弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人小谷欣一の上告理由一ないし六について。
 所論は、原判決には利息制限法の適用を誤つた違法があると主張するものである。
しかして債務者が利息制限法所定の制限をこえる金銭消費貸借上の利息、損害金を
任意に支払つたときは、右制限をこえる部分は民法四九一条により残存元本に充当
されるものと解するのを相当とする(最高裁判所昭和三五年(オ)第一一五一号、
同三九年一一月一八日大法廷判決参照)。従つてこれと見解を異にする原判決の判
断は、この点において違法たるを免れない。しかし、原審の確定した事実によれば、
被上告人は、昭和三二年九月九日上告人との間に従前の貸金債権金五〇万円を準消
費貸借の目的に供し、弁済期を昭和三三年三月末日、利息および違約損害金を月六
分と定める旨約した上、右貸金債務を担保するため、上告人から被上告人に対して
原判決末尾添附別紙第一目録記載の物件の所有権を移転し、その後右貸金の弁済期
は、同年一二月末日まで延期することを約したが、右貸金担保の趣旨は、上告人が
弁済を怠つたときは、被上告人において前記担保物を任意売却し、その代金をもつ
て本件貸金債務の弁済に充当すべく、上告人が弁済期までに完済したときは、右担
保物の所有権は、当然に上告人に復帰すること、被上告人は上告人に対して右担保
物を無償で貸与し、上告人が弁済期までに債務を完済しなかつたときは、右使用貸
借も当然終了し、被上告人に右担保物を引渡すべきものであつたというのである。
しかして原審における上告人の右貸金元金への弁済充当の抗弁によるも、上告人が
利息制限法所定の制限をこえる支払つた利息を残存元本に充当してもなお、弁済期
において、被上告人に対し、債務を完済していなかつたことが明らかであるから、
原判決に利息制限法の解釈適用について前述のごとき違法があつても、前記貸金担
保の約旨に則り、上告人に対し被上告人に対する本件物件の引渡義務を認めた原判
決の結論には、何ら影響をおよぼさないものというべく、結局、論旨は、採るを得
ない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    岩   田       誠

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