弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     当審における未決勾留日数中六十日を本刑に算入する。
     当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 本件控訴の趣意は、末尾添附の被告人及びその弁護人沢邦夫各作成名義の控訴趣
意書と題する書面に記載してあるとおりであるが、これに対し当裁判所は左のとお
り判断する。
 <要旨>弁護人沢邦夫の控訴趣意第一点について。
 指紋は人によつて異なるとともに、同一人の指紋が一定不変であつて、個人識別
の絶対的な証明力を有することは今日何人もこれを争わないところである。所論指
紋照会回答書記載のAなる者の罪歴は東京地方検察庁からの依頼により府中刑務所
内法務府矯正保護局指紋係が被告人から採取した指紋と対照の上確認されたものに
かかるのみならず、被告人は原審公判廷において、これが回答書記載の罪歴を明ら
かに自認しているところであるから、該記載の罪歴該当者の氏名、本籍、住居に被
告人のそれと異なるものがあるにも拘わらず、その罪歴の被告人の罪歴たることは
ついにこれを否定し得べくもない。而して、被告人が昭和二十七年二月五日東京高
等裁判所において窃盗の罪により懲役壱年、執行猶予五年の判決を受けた事実があ
るにしても、それは当時における調査の粗漏から右回答書記載の罪歴を発見するに
至らなかつた偶然の結果によるものと言わざるを得ない。果して然らば、原審が、
前示Aの罪歴を被告人の前科として認定判示したことは正当であつて、これが前科
を認定したるについて、所論いうが如き審理不尽による原判決破棄の事由たるべき
過誤ありとすることはできない。論旨は理由がない。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 大塚今比古 判事 河原徳治 判事 中野次雄)

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