弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被上告人の控訴を棄却する。
     控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。  
         理    由
 上告代理人梅本弘、同片井輝夫、同池田佳史、同川村和久、同池野由香里の上告
理由第二について
 一 原審の適法に確定した事実関係の概要は、次のとおりである。
 1 上告人(当時の代表者はI)は、第一審判決添付の株券目録記載の本件株券
を所持していたが、昭和六三年三月九日、和歌山簡易裁判所に本件株券を紛失した
との虚偽の事実を理由にして本件株券の無効宣言を求める公示催告の申立てをした。
 同裁判所は、右申立てに基づき、同月一五日、公示催告の手続を執り、同年四月
一八日、右公示催告の公告を官報に掲載した。
 上告人は、公示催告期日である同年一一月一八日、除権判決を求める旨の申立て
をしたので、同裁判所は、本件株券を無効とする除権判決を言い渡した。
 2 Iは、右のとおり本件公示催告の申立てをしたが、本件株券を担保に金銭を
詐取しようと考え、公示催告手続中の昭和六三年七月二日、右事実を秘したまま、
被上告人との間に金銭信託契約を締結し、被上告人から一億二〇〇〇万円の交付を
受け、被上告人に右契約上の債務を担保するため本件株券を譲渡することにしてこ
れを引き渡した。
 3 被上告人は、平成五年一月二〇日、右除権判決の存在を知り、同年二月八日、
公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律(以下「法」という。)七七四条二項六号
に相当する事由があるとして、右除権判決に対する不服の訴えである本件訴えを提
起した。
 二 原審は、次の理由により、被上告人の請求を認容した。
 1 Iは、被上告人に対し、本件株券について公示催告の申立てをしたことを告
げないまま、本件株券を担保として引き渡すことにより、被上告人との間に金銭信
託契約を締結し、被上告人から一億二〇〇〇万円を受領した。そのため、被上告人
は、右申立ての事実を知らず、右申立てに対し権利の届出をしなかった結果、本件
株券について本件除権判決が言い渡されて確定し、本件株券は無効となった。Iの
右行為は、詐欺罪を構成する。被上告人は、これにより、防御の方法を提出するこ
とを妨げられた。
 2 本件においては、詐欺罪の公訴時効期間である七年が経過し、Iに対する有
罪の確定判決を得ることができず、また、証拠欠缺以外の理由により有罪判決を得
ることができないときに該当するから、本件訴えは、除権判決に対する不服の訴え
を提起するための要件を具備している。なお、被上告人が本件除権判決の存在を知
った時には、右詐欺罪についてはいまだ公訴時効期間は経過していなかったにもか
かわらず、被上告人は、Iを告訴するのは信託金の返還を受ける上で得策でないと
判断し、同人を告訴しなかったのであるが、和解勧試等に時日を要するなどした第
一審における審理の状況及び被上告人が上告補助参加人に対して提起した新株券の
引渡請求の別件訴訟の判決が確定したのが平成七年八月ころであったことからする
と、それから公訴時効完成の同年一一月一七日までの三箇月の間に告訴をしても有
罪判決を取得することは困難であったと思われることに照らすと、告訴がされなか
ったからといって、前記判断が左右されるものではない。
 3 したがって、本件除権判決には、法七七四条二項六号、民訴法三三八条一項
五号に相当する取消事由がある。
 三 しかしながら、原審の右2の判断は是認することができない。その理由は、
次のとおりである。
 1 除権判決に対しては、法七七四条二項六号により、民訴法三三八条一項四号
ないし八号の場合で再審の訴えを許す条件のあるときは除権判決に対する不服の訴
えによって不服を申し立てることができるところ、同項五号に規定する事由がある
場合においては、同条二項により罰すべき行為について有罪判決等が確定したとき
又は証拠の欠缺以外の理由により有罪の確定判決等を得ることができないときに限
り、右の訴えを提起することができる。ところで、右の有罪の確定判決等を得るこ
とができないときとは、右事由の存在を知った時点では既に公訴時効期間が経過し
ていた場合又は告訴等の手続を執ったとしても捜査機関が公訴の提起をするに足り
る期間がない場合等をいい、公訴時効が完成するまでに相当の期間があり、かつ、
やむを得ない事由がないのに、告訴等の手続を執らないまま公訴時効期間を経過さ
せた場合は含まれないと解するのが相当である。
 2 これを本件について見ると、【要旨】被上告人が本件除権判決の存在を知っ
た時点では公訴時効の完成までには、公訴時効の起算点をIが被上告人から一億二
〇〇〇万円を受領した時から起算したとしても、少なくとも二年五箇月余りの期間
があったから、被上告人は、捜査機関に告訴等の手続を執ることが可能であったの
に、これをすることなく公訴時効期間を経過させたものというべきである(その場
合、仮に右期間内に有罪の確定判決に至らなくても、右期間内に公訴の提起があれ
ば、時効の進行は停止する(刑訴法二五四条一項)から、その後に有罪の確定判決
を取得することは可能である。)。被上告人は、Iを告訴すれば信託金の返還を受
けることに関して得策でないと判断して、同人を告訴しなかったと主張し、原審も
これを認めているが、これを含め、原審の確定した前記事実関係に照らしても、被
上告人がIに対する告訴等の手続を執らなかったことについてやむを得ない事由が
あったと認めることはできない。そうすると、本件は、有罪の確定判決等を得るこ
とができないときには当たらないといわざるを得ない。これと異なる原審の判断に
は、法令の解釈適用を誤った違法があり、この違法は原判決の結論に影響を及ぼす
ことが明らかである。これをいう論旨は理由があり、原判決は、その余の上告理由
について判断するまでもなく、破棄を免れない。
 3 そして、以上に説示したところによると、被上告人の請求は理由がなく、こ
れを棄却すべきであり、これと同旨の第一審判決は正当であるから、被上告人の控
訴を棄却すべきである。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 金谷利廣 裁判官 千種秀夫 裁判官 元原利文 裁判官 奥田
昌道)

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