弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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            主     文
       本件上告を棄却する。
            理     由
 弁護人荒木和男ほかの上告趣意のうち,憲法違反をいう点は,死刑制度が憲法に
違反するものでないことは当裁判所の判例(最高裁昭和22年(れ)第119号同
23年3月12日大法廷判決・刑集2巻3号191頁)とするところであるから,
理由がない。また,同上告趣意のその余は,事実誤認,量刑不当の主張であり,被
告人本人の上告趣意は,単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であって,い
ずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 なお,所論にかんがみ記録を調査しても,刑訴法411条を適用すべきものとは
認められない。付言すると,本件は,被告人が,(1) 中学校時代の同級生の男性
(当時21歳)を殺害して死体を土中に埋めて遺棄した上,同人が,大金等を積ん
だ被告人の自動車を盗んで,同車に放火したかのように装い,その母親から金員を
喝取しようとして未遂に終わり,他方で,保険会社から車両保険金490万円を詐
取し,(2) 前記金員喝取が未遂に終わったことから,共犯者と共謀の上,小,中
学校時代の同級生の男性(当時21歳)を監禁して殺害した上,被告人単独で,そ
の死体をごみ捨て場に投棄して遺棄した上,同人が,他者を介して前記自動車を盗
み,放火したかのように装って,その両親から金員を喝取しようとしたが,未遂に
終わった,という事案である。被告人は,このように,いずれも,かつての同級生
を殺害して死体を隠した上で,その者を,前記のような窃盗,放火の犯人に仕立て
上げ,その親から大金を喝取しようなどという悪質,非道な計画を立てた上,これ
に沿った犯行を約1か月余りの間に,2回にわたり敢行したものである。その動機
も,金銭欲のみによるものであって,酌量の余地がない。殺害に当たっては,いず
れも確定的殺意に基づき,1名に対しては,必死に逃げようとする被害者の身体を
出刃包丁で突き刺すなどした上,後頸部を切断して絶命させ,他の1名に対しては
,ワゴン車の中の座席に縛り付け,共犯者にその足などを押さえ付けさせた上,被
告人において,その首を両手で絞めて窒息死させたというもので,甚だ残忍かつ冷
酷である。殺害後は,死体の遺棄,恐喝行為といった当初の計画を着々と実行して
おり,犯意の強固さもうかがわれる。これらの事情に加え,遺族の処罰感情も厳し
く,社会に与えた影響も看過し難いものがある。以上のような事情に照らすと,被
告人が,本件各犯行当時21歳と若年であったこと,殺人の被害者両名の遺族に対
し,被告人において謝罪文を書き送り,被告人の母親において各600万円を供託
して,慰謝に努めていることなど,被告人のために酌むべき事情を十分考慮しても
被告人の刑事責任は,極めて重大であるといわざるを得ない。したがって,被告人
を死刑に処した第1審判決を維持した原判断は,当裁判所もこれを是認せざるを得
ない。
 よって,刑訴法414条,396条により,裁判官全員一致の意見で,主文のと
おり判決する。
 検察官西村逸夫 公判出席
平成17年1月27日
 最高裁判所第一小法廷
        裁判長裁判官     才   口   千   晴
           裁判官    横   尾   和   子
           裁判官    甲 斐 中  辰   夫
           裁判官     泉       徳   治
           裁判官     島   田   仁   郎

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