弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決の被上告人ら勝訴部分中、得べかりし利益の損害賠償請求に関す
る部分を各破棄する。
     右破棄にかかる部分について、本件を広島高等裁判所岡山支部に差し戻
す。
     上告人のその余の上告を棄却する。
     本件附帯上告を却下する。
     第三項の部分に関する上告費用は上告人、附帯上告費用は附帯上告人ら
の負担とする。
         理    由
 上告代理人D名義、同小坂重吉の上告理由第一点について。
 企業主が生命もしくは身体を侵害されたため、その企業に従事することができな
くなつたことによつて生ずる財産上の損害額は、原則として、企業収益中に占める
企業主の労務その他企業に対する個人的寄与に基づく収益部分の割合によつて算定
すべきであり、企業主の死亡により廃業のやむなきに至つた場合等特段の事情の存
しないかぎり、企業主生存中の従前の収益の全部が企業主の右労務等によつてのみ
取得されていたと見ることはできない。したがつて、企業主の死亡にかかわらず企
業そのものが存続し、収益をあげているときは、従前の収益の全部が企業主の右労
務等によつてのみ取得されたものではないと推定するのが相当である。
 ところで、原審の確定した事実によれば、Eの営業収益額は昭和二七年から同三
一年までの五年間の平均で年間九七八、〇四四円であり、同人死亡後その営業を承
継した被上告人らがあげた同三三年度の営業収益は二〇八、三一八円であるという
のである。したがつて、被上告人らのあげた同三四年度以降の営業収益が右同三三
年度の営業収益と同額であるとすれば、特段の事情のないかぎり、右説示に照らし
て、Eが生命を侵害されて企業に従事することができなくなつたことによつて生ず
る昭和三三年度以降の一年あたりの財産上の損害額は右九七八、〇四四円から二〇
八、三一八円を差し引いた額であると推定するのが相当である。しかるに、原判決
は右損害額の算定の基準として、なんら特段の事情を示すことなく、Eが従前取得
していた収益全額をもつてすべきものとしているのである。しからば、原判決には、
判決に影響を及ぼすことの明らかな法令の違背および被上告人らの同三四年度以降
の営業収益について審理を尽さない違法があるものというべく、論旨はこの点にお
いて理由があるに帰する。原判決はこの点に関して破棄を免れない。
 同上告理由第二点について。
 原判決は、Eの余命年数、出生年月日、職業等の事情を総合し、その稼働年数は
本件事故の時より起算して二二年間であると判断したのであり、右判断は是認でき
る。原判決には所論の違法はない。論旨は採用できない。
 同第三点について。
 不法行為による慰藉料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明しなくても、
相続の対象となることは当裁判所の判例とするところである(最高裁判所昭和四二
年一一月一日大法廷判決、民集二一巻九号二二四九頁)。ところで、原審は、被上
告人らの固有の慰藉料請求につき各二〇万円づつ認めたほかに、被害者の慰藉料も
同人が生前に放棄したと認むべき格別の事情も認められない本件においては、当然
相続の対象となりうるものと解するのを相当とするとして、Eの精神的損害二〇万
円の賠償請求権が被上告人らに相続されたと判断したものであることは、原判文上
明らかである。したがつて、これと異なる見解に立つ所論は採用のかぎりでない。
 同第四点について。
 本件事故の状況について原判決およびその引用する第一審判決が確定した事実関
係のもとにおいて、Fの過失が重要な原因となつて本件事故が発生した旨の原審の
認定は首肯することができ、右認定を前提として、被害者たるEの過失は判示の割
合において斟酌すべきものとした原審の判断は相当であり、原判決には所論の違法
はない。論旨は採用できない。
 附帯上告について。
 本件附帯上告状によつては、附帯上告が上告理由と同一の理由に基づくものであ
るかどうか明らかでないが、かりに同一の理由に基づくとしても、附帯上告は当審
の口頭弁論終結時までに提起されなければならないものであるところ、右附帯上告
状が当裁判所に提出されたのは、口頭弁論終結後の昭和四三年六月二六日であるこ
と記録上明らかである。そうとすれば、本件附帯上告は不適法であり、却下を免れ
ないものといわなければならない。
 よつて、原判決の被上告人ら勝訴部分中得べかりし利益の損害賠償請求に関する
部分を破棄し、この点につき更に審理を尽させるため、右の点に関する本件を原審
に差し戻すこととし、民訴法四〇七条一項、三九六条、三八四条、三九九条の三、
九五条、八九条、九三条に従い右上告理由書の上告理由第三点に対する慰藉料請求
権の相続についての裁判官色川幸太郎の反対意見があるほか、裁判官全員一致で、
主文のとおり判決する。
 裁判官色川幸太郎の反対意見は、次のとおりである。
 本件についていえば、被害者Eが生前、本件事故による自己の精神的損害の賠償
請求権を行使したとすれば、該請求権は通常の金銭債権と同様に被上告人らに相続
されるが、そうでないかぎり、被上告人らは右損害賠償請求権を相続しないと考え
るべきであり、その詳細は最高裁判所昭和三八年(オ)第一四〇八号、昭和四二年
一一月一日大法廷判決、民集二一巻九号二二六二頁以下に記載のとおりであるので、
ここにそれを引用する。そうとすれば、Eの右損害賠償請求権が当然被上告人らに
相続されたとした原判決には、審理不尽、理由不備、理由そごの違法があるものと
いわなければならない。したがつて、原判決はこの点において破棄を免れないもの
と考える。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外
            裁判官    色   川   幸 太 郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛