弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○主文
相手方が申立人に対し昭和六〇年二月一九日付で行つた、申立人に対する数次再入国許可
を取り消す旨の処分の効力を同年三月三〇日まで停止する。
本件申立てのその余の部分を却下する。
申立費用はこれを二分し、その一を申立人の、その余を相手方の各負担とする。
○理由
一本件申立ての趣旨及び理由は、別紙(一)及び(二)記載のとおりであり、相手方の
意見は別紙(三)記載のとおりである。
二そこで検討すると、本件疎明によれば、以下の事実を一応認めることができる。
申立人は、イタリアのメツサジエロ新聞社の報道記者であり、イタリア共和国国籍を有す
る外国人であるところ、右新聞社から日本、東南アジア諸国及び北朝鮮を取材管轄区域と
する同新聞社東京事務所における極東特派貝を命ぜられ、昭和五九年六月一一日在イタリ
ア日本国大使館において報道記者としての在留資格による査証(在留期間三年間)の発給
を受け、有効な旅券を所持して同月二三日本邦に入国し、入国目的を「NewsRep
orting」として上陸申請に及び、新来京国際空港の入国審査官から出入国管理及び
難民認定法(以下「法」という)四条一項一一号に該当するものとして在留期間三年の。

陸許可証印を受けて上陸した。更に、申立人は同年九月一二日相手方に対し取材活動を目
的とする数次再入国許可申請をしたところ、相手方は同日付で昭和六〇年九月一二日まで
を、有効期限とする数次再入国許可処分を行つた。そこで、申立人は、右許可処分に基づ
き別表のとおり前後四回にわたり出入国を行い、その出国先においてアジア外相会議、イ
タリア・ビルマ間経済援助協定、Aフイリピン大統領の健康問題、ミンダナオ市長殺害事
件、B氏の韓国帰国及び同国の総選挙等のほか、定期的にいわゆるC氏事件の裁判に関す
る取材活動を行つたうえ、取材記事を本社に送り、これらは同社新聞、週刊誌エスプレツ
ソ、月刊紙ジーニアス等に掲載されていた。ところが、申立人は、昭和五九年九月二〇日
千代田区役所において外国人登録法三条一項に基づく新規登録手続を行つた際、指紋押捺
を拒否したため、相手方から同六〇年二月一九日付で外国人登録法一四条一項違反を理由
(「」。)に法二六条六項に基づき前記数次再入国許可処分の取消処分以下本件処分という
の告知を受けるに至つた。
本件処分により申立人は本邦を出国しての取材活動が困難となり、同年三月一七日にタイ
国のバンコクで行われたカンボジア問題に関するD氏とE氏の記者会見に臨むことができ
なかつた。申立人は、同月二六日にマニラで行われる予定のC氏事件の裁判におけるF・
フイリピン軍参謀総長の尋問を現地取材する計画を有し、その後約一か月間の長期休暇を
利用してローマへ戻り、子供と面会し、同人を日本に連れ帰る意向を有していたが、この
まま推移すればいずれも断念せざるを得ない状況にあるため、本件処分の取消しを求める
本案訴訟を提起すると共に、本件効力停止の申立てを行つた。
以上一応認定した事実のもとにおいて本件処分の効力を停止する必要性の有無について考
えると、申立人は本件処分の効力をこのまま維持されるときには、申立人が約一か月に一
回の割合で継続的に取材していたマニラにおけるC氏事件の裁判に関し、来る三月二六日
に予定された公判期日の現地における取材活動が著しく困難となるばかりでなく、右取材
活動における不利益は、たとえ本案訴訟において勝訴の確定判決を得たとしても回復する
ことが困難な損害であつて、かつ、右公判期日に鑑みれば、右損害を避ける緊急の必要性
も認められるものというべきである。
しかし、申立人が右取材を終了し我が国に再入国した後については、本件記録を精査して
も本件処分の効力を停止しなければ申立人が回復困難な損害を受ける旨の疎明はないとい
わなければならない(申立人は、休暇でイタリアへ帰国し子供に会う予定であるところ、
これができなくなることは回復困難な損害に当たる旨を主張するが、右事情は本件処分の
効力を停止しなければならない緊急の事情とは認め難く、他に本件処分の効力を停止しな
ければ申立人が回復し難い損害を被るというような緊急の必要性を認めるに足りる具体的
疎明はない。。)
、「」。三相手方は本件申立ては本案につき理由がないとみえるときに当たると主張する
しかしながら、前記認定のとおり、本件は適法に本邦に入国した外国人記者に対し、一旦
再入国を許可しながら、後にこれを取消すという不利益な処分をし、当該処分が争われて
いる事案であり、
その内容も相手方が相当と認めた場合にのみ発給できる(法二六条一項後段)数次再入国
の許可という申立人のような海外特派貝にとつてはその職業の遂行上不可欠ともいうべき
許可の取消しにかかるものであること、本件疎明によれば昭和五七年ころ申立人同様外国
人登録法に基づく登録事項の確認申請をする際指紋押捺を拒否した外国人一名に対しては
数次再入国許可が取り消されることなく推移した事実のあることが窺われること等の諸事
情にか人がみると、在留外国人に関する指紋押捺制度の合憲性のいかんはさておき、本件
処分につき、相手方が申立人の指紋押捺拒否を理由として再入国の許可を取り消したこと
が、およそその裁量権の範囲に含まれかつ裁量権の濫用もないとみえるとまで、断ずるこ
とはできないというべきである。よつて、相手方の主張は採用に難い。
四以上によれば、本件申立ては、申立人が来る三月二六日フイリピンへ取材に赴いたう
え我が国に再入国するため本件処分の効力の停止を求める限度において理由があるから、
右取材から本邦再入国までに必要と認められる合理的期間を勘案して、昭和六〇年三月三
、、〇日まで本件処分の効力を停止することとしその余は理由がないから却下することとし
申立費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九二条本文を適用して、
主文のとおり決定する。
(裁判官宍戸達徳中込秀樹小磯武男)
別紙(一)∼(三(省略))

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