弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 弁護人長島忠信、同小林賢治の上告趣意は末尾に添附した別紙書面記載の通りで
ある。
 弁護人長島忠信上告趣意第一点について。
 原判決において証拠に挙示した原審公判における被告人Aの供述を調べて見るに、
裁判長は被告人Aに対し第一審判決書摘示の犯罪事実中第二事実中の(二)を読聞
かせたところ、被告人Aは其通り相違ありませんと答えている。
 裁判長はさらに、これはどの様な品物だと思つたかとたづねたのに対しAは、初
めは会社の払下の品物だと思いましたが九月六日の夕方トラツクに積んでいるBC
がうるさい品物だからと言う様なことを言つていたので、大体はどの様な品物かが
判りましたと述べている。右Aの供述は明確な言葉で賍物であることが判つたと述
べているのではないがしかし裁判長の訊問の全趣旨に鑑みれば被告人Aの右供述は、
同人において判示物件は賍物であることの情を知つていた旨を述べたものと認め得
る。もつとも論旨は、判示物件は取引が終つてそれを自動車で運搬する際はじめて
所謂うるさい品物と判つたのであるから賍物故買の事後の幇助行為と見なければな
らないと主張するが、元来刑法が賍物に関する行為を犯罪として処罰するのは、そ
の行為がその物に対する被害者の権利の実行を不能ならしめるか或は困難ならしめ
る為めであるから、現実に賍物の移転のある際に賍物たるの情を知つて居れば賍物
罪は成立するものといわなければならない。大審院も右に述べたと同様の判例を示
して居り、今之れを改める必要は認められない(昭和六年(れ)第一一四九号同六
年一一月九日大審院判決参照)さすれば所論被告人Aの供述により明らかなように、
被告人Aは判示物件をトラツクに積んでいる際所謂うるさい品物であることを知つ
たのであるから、被告人Aが本件賍物故買罪の共同正犯としての責を免れ得ないも
のといわなければならない従つて原判決は所論の如き理由不備の違法はない。所論
各証拠は原判決において事実認定の証拠としたものではないばかりでなく、かかる
証拠があつたとしても被告人Aの前記供述により、判示物件が賍物であることの情
を知つていたものと認定するさまたげとなるものではない。論旨は理由がない。
 同第二点について。
 原判決の確定した事実は、被告人AはD外一名と共謀の上判示日時頃判示場所に
おいてEから、人造バター五〇ポンド入一八箱を盗賍品であることの情を知りなが
ら、代金合計七万二千円で買受けて賍物故買をしたというのである。之に対し論旨
は被告人Aの所為は賍物故買ではなく、賍物故買の事後の幇助にすぎないと主張す
る。しかし原判決挙示の証拠によれば原審の認定は相当であつて何等法則に違背す
るところはない。論旨は結局独自の見解に基いて原審の事実誤認を主張することに
帰し適法の上告理由とはならない。そして原判決は被告人の所為は所論の如き事後
幇助と認定しないのであるから、共同正犯として処罰したことは当然であつて、何
等の違法はない。論旨は理由がない。
 弁護人小林賢治の上告趣意第一点について。
 しかし公判調書の記載とこれに引用された第一審判決の事実摘示とによつて、被
告人が公判廷で判示同趣旨の供述をしたことが明らかな場合、判決で其供述を証拠
とするには右引用の第一審判決を特に掲記する必要がないことは、当裁判所判例の
示すところである。(昭和二三年(れ)第一二七七号同年一二月一八日第二小法廷
判決参照)従つて原判決において所論被告人の原審公判廷における供述を証拠に挙
示しただけで、所論第一審判決書を証拠に挙示しないからとて採証法則の違背はな
く、また理由不備の違法もない、論旨は理由がない。
 同第二点について。
 本件記録を精査するに被告人等に対する公判請求書に公訴事実として「司法警察
官意見書記載の犯罪事実」と記載されているに拘わらず、右引用にかかる司法警察
官の意見書なるものは存在しないことは所論の通りである。しかし第一審公判調書
を調べて見るに、立会検事は司法警察官事件送致書記載の犯罪事実の通り公訴事実
を陳述した旨の記載があり、且判事も右事件送致書記載の犯罪事実に基いて被告人
を訊問していることを認め得るし、右事件送致書は本件記録中に現存している点に
鑑みれば、公判請求書に司法警察官意見書とあるは司法警察官事件送致書の誤記で
あることを認め得るものである。そして被告人等に対する右事件送致書中には明ら
かに被告人等の犯した犯罪事実の記載があるから、所論のように公訴手続は無効で
あるとはいい得ない。そして原審公判調書によれば、立会検事は第一審判決書記載
の摘示事実に基いて公訴事実を陳述していることは記録上明らかであるし、右公訴
事実と原判決が認定した事実とを比照すれば、原審において審判の請求を受けない
事実について有罪を言渡したものでないことは明らかであるから、論旨は理由がな
い。
 よつて旧刑事訴訟法第四四六条により主文の通り判決する。
 以上は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 田中巳代治関与
  昭和二四年一一月一日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛