弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

          主       文
   原判決を破棄する。
   被告人を懲役12年及び罰金500万円に処する。
   原審における未決勾留日数中750日をその懲役刑に算入する。
   その罰金を完納することができないときは,金1万円を1日に換算した期
間被告人を労役場に留置する。
          理       由
第1 本件控訴の趣意は,弁護人吾郷計宜作成の控訴趣意書及び意見書記載のと
おりであるからこれを引用する。
第2 所論は,被告人を懲役14年及び罰金500万円に処した原判決の量刑は
重きに失し,被告人に対しては懲役5年ないし6年程度の判決が言い渡されるべ
きである,というのである。
   そこで,記録を調査し,当審における事実取調べの結果をも併せ検討する
に,覚せい剤の密輸入という本件の罪質,大規模,計画的かつ組織的な犯行であ
るという本件の態様,輸入しようとした覚せい剤の量が約101㎏と極めて多量
であること,とりわけ,被告人は,本件貨物船A号の多数の乗務員らを本件犯行
に巻き込み,覚せい剤を隠した大型消火器2本の本件貨物船への積み替えにも自
ら立ち会い,本件貨物船の出航後はいち早く来日して,他の共犯者と連絡を取り
合いながら,日本での本件覚せい剤の受取り,保管について綿密な準備をし,本
件貨物船がa港に入港後も,同船に乗り込んで船長と打ち合わせをするなど,末
端価格にして約10億円(1グラム1万円として)にものぼる本件犯罪の遂行に
向けて主導的かつ中核的な役割を果たしていること等の事情を総合すると,被告
人の刑事責任は極めて重大である(なお,所論は,被告人は,本件の首謀者であ
るBに雇われ,その指示,命令を受けて本件犯罪に関与したにすぎない旨主張す
るが,Bが本件貨物船の乗組員らに対し,被告人をビッグボスと紹介するなどし
ていること,被告人は,2万米ドルの報酬での覚せい剤の密輸を一旦は拒絶した
C船長に対しもっともっと金を出す旨の動作をして密輸を説得するなどしている
ことに加え,前記のとおり被告人は本件犯行の多くの重要な部分に自ら積極的に
関与していること等の事実に照らすと,被告人が単にBの指示,命令により覚せ
い剤の密輸に向け行動していたとは断定し難い。)。
   そうすると,本件は覚せい剤取締法違反の点が未遂,関税法違反の点が予
備に止まり,幸いにして覚せい剤が社会に拡散すること自体は未然に防止された
ことなど被告人のために斟酌すべき事情を十分考慮しても,原判決の量刑は,そ
の宣告時においてみる限り,罰金額も含めて重きに過ぎて不当であるとまではい
えない。
   しかしながら,当審における事実取調べの結果によれば,被告人は,原審
では,犯行を否認し,本件貨物船に積み込んだ大型消火器2本の中に覚せい剤が
隠してあったことを全く知らなかったなどと主張して本件公訴事実を争っていた
が,原判決後,本件の重大性にあらためて気づき,当審においては一転して公訴
事実を認めるに至り,反省を深めていると考えられること,また,原判決後,D
協会に200万円,E協会に400万円の合計600万円の贖罪寄附をしている
こと,香港にいる被告人の妻が当公判廷に出廷し,遠い故郷から一日も早い被告
人の帰国を子供らとともに心から待っている旨証言していることが認められ,こ
れらの点も加え,あらためてその量刑を検討すると,現時点でなお原判決の量刑
を維持することは酷に過ぎ,これを破棄しなければ明らかに正義に反するものと
いわねばならない。
第3 よって,刑事訴訟法397条2項により原判決を破棄し,同法400条た
だし書に従い,直ちに当裁判所において自判することとし,原判決が適法に認定
した事実に原判決挙示の各法令を適用し,その刑期及び金額の範囲内で被告人を
懲役12年及び罰金500万円に処し,刑法21条により原審における未決勾留
日数中750日をその懲役刑に算入し,その罰金を完納することができないとき
は,同法18条により金1万円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する
こととし,なお原審及び当審における訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただ
し書を適用してこれを被告人に負担させないこととして,主文のとおり判決す
る。
    平成15年3月24日
      広島高等裁判所松江支部
          裁判長裁判官     宮   本   定   雄
             裁判官     吉   波   佳   希
             裁判官     植   屋   伸   一

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛