弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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              主          文
         本件控訴を棄却する。
         当審における未決勾留日数中70日を原判決の刑に算入する。
              理          由
 本件控訴の趣意は,弁護人増田定義作成の控訴趣意書に記載されているとおりで
あるから,これを引用するが,論旨は,要するに,被告人を懲役7年に処した原判
決の量刑は,不当に重い,というのである。
 そこで,検討すると,本件は,被告人が,平成10年2月7日に犯した交通事件
原票の供述書欄などの書面に関する有印私文書偽造・同行使2件(原判示第1の
1,2),平成11年9月12日に犯した無免許運転及び同様の有印私文書偽造・
同行使2件(第2の1,2の(1),(2)),平成14年4月18日に犯した赤色信号
無視3件及び赤色信号を無視して時速約60ないし70キロメートルの速度で普通
乗用自動車を運転して交差点に進入し,交差してきた車両と衝突した結果,被告人
運転車両の同乗者1名を死亡させ,同乗者2名に重傷を負わせた危険運転致死傷並
びにその際の無免許運転・酒気帯び運転(第3の1ないし5)の事案である(な
お,弁護人は,危険運転致死傷の犯行の際,被告人運転車両の速度は,時速60な
いし70キロメートルも出ていなかったと主張し,被告人も,当審公判廷におい
て,これに沿う供述をしているが,供述の変遷に合理的な理由はなく,関係証拠を
検討しても,原判決の事実認定に誤りはない。)。
 第3の各犯行は,交通違反を重ねて運転免許の取消処分を受けていた被告人が,
飲酒した後,男性1名及び女性2名を同乗させて自動車を運転し,連続する交差点
3か所の赤色信号をいずれも無視して進行し,4番目の交差点では赤色信号で停車
していた先行車両を避けるために対向車線にはみ出して加速した上,赤色信号を無
視して交差点に進入し,青色信号に従って進行してきた車両と衝突したのであっ
て,交通安全に対する配慮を著しく欠いた無謀運転というほかなく,その運転態度
は極めて悪質である。事故の結果も誠に重大であり,妻と幼い子供を残して即死し
た男性の無念さや遺族の悲しみは計り知れない。また,被害に遭った女性のうち1
名は,2か月間の入院加療を要する外傷性くも膜下出血,脳挫傷(びまん性軸索損
傷)及び頭蓋底骨折等の傷害を負い,事故後2週間近く意識不明の状態が続き,意
識を回復した後も知的能力が低下した状態にあって,脳に障害が残るおそれがあ
り,もう1名の女性は,約2年4か月間の加療を要する症候性てんかんを伴う脳挫
傷(びまん性軸索損傷)及び視野狭窄等の後遺症を伴う外傷性左眼視神経症等の傷
害を負っており,本件事故により被った身体的,精神的苦痛はいずれも甚大であ
り,今後の生活に及ぼす影響は大きく,家族の心痛も察するに余りある。
 被告人運転車両は任意保険に加入していなかったため,自賠責保険により損害の
一部が填補されるほかは,被告人側から賠償することは困難な状況にある。当初,
被告人は,被害者の家族に対して,自己保身を図るために不利な事情を隠して伝え
るなど,誠意ある対応をしていなかったのであって,被害者側の感情が甚だ厳しい
のも無理もない。
 さらに,無免許運転や酒気帯び運転は常習的犯行である上,被告人は,交通違反
について取調べを受けた際,無免許運転の責任を免れるため,兄の名前を詐称して
第1及び第2の2の各犯行に及んでおり,その経緯や動機に酌むべき事情はなく,
交通法規に対する意識の低下が著しいといわざるを得ない。
 したがって,本件の犯情はよくなく,被告人の刑事責任はかなり重いというべき
である。
 そうすると,被害者3名は,被告人と一緒に飲酒しており,飲酒運転であること
を知りながら被告人が運転する自動車に同乗していること,被告人は,事実を認
め,できるだけの弁償をすると述べ,謝罪文を送付するなど反省の態度を示してい
ること(この点に関する原判決の説示は,措辞が適切でない。),懲役刑の前科は
ないこと,とびの仕事をしていたこと,母や兄が被害者の葬儀に出席したり,病院
へお見舞いに行ったりし,被告人の更生や被害弁償のため協力すると申し出ている
ことなど被告人のために酌むべき諸事情を十分考慮してみても,原判決の量刑が,
不当に重いとはいえず,原判決後の被告人の反省状況を併せ考慮してみても,上記
判断は左右されない。
 論旨は理由がない。
(なお,原判決が,法令の適用の項において,判示第3の4の所為のうち,危険運
転致死の点について,「刑法208条の2第2項後段,1項後段」と記載した部分
は,「刑法208条の2第2項後段,1項前段」の,科刑上一罪の処理のうち,判
示第1及び判示第2の2の各罪について,「各偽造私文書行使の罪の刑で処断す
る。」と記載した部分は,「各偽造有印私文書行使の罪の刑で処断する。」の,没
収について,「刑法19条1項1号,2項」と記載した部分は,「刑法19条1項
1号,2項本文」のそれぞれ誤記と認める。)
 よって,刑訴法396条により本件控訴を棄却し,刑法21条を適用して当審に
おける未決勾留日数中70日を原判決の刑に算入し,当審における訴訟費用につい
ては,刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととし,主
文のとおり判決する。
  平成15年4月1日
    広島高等裁判所第一部
        裁判長裁判官   久   保   眞   人
           裁判官   芦   髙       源
 
           裁判官   島   田       一

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