弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中有罪部分を破棄する。
     本件を原裁判所に差し戻す。
         理    由
 弁護人副島次郎の控訴趣意は記録に編綴されている同弁護人及び弁護人高木厳各
提出の控訴趣意書記載のとおりであるからこれを引用する。
 弁護人副島次郎の控訴趣意第二点及び弁護人高木巌の控訴趣意第一点について。
 原判決が原判決(一)(三)(五)の各事実認定の証拠として所論引用のA1、
A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、A10、A11、A12、A
13、A14、A15、A16、A17、A18、A19、A20の各供述調書
(作成日附いずれも昭和二十七年十二月十三日のもの合計二十通)を採用している
ことは原判決に照し明白である。しかして原審において右書類はいずれも検察官作
成に係る供述調書即ち刑事訴訟法第三百二十一条第一項第二号によるものとして検
察官より証拠請求がなされ原審は訴訟関係人の異議に係らず同号該当書面として其
の証拠調を為したことも<要旨>記録上明瞭である。しかるところ凡そ刑事訴訟法第
三百二十一条第一項第二号に所謂検察官の面前における供</要旨>述を録取した書
面とは検察官自らが供述者を取り調べその供述を自から又はその取調べに立会つた
検察事務官において録取しその内容を供述者に閲覧させ又は読み聞かせて其の相違
なき旨を確かめ然る後供述者、作成者及び録取者共に署名押印したものを指称する
のであつて検察事務官のみが供述者を取り調べ、その供述を録取した後検察官立会
の上その内容を供述者に読み聞かせ其の相違なき旨を確かめ供述者、検察事務官及
び検察官共に署名をなした書面の如きは刑事訴訟法第三百二十一条第一項第二号の
書面に該当しないものと解すべきである(検務局係官が検察官の会同においてなし
た質疑回答……最高裁判所事務総局昭和二十七年七月刑事手続法規に関する通達質
疑回答集参照)。そこで前記供述調書の内A18の第一回供述調書、A19の第三
回供述調書、A20の第二回供述調書につき検討して見ると右はいずれも昭和二十
七年十二月十三日附B検事作成名義の調書であつで録取者はA18についてはC検
察事務官他の二名についてはD検察事務官であることが右各調書自体に徴し明白で
あるところ原審第七回公判調書中証人A18、A19、A20、C、Dの各供述記
載を綜合すると此等の調書はC又はDの各検察事務官が前記三名の取調べをなしそ
の供述を録取した後読聞かせの際B検事が同席し各供述者、B検事、各録取者が夫
々右各調書に署名押印した事実が認められるのであるからこれを目して刑事訴訟法
第三百二十一条第一項第二号に所謂検察官の面前における供述を録取した書面と謂
い得ないのは勿論である。従つて右A18、A19、A20の各調書を同号該当書
面として採用した原審の措置は採証の誤をおかしたものと謂わざるを得ない。次に
右三調書を除く爾余の前記十七個の各供述調書につき検討して見ると該調書もすべ
て昭和二十七年十二月十三日附B検事作成名義であつで録取者はC、Dの外E、
F、G、Hの各検察事務官であることが右調書自体により明白であるところ本件記
録に徴すればB検事は昭和二十七年十二月十三日単独にてI、J、Kの三人を取調
べた外E事務官立会の上被告人Lをも取調べてその調書を作成していることが明認
せられ従つて形式上同日だけで合計二十一名分(前認定のA18、A19、A20
の分を除く)の合計八十八枚に亘る供述調書を作成したこととなるのである。しか
し右の如く二十一名分合計八十八枚の供述調書を同日内に作成することは経験則に
照し全く不可能と謂わざるを得ない。然らば前記A1外十六人の供述調書(前示二
十通の内A18、A19、A20の分を除く)も亦夫々当該録取者である検察事務
官等のみが各供述者を取り調べその供述を録取した後においてB検事が同席の上そ
の内容を供述者に読み聞かせその相違なき旨確かめてB検事、当該録取者及び供述
者がこれに署名押印したものではないかと疑うべきは理の当然である。然るに何等
此点を審究することなく漫然該調書を刑事訴訟法第三百二十一条第一項第二号に該
当する書面としてその証拠調をなした原審の措置は審理不尽のそしりを免かれな
い。更に原判決が原判示(二)及び(四)の証拠として引用した所論Mの検察官に
対する供述調書は作成名義人検事Bとあるを検事Nと訂正したものなること同調書
自体に徴し明かなるところO、Lの検察官に対する各供述調書も右同様作成名義人
検事Bとあるを検事Nと訂正せられあることが当該調書により明認せられるのであ
る。しかして此等調書もすべて形式上検察事務官立会の上昭和二十七年十二月十三
日附を以て作成されている事実と前段説明した如く同日附B検事名義の多数調書が
作成せられた事実とに思を致すとき右Mの検察官に対する供述調書も亦前同様検察
事務官のみにより録取せられたのではないかと疑わざるを得ない筋合となる。従つ
て原審が此の点を究明せず漫然証拠として採用したのも審理不尽の違法があると断
ぜざるを得ぬ。しかも以上の違法はいずれも判決に影響を及ぼすこと明瞭である。
右の次第により他の控訴趣意に対する判断を為すまでもなく原判決は刑事訴訟法第
三百九十七条により破棄を免れない。結局論旨はいずれも理由がある。
 そして当裁判所は本件記録及び原裁判所において取調べた証拠によつて直ちに判
決をすることは相当でないものと認め他の控訴趣意についての判断を省略し原判決
中有罪部分を破毀した上、刑事訴訟法第四百条本文に従い本件を原裁判所に差し戻
すこととし、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 下川久市 裁判官 青木亮忠 裁判官 鈴木進)

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