弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人武藤達雄の上告理由一について
 原審が適法に確定したところによると、被上告人は、その所有にかかる本件宅地
一〇九四・二〇平方メートルを、昭和四一年六月に、上告人に対し、バツテイング
練習場(野球打撃練習場)として使用する目的で、期間を同年六月三〇日から昭和
四二年四月末日までとし、右期間内でも被上告人が自ら使用する場合には一か月の
予告で本件宅地の明渡を求めることができ、上告人は被上告人の承諾なく建物・構
築物を建築してはならず、承諾を受けて建築する建物も仮設のバラツク式のものに
限り、かつ、床面積も延一六・五二平方メートルを超えないものとする等の約定の
もとに貸与し、その際、上告人は被上告人からバツテイング練習場用構築物及び右
制限面積の管理人事務所用建物の建築の承諾を得て、本件宅地の約七割の部分の四
囲に鉄柱を建て周囲及び上面に鉄網を張り廻らせ、打撃席及び投球用機械七台を設
備してその各部分に波形トタン板の屋根を設けた本件構築物をバツテイング練習場
として建設し、また、本件宅地のその余の部分に土間のままで基礎工事はなく約八・
二五センチメートル角の木柱に内部を板張、外壁及び屋根を波形トタン板張りとし
た床面積二七・七四平方メートルの仮設建物を管理人事務所として建築したという
のであつて、右事実関係のもとにおいては、右賃貸借契約は借地法一条にいう「建
物ノ所有ヲ目的トスル」賃貸借に該当しないとした原審の判断は、正当として是認
することができ、原判決に所論の違法はない。それゆえ、論旨は採用することがで
きない。
 同二について
 原審が適法に確定したところによると、上告人はバツテイング練習場の営業を開
始し、開始当初は盛況であつたが、一、二か月間で盛況の状態も終り、冬期に入る
とともに右営業は不振の度を強め、投下資本を短期間で回収しようと企図した上告
人の計画も果せなくなつたので、被上告人は、上告人に本件宅地の西側空地部分に
卓球場用建物を建築させ、経営不振のバツテイング練習場経営と併せて卓球場を経
営させることによつて右投下資本の早期回収及び本件宅地の早期明渡を実現させる
目的で、昭和四二年一〇月ころ、上告人に対し、賃貸借期間を同四三年一二月末日
までと定めたうえ、卓球場建物を建築することを承諾し、上告人において右空地部
分にブロツクの基礎の上に約一一・五センチメートル角の木柱を建て、外壁及び屋
根を波形トタン板で張り、内壁及び天井に新建材を使用し、床を板張りとし、内部
には柱及び間仕切壁もない床面積一二〇・六平方メートルの卓球場用建物を建築し
たというのであつて、右事実関係によれば、右卓球場用建物の所有が本件宅地をバ
ツテイング練習場として使用するための従たる目的にすぎず、右卓球場用建物の敷
地部分を含む本件宅地の賃貸借契約が借地法一条にいう「建物所有ヲ目的トスル」
賃貸借に該当しないとした原審の判断は、正当として是認することができ、その過
程に所論の違法はない。それゆえ、論旨は、採用することができない。
 上告人の上告理由について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の
認定にそわない事実を主張し、原審が適法にした証拠の取捨判断及び事実の認定を
非難するものにすぎず、採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    団   藤   重   光
            裁判官    下   田   武   三
            裁判官    岸       盛   一
            裁判官    岸   上   康   夫

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