弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主       文
      被告人を禁錮1年4月に処する。
      この裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予する。
      訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理       由
(罪となるべき事実)
 被告人は,平成16年1月26日午前10時20分ころ,業務として普通乗用自
動車を運転し,神戸市a区b町c丁目d番e号先の信号機による交通整理の行われ
ていない交差点を北から西に向かい右折進行するに当たり,同交差点を横断する歩
行者の有無に留意し,その安全を確認しながら進行すべき業務上の注意義務がある
のにこれを怠り,交通閑散に気を許し,横断歩行者はいないものと軽信した上,自
車右側の駐車場にいた知人に気を取られ,同交差点を横断する歩行者の有無に留意
せず,その安全確認不十分のまま,漫然時速約5キロメートルで右折進行した過失
により,折から,同交差点西詰を北から南に向かい横断歩行中のA(当時70歳)
に気付かず,同人に自車右側面前部を衝突させて,同人を路上に転倒させ,よっ
て,同人に回復の困難な遷延性意識障害の後遺症を伴う急性硬膜下血種,脳挫傷性
脳内出血等の傷害を負わせたものである。
(証拠の標目)-かっこ内は検察官請求証拠甲乙の番号
 省 略
(補足説明)
1 弁護人は,被害者(A)は本件交差点西詰を北から南に向かい横断歩行中では
なく,西から東に向かい歩行中であったと主張し,被告人も公判廷においては,こ
れに沿う供述をする。
2 しかしながら,被害者が本件交差点西詰を北から南に向かい横断歩行中であっ
たことは,以下に述べるところからして明らかである。
 前掲各証拠によれば,被告人が,普通乗用自動車を運転して,本件交差点を北
から西に向かい時速約5キロメートルで右折進行し,自車右側面前部(フェンダ
ー)を被害者に衝突させ,路上に転倒させたこと,被害者は,右頭頂部に陥没を伴
う骨折をし,急性硬膜下血種,脳挫傷性脳内出血の傷害を負ったほか,右顔面及び
右腸骨綾部分(右腰)にいずれも擦過傷を負ったこと,被害者が本件当時履いてい
た靴には,その右足外側部分に擦過痕が残っていたことが間違いのない事実として
認められるところ,これらの事実からすると,被害者は,被告人運転車両に身体の
左側から衝突され,右側に転倒したことが容易に推認されるから,被告人運転車両
の進行方向からすると,被害者が北から南に向かい横断歩行中であったこともまた
推認されるというべきである。
3 弁護人は,被害者が北から南に向かい横断歩行していれば,身体の左側に傷害
を負うはずであるが,被害者の負った傷害の部位が右側に集中しているのは,被告
人の上記供述に沿う事実である旨主張する。 しかし,被告人運転車両の被害者と
の衝突時の速度からして,衝突それ自体が被害者の身体に傷を負わせる可能性は乏
しいと考えられること,被害者の右頭頂部及び右顔面の上記傷害は,被告人運転車
両との衝突自体ではなく,衝突後路上に転倒した際に負ったものであることが明ら
かであるし,右腸骨綾部分(右腰)の上記傷害も同様に考えるのが相当であるこ
と,被害者の靴の右足外側部分の擦過痕も,被告人運転車両との衝突後路上に転倒
するときに付いたものと考えられることからすると,被害者が北から南に向かい横
断歩行していれば,身体の左側に傷害を負うはずであるとはいえないだけでなく,
むしろ,前記のとおり,被害者は,身体の左側に衝突されたことから,身体の右側
を下にして転倒し,右側に傷害を負ったと考えるのが合理的である。また,被告人
の上記供述は,本件事故直後に被害者の顔が正面に見えたことだけを理由とするも
のであって,被害者が衝突の直前ないし直後に驚いて被告人運転車両を見たという
のも十分あり得ることからすれば,被害者が西から東に向かって歩行中であったと
するには,もともと根拠の薄いものであるのに加え,右折進行中の被告人運転車両
の右側面前部が西から東に向かい歩行中の被害者と衝突したとすれば,被害者は身
体の背部あるいは左側を下にして路上に転倒するのが普通と考えられ,被害者の上
記負傷部位や靴の擦過痕とは符合しないのであるから,その点でも信用性の乏しい
ものであることがよりいっそう明らかである。
 弁護人の上記主張は採用することができない。
4 なお,被害者は,本件事故前に,神戸市f区g町h丁目i番j号所在の自宅か
ら,本件交差点をはさんでほぼ真南に位置する同市a区k町l丁目m‐n所在の訪
問介護ステーションBに行き,母親の介護保険に関する資料をもらうなどしていた
ことが認められるが,被害者が上記Bから上記自宅に帰ろうとして,本件交差点を
南から北に向かい横断歩行していたとすれば,右折進行中の被告人運転車両の右側
面前部が被害者に衝突することはあり得ないこと,また,上記Bと上記自宅との位
置関係からして,被害者が帰宅するのに本件交差点を西から東に向かい歩行すると
は考え難い上,仮に,被害者が西から東に向かい歩行していたとしても,本件交差
点では,北西にある歩道の方に行っていたはずであり,本件衝突地点の方に行くと
は考え難いこと,そして,被害者が何らかの理由でもう一度上記Bに戻ろうとして
いたこともあり得ると考えられることなどからすると,被害者が本件事故前に既に
上記Bに行っていたことをもって,被告人の上記供述の信用性を高めることにはな
らないし,上記認定に疑いを容れるにも至らない。
5 以上のとおりであって,本件事故当時,被害者が本件交差点西詰を北から南に
向かい横断歩行中であったことは,これを十分認めることができる。
(法令の適用)
 省 略
(量刑の理由)
 本件は,被告人が,普通乗用自動車を運転中,交差点を横断する歩行者の有無に
留意せず,その安全確認不十分のまま,右折進行した過失により,自車を横断歩行
中の被害者に衝突転倒させ,傷害を負わせたという業務上過失傷害の事案である
が,被告人は,進路の安全確認という自動車運転者にとって基本的かつ重要な注意
義務を怠ったものであって,その過失の程度は高いこと,被告人は,そのため落ち
度のない被害者に対し,回復の困難な遷延性意識障害の後遺症を伴う急性硬膜下血
種,脳挫傷性脳内出血等の傷害を負わせたものであって,生じた結果は重大である
ことなどを併せ考えると,被告人の刑事責任は重いというべきである。
 また,被告人は,公判段階になって,被害者が西から東に向けて歩行してきたな
どと,不合理な供述をして,事故の責任の一部を被害者に転嫁し,自己の責任を軽
減しようとしていることも,量刑上看過できないところである。
しかしながら,被告人運転車両がそう激しく被害者に衝突したわけではなく,被
害者の傷害の結果が重大なものになったのには,不運な面もあること,被告人が本
件を一応は反省していること,被告人運転車両には対人賠償無制限の任意保険が付
けられていて,そこからこれまでに治療費等の支払がなされており,現時点では示
談が未成立ではあるものの,いずれ相当額の賠償がなされるであろうこと,被告人
には禁錮以上の刑に処せられた前科がないことなどの,被告人のために酌むべき事
情もあるので,今回は,被告人を主文の刑に処した上,その刑の執行を猶予するこ
ととする。
(検察官の科刑意見 禁錮1年4月)
よって,主文のとおり判決する。
    平成17年1月14日
      神戸地方裁判所第2刑事部
          裁 判 官 森 岡 安 廣

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