弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求めた裁判
一 原告
1 被告が昭和四二年三月一〇日付をもつて原告の昭和三八年分、昭和三九年分お
よび昭和四〇年分の各所得税についてした各更正処分および過少申告加算税賦課決
定(昭和三九年分および昭和四〇年分についてはいずれも裁決により減額されたも
の)を取消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 被告
主文と同旨
第二 当事者の主張
一 原告の請求原因
1 (一)原告は、昭和三八年、三九年および四〇年分の各所得税について、被告
に対し、次表のとおり確定申告および修正申告をしたところ、被告は原告に対し、
次表のとおり各更正処分および過少申告加算税賦課決定(以下、本件各更正処分お
よび本件各賦課決定という。)をした。
(二) そこで原告は、昭和四二年四月一〇日被告に対し、本件各更正処分および
本件各賦課決定について異議申立をしたが、右申立はそれについて決定がなされな
いまま三か月を経過したことにより東京国税局長に対する審査請求とみなされ、同
国税局長は、昭和四三年一〇月二二日、昭和三八年分の所得税については右みなす
審査請求を棄却する旨の、また、昭和三九年および四〇年分の各所得税については
右みなす審査請求の一部を認容し、内容を次のとおりとする原処分一部取消の裁決
をなし、右各裁決書は昭和四三年一一月一日原告に送達された。
2 しかしなから、本件各更正処分は以下に述べるとおり違法であるから取消され
るべきであり、したがつて、本件各賦課決定もまた取消されるべきである。
(一) 本件各更正処分の手続には、次のとおり違法がある。
(1) 原告は、本件各係争年分の所得税について、旧所得税法(昭和四〇年法律
第三三号--以下これを新所得税法という。--による改正前のもの。以下同
じ。)二六条の三所定の青色申告の承認を受けており、したがつて、原告がなした
前記各確定申告および修正申告に対して更正処分をするには、旧所得税法四五条二
項(新所得税法附則二二条参照)により、その更正通知書に更正の理由を附記しな
ければならないところ、本件各更正処分における更正通知書には、更正の理由がな
んら附記されておらず、したがつて、本件各更正処分は違法である。
もつとも、原告は、被告から昭和三八年分以後の所得税について青色申告の承認を
取消す旨の記載のある昭和四二年三月一日付所得税の青色申告承認取消通知書の郵
送を受けたことはある(以下、右青色申告承認取消通知を本件青色申告承認取消処
分という。)。
しかしながら、本件青色申告承認取消処分には次のとおり重大かつ明白な瑕疵があ
り、法律上当然無効である。
(ア) 新所得税法一五〇条二項によれば、税務署長が青色申告承認取消処分をす
る場合には、処分の相手方に対して書面でその旨の通知をしなければならないとこ
ろ、前記青色申告承認取消通知書にはその名宛人すなわち処分の相手方の住所、氏
名の記載が欠如している。したがつて、右書面の記載からは何人に対して青色申告
承認取消の意思表示がなされているのか全く不明であり、たとえ右書面が原告のも
とに郵送されても、原告に対してその効力を生じないというべきである。
(イ) 新所得税法一五〇条二項によれば、青色申告承認取消の通知書には、その
取消の処分の基因となつた事実が同条一項各号のいずれに該当するかを附記しなけ
ればならないところ、前記青色申告承認取消通知書には、本件青色申告承認取消処
分の基因となつた事実の記載はおろか、右処分が同条一項の何号に基づくかの記載
も欠如している。これは重大かつ明白な瑕疵というべきである。
(2) 税務署長が納税者のなした所得税の申告を更正するには、更正処分をする
前に、その申告の誤つている点を資料に基づいて調査をなし、その正確な調査を基
礎として更正処分をなすべきことは、更正処分について規定した国税通則法の精神
から当然のことであり、右のような調査をなさず、または調査の中途において疑わ
しき点があるとの主観あるいは想像に基づいて更正処分をすることは、国税通則法
の許さないところである。
しかるに、本件各更正処分は、更正のための調査がほとんどなされず、ただ単に感
情や憶測に基づいてなされたものであるから違法である。
すなわち、本件各更正処分に対する審査請求の段階において、調査の責任者である
A協議官は、原告に対し「本件は感情がはさまつていますね。」ともらし、また、
同人の作成した計算書を示し「私の方の調査した売上金額より貴下の申告した売上
金額が多いのですよ。」とも申し向けた。原告が申告した売上金額と被告の調査し
た売上金額を表示すると次のとおりである。
右のように原告申告の売上金額より被告の調査による売上金額が少ないにもかかわ
らず、被告が感情と憶測による売上金額を想定して本件各更正処分をしたものであ
ることは明瞭である。
(二) 本件各更正処分には、原告の総所得金額を過大に認定した違法がある。
3 よつて、原告は、本件各更正処分および本件各賦課決定(昭和三九年分および
昭和四〇年分についてはいずれも裁決により減額されたもの)の取消を求める。
二 請求原因に対する被告の認否および主張
1 請求原因1項記載の事実をすべて認める。
2 本件各更正処分の手続に原告主張のような違法はない。
(一) 請求原因2項(一)(1)について
原告が本件各係争年分の所得税について、旧所得税法二六条の三所定の青色申告の
承認を受けていたことおよび本件各更正処分における更正通知書には更正の理由が
附記されていないことは認める。
しかしながら、被告は、本件各更正処分をするに先立ち、原告も認めるとおり昭和
四二年三月一日付の書面をもつて原告に対し、原告の昭和三八年分以後の所得税に
ついて青色申告の承認を取消す旨の通知をした。
これに対し原告は、本件青色申告承認取消処分は法律上当然無効である旨主張する
が、右主張は以下に述べるとおり理由がない。
(1) 前記青色申告承認取消通知書自体に名宛人の表示のないことは認める。
しかしながら、原告は青色申告者でありながら、業務に係る帳簿書類の備付け、記
録または保存が大蔵省令で定めるところに従つて行なわれていないことなど青色申
告の承認の取消事由に該当する所為をしていたため、被告は、本件各係争年分の原
告の所得税について、青色申告の承認を取消すこととし、その旨を原告に通知すべ
く青色申告承認取消通知書を渋谷税務署名入りの封筒に同封し、、右封筒の表面に
原告の住所氏名を記載のうえ簡易書留をもつて郵送したものである。ところで、右
青色申告承認取消通知書と封筒とを一体にしてみれば、被告(処分権限を有する
者)が原告(処分の相手方)に対して原告の昭和三八年分以後の所得税について青
色申告の承認を取消す旨の意思表示(処分内容の明示)をしたものであることが外
観上容易に看取できる。したがつて、前記青色申告承認取消通知書自体にたまたま
宛名の記載がなかつたとしても、その一事をもつて直ちに何人に対する意思表示で
あるか全く不明であるなどとは到底いいがたい。
さればこそ、原告は、本件青色申告承認取消処分後は、昭和四二年分の所得税につ
いていわゆる白色申告をなすとともに昭和四三年分以後の所得税については改めて
昭和四三年三月一三日付をもつて青色申告承認申請書を被告に提出しているのであ
る。
以上の次第であるから、たまたま前記青色申告承認取消通知書自体に宛名の記載を
欠いたからといつて、本件青色申告承認取消処分が法律上当然に無効な処分とはい
えない。
(2) 前記青色申告承認取消通知書に、その取消の処分の基因となつた事実が新
所得税法一五〇条一項各号のいずれに該当するか附記されていないことは認める。
しかしながら、本件青色申告承認取消処分は、処分の絶対的要件ともいうべき書面
をもつてなされており、単に取消事由の附記を欠くに過ぎないので、法律の要請す
る理由の説示を欠如する違法があるとしてもただその事だけでは行政庁の処分とし
ての外観的形態を具備しないものということはできない。そして、右のような処分
のあつた場合においては、当事者は法定の期間内に異議の申立をなし、当該行政処
分の取消を求め得るのであるから(本件の場合は被告から前記通知の内容について
不服があるときは異議の申立ができる旨教示しているのであるからなおさらのこと
である。)、右のような瑕疵は必ずしもいわゆる重大な瑕疵に該当するものとはい
い難く、単に取消事由に止まるというべきである。
(二) 請求原因2項(一)(2)について
また、原告は、A協議官の作成した計算書に示されている原告の売上金額が、原告
の申告した売上金額よりも少ないと主張しているが、右は単なる誤解に基づいた主
張である。
すなわち、A協議官の作成した計算書には、更正処分時における被告の調査による
原告の昭和四〇年分の売上金額は、三〇〇、九〇六、八二四円と記載され、原告の
記帳額を上廻つていることは明白である。
したがつてA協議官が、原告に対して被告調査による売上金額が原告記帳額を下廻
つていたと申し向けることはあり得ないし、本件各更正処分が単に感情や憶測に基
づいてなされたものでないことは明らかである。
3 本件各更正処分における総所得金額(昭和三九年および四〇年分については裁
決により減額されたもの)の認定は、以下に述べるとおり被告の根拠とする総所得
金額を超えないものであるから、本件各更正処分に違法はない。
(一) 原告の本件各係争年分の総所得金額およびその内訳は次表のとおりであ
り、事業所得金額の計算根拠の内訳は、別表(一)記載のとおりである。
原告は、本件各更正処分は更正のための調査がほとんどなされず、ただ単に感情や
憶測に基づいてなされたものであるから違法である旨主張するが、被告の係官は、
原告備付の帳簿書類について検査を行なつたほか、必要に応じて原告の取引銀行や
その他の取引先についても実地に反面調査を実施しているのであるから、被告が調
査もせずに本件各更正処分をしたとの原告の主張はあたらない。ただ原告の帳簿が
不備であつたことおよび調査に対する原告の協力が十分でなかつたことなどのた
め、実額によつて所得を把握することができなかつたまでのことである。
(二) 推計の必要性
原告は、東急デパート日本橋支店、東急デパート東横店、東急食品マーケツト、東
光ストアー大森店、東光ストアー五反田店、東光ストアー目黒店、東光ストアー小
杉店、東急のれん街および平塚市志沢百貨店等において、魚類の小売業を営むもの
である。
ところで被告は本件各係争年分の原告の事業所得について調査をしたところ、原告
には、多額の簿外預金および株式取得資金が存在することが判明したが、原告は右
の資産の源泉について何ら明らかにしなかつた。しかも、原告は他の取得源泉とな
る事業等を営んでいず、また原告の差益率は同業者の差益率と比較して低調である
のに、その合理的根拠となるような事情は存しなかつた。これらの事実から原告の
前記各確定申告額および修正申告額はいずれも過少と窺われたが、原告の協力が十
分でなく、かつ原告の帳簿が不備であるため、原告備付の帳簿書類に基づく正確な
収支実額による所得金額の算定は到底不可能であり、実額によつて所得を把握する
ことはできないと認められたので、被告は、それまでに知り得た課税資料等を基礎
として仕入金額から売上金額を売上差益率によつて推計し、それに基づき本件各係
争年分の所得金額を算出して本件各更正処分および本件各賦課決定を行なつたもの
である。
(三) 推計の合理性
原告の事業所得の金額に、(1)先ず実額で捕捉した原告の販売原価から後記の売
上差益率によつて売上金額を推計計算し、(2)これに雑収入金額を加算し、
(3)この合計額から実額で捕捉した諸経費および専従者控除額をそれぞれ控除し
て算出されたものであるが、右の売上金類な推計するにあたり、基礎として用いた
販売原価と差益率の算出の根拠およびこれらの数値を用いることの合理性は次のと
おりである。
(1) 販売原価
(昭和三八年分)
販売原価の項目のうち、仕入金額一七三、二五八、三二六円について
(ア) 原告記入の仕入帳は、その記載内容がずさんなものであつて、脱漏があ
り、また支拡金額や残高の記入もない不備なものであつたので、右仕入帳からは正
確な仕入金額を計算することができないと認められた。ところで、原告は、買掛金
の支払いを三菱銀行渋谷支店の原告名義の当座預金および普通預金を通じて小切手
または現金送付にて決済していた。そこで、被告は、原告が買掛金の支払いのほと
んどを三菱銀行渋谷支店の原告名義の当座預金および普通預金を通じて支払つてい
ることに着目し、当該当座預金および普通預金の出金額を検討し、次のとおり計算
した。
(イ) 販売原価の算定の基礎となる仕入金額一七三、二五八、三二六円、次の
(a)現金による仕入金額一七、九〇六、〇二九円と(b)買掛金による仕入金額
一五五、三五二、二九七円との合計金額によつたものである。
(a) 現金による仕入金額一七、九〇六、〇二九円
右金額は現金出納簿による現金仕入金額によつたものである。
(b) 買掛金による仕入金額一五五、三五二、二九七円
(1) 当座預金から計算した仕入金額一五三、五二一、九九七円
三菱銀行渋谷支店の原告名義の当座預金を通じて本年中に支払われた金額のうち、
買掛金の支払いに充当されたものの合計金額一五一、八一九、一二九円から、前年
末の買掛金残高で本年中に支払われた金額(前年中に掛仕入れした商品代価で前年
末で未払いとなつている金額)一三、一〇九、一八二円を差引し、本年末の買掛金
残高(本年中に掛仕入れした商品代価であるが本年末に支払い未済となつている金
額)一四、八一二、〇五〇円を加算して一五三、五二一、九九七円を算定した。
(2) 普通預金から計算した仕入金額一、八三〇、三〇〇円
原告の三菱銀行渋谷支店の普通預金口座から掛仕入代金を支払つたものが一、八三
〇、三〇〇円ある。
(昭和三九年分)
販売原価の項目のうち、仕入金額二〇五、八九三、八五二円について
(ア) 前記昭和三八年分と同様の事情から、次のとおり計算した。
(イ) 販売原価の算定の基礎となる仕入金額二〇五、八九三、八五二円は、次の
(a)現金による仕入金額二〇、六四九、八九三円と(b)買掛金による仕入金額
一八五、二四三、九五九円との合計金額によつたものである。
(a) 現金による仕入金額二〇、六四九、八九三円
右金額は現金出納簿による現金仕入金額によつたものである。
(b) 買掛金による仕入金額一八五、二四三、九五九円
(1) 当座預金から計算した仕入金額一八四、三四一、四五九円
三菱銀行渋谷支店の原告名義の当座預金を通じて本年中に支払われた金額のうち、
買掛金の支払いに充当されたものの合計金額一八一、一三一、七二〇円から、前年
末の買掛金残高で本年中に支払われた金額(前年中に掛仕入れした商品代価で前年
末で未払いとなつている金額)一四、八一二、〇五〇円を差引し、本年末の買掛金
残高(本年中に掛仕入れした商品代価であるが本年末に支払い未済となつている金
額)一八、〇二一、七八九円を加算して、一八四、三四一、四五九円を算定した。
(2) 普通預金から計算した仕入金額九〇二、五〇〇円
原告の三菱銀行渋谷支店普通預金口座から掛仕入代金を支払つたものが九〇二、五
〇〇円ある。
(昭和四〇年分)
販売原価の項目のうち、仕入金額二二八、三四八、九二七円について
(ア) 前記昭和三八年分と同様の事情から、次のとおり計算した。
(イ) 販売原価の算定の基礎となる仕入金額二二八、三四八、九二七円は、次の
(a)現金による仕入金額二三、四四一、八二三円と(b)買掛金による仕入金額
二〇四、九〇七、一〇四円との合計金額によつたものである。
(a) 現金による仕入金額二三、四四一、八二三円
右金額は現金出納簿による現金仕入金額によつたものである。
(b) 買掛金による仕入金額二〇四、九〇七、一〇四円
(1) 当座預金から計算した仕入金額二〇二、九〇四、八〇四円
原告の取引銀行である三菱銀行渋谷支店と三井信託銀行渋谷支店の原告名義の当座
預金を通じて本年中に支払われた金額のうち、買掛金の支払いに充当されたものの
合計金額二〇〇、四一六、六七九円から前年末の買掛金残高で本年中に支払われた
金額(前年中に掛仕入れした商品代価で前年末で未払いとなつている金額)一七、
六九六、七八九円(前年末の買掛金残高は一八、〇二一、七八九円であるが、この
うち三二五、〇〇〇円は普通預金から支払われているので、当該金額をのぞいた金
額によつた。)を差引し、本年末の買掛金残高(本年中に掛仕入れした商品代価で
あるが、本年末に支払い未済となつている金額)一九、五三六、八一四円と本年中
に振出した商品代価の小切手であるが本年末に支払い未済となつている金額六四
八、一〇〇円を加算して、二〇二、九〇四、八〇四円を算定した。
(2) 普通預金から計算した仕入金額二、〇〇二、三〇〇円
三菱銀行渋谷支店の原告名義の普通預金口座から掛仕入代金を支払つたものが二、
三二七、三〇〇円あり、そのうちの三二五、〇〇〇円は前年末の買掛金残高を支払
つているので、これを差引いた二、〇〇二、三〇〇円が本年中の普通預金から計算
した仕入金額となる。
(2) 売上金額(第一次的主張)
(ア) 被告は、本件各係争年分の売上金額を前記販売原価から売上差益率によつ
て推計したものであるが、被告の係官による差益調べは別表(二)および(三)記
載のとおりである。また、差益率のウエイト調べおよび調査差益率の算定は別表
(四)記載のとおりであり、結局、百貨店分とストアー分とに二分してこれを別表
(五)記載のとおり売上原価区分の基準算定の表を作成し、この割合を販売原価に
乗じてそれぞれの調査差益率により売上金額を算定した。
(イ) 右差益調べは、その調査対象が一日の取扱い品目ではあるが、原告の事業
専従者である次男Bが、売値に対応する仕入値を記入した結果のものであつて、か
かる調査に際しては一般に低調に記入しこそすれ高率に記入することはあり得ず、
また値引を考慮しており、さらに調査対象品目の種類、数量を多くすることにより
対象日数や取扱品目によるバラツキを相消去しあうことは経験則上認められ、これ
を一年に引延ばすことは特段の事情のない限り一応合理的なのであり、また差益率
が暦年ほとんど変化しないものである。そして右差益率のウエイト調べは確かに一
〇日及び一月という期間ではあるが、原告の実際の仕入金額を基に取扱商品ごとに
按分した結果のものであるから、事業内容に格別変化のない限りこれを用いること
は一応合理的であり、また売上原価区分の基準調べは、業態の異なる百貨店とスー
パーに区分したうえ、原告の各店舗ごとの仕入金額の記帳がなされておらず不明で
あつたために各店舗ごとの売上金額の割合(なお、本件については売上金額につき
脱漏ありとするものであるが、割合としてみる限り大差はない。)を基準としたも
のであつて、これら原告自身の業態の調査結果によることは原告の実態に則した推
計方法ともいうべきものであり、それが他の方法による差益率に比較して低調であ
る等の事情のある限り一応合理的な方法として首肯できるものというべきである。
(ウ) 前記調査差益率は、別表(二)、(三)記載のとおり本件係争年分後であ
る昭和四三年六月の調査に基づくものであつて、係争年分毎の実際の差益率ではな
いけれども、審査請求の審理にあたつた担当協議官は原告の帳簿が極めて不完全で
あり、その申立も曖昧であつたのでやむを得ず前記日時調査のうえ前記調査差益率
を算出したものであり、しかも一般に差益率は各年によつてほとんど変動しないも
のであるから、前記調査差益率をもつて原告の売上金額を推計することは合理的で
あるというべきである。
(エ) ところで、被告の係官による右売上差益率についての調査検討は、昭和四
〇年分を中心としてなされており、昭和三九年分および昭和三八年分は昭和四〇年
分に準じてなされているので、まず、昭和四〇年分の推計根拠から明らかにする。
(昭和四〇年分)
販売原価二二八、三四五、九八八円に別表(五)記載の六二パーセントおよび三八
パーセントを乗じて、販売原価をそれぞれ二分し、それに別表(四)記載の調査差
益率二五・六七パーセントおよび二〇・七九パーセントを適用して売上金額三〇
〇、〇一三、六三九円を算定した。その計算内容は次のとおりである。
(a) 差益率二五・六七パーセント適用のもの(六二パーセント)
228、345、988円×62%=141、574、512円
141、574、512円÷(1-0.256=190467527
円・・・・・・・・・・・・・・・(1)
(b) 差益率二〇・七九パーセント適用のもの(三八パーセント)
228、345、988円×38%=86、771、476円
86、771、476円÷(1-0.2079)=109、546、112
円・・・・・・・・・・・・・・(2)
(6) 売上金額
(1) +(2) 190、467、527円+109、546、112円=30
0、013、639円
(昭和三九年分)
昭和三九年分の差益率は昭和四〇年分と格別の異同はなかつたので、昭和四〇年分
の差益率を使用し、昭和四〇年分と同様の方法により算定したが、それによると、
売上金額は二七〇、四三〇、九五九円である。その計算内容は次のとおりである。
(a) 差益率二五・六七パーセント適用のもの(六一・七パーセント)
205、862、293円×61.7%=127、017、034円
127、017、034円÷(1-0.256)=170、882、596
円・・・・・・・・・・・・・・・(1)
(b) 差益率二〇・七九パーセント適用のもの(三八・三パーセント)
205、862、293円×38.3%=78、845、259円
78、845、259円÷(1-0.2079)=99、548、363
円・・・・・・・・・・・・・・・(2)
(c) 売上金額
(1)+(2) 170、882、596円+99、548、363円=270、
430、959円
(昭和三八年分)
昭和三九年分に準じて算定したが、それによると、売上金額は二二八、九五三、三
四七円である。その計算内容は次のとおりである。
(a) 差益率二五・六七パーセント適用のもの(七〇・五パーセント)
173、331、227円×70.5%=122、198、515円
122、198、515円÷(1-0.2567)=164、399、93
2・・・・・・・・・・・・・・・(1)
(b) 差益率二〇・七九パーセント適用のもの(二九・五パーセント)
173、331、227円×29.5%=51、132、712円
51、132、712円÷(1-0.2079)=64、553、354
円・・・・・・・・・・・・・・・(2)
(c) 売上金額
(1) +(2) 164、399、932円+64、553、354円=22
8、953、347円
(3) 売上金額(第二次的主張)
仮に、右の売上金額(第一次的主張)が認められないとすれば、売上金額は次のと
おりである。
(ア) 被告は、本件係争年分後である昭和四四年ないし四六年分の原告の事業所
得を実地に調査したが、その結果、原告は右被告の調査に基づき修正申告書を被告
に提出した。
原告が被告に提出した右修正申告にかかる売上金額、販売原価、差益金額およびそ
の差益率は次のとおりである。
<略>
(イ) 右(ア)の原告の昭和四四年ないし四六年分の差益率の平均を求めると二
五・四〇パーセントとなる。
その算式を示せば次のとおりである。
44年分差益率 45年分差益率 46年分差益率
(25.69%+25.82%+24.70%)÷3=25.40%
そこで前記(三)(1)記載の販売原価に右の平均差益率を適用して原告の本件各
係争年分の売上金額を算出すれば次のとおりとなる。
38年分販売原価 平均差益率 38年分売上金額
173.331.227円÷(1-0.2540)=232.347.489円
39年分販売原価 平均差益率 39年分売上金額
205.862.293円÷(1-0.2540)=275.954.816円
40年分販売原価 平均差益率 40年分売上金額
228.645.988円÷(1-0.2540)=306.093.817円
(ウ) 一般に、原告のような鮮魚小売業においては、その営業における取扱品目
につき特段の変化をきたしたとか、その販売方式を従来の小売方式からデイスカウ
ント方式にしたとか、産地直売方式にしたとかのようにその営業形態に変動がない
限りにおいては、各年によつて差益率はさして変動しないものである。そして、原
告は本件係争各年と昭和四四年ないし四六年において営業形態に特段の変動はな
く、かつ、右差益率は原告の修正申告にかかる差益率であつて、しかも被告が実地
に調査した結果のものであるから、最も原告の実態を反映したものである。
したがつて、原告の昭和四四年ないし四六年の差益率を基にして売上金額を推計す
るのは合理的なものである。
(4) 経費および専従者控除額
後記四のとおりである。
一 二 被告の主張に対する原告の認否および反論
1 被告の主張3項(一)について
原告の本件各係争年分の総所得金額の内訳のうち、昭和四〇年分の配当所得金額が
二一七、七〇六円であることは認めるが、事業所得金額についてはいずれも争う。
2 同3項(二)(推計の必要性)について
原告が被告主張の各店舗において、魚類の小売業を営むものであることは認める
が、原告備付の帳簿書類に基づく正確な収支実額による所得金額の算定が不可能で
あつたとの主張は争う。
3 同3項(三)(推計の合理性)について
(一) 販売原価
(1) 本件各係争年分の期首商品たな卸高および期末商品たな卸高についてはい
ずれも認める。
(2) 本件各係争年分の仕入金額についてはいずれも争う。
仕入金額は、昭和三八年分は一七四、五一七、二五五円、昭和三九年分は、二〇
九、八三二、七二四円、昭和四〇年分は二二七、六九七、三一一円である。
(二) 売上金額(第一次的主張)
被告主張の売上金額の推計方法の合理性を争う。
被告は、昭和四三年六月に調査した調査差益率に基づき本件各係争年分の売上金額
を推計しているが、販売される魚類は何十種類、何百種類もあり、その価格も毎日
変動するうえ、夕方になれば半値近くに値引しても販売しなければならないものも
あり、また翌日は廃棄するようなものもでてくる魚類の小売業について、その売上
金額を何年も後に調査した差益率に基づいて推計すること自体が不合理きわまるの
みならず、最近のように経済界の変動が著しく、毎年労働賃金や物価が一割以上も
上昇している時代においては、売買差益も毎年変更しなければ経営自体が成立しな
いにもかかわらず、被告主張の推計方法はこれらの点をまつたく無視しており、不
合理である。
売上金額は、昭和三八年分は二一七、一六八、二八四円、昭和三九年分は二六〇、
五七〇、七六四円、昭和四〇年分は二八四、一八〇、七六二円である。
(三) 売上金額(第二次的主張)
推計方法の合理性を争う。
(四) 雑収入金額
被告の主張額をいずれも認める。
(五) 経費
(昭和三八年分)
被告主張の経費の内訳のうち、雇人費、減価償却費(建物)、店舗料、借入金利
子・割引料、貸倒引当金を否認しその余は認める。
経費は次のとおりである。
(1) 雇人費一〇、六七六、二四八円
その内訳は、一月分七五六、四七四円、二月分六九一、〇八七円、三月分七一八、
〇三七円、四月分八一九、六〇〇円、五月分八一五、七〇〇円、六月分八二〇、〇
〇〇円、七月分一、四二〇、五〇〇円、八月分八一〇、三〇〇円、九月分八〇三、
〇〇〇円、一〇月分七七八、五〇〇円、一一月分七七六、五〇〇円、一二月分一、
四六六、五五〇円である。
(2) 減価償却費(建物)八五、九一二円
償却資産である建物は、事務所一一・八三坪、店員宿舎二三坪の各木造建物であつ
て、その取得価額は二、二〇〇、〇〇〇円である。
(3) 店舗料二一、七一六、八二八円
原告の店舗はいずれも借店舗であつて、その店舗料は売上金額に対する割合によつ
て決められており、その割合は、池袋、五反田、大森、高円寺の各店の蒲焼の売上
については売上の一三パーセント、東急地下店一二パーセント、同カキ食品マーケ
ツト各一一パーセント、池袋、五反田、目黒の各店一〇パーセント、白木屋(東急
デパート日本橋支店)、東急のれん街の各店九パーセント、小杉、平塚の各店八パ
ーセントとなつている。そこで、これらの店舗料の割合を売上金額の平均一〇パー
セントとして店舗料二一、七一六、八二八円を算出した。
(4) 借入金利子・割引料一八六、二五〇円
被告の主張額との差額一二、〇九〇円の内訳は次のとおりである。すなわち、当座
預金は無利子であり、普通預金は少額でも利息がつくので、原告は、常に当座預金
の残高を少くするために普通預金へ振替えている。原告振出の手形や小切手が銀行
へ回つてきたとき、原告の当座預金の残高がなくとも銀行はその支払いをする習慣
になつている。そして原告は、後日その額を当座預金へ入金している。銀行はこの
取扱いについてあたかも当座貸越のような手続をとつているので、その都度少額の
利息がつく。その合計が年間一二、〇九〇円である。
(5) 貸倒引当金一三四、七二八円
原告は前記のとおり青色申告者であるから、貸倒準備金勘定への繰入額一三四、七
二八円の必要経費への算入が認められるべきである。
(6) 寄付金二〇、八〇〇円
その内訳は、三月二七日東横、東光合同従業員レクリエーシヨン費一〇、〇〇〇
円、五月二二日東横池袋店売出風船代三〇〇円、同月二七日事務所所在地の神社祭
礼一〇、〇〇〇円、六月一四日白木屋売出風船代五〇〇円である。
(昭和三九年分)
被告主張の経費の内訳のうち、荷造運賃、旅費通信費、事務費、雇人費、減価償却
費(建物)、店舗料、借入金利子・割引料、貸倒引当金を否認し、その余は認め
る。
経費は次のとおりである。
(1) 荷造運賃三、〇九六、三八一円
その内訳は、現金支払分一、二六〇、七五一円、小切手支払分一、一七五、六三〇
円および帳簿への記入もれの包装紙代六六〇、〇〇〇円である。右包装紙代の内容
は次のとおりである。すなわち、原告の店舗である東光ストアーの各店では、原告
の販売する魚類は全部東光ストアー専用の包装紙で包んで渡すことになつており、
その包装紙代として、原告は一か月五五、〇〇〇円を支払つていた。したがつて一
年分は六六〇、〇〇〇円となる。
(2) 旅費通信費五二八、六六四円
その内訳は、被告の主張額五二〇、八五一円に原告が志沢百貨店に電話料として支
払つた七、八一三円を加算した金額である。右電話料の内訳は八月一〇日四、〇一
五円、一〇月二五日二、二二六円、一一月一〇日一、五七二円である。
(3) 事務費一八、九五九円
その内訳は、被告の主張額一〇、五五九円に原告が一〇月二五日気生堂に支払つた
八、四〇〇円を加算したものである。
(4) 雇人費一三、一六四、七〇〇円
その内訳は、被告の主張額一二、二八二、七〇〇円に七月(盆月)と一二月(歳暮
月)に多数のアルバイトを使用した経費八八二、〇〇〇円(七月分四六〇、〇〇〇
円、一二月分四二二、〇〇〇円)を加算したものである。右八八二、〇〇〇円の支
出は、営業上の現金残高の関係で原告個人が立替支出したものである(その日の売
上金はその都度店舗の貸主に入金する関係で、毎日の売上金はその日の営業上の支
出に使用することができず、原告はたびたび営業上の支出を立替えることがあ
る。)が、原告の事業による収益が結局は原告個人に帰する関係上、右支出を金銭
出納帳に記載することを失念したものである。
(5) 減価償却費(建物)八五、九一二円
その内容は前記昭和三八年分と同じである。
(6) 店舗料二六、〇五七、〇七六円
右金額は、前記昭和三八年分と同じ理由から売上金額二六〇、五七〇、七六四円に
一〇パーセントを乗じて算出したものである。
(7) 借入金利子・割引料一八六、二五〇円
被告の主張額との差額一六、八九〇円の内容は昭和三八年分と同様である。
(8) 貸倒引当金三三九、三〇八円
原告は前記のとおり青色申告者であるから、貸倒引当金勘定への繰入額三三九、三
〇八円の必要経費への算入が認められるべきである。
(9) 寄付金二四、三六〇円
その内訳は、四月二五日明治神宮崇敬会会費一一、〇〇〇円、五月三日百貨店旅行
会一三、三六〇円の合計額である。右志沢百貨店分は業務上の支出であり、右明治
神宮分も営業所での勧誘に基づくものであるから、共に社会通念上業務上の支出と
いうべきである。
(10) 備品費八、五〇〇円
その内容は、八月一五日東京日産からボデイカバーを八、五〇〇円で買入れたもの
である。
(昭和四〇年分)
被告主張の経費の内訳のうち、旅費通信費、接待交際費、減価償却費(建物)、店
舗料、借入金利子・割引料を否認しその余は認める。
経費は次のとおりである。
(1) 旅費通信費七三七、八二二円
その内訳は、被告の主張額六二六、〇八三円に原告が志沢百貨店に支払つた電話料
六、〇七三円およびその他一〇五、六六六円を加算したものである。右電話料の内
訳は、四月二五日一、七五〇円、六月二五日二、一五四円、七月二五日二、一六九
円である。
(2) 接待交際費九九九、四〇二円
被告の主張額八四五、三〇二円との差額一五四、一〇〇円のうち三四、一〇〇円
は、従業員寮に備付けたテレビジヨンの購入代金である。
(3) 減価償却費(建物)八五、九一二円
その内容は前記昭和三八年分と同じである。
(4) 店舗料二八、四一八、〇七六円
右金額は、前記昭和三八年分と同じ理由から売上金額二八四、一八〇、七六二円に
一〇パーセントを乗じて算出したものである。
(5) 借入金利子・割引料一四三、七〇〇円
被告の主張額との差額三七〇円の内容は昭和三八年分と同様である。
(6) 寄付金三六、〇〇〇円
その内訳は、二月一日大島火災一、〇〇〇円、三月一日東横食料品課旅行会一五、
〇〇〇円、八月一九日川魚供養一〇、〇〇〇円、九月四日北町会祭礼一〇、〇〇〇
円である。
原告の住宅と本店事務所は同一場所にあり、そのすぐ近くに魚類の卸売市場があつ
て、原告の全仕入高の約半分は右市場から仕入れている。そのため、各種の寄付金
は業者として常に割当式に決められるので、町内の祭礼への寄付金をはじめ、大島
の火災への見舞金も業者としての社交上必要な支出であり、また販売所への寄付金
や魚類の供養費も営業上当然の支出である。
(7) 貸倒引当金一三三、五九九円
原告は前記のとおり青色申告者であるから、貸倒引当金勘定への繰入額一三三、五
九九円の必要経費への算入が認められるべきである。
(六) 専従者控除額
原告は前記のとおり青色申告者であるから、専従者控除額に昭和三八年分一二〇、
〇〇〇円、昭和三九年分一四三、八〇〇円、昭和四〇年分一七二、五〇〇円が正当
である。
四 原告の反論に対する被告の再反論
1 原告の反論3項(五)経費について
(昭和三八年分)
(1) 雇人費
原告主張の内訳のうち、六、七、八、一二月の各月支払賃金は争うが、その余は認
める。六月分に八二七、二〇〇円、七月分は一、四二一、六〇〇円、八月分は八〇
〇、五〇〇円、一二月分は一、四六一、五五〇円である。
(2) 減価償却費(建物)
原告主張の建物の価額は、原告が被告に申告した昭和三六年分の所得税の青色申告
決算書によると事務所(一一坪)六〇〇、〇〇〇円、店員宿舎(二三坪)一、二〇
〇、〇〇〇円であり、事務所については昭和三七年中け三七、〇〇〇円の資本的支
出があつたのでこれを加算して六三七、〇〇〇円とし、右各建物の減価焼却費を計
算すると次表のとおりとなる。
<略>
仮に原告主張のように右建物の取得価額が二、二〇〇、〇〇〇円であるとしてもそ
の減価償却費は右と同様の計算によつて七二、二六〇円にしかならない。
(3) 店舗料
原告主張の店舗料の算定は合理的でない。何故なら、店舗料に、遅くとも各年分の
所得税の確定申告書提出期限までには、店舗の貸主が精算しているものであるか
ら、店舗料率を推計するまでもなく、店舗料の実額を把握できるからである。
被告が計算した店舗料は、その実額を各貸主ごとに実地に反面調査し、確認したも
のである。
(4) 借入金利子・割引料
被告の主張額は、三菱銀行渋谷支店原告名義の普通預金から支払われた金額すなわ
ち三月二日四四、八四〇円、五月二一日四三、三六〇円、一一月一四日四二、九八
〇円小計一三一、一八〇円と同銀行原告名義の当座預金から八月二日に支払われた
四二、九八〇円の合計一七四、一六〇円である。
(5) 貸倒引当金
原告は前記のとおり本件青色申告承認取消処分により青色申告者でなくなつたか
ら、貸倒準備金勘定への繰入額一三四、七二八円は必要経費に算入されない(旧所
得税法施行規則--昭和四〇年政令第九六号所得税法施行令による改正前のもの。
以下同じ--一〇条の五参照)。また従前から積立てられていた貸倒準備金八〇
〇、四七四円の三分の一の金額二六六、八二四円が総収入金額に算入される(同規
則一〇条の八、二項参照--昭和三九年政令六九号による削除前のもの)。
(6) 寄付金
原告主張の内訳のうち、事務所所在地に寄付した分は家事上の経費で所得の処分で
ある。その余の支出については、領収書などの証拠書類がなく、また寄付金と事業
所得との関連についての証明がなされなかつたので全額否認したものである。
(昭和三九年分)
(1) 荷造運賃
被告の主張額の内訳は現金支払分が一、六〇三、八三九円であり、小切手支払分が
一、一七五、六三〇円である。原告主張の包装紙代六六〇、〇〇〇円は否認する。
(2) 旅費通信費
被告の調査によれば、原告が志沢百貨店に電話料七、八一三円を支払つた事実はな
い。
(3) 事務費
原告主張の事務費八、四〇〇円は、被告の調査時において、原告がその支払いの内
容について十分説明ができなかつたので、これを否誌したものである。
(4) 雇人費
原告主張のアルバイト料八八二、〇〇〇円の支出は、原告の営業上の備付帳簿にま
つたく記載がなく、支払つた事実が認められないので否認する。また、原告個人が
右支出を立替えたことも否認する。
(5) 減価償却費(建物)
被告の主張は昭和三八年分について述べたところと同じである。
(6) 店舗料
被告の主張は昭和三八年分について述べたところと同じである。
(7) 借入金利子・割引料
被告の主張額は、三菱銀行渋谷支店原告名義の普通預金から同支店に支払われた金
額すなわち三月四日四二、〇六〇円、五月一八日一五、八四〇円、八月四日四二、
九八〇円、一〇月三一日四一、六〇〇円小計一四二、四八〇円と同支店原告名義の
当座預金から九月一五日に支払われた二六、八八〇円の合計一六九、三六〇円であ
る。
(8) 貸倒引当金
原告は前記のとおり本件青色申告承認取消処分により青色申告者でなくなつたか
ら、貸倒引当金勘定への繰入額三三九、三〇八円は必要経費に算入されない(旧所
得税法施行規則一〇条の五参照)。また、同規則附則(昭和三九年政令六九号)四
項により、昭和三八年一二月三一日において有する貸倒準備金勘定の金額五三三、
六五〇円(昭和三八年分に総収入金額に算入した残りである三分の二相当額)は、
貸倒引当金勘定に繰入れた金額とみなして総収入金額に算入される。
(9) 寄付金
被告の調査時における原告の現金出納簿には、原告の主張する金額の支出の記載は
ない。また、明治神宮崇敬会への寄付金は家事上の経費で所得の処分であり、その
余の寄付金については事業遂行上直接の経費であることを証する書類等の呈示がな
かつたので否認したものである。
(10) 備品費
原告主張の備品費は被告の調査時において、その支出が明らかでなかつたので否認
したものである。
(昭和四〇年分)
(1) 旅費通信費
原告主張の電話料六、〇七三円支払いの事実およびその他一〇五、六六六円の支出
はいずれも否認する。
(2) 接待交際費
原告の主張額中被告の主張額を超える分一五四、一〇〇円のうち、テレビジヨン購
入代金三四、一〇〇円は、これを償却資産として資産勘定に振替え、残額一二〇、
〇〇〇円は、原告の決算額に計上されていない金額であつて、その資金の出所、支
払い先、支払い年月日、支払い理由等全く不明であるのでこれを否認したものであ
る。
(3) 減価償却費(建物)
被告の主張は昭和三八年分について述べたところと同じである。
(4) 店舗料
被告の主張は昭和三八年分について述べたところと同じである。
(5) 借入金利子・割引料
被告の主張額は、三菱銀行渋谷支店原告名義の普通預金から同支店に支払われた金
額すなわち一月二八日四二、〇六〇円、六月二九日四〇、四二〇円、八月一三日三
六、四七〇円、一一月一五日二四、三八〇円合計一四三、三三〇円である。
(6) 寄付金
原告主張の寄付金の内訳のうち、事務所所在地の祭礼に寄付した分および大島火災
への見舞金は、家事上の経費で所得の処分であり、その余の支出については、領収
書などの証拠書類がなく、また右寄付金と事業遂行との関連についての証明がなさ
れなかつたので否認したものである。
(7) 貸倒引当金
原告は前記のとおり本件青色申告承認取消処分により青色申告者でなくなつたか
ら、貸倒引当金勘定への繰入額一三三、五九九円は認められなくなり、必要経費不
算入となる。
2 原告の反論3項(六)専従者控除額について
(昭和三八年分)
原告は前記のとおり青色申告者ではないから、事業専従者控除額は、旧所得税法一
一条の二、三項一号、同法附則(昭和三八年法律第六六号)四条により七三、七五
〇円となる。
(昭和三九年分)
昭和三八年分と同様の理由から、事業専従者控除額は、旧所得税法一一条の二、三
項一号、同法附則(昭和三九年法律第二〇号)三条により八六、三〇〇円となる。
(昭和四〇年分)
昭和三八年分と同様の理由から、事業専従者控除額は、新所得税法五七条二項一号
および同法附則(昭和四〇年法律第三三号)四条により一一二、五〇〇円となる。
第三 証拠(省略)
○ 理由
一 本件各更正処分の経緯
請求原因1項(一)の事実は当事者間に争いがない。
二 本件各更正処分の違法事由の存否
1 手続上の違法事由の存否
(一) 請求原因2項(一)(1)の違法事由
原告は、旧所得税法二六条の三所定の青色申告の承認を受けている者であることを
前提として、本件各更正処分における更正通知書に更正の理由が附記されていない
から右各処分は違法であると主張し、右の理由附記がなされていないことは当事者
間に争いがない。
ところで、原告が青色申告の承認を受けていたところ、被告が原告に対し、本件各
更正処分をする以前の昭和四二年三月一日付の書面で、原告の昭和三八年分以後の
所得税について青色申告の承認を取消す旨の通知をなしたことは当事者間に争いが
ない。
したがつて、本件各更正処分について理由附記を要するか否かは、被告のなした青
色申告承認取消処分の効力の有無によつて左右されるものであるから、右取消処分
に関して原告の主張する請求原因2項(一)(1)(ア)および
(イ) の無効事由が存在するか否かについて判断する。
(1) 無効事由(ア)
本件青色申告承認取消通知書には、処分の相手方の記載がないことは当事者間に争
いがない。
成立に争いのない甲第四号証の一、二および証人C、Dの各証言によれば、被告
は、原告の青色申告の承認を取消し、その旨を原告に宛て通知すべく、「所得税の
青色申告証認取消通知書」と題し「あなたの青色申告書提出の承認については、所
得税法第一五〇条第一項に定める事由のうち、下記事由に該当することにより、そ
の事実があつたと認められる昭和三八年分以後、これを取消しましたから通知しま
す。事由所得税法第一五〇条第一項第 号」と記載された書面(甲第四号証の一)
を被告税務署名の印刷されてある封筒(甲第四号証の二)に同封し、右封筒の表に
原告の住所氏名を記載のうえ簡易書留をもつて郵送し、そのころ原告に到達してい
ることが認められ、これに反する証拠はない。
ところで、所得税法一五〇条二項によれば、青色申告承認取消処分を行なう場合に
は、相手方に対して書面で通知する旨規定しているが、通知書自体に相手方の住
所、氏名を記載することまでに要求されていないから、通知書自体に住所、氏名の
記載を欠いたからといつて、その一事をもつて直ちに処分としての効力が生じない
とする謂れはなく、通知書および封筒を一体としてみて処分の相手方が特定看取さ
れ、かつ右通知書が右の相手方に到達していれば、処分としての効力を生ずるに妨
げないものというべきである。しかるところ、本件においては、右の書面と封筒を
一体としてみれば、原告に対する青色申告承認取消処分の通知であることは明らか
であり、かつ右書面は、原告に到達しているのであるから、本件青色申告承認取消
処分の通知書に原告の氏名、住所の記載がないからといつてそのために右書面によ
る処分が無効となるものではないというべきである。
(2) 無効事由(イ)
本件青色申告承認取消通知書に、その取消処分の基因となつた事実が所得税法一五
〇条一項各号のいずれに該当するか附記されていないことは当事者間に争いがな
い。
ところで所得税法一五〇条二項において青色申告承認取消処分の通知書に理由附記
を命じた趣旨は、行政行為の慎重性、客観的合理性を担保し、行政庁の恣意を抑制
するとともに、処分の理由を相手方に知らせて不服の申立に便宜を与える趣旨に出
たものであるところ、本件通知書のように、所得税法一五〇条一項のいずれの号こ
該当するか記載がない場合には、相手方において、いかなる事実に基づき、いかな
る法規を適用して当該処分がなされたのかを了知することができないから、かかる
行政処分には、取消し得べき瑕疵が存するものと解すべきである。
しかし、行政行為が行政庁の権限に属する処分としての外形的形態を具有する限
り、その処分に関し違法の点があつても、その違法が重大でなければ、これを法律
上当然に無効となすべきではないというべきところ、本件青色申告承認取消処分に
は、法律の要請する理由附記を欠いた違法はあるけれども、形式的には要式行為と
しての方式の一つを欠き、実質的にはいかなる理由をもつて処分がなされたか不明
であるにとどまり、いかなる処分が行なわれたかは明白であるといえるのであるか
ら、当事者としては、かかる行政処分に対して法定の期間内に異議申立をなし、右
行政処分の取消を求めることができないとは解せられないので、本件のような違法
は処分を無効ならしめる重大な違法に該当するものではないと解すべきである。
したがつて、本件青色申告承認取消処分の通知書に理由附記がなされていないから
といつて、そのために右処分が無効となるものではないというべきである。
そうすると、被告のなした本件青色申告承認処分は有効であつて、原告は本件係争
年分の所得税について青色申告の承認を受けている者ではないこととなるから、本
件更正通知書に更正の理由が附記されていなかつたからといつて、何ら違法とする
瑕疵が存するものではないというべきである。
原告の主張は結局失当である。
(二) 請求原因2項(一)(2)の違法事由
証大Cの証言および弁論の全趣旨によつて真正に成立したものと認められる乙第一
四号証の一ないし六、証人C、Dの各証言を総合すれば、被告所属の係官D他一名
は、昭和四一年一一月上旬に二回、原告の本件各係争年分の所得税の調査のため原
告の事務所に臨み、原告の事業専従者である妻Pおよび従業員Eに面接し、同人ら
に事業内容、現金、帳簿記録、領収証等の管理状況等について質問し、かつ帳簿書
類の提示を求めたが、原告において記帳されている帳簿は、現金出納帳、売上帳、
掛仕入帳および小切手控帳のみであつて、総勘定元帳、経費帳および固定資産台帳
の記帳備付はなく、そのため原告の所得を把握することができなかつたので、係官
は、さらに原告の取引先の反面調査、取引銀行等の金融機関の調査、株式取得状
況、不動産取得状況の調査を行ない、右調査に基づいて、本件各更正処分をなした
ことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
原告は、被告が本件更正処分時において調査し把握した原告の売上金額は、係争年
順に二一八、五七三、九三四円、二六一、〇五一、九三二円、二八三、五七七、二
一一円であつて、原告の申告した売上金額よりも少なかつたとして、それを根拠に
本件各更正処分が調査に基づかず、感情や憶測により売上金額を想定してなされた
ものである旨主張する。
成立に争いのない甲第五号証の一、二(朱線抹消部分を除く)および証人Aの証言
によれば、右金額は、審査請求の調査担当官Aが原告の求めに応じて原処分の根拠
を説明するために作成、交付したメモ(甲第五号証の一、二)に記載されているも
のであるが、これは原処分の調査担当者が反面調査の結果得た原告の各貸店舗主に
対して報告した売上金額であり、あくまでも原告の所得調査過程のものであること
が認められる。
したがつて、右売上報告金額が申告売上金額より低額であるとの事実は、むしろ原
告の売上除外を疑う資料となりこそすれ、右売上報告金額をもつて直ちに売上金額
と認定すべきはずのものではないのであるから、前記金額の記載は、本件各更正処
分が調査に基づかずに感情や憶測により売上金額を想定してなされた証左とは到底
なしえないものであり、したがつて右事実をもつてしては本件各更正処分が調査に
基づいてなされたものであるとの前示認定を覆すにに足りないものである。
原告本人尋問の結果のうち右認定に反する部分は採用できない。
原告の主張は失当である。
2 所得金額の認定の適否
被告は、本訴において、実額から捕捉した販売原価から売上差益率によつて売上金
額を推計し、これに雑収入金額を加算し、さらに実額から捕捉した諸費及び専従者
控除額を控除した金額を原告の事業所得の金額として主張しているので以下右の所
得金額の認定の適否について判断する。
(一) 推計の必要性
原告が、東急デパート日本橋支店、東急デパート東横店、東急食品マーケツト、東
光ストアー大森店、東光ストアー五反田店、東光ストアー目黒店、東光ストアー小
杉店、東急のれん街および平塚市志沢百貨店等において魚類の小売業を営むもので
あることは当事者間に争いがない。
前掲乙第一四号証の一ないし六、証人C、Aの各証言および原告本人尋問の結果に
よれば、前記認定事実(1(二)の事実)のほか次の事実が認定できる。すなわ
ち、
原告の現金出納帳の記載によれば、帳簿残高が実残高と一致せず、また銀行の反面
調査とも金額、月日に齟齬があり、また売上帳においても記帳額と各貸店舗主や銀
行の反面調査の結果との不一致あるいは記帳洩れが認められ、その記帳内容の真実
性が疑われた。しかるに、原告は被告の係官の調査に対して納得できる説明をしな
いのみならず、原始記録の保存状況も悪かつた。しかも調査の過程で架空名義の預
金が発見され、その他株式の保有状況、不動産の取得状況から判断すると簿外の所
得の存在することが推測されるにも拘わらず、調査に対して原告は全く非協力的で
あり、原告の記帳している帳簿から原告の所得を直接算出することは不可能であつ
た。
以上認定のような事情のもとにおいては、原告の売上金額は、これを推計により算
出するよりほかに方法がなかつたものというべきであるから、被告において本件課
税処分をするについて推計によりこれをなしたことは適法であるというべきであ
る。
(二) 推計の合理性
(1) 販売原価
(昭和三八、三九年分)
昭和三八、三九年分の各販売原価については、被告主張額の限度で当事者間に争い
がない。
(昭和四〇年分)
前掲乙第一四号証の一ないし六、証人C、Aの各証言によれば、次の事実が認めら
れ、これを覆すに足りる証拠はない。
被告は、原告の販売原価の算定にあたり、現金による仕入金額に現金出納簿の記載
に基づいて計算し買掛金による仕入金額は取引銀行の預金元帳に基づいて計算した
ものである。ところで、原告は、現金仕入に関しては仕入帳を記帳していず、現金
出納簿は担当従業員Eが各売場専従者から交付を受けたメモあるいは領収証に基づ
いて、翌日記入しており、右の記帳は反復的、機械的な作業であつて、作為の介在
する余地が少ないものである。
また、原告は買掛金による仕入に関しては買掛帳を記帳、備付けていたが、発生額
のみを記載し、支払額と残高の記載をしておらず、記載内容にも不備な点や過誤が
認められた反面、右買掛金の支払はすべて銀行を通して行なわれていたものであ
る。
右認定事実によれば、被告が昭和四〇年分の仕入金額を現金出納簿あるいは預金元
帳によつて算定したことには十分の合理性が存するというべきである。
そうすると、原告の昭和四〇年分の販売原価は、証人Dの証言によつて成立が認め
られる乙第一四号証の四によつて認定(該当箇所に同号証の丁数を記載する。)で
きる次の(a)(b)の合計金額二二八、三四八、九二七円とするのが正当であ
る。
(a) 現金による仕入金額二三、四四一、八二三円(四四丁)
(b) 買掛金による仕入金額((1)十(2))二〇四、九〇七、一〇四円(四
五丁)
(1) 当座預金から計算した仕入金額 二〇二、九〇四、八〇四円
原告の取引銀行である三菱銀行渋谷支店と三井信託銀行渋谷支店の原告名義の当座
預金を通じて当該年中に支払われた金額のうち、買掛金の支払に充当されたものの
合計額二〇〇、四一六、六七九円(四五丁)から前年末の買掛金残高で本年中に支
払われた金額(前年中に掛仕入した商品代価で前年末で未払となつている金額)一
七、六九六、七八九円(四五丁)を控除し、右金額に当該年末の買掛金残高(本年
中に掛仕入した商品代価であるが、本年末に支払未済となつている金額)一九、五
三六、八一四円(四五丁)と本年中に振出した商品代価の小切手であるが本年末に
支払未済となつている金額六四八、一〇〇円(四五丁)を加算すると、二〇二、九
〇四、八〇四円となる。
(2) 普通預金から計算した仕入金額二、〇〇二、三〇〇巴昭和四〇年中に買掛
金の支払に充てられた金額二、三二七、三〇〇円から前年末の買掛残高で昭和四〇
年中に支払われた金頷三二五、〇〇〇円を控除すると二、〇〇二、三〇〇円とな
る。
原告は、昭和四〇年分の仕入金額は二二七、六九七、三一一円である旨主張し、証
人Eは、右金額は、同人が請求書、現金出納簿から算出したと証言するけれども、
本件全証拠によるも、右証言に対応する資料は明らかでないので右証言はたやすく
採用することができず、他に前記認定を覆して原告主張額を認めるべき証拠はな
い。
(2) 売上金額
被告は、本件各係争年分の原告の売上金額として、販売原価から売上差益率によつ
て推計した金額を主張する。
そこで、被告の採用した売上差益率の合理性の有無について判断する。
(a) 成立に争いのない乙第五、六号証の各一、証人Aの証言により真正に成立
したものと認められる
乙第五、六号証の各二、第二〇ないし第二二号証、証人A、Bの各証言を総合する
と次の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。
原告は、本件各係争年ころデパート、マーケツト内に一〇店前後魚類小売の店舗を
構えていたので、審査請求の審理にあたつた担当協議官は、デバート内の各店舗の
うちから東横百貨店新店地下売場を、マーケツト内の各店舗のうちから武蔵小杉駅
前東光ストアー地下売店をそれぞれ抽出して臨店し、売上差益率算出のための調査
を行なつた。
右調査の内容は、先ず右二店における取扱全商品につき、原告の次男Bの申立に基
づき、売値とこれに対応する仕入値を確定し、これから各商品別の差益率を別表
(二)のとおり算出した。
次に、全商品を貝類、小物、干物、切身、刺身の五品目に分け、各品目別の差益率
を単純平均により別表(四)のとおり算出した。
そして、右各品目別の差益率から品目毎の売れゆきを考慮した加重平均により店舗
全体の差益率を算出したが、その方法は、東横百貨店新店地下売場、武蔵小杉駅前
東光ストアー地下売店につき、それぞれ昭和四三年六月一日乃至同月一〇日、同年
五月一〇日乃至六月一〇日までの仕入伝票から各品目の全商品に対する割合(仕入
品目の仕入ウエイト)を算出し、各品目の売上差益率に右割合を乗じて算出したも
のである。その結果は、別表(四)のとおりである。
最後に、原告が営業を行なう全店舗につき、デパート内の店舗とマーケツト内の店
舗に二分し、売上高に応じた割合を求めると別表(五)のとおりとなり、右割合に
従つて、それぞれ、東横百貨店における差益率、武蔵小杉駅前東光ストアーにおけ
る差益率を適用して、原告の各係争年分の売上金額を算出すると、その結果は、被
告主張のとおり、昭和三八年分については、二二八、九五三、三四七円、昭和三九
年分については、二七〇、四三〇、九五九円、昭和四〇年分については、三〇〇、
〇一三、六三九円となる。
右認定事実によれば、被告が本訴において主張している売上差益率は公正・正確に
算出されているといえるので、これによる推計には合理性があると解するのが相当
である。
(b) 原告は、右差益率に不合理であるとし、その理由として、(ア)夕方にな
れば半値近くに値引しなければならないものもある。(イ)翌日は廃棄するような
ものもでてくる。(ウ)被告の用いた差益率は係争年より後になつて調査したもの
である旨主張する。
(ア) 証人E、Bの各証言および原告本人尋問の結果によれば、において値引し
て販売している事実は認められるが、右差益率の資料とした各商品別の差益率は、
審査請求担当協議官が、原告の店舗に臨場して、調査し、原告の次男Bに売値に対
応する仕入値を記入させたものであり、前掲乙第五、六号証の各一、二によれば、
まぐろとろ(売値四〇〇円、仕入値三五〇円)、小鯛(売値一二〇円、仕入値一一
〇円)、生さけ(売値七〇円、仕入値六五円)、大兵平目(売値三五円、仕入値三
〇円)等差益幅が非常に低い商品が含まれていることが認められ、このことからす
れば、Bは、商品差益率の調査にあたり、当日の値引を考慮して、売値、仕入値を
申告したものと推認される。
(イ) 証人Fの証言によれば、一般に、魚類小売商にあつては、冷蔵庫の利用、
仕入量の調整等により、特段の事情の存しない限り、商品を廃棄することはないこ
とが認められる。
したがつて、原告の(ア)および(イ)の主張は採用できない。
もつとも被告は、商目別の差益率の算定の過程において、乙第五、六号証の各一、
二記載のうち、さしみ盛合せ(売値二〇〇円、仕入値二〇〇円)、鯛さし(売値二
〇〇円、仕入値四〇〇円)等仕入値以下の売値の商品は算定の基礎として採用しな
かつたものであるが、右乙第五、六号証の各一は、Bの申告に基づいて記載された
ものであつて、およそ特定の商品に関して常時仕入値を割つて売ることは、特段の
事情のない限りは考えられないものであるから、これらの記載はたやすく措信しが
たく、したがつてこれらの商品を除外して売上差益率を算定した被告の推計方法に
不合理は認められないというべきである(なお、値引した結果、仕入値を割るとい
うことはありえないでもないが、売上差益率算定の過程でこれらの商品を含めるこ
とは特定の商品につき常に仕入値以下で売却することを意味し、これらを含めては
到底合理的な差益率を算出することは不可能であるというべきである)。
また、被告の差益率に関する臨店調査は一日のみであり、仕入価格は毎日変動する
ものであるといえるが、売上価格も仕入価格に応じて決められるのが通常であり、
特段の事情がない限り、当日の仕入価格の変動が差益率に影響を与えるものとは解
せられないので、特殊な状況の認められない本件調査にあつては、調査が一日であ
ることから、差益率算定の基礎資料として使用するには不合理であると断ずること
はできない。(ウ) 本件のように他の資料からみて過少申告の事実が窺われ、か
つ帳簿等の資料が不十分なため納税者の所得金額の実額が把握できない場合には、
係争所得年以降に調査した資料に基づき原告の所得金額を推計することも、やむを
えないというべきところ、証人F、Gの各証言および右証言により真正に成立した
ものと認められる乙第三〇号証によれば、差益率は年を異にしてもほとんど変動し
ないものと認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
したがつて、本件各係争午後の調査資料に基づいて、原告の所得金額を推計した被
告の方法に不合理はないというべきであつて、原告の(ウ)の主張も失当というべ
きである。
(三) 必要経費
原、被告間に争いのある必要経費について検討する。
(1) 雇人費(昭和三八、三九年分)
前掲乙第一四号証の四、証人C、Aの各証言によれば、原告の昭和三八、三九年分
の雇人費は、現金出納簿に記帳されている人件費、アルバイト費の合計で、それぞ
れ一〇、六六九、七四八円、一二、二八〇、七〇〇円となることが認められ、他に
右認定を左右するに足る証拠はない。
原告は、昭和三九年分につき七月と一二月にアルバイト費として八八二、〇〇〇円
を支出したところ、現金出納簿への記帳を失念したので、右金員も経費に含まれる
べきである旨主張するが、証人Eの証言、原告本人尋問の結果は具体性に乏しく採
用の限りではなく、他に右主張を認めるに足りる的確な証拠はないので、原告の右
主張は理由がない。
そうすると、右認定にかかる雇人費は、各年とも被告の主張する金額(昭和三八年
分については、認定額のとおり。昭和三九年分については、一二、二八二、七〇〇
円)を超えないことになる。
(2) 減価償却費(建物、昭和三八年ないし四〇年分)
前掲乙第一四号証の四および証人Cの証言によれば、原告の木造事務所の取得価額
は二六九、八〇〇円(事務所につき昭和三七年中に三七、〇〇〇円の資本的支出が
あつたことは被告の自陳するところであるのでこれを加算すると三〇六、八〇〇円
となる)、木造店員宿舎の取得価額は、七〇九、六〇〇円であることが認められ、
これに反する証拠はなく、右は被告の主張する取得価額(事務所につき六三七、〇
〇〇円、店員宿舎につき一、二〇〇、〇〇〇円)を超えないので、被告の主張に違
法はない。右認定に反する証人E、原告本人尋問の結果はたやすく措信しがたく、
他に右認定を覆すに足りる証拠はない。
そうすると、本件各係争年の減価償却費は、左表のとおり五九、四五二円となる。
(3) 店舗料(昭和三八年ないし四〇年分)
前掲乙第一四号証の二によれば、原告が各店舗の貸主に支払つた店舗料の実額は、
各年順に二七、八二二、九三〇円、二六、二九〇、六五四円、二三、〇七八、五一
一円であることが認められる。
これに対して原告は、店舗料は売上金額に対する割合で決められており、その割合
は各店舗によつて異なるが、平均して一〇%として店舗料を推計するのが合理的で
ある旨主張するけれども、前記金額が、貸店舗主に対する反面調査の結果把握した
実額である以上、右によるべきであつて、原告の主張は採用しがたい。
(4) 借入金利子、割引料(昭和三八年ないし四〇年分)
成立に争いのない乙第一六号証によれば、原告の階入金利子、割引料は、三菱銀行
渋谷支店の原告名義の普通預金および当座預金から支払われた金額の合計で、各年
別に順に一七三、三六〇円、一六八、三六〇円、一四二、五三〇円であることが認
められる。
原告は、当座貸越の利息に相当する金額を経費とすべきである旨主張するが、本件
全証拠によるも原告主張の事実を認めることができないので右主張は採用すること
ができない。
そうすると、右の借入金利子・割引料は、各年とも被告の主張する金額(昭和三八
年分につき一七四、一六〇円、昭和三九年分につき一六九、三六〇円、昭和四〇年
分につき一四三、三三〇円)を超えないこととなる。
(5) 貸倒引当金(昭和三八年ないし四〇年分)
前記認定のとおり本件青色申告承認取消処分により原告は、青色申告者でなくなつ
たために、旧所得税法施行規則一〇条の五により、貸倒準備金勘定への繰入額は、
必要経費に算入されず、また従前から積立てられていた貸倒準備金八〇〇、四七四
円については、昭和三八年分として、同規則一〇条の八、二項(昭和三九年政令六
九号による削除前のもの)により、右金額の三分の一の二六六、八二四円が、昭和
三九年分として、同規則附則四項(昭和三九年政令六九号)により右金額の三分の
二の金額五三三、六五〇円は、貸倒引当金勘定に繰入れた金額とみなされて、総収
入金額に算入されることとなる。
(6) 専従者控除額(昭和三八年ないし四年分)
前記判断のとおり、原告は、青色申告者でなくなつたために、原告の事業専従者控
除額は、昭和三八年分につき、旧所得税法一一条の二、三項一号、同法付則(昭和
三八年法律第六六号)四条により、七三、七五〇円、昭和三九年分につき、旧所得
税法一一条の二、三項一号、同法附則(昭和三九年法律第二〇号)三条により、八
六、三〇〇円、昭和四〇年分につき、新所得税法五七条二項一号及び同法附則(昭
和四〇年法律第三三号)四条により、一一二、五〇〇円となる。
(7) 荷造運賃(昭和三九年分)
原告は、荷造運賃費として、東光ストアー専用の包装紙代一か月五五、〇〇〇円を
月々支払い、合計六六〇、〇〇〇円にのぼる旨主張し、証人Eおよび原告本人は、
右主張に沿つた供述をしているけれども、他方、右各供述によると、右の支払に関
して記帳はなく、領収証も保存しておらず、金額も明確に記憶していないというの
であるから、右各供述はたやすく採用できず、他に右主張事実を認めるに足りる証
拠はないので、結局、原告の右主張は採用できない。
(8) 旅費通信費(昭和三九年、四〇年分)
原告は、被告の主張額のほかに昭和三九年については志沢百貨店に電話料として支
払つた金額として、七、八一三円、昭和四〇年については、電話料として、六、〇
七三円、その他の費用として一〇五、六六六円を加算すべきであると主張する。
しかしながら、前掲乙第一四号証の四および証人Cの証言によれば、原告の現金出
納簿もしくは小切手支払のいずれにも原告主張に沿う支払をなした旨の記載はな
く、結局、支出の事実がなかつたものと認められ、右認定に反する甲第一四号証の
四ないし六、第一五号証の三ないし五および証人Eの証言はにわかに措信しがた
く、他に原告の主張事実を認めるに足りる的確な証拠はないから、原告の右主張は
採用できない。
(9) 事務費(昭和三九年分)
原告は、昭和三九年分の経費として、気生堂に支払つた八、四〇〇円が控除される
べきである旨主張する。
証人Eの証言により真正に成立したことが認められる甲第一四号証の五および原告
本人尋問の結果によれば、原告は、右主張のとおり印刷代として八、四〇〇円を支
払つたことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
そうすると、昭和三九年において必要経費に算入される事務費は被告主張額に八、
四〇〇円が加算されることとなる。
(10) 寄付金(昭和三八年ないし四〇年分)
原告は、昭和三八年分の経費として、店舗の貸主である東横、東光両会社の従業員
合同レクリエーシヨン費、風船代、北町会祭礼寄付金、昭和三九年分の経費とし
て、明治神宮崇敬会への寄付金、志沢百貨店従業員の旅行会会費、昭和四〇年分の
経費として、大島火災見舞金、東横食糧品課旅行会費、川魚洪養、北町会、祭礼寄
付金名義の支出も含まれる旨主張する。
証人Eの証言により真正に成立したことが認められる甲第一二号証の八、一二、一
四、第一四号証の一、二、第一五号証の一、二、六、七によれば、原告が右各名目
で、原告主張のとおりの支出をした事実が認められる。
被告は、領収証等支出を窺わせるに足る資料の不存在を根拠に右支出を否認する
が、かかる支出においては領収証等を発行しない場合も多いといつてよいので、領
収証等の不存在の事実は右認定を左右するものとはいいがたい。
証人Eの証言、原告本人尋問の結果によれば、明治神宮崇敬会寄付金は、市場の職
員に明治神宮の世話人がおり、同人の勧誘に応じて支出したことが認められるが、
右が収入金額を得るために直接要した費用或は所得を生ずべき業務に関連して生じ
た費用であることを首肯せしめるに足る事情につき何ら立証がないから、これを必
要経費であるとすることはできない。
しかしながら、前掲証拠によれば、東横東光両会社の従業員の合同レクリエーシヨ
ン費、志沢百貨店従業員の旅行会会費、東横食糧品課旅行会費は、いずれも、原告
の貸店舗主の従業員との間の催事に関連した支出であり、風船代は、百貨店の売出
日に支出したものであり、祭礼寄付金は、原告事務所在地の祭礼に際して支出した
ものであり、大島火災見舞金、川魚供養費は、魚屋の業務継続上、相応の支出とい
うべきであつて、これらはいずれも、社会通念上、業務について生じた費用である
ということができ、経費として、原告の売上金額から控除されるべきである。
そうすると、本件各係争年において原告の必要経費に算入されるべき寄付金は、順
に二〇、八〇〇円、一三、三六〇円、一二六、〇〇〇円となる。
(11) 備品費(昭和三九年分)
原告は、昭和三九年中に購入した自動車用ボデイカバー代金八、五〇〇円が必要経
費に算入されるべきであると主張する。
証人Eの証言により真正に成立したものと認められる甲第一四号証の三および原告
本人尋問の結果によれば、原告主張のとおりの支出があつたことが認められ、これ
を左右するに足りる証拠はない。
してみると、昭和三九年において必要経費に算入される備品費として八、五〇〇円
が認められるべきこととなる。
(12) 接待交際費(昭和四〇年分)
原告は、被告の主張額を超える部分一五四、一〇〇円のうち、三四、一〇〇円はテ
レビジヨン購入代金であるので、経費に算入されるべきであると主張する。
前掲乙第一四号証の二および原告本人尋問の結果によれば、原告は、昭和四〇年中
に従業員寮に備えつけたテレビの代金として三四、一〇〇円を支出したことが認め
られるが、被告は、右購入資金を減価償却資産として資産勘定に振替え、その償却
費を必要経費に算入しているので、結局原告の主張は認められないこととなる。
原告の前記主張額のうち、右以外の分については支払先、支払年月日、支払用途等
が具体的でなく、本件全証拠によるも、右主張に該当するような支払の事実を認め
ることはできないので、原告の主張は採用しがたい。
そうすると、原告の本件各係争年の経費のうち、被告の主張額を超えるものは、左
表のとおりとなる。
三 結語
原告の本件各係争年分の総所得金額は、売上金額から販売原価を控除し、雑収入金
額を加算し(雑収入金額については当事者間に争いがない。)、経費を控除する
と、昭和三八年分については、一四、三六六、八七六円、昭和三九年分について
は、一六、五八二、六九〇円、昭和四〇年分については、一六、七五四、二七七円
となり、いずれも本件各更正処分における総所得金額(昭和三八年分は、一一、二
九六、五五六円、昭和三九年分は裁決により減額された一三、二七七、三九三円、
昭和四〇年分は裁決により減額された一六、五二七、〇八三円)を超えるので、本
件各更正処分に、原告主張のような、所得金額を過大に認定した違法は存しない。
よつて、本件各更正処分および本件各賦課決定はいずれも適法であり、これが違法
であるとしてその取消を求める原告の本訴請求はいずれも理由がないので棄却する
こととし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決す
る。
(裁判官 内藤正久 山下 薫 飯村敏明)

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