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平成22年10月8日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成21年(行ウ)第540号手続却下処分等取消請求事件
口頭弁論終結日平成22年6月9日
判決
ノルウェー王国オスロ<以下略>
原告インヴィトロジェンダイナルエーエス
同訴訟代理人弁護士井坂光明
同補佐人弁理士奥山尚一
有原幸一
松島鉄男
河村英文
深川英里
東京都千代田区<以下略>
被告国
同訴訟代理人弁護士大西達夫
同指定代理人下田一博
市川勉
天道正和
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
3この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
第1請求
1特許庁長官が,意願2008−006212について,平成20年8月29
日にした,同年6月9日付け提出の優先権証明書提出書に係る手続に対する却
下処分を取り消す。
2特許庁長官が,上記却下処分に対する平成20年10月31日付け異議申立
てについて,平成21年4月27日にした,異議申立てを棄却する旨の決定を
取り消す。
第2事案の概要
Office1本件は,「域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠)」(
,以下「OHIM」という。)出願を基礎forHarmonizationintheInternalMarket
とするパリ条約による優先権主張をして我が国の特許庁に意匠登録出願をした
原告が,その優先権証明書提出書に係る手続において,意匠法15条1項,特
許法43条2項所定の優先権証明書(原本)の提出をしなかったとして,意匠
法68条2項,特許法18条の2第1項の規定により同手続を却下する旨の処
分を受けたが,同処分は意匠法68条2項,特許法18条の2の規定に反する
違法なものであると主張して,その取消しを求めるとともに,同処分に対する
異議申立てを棄却した決定についても,手続の補正(優先権証明書の提出)に
より瑕疵が治癒されたことを考慮しない違法なものであると主張して,その取
消しを求める事案である。
2争いのない事実
(1)原告は,平成20年3月12日,意匠に係る物品を「マグネティックセパ
レーションラック」とする意匠登録出願(意願2008−006212。以
下「本件出願」という。)をし,それと同時に,パリ条約による優先権主張
(優先権主張の基礎とされる出願をした国「OHIM」,出願日「2007
年9月12日」,出願番号「000788799−0003」)をした。
(2)原告は,平成20年6月9日,本件出願における優先権主張の基礎となる
最初の出願であると主張する登録共同体意匠(000788Designnumber
799−0003)の出願について,OHIMの発行した認証謄本のうち表
紙を含む2枚分を複写(コピー)したもの及びその訳文を添付して,優先権
証明書提出書(以下「本件提出書」という。)を提出した(なお,意匠法1
5条1項,特許法43条2項の規定によれば,本件における優先権証明書の
提出期限は,平成20年6月12日である。)。
上記の複写(コピー)された書面には,本件出願の優先権の基礎となる出
願の登録日(出願日)が「2007年9月12日」であること,この基礎出
願の登録番号(出願番号)が「000788799−0003」であること,
この優先権証明書がOHIMによって発行されたものであることが記載され
ていたが,登録共同体意匠を記載した図面はなかった。
(3)特許庁長官は,平成20年7月7日(発送日は同月11日),本件提出書
に係る手続について,原告に対し,意匠法15条1項,特許法43条2項に
規定するパリ条約の同盟国の認証がある優先権証明書の添付がなく(本件提
出書に添付のものは,優先権証明書の表紙である出願の年月日等を記載した
書面等を複写したものであり,また,最初の出願に係る意匠出願の謄本も添
付されていない。),法令で定める要件を満たしていないため,却下すべき
ものと認められる旨通知するとともに,原告に弁明の機会を与えた(意匠法
68条2項,特許法18条の2第2項)。
これに対し,原告は,同年8月8日,特許庁長官に対し,「優先権証明書
の代わりに当該証明書の複写を提出してしまったことは,……補正の機会す
ら与えられないような法的瑕疵には該当しない」,「(本件提出書に係る手
続は)補正をすることが可能であり,……複写ではない優先権証明書を提出
する機会が与えられるべきである」などと記載した弁明書を提出するととも
に,優先権証明書の原本を直ちに提出することが可能であることを示すため
であるとして,同証明書(OHIMの発行した認証謄本)全部(4枚)の写
し(カラーコピー)を提出した。
(4)特許庁長官は,平成20年8月29日,本件提出書に係る手続について,
不適法なものであり(その理由は上記(3)前段のとおり),その補正をする
ことができないとして,意匠法68条2項,特許法18条の2第1項の規定
により,これを却下する処分(以下「本件処分」という。)をし,同処分書
は,同年9月2日,原告に送達された。
(5)原告は,平成20年10月31日,特許庁長官に対し,本件処分の取消し
を求めて,行政不服審査法に基づく異議申立て(以下「本件異議申立て」と
いう。)をした。
また,原告は,同年11月4日,特許庁長官に対し,本件提出書に係る手
続の補正として,本件出願における優先権主張の基礎となる最初の出願につ
いてOHIMが発行した認証謄本(優先権証明書の原本)とその訳文を提出
した。
(6)特許庁長官は,平成21年4月27日,本件異議申立てを棄却する旨の決
定(以下「本件異議決定」という。)をし,その決定書は,同月28日,原
告に送達された。
3争点
(1)本件処分の適法性
(2)本件異議決定の適法性
4争点に関する当事者の主張
(1)争点(1)(本件処分の適法性)について
ア原告
意匠法68条2項が準用する特許法18条の2第1項は,「特許庁長官
は,不適法な手続であって,その補正をすることができないものについて
は,その手続を却下するものとする。」と規定しているが,「その補正を
することができないもの」とは,手続の本質的部分が欠落しており,補正
を認めると手続の同一性が損なわれるようなものをいうと解すべきである。
どのような場合が手続の本質的部分の欠落に該当するかは,各手続の要件
を定めた条文の解釈によって定められることになるが,後記のとおり,特
許法18条の2,43条2項の規定の趣旨,方式審査便覧,裁判例,パリ
条約の規定,比較法的観点に照らしても,優先権証明書の原本の代わりに
写しを提出したことは「手続の本質的部分の欠落」に当たらず,補正を認
めても手続の同一性を損なうことになるとはいえない。
したがって,本件提出書に係る手続は補正可能であり,補正すべき旨を
命じることなく同手続を却下した本件処分は違法である。
なお,原告は,平成20年11月4日付けで本件提出書に係る手続補正
書(優先権証明書原本添付)を提出しており(前記2(5)),これによっ
て,本件提出書に係る手続の瑕疵は治癒され,当初に遡って適法なものと
なっている。原告は,本件処分の違法事由として,予備的に上記の点も主
張する。
(ア)特許法18条の2について
a方式審査便覧の記載
特許庁の方式審査便覧15.20(却下−1)「不適法な出願書類
等に係る手続の却下の取扱い」は,特許法18条の2第1項の規定に
より却下すべき場合として,「物件の提出を目的とする手続(優先権
証明書提出等)に物件が添付されていないとき」((16)ニ)を挙げて
いるが,本件提出書に係る手続は,優先権証明書の写しであることが
明らかな書面が添付されているのであるから,これには該当しない。
仮に,本件提出書に係る手続が形式的に上記の場合((16)ニ)に該
当するとしても,同便覧15.20(却下−1)は,①「基準の運用
に当たっては,当該出願書類等を総合的に検討し客観的に手続者の合
理的意思を判断するよう努めるものとする。」,②「形式的には以下
に掲げる却下事項に該当する場合であっても,個別的具体的な事例に
おいては,必要に応じた取扱いを行うことにより,関係法令の適正か
つ妥当な運用を図るものとする。」と定めているのであるから,一律
に手続を却下すべきではない。特に,本件のように期限が定められて
いる手続について,その期限経過後に当該手続を却下することは,出
願人に対して重大な不利益を与えるものであるから,この点を十分に
考慮する必要があるというべきである。そして,本件における具体的
事実関係を考慮すれば,原告が優先権証明書の原本を提出すべきとこ
ろ,誤って写しを提出してしまったこと(手続者の合理的意思)は客
観的に明らかであるから,補正が認められるべきである。
b裁判例
特許法第18条の2は,平成8年の特許法改正(平成8年法律第6
8号)により新設されたものであり,同改正前に行われていた不受理
処分を却下処分として規定上明確化したものであるから,不受理処分
に関する裁判例が判示するところは,却下処分についても同様に妥当
するものである。しかるところ,「請求人相違」という理由に基づい
て意見書及び手続補正書を不受理とした特許庁長官(被控訴人)の処
分について,東京高等裁判所昭和59年11月28日判決(判例時報
1148号141頁,判例タイムズ550号285頁)は,補正を命
ずることなく,請求人相違を理由に,意見書等提出期限経過後に右各
書面につき不受理処分をした各処分はいずれも違法として取消しを免
れないと判断している。
提出期限が定められているため,不受理(現行法では却下)処分が
されると出願人に重大な不利益を課するという点において,上記裁判
例の事案は本件と同様であり,その判示するところは,本件にも同様
に妥当するものである。
(イ)特許法43条2項について
a特許法43条2項は,優先権主張に係る基礎出願の事実及び内容を
証明する証明書の提出を要求しているが,これは,優先権主張(特許
法43条1項)だけでは国名と出願年月日しか特定されていないもの
について,具体的な出願及びその内容を特定し,かつ,これらを証明
することを目的とするものである。
b本件提出書に添付して提出された書類は,優先権証明書の表紙を含
む複写2枚と訳文2枚の合計4枚の書類であるが,上記複写2枚が提
出されたことによって,まず,優先権証明書が存在することが証明さ
れている。また,この複写には,本願の優先権の基礎となる出願の登
録日(出願日)が「2007年9月12日」であることと,この基礎
出願の登録番号(出願番号)が「000788799−0003」で
あることが明示されるとともに,この優先権証明書がOHIMによっ
て発行されたものであることも明示されている。
OHIMが,共同体意匠に関し,図面を掲載した公報をインターネ
ット上(<URL省略>)で一般に公開していることは周知の事実で
あり,基礎出願の図面に関しては,上記複写2枚が特許庁に受領され
た平成20年6月10日以降,上記番号「000788799−00
03」を使用して,OHIMのデータベース(RCD−ONLIN
E)から容易に閲覧可能な状態にあった。
以上のとおり,法定期間内に提出された書面によって,優先権証明
書の存在が裏付けられているとともに,基礎出願の出願日を確認する
ことができ,さらに,上記書面に記載された登録番号(出願番号)を
使用してOHIMのデータベースから基礎出願の図面を確認すること
が可能となっていたのであるから,特許法43条2項の規定によって
意図された優先権の確認は実質的に可能となっていた。
cなお,特許法43条5項は,我が国と優先権書類データを交換する
ことができる国にした出願に基づいて優先権を主張する場合に,優先
権書類の提出を省略できることを規定している。この規定からも明ら
かなように,特許法43条2項に規定される優先権証明書の提出は,
優先権の存在が確認可能ならば,手続の簡素化のために省略され得る
性質のものである。事実,特許出願に関して,大韓民国及び欧州特許
庁にした出願に基づいて優先権主張をする場合には,優先権証明書の
提出は省略でき,平成19年7月からは,アメリカ合衆国にした出願
に基づく優先権主張においても優先権証明書の提出が省略可能になっ
ている。また,平成20年特許法等改正によって,出願人の利便性向
上及び行政処理の効率化の観点から,優先権書類の電子的交換を世界
的に実現するため,優先権書類を交換できる対象国を拡大する改正が
行われ,改正後は,第一国以外の国や国際機関(WIPO等)で電子
化されたデータの受け入れも可能となり,優先権証明書の提出につい
ては,より一層省略される方向へと向かっている。
意匠法においては,特許法43条5項を準用していないが,優先権
の存在が確認可能であれば,手続の簡素化のために優先権証明書の提
出が省略され得る性質のものであるということについて,特許出願と
意匠出願との間に差異はない。そもそも,優先権主張の申立て自体は
第三者に重大な影響があるとしても,優先権証明書の提出に関連する
手続的な瑕疵が,第三者に格別の不利益を及ぼすといった弊害は考え
られない。すなわち,優先権主張自体が適法に行われていれば,それ
によって,優先権主張の基礎出願の出願日を前提として出願の登録要
件等が判断されることが十分予測されるのであるから,本件のような
場合に補正を認めたとしても,第三者に看過し得ない不測の不利益を
及ぼすものではない。また,優先権証明書の提出期限を設けているの
は,審査が遅延しないようにするためと考えられるが,本件について
補正を認めたとしても審査に不当な遅延をもたらすものでもない。
したがって,優先権証明書の提出手続について殊更厳格な解釈をす
るのは妥当ではない。
(ウ)パリ条約4条D項について
パリ条約4条D(1)に基づく特許法43条1項の優先権主張自体は,
その有無が第三者の権利に重大な影響を及ぼすため,基礎となる出願の
年月日及び国名を明示した申立てをしなければならないこと,その申立
てがされるかどうかが不明で権利関係が不確定な状態が長期間継続する
と支障が大きいことから,各同盟国が申立ての期限を国内法において規
定すべきことを,各同盟国の条約上の義務として規定したものである。
したがって,優先権主張の申立て自体の要件の充足については厳格に解
釈するのが条約の趣旨にもかなうものである。
これに対し,特許法43条2項が規定する優先権証明書の提出は,パ
リ条約上の義務を規定したものではなく,パリ条約が各同盟国に手続上
要求することを許容しているものにすぎない。そして,パリ条約4条D
(3)は,そのような手続を要求する場合においても,書類の公証を要求
してはならないこと,3か月の期間内は提出のために有償としてはなら
ないことという制限を各同盟国に課し,出願人に過大な負担がかからな
いようにして,優先権主張を行う出願人を保護する趣旨を規定したもの
と解される。
パリ条約は,各同盟国の国民の工業所有権の保護を目的として同盟を
形成し,その保護のための各種規定を置くものであるが,その最も重要
な規定の一つが優先権に関する規定である。こうしたパリ条約の目的及
び優先権主張に関する規定の趣旨からすれば,優先権証明書の提出に関
する手続については,できる限り出願人に有利となる解釈が採用される
べきであり,重大な瑕疵(優先権証明書の添付が全くない単なる提出書
だけが提出された場合等)があった場合に優先権の喪失を国内法で規定
することが条約違反にならないとしても,本件のように補正を認めるべ
き事情があるにかかわらず,それを認めないような解釈,運用を行うこ
とは,上記パリ条約の趣旨に反するものというべきである。
(エ)比較法的観点
比較法的観点からしても,優先権証明書の提出手続について,本件の
ような事情の下においても補正を許さないような厳格な扱いをすること
は妥当でない。
すなわち,パリ条約の同盟国等における優先権証明書に関する要件を
みると,アメリカ合衆国においては,優先権証明書の提出は必要である
が,期間制限は設けられておらず,特許付与に至るまで提出することが
可能である。
また,優先権証明書の提出について期間制限を設けている立法例にお
いても,例えば,特許協力条約に基づく規則(以下「PCT規則」とい
う。)第17規則17.1(c)は,期間内に優先権書類の提出がない場合
であっても,出願人に優先権書類の提出の機会を与えた後でなければ,
優先権主張を無視することができない旨を規定し,欧州共同体意匠に関
するEC委員会規則は,優先権書類提出について不備があった場合は,
補正のための期間を指定した上,当該期間内に補正がされない場合に初
めて優先権主張が効力を失うこととされている(10条(3)c(7)。理事
会規則46条も同旨)。
欧州特許条約も,EPC90条(4)において,優先権に関するものを
含め,補充し得る方式要件の欠陥については,これを補充するよう指令
すべきこととされ(優先権証明書の提出に関して欠陥があった場合にも
補充の指令がされるべきことは,EPC規則59に明記されている。),
同条(5)において,指令に応じた補充がされないときに初めて優先権主
張が喪失されると規定されている。
このように,優先権証明書の提出については,比較法的にも,出願人
に過度に不利益とならないような扱いが規定されており,このことは優
先権証明書提出に関して厳格な解釈をしなくても不都合が生じないこと
を示すものであって,この点は,我が国の特許法の解釈においても十分
に考慮されるべきである。
イ被告
(ア)パリ条約による優先権主張がその効力を生じるためには,パリ条約を
受けて我が国の法令上優先権主張の手続として要求される方式,すなわ
ち,①出願と同時にする優先権を主張する旨及び必要な事項を記載した
書面の提出又はそれらの事項の願書への記載のほか,②優先権証明書提
出期間内における優先権証明書の提出のいずれもが遵守されることが必
要であり,上記①の手続を執ってパリ条約による優先権を主張しても,
上記②の手続を怠った場合には,当該優先権の主張はその効力を失い,
優先権の主張自体がなかったことになるというべきである。
(イ)意匠法15条1項,特許法43条2項は,パリ条約4条D(3)の規定
を受けて,優先権証明書について「最初に出願をし……たパリ条約の同
盟国の認証がある出願の年月日を記載した書面,……及び図面に相当す
るものの謄本又はこれらと同様な内容を有する……証明書であってその
同盟国の政府が発行したもの」の提出を要求しており,他の手続に関す
る規定にみられるように「写し」等の提出で足りるものとはしていない
から(特許法184条の7第1項,2項,同法施行令15条3項4号等
参照),パリ条約による優先権主張の手続において提出することが要求
される優先権証明書は,同盟国の政府が発行した優先権証明書の原本そ
のものをいい,その写しは含まれないものと解するのが相当である。
しかるところ,原告は,本件において,本件出願と同時に本件共同体
意匠出願を基礎とするパリ条約による優先権の主張をしたものの,優先
権証明書提出期間内に提出した本件提出書の添付書類はOHIMが発行
した優先権証明書の原本ではなく,その一部の写しであり,法令の規定
による優先権証明書とは認められないから,本件提出書に係る手続は,
手続としての本質的要件を欠くもので,意匠法15条1項,特許法43
条2項に反する不適法なものである。
特許法18条の2第1項の「不適法な手続であって,その補正をする
ことができないもの」とは,補正に適さない重大な要件の瑕疵のある手
続をいうものと解すべきところ,本件のように優先権証明書を提出しな
いまま優先権証明書提出期間が経過してしまった優先権主張について,
同期間経過後,優先権証明書の原本の提出による手続補正を認めるとす
れば,優先権証明書提出期間を定め,その期間内に優先権証明書の提出
がないときは当該優先権の主張がその効力を失う旨規定する特許法43
条2項及び4項の規定の趣旨が没却されることは明らかである。そうす
ると,本件提出書に係る手続の瑕疵は,優先権主張の手続における重大
な要件の瑕疵であって,補正には適さないものというべきである。
(ウ)以上のとおり,本件提出書に係る手続は,意匠法15条1項,特許法
43条2項に反する不適法な手続であって,その補正をすることができ
ないから(方式審査便覧15.20(却下−1),2(16)ニ),意匠法
68条2項,特許法18条の2第1項の規定に基づき,その手続を却下
した本件処分は適法である。
なお,原告は,平成20年11月4日付けで本件提出書に係る手続補
正書(優先権証明書原本添付)を提出したことによって,本件提出書に
係る手続の瑕疵は治癒されたと主張するが,優先権証明書提出期間経過
後に優先権証明書の原本を提出したからといって,優先権証明書の提出
に関する方式要件を満たさないという本件提出書に係る手続の瑕疵が遡
って治癒されることはあり得ないというべきである。
(エ)原告の主張に対する反論
a原告は,本件において,優先権証明書の原本を提出すべきところを
誤って複写を提出してしまったなどと主張するが,このような初歩的
な過誤の可能性まで想定することはできないから,本件提出書及びそ
の添付書類を総合的に検討しても,手続者の合理的意思として,誤っ
て複写を提出したことが客観的に明らかであるとは認められない。
bまた,原告は,本件提出書に添付して法定期間内に提出した複写書
類によっても,優先権主張に係る国において意匠登録出願した日を確
認することができ,さらに,上記書面に記載された出願番号を使用し
て,OHIMのデータベースを介して基礎出願の図面を閲覧すること
によって,基礎出願に係る意匠と我が国に提出された意匠登録出願に
係る意匠との同一性を確認することができたから,特許法43条2項
の規定で意図された優先権の確認は実質的に可能となっていたなどと
主張する。しかしながら,我が国の法令上は,パリ条約4条D(3)の
規定を受けて,優先権の主張をした者に,最初に出願をした同盟国の
認証があり,その同盟国の政府が発行した優先権証明書を優先権証明
書提出期間内に提出させ,同盟国が証明している事項に基づいて,そ
れらの確認を行うという方式が採用されているのであって,同盟国の
ホームページ等を検索することにより,事実上第一国の出願に係る意
匠の確認ができればよいというものではないから,原告の主張は理由
がない。
c原告は,優先権証明書の提出は省略され得る性質のものであるなど
と主張するが,意匠登録出願については,特許法43条5項の規定の
準用がなく,OHIMを含め,我が国と優先権書類データを電磁的に
交換することができることの確認が行われた対象国ないし国際機関は
存在しないのであるから,手続の簡素化のためにOHIMが発行した
優先権証明書の提出が省略され得る性質のものということはできない。
dさらに,原告は,本件提出書について補正を認めたとしても,第三
者に不測の不利益を及ぼすものではなく,審査に不当な遅延をもたら
すものでもないと主張する。しかし,本件提出書に係る手続について
補正を認めれば,補正の効果により,当該優先権の主張が効力を生じ
るため,当該優先権による基準時よりも後で我が国の出願より前にパ
リ条約の同盟国に出願をした第三者に重大な不利益をもたらす結果に
なることは明らかである。また,上記補正を認めた場合,優先権証明
書の提出期限を経過したというだけでは当該優先権の主張が効力を失
ったか否かが確定せず,当該出願についての審査に着手することがで
きないので,審査に不当な遅延をもたらすことも明らかである。
eなお,原告は,優先権証明書の提出に関する諸外国の立法例につい
ても主張するが,パリ条約による優先権主張の手続については,優先
権証明書の提出を含めて,パリ条約及び我が国の法令上定められた方
式について,規定の文言に従って厳格に解釈されるべきであることか
らすれば,諸外国の立法例において上記方式と異なる取扱いを規定し
ているからといって,我が国の意匠法15条1項及び同項の規定にお
いて準用する特許法43条2項,4項の各規定を文理に反して解釈し
なければならない理由はない。
(2)争点(2)(本件異議決定の適法性)について
ア原告
原告は,平成20年11月4日付けで本件提出書に係る手続補正書(優
先権証明書原本添付)を提出し,その旨を本件異議申立手続においても主
張した。上記(1)アのとおり,本件提出書に係る手続は補正可能と解すべ
きであり,その手続補正によって本件提出書に係る手続の瑕疵は治癒され
たから,それを考慮せず本件異議申立てを棄却した本件異議決定は,違法
である。
イ被告
(ア)行政事件訴訟法10条2項によれば,裁決の取消しの訴えにおいて主
張できる取消事由は,裁決固有の違法に限られており(原処分主義),
本件処分の根拠法規である意匠法においても裁決主義は採用されていな
いから(同法60条の2,特許法184条の2参照),本件異議決定の
取消事由として,原処分である本件処分の違法事由を主張することは許
されない。
しかるところ,原告は,本件提出書に係る手続が「不適法な手続であ
って,その補正をすることができないもの」には該当しないという本件
処分の違法事由と同一の理由に基づいて,本件異議決定の判断の違法を
主張するにすぎず,原処分(本件処分)の違法と異なる裁決(本件決
定)固有の違法事由を主張するものとは認められない。
(イ)また,本件提出書に係る手続は意匠法15条1項,特許法43条2項
に違反する不適法な手続であって,その補正をすることができないもの
であるから,本件異議申立手続においてこれを考慮しないことは,何ら
裁決固有の違法事由となり得るものではなく,原告の主張は理由がない。
第3当裁判所の判断
1争点(1)(本件処分の適法性)について
(1)パリ条約による優先権について
パリ条約による優先権は,パリ条約の同盟国のいずれか一国(第一国)に
出願(特許出願,実用新案登録出願,意匠登録出願,商標登録出願)した者
が他の同盟国(第二国)において出願するについて,一定期間に限り,先後
願の関係,新規性,進歩性等の判断の基準日としての出願日を第一国出願の
日に遡らせることができる特別な利益を内容とする権利である。この優先権
は,第一国における最初の出願によって,観念的,潜在的に発生するが,優
先期間内に第二国において出願する際に優先権を主張することによって,初
めて現実的な効力を生じるものと解される。
このように,パリ条約による優先権は,先願主義の例外事由となり,新規
性,進歩性等の判断の基準日を遡らせるなど,その効果が第三者に与える影
響は大きく,第二国における出願の際に主張することによって現実的な効力
が生じるものであるから,優先権主張の手続については,後記(2)のとおり
の法定の方式が要求されている。そして,この方式については,権利関係の
安定,先願主義等の関係から,厳格な様式性が求められ,パリ条約及び我が
国の法令上定められた方式を満たしていない場合には,その主張に係る優先
権の効力は生じないというべきである。
(2)パリ条約による優先権主張の手続
第二国出願について優先権の利益を享受するためには,①パリ条約上の権
利能力を有する者が同盟の第二国に出願をすること(パリ条約4条A),②
第二国の出願人が,最初の出願をした者又はその承継人であること(パリ条
約4条A(1)),③第一国出願と第二国出願が内容の実質的同一性を有して
いること,④第二国出願が優先期間内の出願であること(パリ条約4条C
(1)),⑤優先権の申立てをすること(パリ条約4条D)が必要である。
このうち優先権の主張の手続については,出願の時点ではパリ条約4条D
(1)及び(3)以上の手続を要求することはできず,各同盟国は,同条D(1)の
手続及びD(3)所定の謄本の提出を要求したときはその手続を怠った場合の
効果について,優先権の喪失を限度として定めるものとされている(同条D
(4))。
我が国の法令においては,優先権の主張を伴う出願をする際,当該出願と
同時に,優先権を主張する旨並びに最初に出願をした同盟国(第一国)の国
名及び最初の出願の出願日を記載した書面を特許庁長官に提出すること(た
だし,当該出願の願書に優先権を主張する旨及び必要な事項を記載して,上
記書面の提出を省略することができる〔意匠法施行規則19条3項,特許法
施行規則27条の4第1項〕。),この第一国の出願日(優先日)を証明す
る資料として「最初に出願をしたパリ条約の同盟国の認証がある出願の年月
日を記載した書面」を,第一国の出願の対象物を証明する資料として「最初
に出願をしたパリ条約の同盟国の認証がある出願の際の書類で……図面に相
当するものの謄本」又は「これらと同様な内容を有する公報若しくは証明
書」(優先権証明書)をその提出期限(意匠登録出願については当該出願の
日から3か月)内に特許庁長官に提出することが要求されるとともに,優先
権証明書をその提出期間内に提出しないときは,当該優先権の主張はその効
力を失う旨定めている(意匠法15条1項,特許法43条1項,2項,4
項)。
したがって,パリ条約による優先権主張の効力を生じさせるためには,上
記のとおり,①出願と同時にする優先権を主張する旨及び必要な事項を記載
した書面を提出(又はそれらの事項を願書に記載)した上,②優先権証明書
提出期間内に優先権証明書を提出することが必要であり,仮に,上記①の手
続をしてパリ条約による優先権の主張をしても,上記②の手続を怠った場合
には,当該優先権の主張はその効力を失い(意匠法15条1項,特許法43
条4項),優先権の主張自体がなかったことになると解される。
(3)本件において,原告は,本件出願と同時に本件共同体意匠出願を基礎とす
るパリ条約による優先権の主張をしたものの,優先権証明書提出期間内に提
出した本件提出書の添付書類は,OHIMが発行した優先権証明書の原本で
はなく,その一部(表紙を含む2枚)を複写したもの及びその訳文であった。
意匠法15条1項が準用する特許法43条2項は,パリ条約4条D(3)の
規定を受けて,優先権証明書について「最初に出願をし……たパリ条約の同
盟国の認証がある出願の年月日を記載した書面,……及び図面に相当するも
のの謄本又はこれらと同様な内容を有する……証明書であってその同盟国の
政府が発行したもの」の提出を要求しており,「写し」等の提出で足りるも
のとはしていないから,パリ条約による優先権主張の手続において提出する
ことが要求される優先権証明書は,同盟国の政府が発行した優先権証明書の
原本そのものであり,その写しは含まれないものと解される。したがって,
優先権証明書の原本を複写したものは,法令の規定による優先権証明書とは
認められないから,本件提出書に係る手続は,意匠法15条1項,特許法4
3条2項の規定に反する不適法な手続であり,原告は,その後,優先権証明
書提出期間(平成20年6月12日まで)内に優先権証明書の原本を提出し
なかったのであるから,本件出願についてのパリ条約による優先権の主張は,
その効力を失ったものと解さざるを得ない。
そして,このように優先権証明書を提出しないまま優先権証明書提出期間
が経過してしまった優先権主張について,同期間経過後,優先権証明書の原
本の提出による手続補正を認めるとすれば,優先権証明書提出期間を定め,
その期間内に優先権証明書の提出がないときは当該優先権の主張がその効力
を失う旨規定する特許法43条2項,4項の規定の趣旨を没却することにな
るから,本件提出書に係る手続の瑕疵は,優先権主張の手続における重大な
要件の瑕疵であり,もはや補正することはできないというべきである。
(4)アこの点,原告は,本件提出書に係る手続については,客観的に判断した
手続者の合理的意思(優先権証明書の原本を提出すべきところ,誤って
「複写」を提出してしまったこと)が明らかであり,不適法な手続であっ
てその補正をすることができないもの(特許法18条の2第1項)には該
当しない旨主張する。
しかし,原告が本件提出書に添付したのは,OHIMが発行した本件共
同体意匠の出願日が記載された認証謄本の一部(表紙を含む2枚分)のみ
を複写したものとその訳文にすぎず,本件共同体意匠を記載した図面等に
相当するものの写し等は添付されていなかったのであるから,本件提出書
のその他の記載等を総合しても,直ちに「原本を提出すべきところを誤っ
て複写を提出してしまったことが明らか」であると認めることはできない。
この点は,原告において,本件出願と同時に行った他の3件の意匠登録出
願については,優先権証明書の原本とその訳文を特許庁長官に提出してい
た(甲9,10)という事情を考慮しても同様である。
イまた,原告は,本件提出書に添付して法定期間内に提出した複写書類に
よって,優先権主張に係る手続において意匠登録出願をした日を確認する
ことができ,さらに,上記書面に記載された出願番号を使用し,OHIM
のデータベースを介して基礎出願の図面を閲覧することによって,基礎出
願に係る意匠と日本国に提出された意匠登録出願に係る意匠との同一性を
確認することができたから,特許法43条2項の規定で意図された優先権
の確認は実質的に可能となっていたことを指摘して,本件提出書に係る手
続については補正が認められるべきであると主張する。
しかしながら,我が国の法令上,パリ条約による優先権の主張をした者
は,優先権証明書提出期間内に優先権証明書の原本(最初に出願をした同
盟国の認証がある出願の年月日を記載した書面,その出願の際の書類で明
細書,特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲及び図面に相当す
るものの謄本又はこれらと同様な内容を有する公報若しくは証明書であっ
てその同盟国の政府が発行したもの)を提出しなければならず(特許法4
3条2項),特許庁長官は,その提出された優先権証明書により同盟国が
証明している事項に基づいて,第一国における出願の具体的内容を確認す
ることになっているのであって,特許庁長官が職権により同盟国のホーム
ページ等を検索することにより,事実上第一国の出願に係る意匠の確認等
を行うなどということは想定されていない。そもそも,優先権証明書の原
本とその写しとの間には,その有する証拠力の点において画然とした差異
があるのであるから,写しの提出によって優先権証明書に記載された事項
を証明するなどということは考え難いのであって,本件提出書に係る手続
について,手続の基本的部分が欠落しているものとして補正することがで
きないことに変わりはないというべきである。
ウ原告は,特許出願については,我が国と優先権書類データを交換できる
国にした出願に基づく優先権主張の場合に優先権書類の提出を省略するこ
とができる旨定められ(特許法43条5項),大韓民国,欧州特許庁及び
アメリカ合衆国にした出願に基づいて優先権を主張する場合には優先権証
明書の提出が省略可能であること,平成20年特許法等改正によって,優
先権書類の電子的交換を世界的に実現するため,優先権書類を交換できる
対象国を拡大する改正が行われ,優先権証明書の提出はより一層省略され
る方向へ向かっていること,意匠法においては特許法43条5項を準用し
ていないが,手続の簡素化のために省略され得る性質のものである点で特
許出願と意匠登録出願との間に差違はなく,優先権主張自体が適法に行わ
れている限り,優先権証明書提出の手続については緩やかに補正が認めら
れるべきである旨の主張をする。
しかしながら,優先権書類の電子的交換の制度の趣旨は,当該国との二
国間又は国際機関との間で,優先権書類データを電磁的に交換することが
できる旨の確認ができた場合に,優先権証明書の提出を省略することがで
きるとするものであって,事実上でも第一国の出願の存在が確認できれば
優先権証明書の提出を省略することができるというものではない。このこ
とは,優先権書類の電子的交換の対象国等について,「(同法第43条第
5項に規定する電磁的方法により,同条第2項に規定する書類に記載され
ている事項の提供を受けようとする際に,当該事項の提供を受けることが
できる旨の確認ができた場合に限る。)」等の限定が付されていることか
らも明らかである(平成21年経済産業省令第5号による改正前の特許法
施行規則27条の3の3第2項,同改正後の同条第2項1号以下)。
また,パリ条約4条D(4)第2文及び第3文は「各同盟国は,この条に
定める手続がされなかった場合の効果を定める。ただし,その効果は,優
先権の喪失を限度とする。」と規定しており,同盟国は,強行規定である
か任意規定であるかにかかわらず,優先権の喪失を限度として,その手続
がされなかった場合の効果を定めることができるものとされている。我が
国においては,このパリ条約の規定を受けて,パリ条約による授権の範囲
内で特許法43条1項,2項,4項(及びこれを準用する意匠法15条1
項)を規定し,特許法43条1項に規定する方式を満たしていない場合に
は,当該優先権の主張が無効とされ,同条2項に規定する手続を執らなか
った場合には,同条4項の規定により,当該優先権の主張はその効力を失
うとしている。そして,強行的な手続(優先権主張)のみならず任意的な
手続(優先権書類の提出)についても,パリ条約による授権の範囲内で国
内法令が規定されれば,その規定された国内法令に基づいて,手続の方式
及び手続を満たさなかったときの効果が定められるものであり,我が国に
おいては,優先権主張の利益を享受するためには,優先権証明書の提出も
含めて,特許法43条1項,2項に規定された方式に基づいて手続を行う
ことが必要とされているのである。
したがって,優先権主張の手続と優先権証明書提出の手続を区別し,優
先権証明書提出の手続は緩やかな扱いとすべきとする原告の主張は,パリ
条約が優先権主張の追加的方式としての優先権書類の提出要求及びこれを
怠った場合における優先権喪失の効果の定めについて各同盟国の国内法令
に授権してその主権的選択を尊重した趣旨に反するものである。また,後
記エのとおり,優先権証明書提出の手続について緩やかに補正を認める場
合には,第三者に重大な不利益を生じさせるおそれもあるのであるから,
かかる観点からも,原告の上記主張を採用することはできない。
エ原告は,優先権主張自体が適法に行われていれば,第三者にとっては,
基礎出願の出願日(優先日)を前提として出願の登録要件等が判断される
ことが十分予測されるから,本件のような場合に優先権証明書提出書につ
いて補正を認めたとしても,第三者に不測の不利益を及ぼすものではなく,
審査に不当な遅延をもたらすものでもないと主張する。
しかしながら,優先権の主張をした者が優先権証明書提出期間内に優先
権証明書を提出しないときは,当該優先権の主張はその効力を失い,優先
権の主張自体がなかったことになるから(意匠法15条1項,特許法43
条4項),当該意匠登録出願の登録要件の判断の基準時は我が国の出願日
となる。そうすると,当該優先権主張に係る優先権証明書を提出しないま
ま優先権証明書提出期間が経過した場合には,当該優先権の主張は認めら
れず,当該優先権による優先日後,我が国の出願より前にパリ条約の同盟
国に同一又は類似の意匠等の登録出願をした第三者に先願の地位が与えら
れるはずであるにもかかわらず,後から優先権証明書の提出につき補正が
認められれば,補正により当該優先権の主張が認められるため,上記第三
者の出願が遡って先願の地位を失うこととなり,第三者に重大な不利益を
招来することになる。
また,優先権証明書提出期間経過後に優先権証明書の提出による補正を
認めた場合,優先権証明書の提出期限を徒過したというだけでは当該優先
権の主張が効力を失ったか否かが確定せず,当該出願について先後願,新
規性,進歩性等の登録要件の判断の基準時が出願時であることを前提とし
た審査に着手することができないことになるから,審査に遅延をもたらす
ことになることも明らかである。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
オ原告は,アメリカ合衆国,PCT規則第17規則17.1(c),欧州共同
体意匠委員会規則及び欧州特許条約の各立法例を挙げた上,パリ条約によ
る優先権主張の手続における優先権証明書の提出については,各国の立法
例においても出願人に過度に不利益とならないような扱いを規定しており,
このことは優先権証明書提出に関して厳格な解釈をしなくとも不都合が生
じないことを示すものであって,この点は日本法の解釈においても十分に
考慮されるべきである旨主張する。
しかしながら,パリ条約による優先権主張の手続については,優先権証
明書の提出を含めて,パリ条約及び我が国の法令上定められた方式につい
て,規定の文言に従って厳格に解釈されるべきであり,諸外国の立法例に
おいて上記方式と異なる取扱いを規定しているからといって,我が国の意
匠法15条1項,特許法43条2項,4項の各規定を文理に反して解釈す
る理由とはならないから,原告の上記主張は理由がない。
(5)以上のとおり,本件提出書に係る手続は,補正することができない不適法
なものであるから,意匠法68条2項,特許法18条の2第1項の規定に基
づき,同手続を却下した本件処分が違法であるとは認められない。
なお,原告は,本件処分の違法事由として,平成20年11月4日付け手
続補正書(優先権証明書の原本を添付)によって本件提出書の瑕疵が治癒さ
れたことを予備的に主張する。
しかしながら,上記のとおり,本件提出書に係る手続は不適法であり,そ
の補正をすることができないものであるから,優先権証明書提出期間経過後
に優先権証明書の原本を提出したからといって,優先権証明書の提出に関す
る方式要件を満たさないという本件提出書の瑕疵が遡って治癒されることに
はならないというべきであるから,原告の上記主張は採用することができな
い。
2争点(2)(本件異議決定の適法性)について
原告は,本件提出書が補正可能な手続であり,優先権証明書の提出に係る手
続補正により本件提出書の瑕疵が治癒され,その旨を本件異議申立手続におい
て主張したにもかかわらず,それを考慮せずに本件異議申立てを棄却した本件
決定は違法であると主張する。
しかしながら,原告の上記主張は,本件提出書に係る手続が「不適法な手続
であって,その補正をすることができないもの」には該当しないという本件処
分の違法事由と同一の理由に基づいて,本件異議決定の違法をいうものにすぎ
ず,原処分(本件処分)の違法と異なる裁決(本件決定)固有の違法事由を主
張するものとは認められない。
また,前示のとおり,本件提出書に係る手続は,意匠法15条1項,特許法
43条2項に違反する不適法な手続であって,その補正をすることができない
ものであるから,本件異議申立手続においてこれを考慮しないことは何ら裁決
固有の違法事由となり得るものではない。
したがって,本件異議決定が違法であるとする原告の主張は,理由がない。
第4結論
よって,原告の請求は,いずれも理由がないから,これを棄却することとし
て,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官
岡本岳
裁判官
鈴木和典
裁判官
寺田利彦

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