来いと云
い、オーバーと靴を脱いだ上矢庭に同巡査部長に飛び付き、路上に倒して組み付き
判示の通りの暴行、傷害を加えたものであることが認められる。
 これによればFに対し直接暴行を加えたのはDであつて、被告人が暴行したとの
確証はない。即ち被告人は客観的には暴行罪の現行犯人ではなかつたのであるが、
B巡査部長はCの申告に基き判つた被告人がそれまでDと行動を共にして居たこと
や、Dの犯行当時その現場に居合せていたこと等四囲の状況よりして、被告人もD
とともに暴行罪の共犯で、しかも現行犯人であると判断し、被告人を逮捕しようと
したものであることが明らかである。
 <要旨>さて刑法第九十五条所定の公務員の職務の執行は適法なることを要するこ
と勿論であるが、その適法の標準については学説の岐れるところである。し
かしいやしくも公務員がその与えられたる職務権限に属する事項に関し、その具体
的な執行に際し、これが真実適法な職務なりと信じ、その職務執行の意思の下に、
演令に於て定むる方式を遵守して為したる所為なる以上は、たとえ事実の錯誤に基
き当該の特定職務の執行に必要な条件を具備しなかつた場合といえども、その条件
を具備したものと信ずることが社会通念上一般に認容せられ、公務員の適法な行為
として認め得られるときは、これを適法な職務執行の範囲に属する行為となすに何
等の妨げはない。蓋し公務員がその職務を行うにあたりては、その抽象的職務権限
に属する事項なる限り、箇々の場合に於てその職務を執行するに必要な条件たる具
体的事実の存否、法規の解釈適用を決定する権能があるのであるから、その具体的
事実ありと信じてなした場合に於ては、たとえこの裁量判断が客観的事実に符合し
ないところがあつても、一般の見解上これが公務員の職務の執行行為と見られるも
のは、裁判又は行政処分により取消され又は無効とせられない以上は、一応その行
為としての効力を発生するものであることからしても、これを以て公務員の職務執
行行為の範囲に属しないものということはできないからである。(大審院大正七年
五月一四日第一刑事部判決、判決抄録七六号九八三七頁、判決録二四輯六〇五頁。
昭和七年三月二四日第一刑事部判決判例集一一巻刑事二九六頁参照)
 飜つて本件を検討するに前叙の如く、客観的には被告人は暴行罪の現行犯人でな
かつたものであり、現行犯人たる要件を具備する者でなけれは現行犯逮捕のできな
いこと勿論であるが、右B巡査部長は警察職員として抽象的に現行犯人逮捕の職務
権限を有し、法令上現行犯人は逮捕状なくして逮捕できるのであつて、同巡査部長
はこの権限に基き、被告人を現行犯人と判断して逮捕せんとしたものであり、且被
告人を現行犯人と判断したことは前説示の状況よりすれば、何人がその地位に立つ
も同一に判断すべき状況のものであつたとして許容せらるべきものと認められるか
ら、同巡査部長の行為は適法なる職務執行の範囲に該当するものというべくこれに
対し暴行を加えた被告人の行為は公務執行妨害罪を成立すること論がない。
 而して原判決引用の証人Cの原審に於ける証言を措信できないものとする何等の
資料もなく、その他記録に徴するも原判決に事実の誤認はないから、本論旨は理由
がない。
 同三点について。
 しかし記録を精査し所論を考慮しながら案ずるに、本件犯行の態様被告人の前科
経歴その他各般の情状に徴すれば、原判決の科刑は必ずしも重いものとは考えられ
ないから、本論旨も理由がない。
 よつて刑事訴訟法第三百九十六条により主文の通り判決したのである。
 (裁判長判事 岡利裕 判事 国政真男 判事 石丸弘衛)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛