弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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      主    文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
      事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人
(1)原判決を取り消す。
(2)被控訴人が平成12年6月19日付けで控訴人に対してした,控訴人の平
成7年4月1日から平成8年3月31日まで,平成8年4月1日から平成9年3月
31日まで,平成9年4月1日から平成10年3月31日まで及び平成10年4月
1日から平成11年3月31日までの各事業年度の法人税の更正の請求に対する更
正をすべき理由がない旨の各通知処分をいずれも取り消す。
(3)訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
 主文と同旨
第2事案の概要
 1原判決2頁5行目から同20行目までに記載のとおりであるから,これを引
用する。
 原審は,控訴人の請求をいずれも棄却したところ,これを不服とする控訴人
が本件控訴を提起した。
 なお,略語は,原判決に準ずる。
2 前提事実
 次のとおり補正するほかは,原判決の事実及び理由の第2,1に記載のとお
りであるから,これを引用する。
(原判決の補正)
(1)原判決3頁3行目の「組み入れられた」の次に「(第7次5か年計画は,
平成9年12月,7か年計画に改定されたが,平成12年11月,与党3党による
公共事業見直しにおいて保留とされた。)」を加える。
(2)原判決3頁4行目の「策定した。」から同5行目末尾までを次のとおり改
める。
「策定したが,平成13年9月,地元情勢や公共事業を取り巻く環境の変化
を踏まえ,これを当分の間凍結する旨決定した。(乙1,3,4,33,35)」
(3)原判決5頁5行目の「当庁」を「同裁判所」と改める。
(4)原判決6頁6,7行目の「2の1ないし2の4」を「甲2の1ないし4」
と改める。
(5)原判決6頁11行目と同12行目との間に次のとおり加える。
「③ 控訴人は,平成14年2月4日,本件訴訟を提起した(記録上明らか
な事実)。」
3 争点
(1)次のとおり原判決を補正し,次項において当審における新たな主張を加え
るほかは,原判決の事実及び理由の第2,2に記載のとおりであるから,これを引
用する。
(原判決の補正)
ア 原判決13頁1行目の「解されている。」から同3行目の「必要であろ
うが」までを次のとおり改める。
「 解される。通達64(4)-3も,事業認定を受けていない場合は必ずしも
買収時における場所的限定が明確でないことから,『そのまま事業認定が行える程
度に当該事業の施行場所や施行内容が具体的に確定しているかどうかによって判定
する』という場所的限定についての判断基準を示したものと解される。
 したがって,上記事業認定を受けていない公共事業であっても,その事
業の性質上,施行場所や施行内容が確定されているものに限っては,本件特例の適
用を認めるべきであるところ」
イ 原判決13頁19行目の「規定されるはずである。」を次のとおり改め
る。
「規定されるはずであるにもかかわらず,そのような規定はないのであるか
ら,収用証明書の添付のほかに運輸大臣の許可又は意見書の取得がなければ本件特
例の適用を認めないと解することは,課税要件法定主義に反する。」
(2)別訴高裁判決の被控訴人に対する拘束力の有無(争点(3))
(控訴人の主張)
 国税通則法23条2項1号によれば,申告に係る課税標準等又は税額等の
計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決があれば,課税庁は,その判
決内容に従って更正処分を行うことが予定されているのであって,課税庁がその事
実関係を否定し,当該判決の内容自体を争うことは許されない(この判決の拘束力
は,民事訴訟法上の既判力によるものではなく,国税通則法23条2項1号の解釈
によるものである。)。
 これを本件についてみると,確定判決である別訴高裁判決は,本件買収に
係る資産が土地収用法3条12号に関する事業に必要なものとして収用することが
できる資産に該当すると判断して,福井県に対し,収用証明書の発行を命じたもの
であって,控訴人は上記判決による事実関係に基づき本件更正請求を行ったのであ
るから,課税庁である被控訴人は,国税通則法23条2項1号により上記判決の内
容に拘束され,更正を行うべきである。
(被控訴人の主張)
 争う。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も,控訴人の請求をいずれも棄却すべきであると判断するが,その
理由は,2項のとおり原判決を補正し,3項のとおり当審における新たな主張(争
点(3))に対する判断を加えるほかは,原判決の事実及び理由の第3に記載のとおり
であるから,これを引用する。控訴人が当審において提出した証拠(甲14ないし
22)はいずれも上記判断を左右するに足りるものではない。
2 原判決の補正
(1)原判決21頁20行目と同21行目との間に次のとおり加える。
「 これに対し,控訴人は,事業認定を受けていない公共事業であっても,
その事業の性質上,施行場所や施行内容が確定されるものに限っては,本件特例の
適用を認めるべきである旨主張するが,当該事業を遂行するに当たり基本的に必要
とされる行政機関の許可等又はこれに代わる意見書がなければ,同事業について事
業認定を受けることは不可能又は著しく困難であるというべきであるから,事業認
定が行われ得る状況にないといわざるを得ず,したがって,控訴人の上記主張は採
用できない。」
(2)原判決22頁17行目末尾に次のとおり加える。
「このことは,α空港の拡張整備計画が,補正後の前記前提事実(1)①のとお
り,その後,当分の間凍結されるに至ったこと等に照らしても明らかである。」
(3)原判決24頁6行目の「収用証明書は」を「収用証明書の添付は」と,同
7行目の「唯一の認定資料ではないから,収用証明書の発行自体」を「唯一の要件
ではないから,収用証明書が発行されてその添付があること」と,それぞれ改め
る。
(4)原判決25頁16行目の「なお」を次のとおり改める。
「甲22の鑑定意見書中,上記理由附記により,結果的に運輸大臣の許可又
は意見書の取得は必要でないとの信頼を形成したとする部分はあるが,上記処分理
由の附記内容は原判決別表2(1)のとおりであって,本件特例が適用できない理由の
1つを記載したものにすぎず,他の要件の具備の有無については何ら言及するとこ
ろはなかったのであるから,上記のような信頼が形成されたとはいえず,他にこれ
を認めるに足りる証拠はない。また」
3 争点(3)(別訴高裁判決の被控訴人に対する拘束力の有無)について
 控訴人は,国税通則法23条2項1号により,被控訴人が別訴高裁判決に拘
束される旨主張するが,別訴高裁判決は本件事業の遂行に必要な運輸大臣の許可又
はこれに代わる意見書の取得があったとの事実を確定するものでないことは明らか
であり(乙1),また,仮に別訴高裁判決が上記の許可又はこれに代わる意見書の
取得を不要であると判断したとしても,これは法令の解釈に関する判断にすぎない
のであって,国税通則法23条2項1号の「事実」に関するものとはいえないか
ら,上記主張は採用できない。
4 よって,控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は相当であり,本件控訴は
理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
名古屋高等裁判所金沢支部第1部
裁判長裁判官 長門栄吉
   裁判官  渡邉和義
   裁判官  田中秀幸

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