弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人十川寛之助の上告理由第一点について。
 賃貸借の解約申入に基づいて提起された家屋明渡請求訴訟において、その解約申
入の時に、借家法一条ノ二の正当事由が存在していれば問題はないが、たとえその
当時存在していなくても、原告が右訴訟を維持継続し口頭弁論期日に弁論を行なつ
た場合には、その都度被告に対し明渡を求める意思を表示したものと解すべきであ
り、その間正当事由を具備するに至つた頃の口頭弁論期日に正当事由のある解約申
入をなしたものと解するのが相当である(昭和三〇年(オ)第一七九号、同三四年
二月一九日第一小法廷判決、民集一三巻二号一六○頁参照)。
 ところで、本件においては、原判決は、その理由において、本件賃貸借契約成立
の経緯、上告人、被上告人双方の住宅事情、被上告人の家族構成の状況等を説示し
た上、本訴提起の昭和三一年二月八日当時、本件家屋全部の明渡を求めるにつき正
当の事由を有していたものと判断しているのであるが、原判決挙示の前記事情中に
は、右本訴提起の時以後に生じたものも存在しており、原判決はこれらを総合して
本訴提起当時に正当事由があると判示している。しかし、原判示の右諸事情を考え
合わせると、本件解約の申入には被上告人主張の、同人が妻帯し、その後長女が出
生した頃において正当事由が具備したものと解するのが相当と認められるところ、
記録によれば、被上告人は、昭和三三年一月一七日の第一審口頭弁論期日において、
昭和三二年一〇月二五日付準備書面(同年同月二六日受付)を陳述しており、右準
備書面には、昭和三一年五月妻帯し、昭和三二年六月長女が出生し現住家屋では到
底親子三人の生活に耐え得ない旨が正当事由の一として記載されており、これが明
渡を求める事由となつていることが認められる。それ故、本件においては、前記当
裁判所の判例の趣旨に従い、右昭和三三年一月一七日の第一審口頭弁論期日の陳述
をもつて、正当事由を備えた解約申入があつたものというべきであり、右解約申入
をなしたと認むべき昭和三三年一月一七日から六月を経過した同年七月一八日に右
解約申入は効力を発生し、上告人は被上告人に対し本件家屋を明渡すべき義務を負
うに至つたものと解するのが正当である。しからば、原判決中本件家屋の全部の明
渡を認容した部分は、結局において正当であるが、原判決が本訴提起の時以後に生
じた事情をも含めて正当事由の存在を認定しながら、本訴提起当時において解約申
入に正当事由があつたものとし、本件訴状送達の翌日である昭和三一年二月一三日
から六月経過した同年八月一二日限り本件賃貸借契約が消滅した旨判示した点にお
いて、所論のごとく借家法の解釈を誤つた違法あるを免れない。
 しかしながら、原審の確定したところによれば、被上告人は、本訴において本件
賃貸借の解約を申入れ、その明渡と、訴状送達の翌日以降明渡済に至るまで賃料な
らびに同相当の損害金の支払を求めており、そして昭和三一年八月一三日から同三
二年一二月三一日までの賃料は一ヶ月金二〇三七円、同三三年一月一日以降のそれ
は一ヶ月金二〇一八円であることは本件当事者間に争がないというのであるから、
賃料としての支払と損害金としての支払の区分については差異を生ずるにせよ、原
判決が主文において、上告人は被上告人に対し昭和三一年八月一三日から同三二年
一二月三一日までは一ケ月金二〇三七円、同三三年一月一日から明渡済に至るまで
一ヶ月金二〇一八円の割合の金員を支払えと判示したことは、結局において正当た
るに帰し、前記原判決の理由説示の違法は判決に影響のない事項である。それ故、
所論は採るを得ない。
 同第二点について。
 原判決が主文において別紙目録記載の家屋と記載しながら判決書中別紙目録を欠
如していること所論のとおりであるが、右主文中の表示欠如は明白な誤謬であるか
ら、当事者はいつでも更正を求めることができるのみならず、右家屋は原判決の引
用する第一審判決事実摘示中に掲げられた上告人の居住家屋を指称することが判文
上明らかである。それ故、所論は理由がない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    高   木   常   七
            裁判官    斎   藤   朔   郎

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