弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
この判決に対する上告のための附加期間を90日と定める。
       事   実
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
(1) 特許庁が昭和61年審判第22615号事件について平成6年10月14
日にした審決を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告
主文1、2項同旨の判決
第2 請求の原因
1 特許庁における手続の経緯
 原告は、昭和59年10月3日ゴシック体で「HYPERchannel」の欧
文字を横書きしてなる商標(以下「本願商標」という。別紙目録(イ)参照)につ
き、商標登録出願(昭和59年商標登録願第105766号)をしたが、昭和61
年7月25日拒絶査定を受けたので、同年11月19日審判を請求し、昭和61年
審判第22615号事件として審理され、指定商品については、昭和62年1月2
6日付け手続補正書をもって商標法施行令(平成3年政令第299号による改正前
のもの。以下同じ)第11類(以下「旧第11類」という。)「電子計算機用デジ
タルデータ信号高速転送装置、その他の電子応用機械器具(医療機械器具に属する
ものを除く)」に補正したが、平成6年10月14日「本件審判の請求は、成り立
たない。」との審決があり、その謄本は、同年11月30日原告に送達された。な
お、出訴期間として90日が附加された。
2 審決の理由の要点
(1) 本願商標の構成及び指定商品は、前項記載のとおりである。
(2)① 商標登録第959780号商標(以下「引用A商標」という。別紙目録
(ロ)参照)は、ゴシック体で「NEW HYPER」の欧文字(「NEW」と
「HYPER」の各文字間に一文字程度の間隔を有する。)を横書きしてなり、旧
第11類「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具に
属するものを除く)電気材料」を指定商品として、昭和44年11月26日に商標
登録出願、昭和47年4月24日に商標権設定登録、昭和57年5月27日及び平
成4年5月28日いずれも商標権存続期間更新登録がなされたものである。
 商標登録第1904420号商標(以下「引用B商標」という。別紙目録(ロ)
参照)は、別紙に表示したとおりの構成よりなり、旧第11類「電気機械器具、電
気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材
料」を指定商品として、昭和56年3月19日に商標登録出願、昭和61年10月
28日に商標権設定登録がなされたものである。
② よって按ずるに、本願商標は、前記のとおり大文字「HYPER」と小文字
「channel」との結合によりなるものであるところ、構成中前半の「HYP
ER」の文字が「上方、超過、過度」の意味の英語の結合辞であるのに対し、後半
の「channel」の文字が「水路、海峡、(テレビジョン等の)チャンネル」
等を意味する英語であるから、本願商標は、両語が結合された結果、その語義にお
いて特定の意味合いが生ずるような観念上の結び付きがみられない等、本願商標を
常に一体のものとみるべき特段の事情にあるものということができない。
 そして、本願商標は、大文字と小文字という書体の顕著に異なる外観上の構成か
ら、簡易迅速を尊ぶ商取引の実際に照らして、大文字「HYPER」と小文字「c
hannel」の各文字が分離して観察されるべきものであるというを相当とす
る。
 また、構成中前半の「HYPER」の文字が前記意味合いを有する語であるとし
ても、これが、商品を表すものとして一般的に親しまれたものとも認められないか
ら、自他商品の識別機能を果たし得ないものということもできない。
 してみれば、本願商標からは、構成全体より一連に生ずる「ハイパーチャンネ
ル」の称呼のほか、構成中前半の「HYPER」の文字に相応する、単に「ハイパ
ー」の称呼をも生ずるものといわざるを得ない。
③ 一方、引用A商標は、前記のとおり、「NEW」と「HYPER」に一文字程
度の間隔を有する「NEW HYPER」の文字よりなるものであるところ、構成
中前半の「NEW」の文字は、「新しい」「新型の」の意味の英語として一般に熟
して用いられているばかりでなく、商取引上においては、「新製品」「新型」を意
味する商品の品質表示の文字として普通に採択、使用されている実情にあるところ
から、引用A商標の自他商品識別の機能を果たす部分は、後半の「HYPER」の
文字にあるものというを相当とし、これよりは、構成全体より生ずる「ニューハイ
パー」の称呼のほか、後半の「HYPER」に相応する、単に「ハイパー」の称呼
をも生ずるものといわざるを得ない。
 他方、引用B商標は、前記のとおり図形と文字との結合によりなるものであると
ころ、図形商標と上部2箇所に亘って楕円白抜き内に2段横書きして表された商標
権者の代表的出所標識「National」及び商標権者が商品「電池」について
広く使用しているとみられる個別商品標識とみられる「HYPER」の各文字にお
いても各々独立して自他商品の識別標識たり得るものというを相当とし、これより
は、一連に生ずる「ナショナルハイパー」の称呼のほか、両当該構成文字に相応す
る、単に「ナショナル」又は「ハイパー」の称呼をも生ずるものといわざるを得な
い。
④ してみれば、本願商標と引用両商標とは、共通の「ハイパー」の称呼におい
て、彼此互いに相紛れるおそれがあるものというを相当とする。
 また、本願商標と引用両商標とは、同一又は類似の商品を指定商品とするもので
あること明らかである。
⑤ したがって、本願商標と引用両商標とは、外観及び観念の異同について論及す
るまでもなく、称呼において類似する商標であり、かつ、指定商品においても、そ
の抵触を免れず、結局、本願商標は、商標法4条1項11号(平成3年法律第65
号による改正前の規定。以下同じ)に該当し、登録することができない。
3 審決の取消事由
 審決の認定判断のうち、審決の理由の要点(1)は認める、(2)①は認める
が、②ないし⑤は否認ないし争う。
 審決は、本願商標の要部の認定を誤り、ひいては本願商標の称呼の認定を誤り、
引用両商標の称呼との類否の判断を誤ったものであるから、違法であり、取消しを
免れない。
(1) 本願商標の要部の認定の誤り
① 審決は、まず本願商標を大文字「HYPER」と小文字「channel」と
の結合によりなるものであるとし、本願商標を常に一体のものとみるべき特段の事
情にあるものということができないとする。
 しかしながら、アルファベットを一連に横書きした商標は、これを分離して観察
すべき特段の事情が認められない限り、これを一体としてみるべきである。一連に
記載した商標は、一連に記載することに意味があるのであり、大文字と小文字の組
合せからなる一連の商標は、大文字からなる部分と小文字からなる部分とを当然に
分離して観察してよいというものではない。
 審決は、本願商標の要部の認定にあたって、まず、本願商標を「HYPER」部
分と「channel」部分に分けて捉えるべき特段の事情があるか否かを検討す
べきであるにもかかわらず、この検討を欠いたまま、大文字の「HYPER」部分
と小文字の「channel」部分とに区別して観察するとの前提をとり、その上
で「一体のものとみるべき特段の事情」を云々したものであって、そもそも論理の
立脚点を誤っている。
② 審決は、本願商標には、大文字と小文字の顕著に異なる外観上の構成があり、
かつ簡易迅速を尊ぶ商取引の実際に照らすと、大文字の「HYPER」と小文字の
「channel」の各文字が分離観察されるべきであるとするが、この審決の認
定は、既存の登録例及び実際の使用例を全く考慮しておらず、このため、2つの点
で明白な誤りを犯している。
 その1つは、大文字と小文字の部分を安易に「顕著に異なる外観上の構成」とし
て、分離して観察されるべきものとした点である。後述のとおり、「HYPER」
の文字を含む商標は、本願商標の指定商品である旧第11類の商品において無数の
登録例があり、「HYPER」を語頭に置く商標に絞ってみても多数の登録例が存
在する。その理由は、「HYPER」なる語が他の語と結び付いて新たな語を形成
する接頭語であるということ、また、この語の有する意味(「SUPER」のさら
に上を行く「超越した」との意味を有する。)からくる良好な印象を有する語であ
る等によるものといえよう。
 このように、「HYPER」を含む語のいわば氾濫した現状をみれば、単に「H
YPER」の文字を語頭に冠しても、当該商標の印象は比較的薄いといわざるを得
ない。そこで、商標商標は、本来の英語の標記としてはあり得ない大文字と小文字
を一連一体のものとすることにより、新しさを演出したのである。大文字からなる
「HYPER」の文字に続けて小文字で「channel」と記載し、「HYPE
Rchannel」との一連の文字からなる商標としたのは、この意味で必然であ
り、審決の言に従えば、「常に一体のものとみるべき特段の事情」が存在するので
ある。本願商標は、一連一体の商標であるから、商標としての出所表示機能、識別
機能を発揮し得るのであり、これを分離してしまったのでは全く意味がない。審決
は、本願商標の一連性、一体性の意味を全く看過している。
 このような大文字と小文字の語を一連に横書きしてなる商標は、特に本願商標の
指定商品である電子計算機関連商品では近年頻繁に使用される傾向にあり、取引
者、需要者にとってこの種商標は何らの違和感なく、一連一体のものとして受け取
られている。例えば、「NetWare」、「SPARCstation」、「D
ynaBook」その他多数である。
 審決のもう1つの誤りは、「HYPER」と「channel」を分離観察すべ
き理由として、簡易迅速を尊ぶ商取引の実際を挙げている点である。
「HYPER」ないし「ハイパー」を含む無数の既存登録が存在し、しかも、これ
らの商標が実際に多数使用されている事実に鑑みれば、「HYPER」のみでは到
底自他商品識別力を有しないのが現実であり、商取引の実際においては、「HYP
ER」とのみ称したのでは、どこの商品であるのか容易に識別することは困難であ
る。特に、「HYPER」ないし「ハイパー」を語頭に有する言葉は、商標に限ら
ず一般に広く種々の形で使用されており、「ハイパー」何々と称呼することに特段
の違和感も冗長感もない。例えば、「ハイパーカード」と一連に称することは極め
て自然なことであって、かえって、これを単に「ハイパー」とのみ称することは考
えられない。このように、「HYPER」ないし「ハイパー」を含む商標が多数使
用されている現状においては、如何に簡易迅速を尊ぶ商取引の世界といえども、
「HYPER」ないし「ハイパー」を語頭に有する商標を単に「ハイパー」とのみ
称することなどないというべきである。
 本願商標についても、「ハイパーチャネル」と称することが特に冗長であるわけ
でもなく、特に「ハイパー」何々と称することに慣れている本願商標の指定商品で
ある電子計算機関連商品を扱う取引者にとっては、これを一連に称することの方が
自然である。
 審決は、取引の実際を極めて観念的にしか捉えず、本願商標の指定商品に関する
「商取引の実際」を看過したものである。
③ 審決は、引用B商標の要部認定において、特に当該商標の「HYPER」部分
について、商標権者が「電池」について広く使用している個別商品標識であるとし
ているが、本願商標の要部認定においても、この引用B商標の「HYPER」部分
が「広く使用されている」との知識に引きずられた印象が強い。「Nationa
l HYPER」の「HYPER」は良く知っているから、本願商標からも当然
「HYPER」の部分が抽出される筈との思込みがあったのではなかろうか。
 原告も「National HYPER」が電池について広く知られていること
は争うものではないが、それは、あくまで商品「電池」についてであって、本願商
標の指定商品については全く使用の事実はない。本願商標の指定商品と「電池」と
は類似しない。本願商標の指定商品に「HYPER」何々との商標を付したところ
で、電池の「National HYPER」を想起する者など皆無であろう。
(2) 既存登録及び実際の使用例並びに審決例
① 「HYPER」ないし「ハイパー」を含む商標の登録例は枚挙に暇のないほど
であり、「HYPER」ないし「ハイパー」を語頭に含むものに限定してみても、
極めて多数の登録例が存在することが分かる。
 いずれも指定商品を旧第11類とする登録例を例示すると、「HYPERTRO
N」、「Hypernet」(筆記体で表記)、「HIPER―VAC」、「HI
PERSYNC ハイパーシンク」(2段に表記)、「Hipershot」、
「Hyper Mail」、「ハイパーリフィル HYPERREFILL」(2
段に表記)、「HyperLook」、「HYPER―PLAN ハイパープラ
ン」(2段に表記)、「HYPERWINDOWS」、「Hyper―Soni
c」、「HyperToucH」、「Hyperman」、「HYPERBO
X」、「Hyper―MEDLAS」、「HYPER DRUMMER ハイパー
ドラマー」(2段に表記)、「HYPERWORK」、「HYPERDRAW」、
「HYPER PAINT」、「HYPERSTAR」等である。
 これらの既存登録商標は、いずれも審決の引用する「NEW HYPER」(引
用A商標)及び「National HYPER」(引用B商標)と併存して登録
を認められていたもので、つまり、これらの商標は、引用両商標と類似しないとみ
られているのであるが、本願商標と引用両商標とを比較した場合、上記既存登録商
標に比べて本願商標の方がより引用両商標に類似したものであるとする理由はな
い。
 なお、引用両商標は、互いに連合商標となっていない。このことは、引用A商標
と引用B商標とが互いに類似しないということに他ならない。引用両商標からいず
れも「ハイパー」の称呼が生ずるとの審決の認定に従えば、引用A商標と引用B商
標とは互いに称呼類似のはずであるのに、両商標は独立の商標として登録されてい
るのであるから、審決の認定は、この点で破綻している。
② 「HYPER」を含む商標等の具体的使用例をみるに、電子計算機関連分野に
おいては、「HYPER」ないし「ハイパー」を語頭に冠した用語は極めて広範に
使用されている。
 例えば、ソフトウエアの商標として「HyperCard」、「HyperTa
lk」等があり、これらの商品を包括する概念として「Hypertext」とい
う語が用いられる。また、ハードウエアとして「Hypercube」、「Hyp
er ROBO」がある。さらには、極度のインフレを表す言葉として「ハイパー
インフレーション」(hyper―inflation)、超高速を表す言葉とし
て「ハイパースピード」(hyperspeed)、極超音速を表す言葉として
「ハイパーソニック」(hypersonic)、マルチメディアを統一したメデ
ィアを表す言葉として「ハイパーメディア」(hypermedia)、超音速航
空機を表す言葉として「ハイパーソニック・トランスポート」、スーパー・ステー
ションを超克した意味での「ハイパー・ステーション」(hyper stati
on)、さらには「ハイパーネットワーク」(hypernetwork)、「ハ
イパーマーケット」(hypermarket)「ハイパーマート」(hyper
mart)等々の言葉が用いられている。また、レザープリンターに「HYPER
 16」及び「ハイパー 16」なる商標が使用されている例もある。
 これらは、いずれも辞書、辞典類に記載されたものであり、このことは、これら
の語が社会的に定着した用語であることを示している。
 以上のように、「HYPER」ないし「ハイパー」を語頭に冠した用語、商標は
極めて多岐に亘って使用されており、電子計算機関連商品を扱う取引者、需要者
は、これらの言葉、商標をそれぞれ識別して使用しているということができる。
 したがって、単に「HYPER」の語を含むというだけの理由で、本願商標と引
用両商標とが類似するとした審決は、上記取引の実態と全く矛盾したものといわざ
るを得ない。
③ 審決例をみても、取引の実際において、「HYPER」の語を語頭に有する言
葉、商標が広範に使用されており、取引者、需要者がこれを容易に識別している事
実を認識し、「HYPER」を語頭に有する商標の出願に対する拒絶査定を取り消
し、当該商標の登録を認めたものが存在する。
 なお、この拒絶査定に引用されていた「HYPER」の文字を一連に横書きして
なる登録商標(登録第1558050号)は、当時存在したけれども、現在その登
録は抹消されており、現時点において「HYPER」の文字からなる登録商標は存
しない。
(3) 以上のとおり、本願商標のうち、「HYPER」の文字部分のみを独立し
て認識すべき特段の事情がないにもかかわらず、審決は、「HYPER」の部分の
みを取り出し、これと引用両商標と類否判断したものであり、その判断は誤りであ
る。
第3 請求の原因に対する認否及び被告の主張
1 請求の原因1、2は認めるが、同3は争う。審決の認定判断は正当である。
2(1) 本願商標の要部の認定の誤りについて
① 本願商標は、これを構成する「HYPER」と「channel」の各文字が
いずれが主従の関係にあるともみられない成語であり、かつ、「HYPER」がす
べて大文字で、「channel」がすべて小文字で表されていることから、審決
は、両文字を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に
結合しているものと認められない旨の判断をしたものである。
 原告が、分離して観察されていないものとする既存登録例もしくは実際の使用例
と本願商標とは、その構成要素を明らかに異にするから、両者を同列に論ずること
はできない。
 すなわち、本願商標は、これを構成する前記の2語が文字の大小をもって表記さ
れている。これに対し、原告の主張する登録商標中の「HYPERTRON」、
「Hypernet」、「HIPERSYNC」、「Hipershot」、「H
YPERREFILL」、「HyperLook」、「HYPERWINDOW
S」、「HyperToucH」、「Hyperman」、「HYPERWOR
K」、「HYPERSTAR」の商標は、一部に構成中の語頭のみが大文字よりな
り、これに続く文字が小文字である場合があるとしても、全体として同じ書体、同
じ間隔、同じ大きさで一連に書されたと看取されるものであり、外観上不可分一体
に強く結合しているとみることができる。
 同じくその主張に係る「HIPER―VAC」、「HYPER―PLAN」、
「Hyper―Sonic」、「HyPer―MEDLAS」の登録商標は、左右
前後の文字をハイフンをもって結合を強める構成により一体感が付与されていると
みるべきである。
 同じくその主張に係る「HyPer Mail」、
「HYPER BOX」、「HYPER DRUMMER」、「HYPER DR
AW」、「HYPER PAINT」の登録商標は、「HYPER」又は「HyP
er」の文字とこれに続く構成文字との間にやや間隔が存するとしても、結合する
左右の文字が同じ書体、同じ大きさよりなるところに一体感を看取させるものであ
る。
 したがって、これらの事例と本願商標とは同一視し得ない。
② 商標の類否判断の準則としては、「簡易、迅速をたつとぶ取引の実際において
は、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほ
ど不可分的に結合しているものと認められない商標は、常に必らずしもその構成部
分全体の名称によって称呼、観念されず、しばしば、その一部だけによって簡略に
称呼、観念され、1個の商標から2個以上の称呼、観念の生ずることがあるのは、
経験則の教えるところである。」と判示されている。(最高裁判所昭和37年
(オ)第953号事件判決)
 さらに、上記の準則に伴い、これを具体化する特許庁の運用基準(これは公開さ
れている。)においては、「大小のある文字からなる商標は、原則として、大きさ
の相違するそれぞれの部分からなる商標と類似する。」と掲記されている。
 以上の準則に従い、本願商標の構成中、顕著に表された大文字よりなる「HYP
ER」の部分と小文字よりなる「channel」の部分とを分離して観察し、も
って、「HYPER」の部分を要部として認定した審決の判断に誤りはない。
(2) 原告が主張する取引の実情について
① 原告は、本願商標が大文字「HYPER」に小文字「channel」を続け
て記載した点について、これを「常に一体のものとみるべき特段の事情」が存する
旨を述べるが、文字商標については、近時、商品別、企業別に様々のレタリングが
施されて表記されているのが実情であるから、本願商標の構成をもって特段の事情
とすべきでなく、また、本願商標に特段の事情が存するとする証左も提出されてい
ない。
② 原告は、また、大文字と小文字の語を一連に横書きしてなる商標が、電子計算
機関連商品に頻繁に使われる傾向があり、この種商品は、一連一体のものとして受
け取られる旨を「NetWare」、「SPARCstation」、「Dyna
Book」等の事例を挙げて述べている。しかしながら、これらの事例は、もとも
と特定の語意を持つ単一語であったり、特定の商標名であったりするもので、それ
ぞれ一連のものとして把握されるべき格別の事情が存するというべきであるから、
これを理由に本願商標についてまで分離観察すべきでないとする原告の主張は、失
当である。
③ 原告は、さらに、電子計算機関連分野においては、「HYPER」ないし「ハ
イパー」を語頭に冠した用語、商標が広範に使用されており、電子計算機関連商品
を取り扱う取引者、需要者は、これらの言葉、商標をそれぞれ識別して使用してい
るといえるのに、審決は、上記取引の実態を無視していると主張する。
 しかしながら、本願商標の指定商品中には、電子計算機以外の商品も包含されて
おり、その需要者も、必ずしも電子計算機に精通する者のみではないことから、本
願指定商品中の一般的、平均的需要者において、本願商標の構成中の「HYPE
R」の文字を電子計算機の用語として常に必ず認識するということはできない。
④ 原告は、引用A商標と引用B商標との連合関係の存否について、引用両商標が
互いに連合商標となっていない旨を主張する。
 しかしながら、引用B商標が引用A商標と類似するか否かは、その構成の把握方
法において、本願商標とは異なる場合があるから、これと一律に論ずべきものでは
ない。審決は、本願商標と引用両商標との類否について個別に判断したものであっ
て、引用両商標の連合関係の有無が直接に審決の類否判断に影響を与えるとみるべ
きではない。
(3)「HYPER」の文字が自他商品の識別力を有するか否かについて原告は、
「HYPER」の文字のみでは自他商品識別力を有しないと主張する。
 なるほど、「HYPER」の文字が原告主張の如き語義を有することは、これを
認め得るところである。しかしながら、原告の提出する甲号各証によっても、「S
UPER」の文字とは異なり、「HYPER」の文字のみならず、その表音「ハイ
パー」の文字が未だ一般的に親しまれているということはできないし、「HYPE
R」の欧文字が独立して商品の品質を表示する語として取引上普通に使用されてい
る事実を見出せない。
 さらに、「HYPER」若しくは「ハイパー」又は「HYPER(Hype
r)」と「ハイパー」の組合せの各文字よりなる商標は、それのみにおいて、産業
分野を問わず多数の類に現在も有効に商標登録されている。(乙第8号証ないし第
38号証)
 また、「Hyper」の欧文字よりなる商標が、本願商標の指定商品を包含する
旧第11類「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具
に属するものを除く)電気材料」の指定商品について、登録第1558050号商
標として登録されていた(平成4年12月24日存続期間の満了により商標権に抹
消登録がなされた。)事実が存し、この事実は原告も認めるところであり、このこ
とは、「HYPER」の文字が識別力を有することを裏付けている。
 このように、「HYPER」(「Hyper」)の文字が他の語に冠して品質表
示的に使用されている事例が一部に存することのみをもって、「HYPER」の文
字よりなる商標が、当然に自他商品の識別力を有しないものとすることはできない
から、この点における原告の主張は、失当である。
 また、「HYPER」の文字を語頭に冠しても当該商標における「HYPER」
の印象は比較的薄い旨の原告の主張も、同様に失当である。
(4)以上に述べたとおり、審決には、原告所論の違法はない。
第4 証拠関係(省略)
       理   由
第1
1 請求の原因1(特許庁における手続の経緯)、同2(審決の理由の要点)は、
当事者間に争いがない。
2 請求の原因3(審決の取消事由)について検討する。
(1)① 本願商標は、別紙目録(イ)記載の構成からなり、指定商品を旧第11
類「電子計算機用デジタルデータ信号高速転送装置、その他の電子応用機械器具
(医療機械器具に属するものを除く)」とするものであり、引用両商標は、それぞ
れ同目録(ロ)記載の構成からなり、指定商品をいずれも旧第11類「電気機械器
具、電気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電
気材料」とするものであることは、当事者間に争いがない。
② よって、按ずるに、本願商標は、前記のとおり、欧文字で、大文字の「HYP
ER」と小文字の「channel」が文字間の間隔なく接続されているものであ
る。
 そして、成立に争いのない甲第2号証(「日本語になった外国語辞典」集英社1
994年3月15日発行)によれば、「HYPER」とは英語で「超越、過度に、
非常な」等の意味を有する接頭語であることが認められ、また、「channe
l」とは同じく英語で「水路、海峡、(テレビジョン等の)チャンネル」等の意味
を有するものであることは公知の事実であるところ、この意味からして、両者の結
合によりその語義に特定の意味合いが生ずると認められず、この点での結付きが強
いものであるということはできない。
 さらに、その書体は、大文字の「HYPER」と小文字の「channel」を
文字間の間隔なく接続するものであるから、英語の通常の表記方法とは異なってお
り、この表記方法からしても、両者が1つの語をなすといった強い結付きを有する
ものとすることもできない。
 このような大文字と小文字という書体の異なる外観上の構成及びその結合度が強
いといえないことからすると、本願商標につき、「HYPER」と「channe
l」の両文字を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分
に結合しているものと認められないというべきである。
 そうすると、簡易迅速を尊ぶ商取引の実際においては、大文字「HYPER」と
小文字「channel」が分離されて認識され、本願商標中の「HYPER」の
部分が取引者、需要者の最も注意を惹く要部をなすと認めるのが相当である。
 これにより、本願商標からは、構成全体から一連に生ずる「ハイパーチャンネ
ル」若しくは「ハイパーチャネル」の称呼のほかに、単に「ハイパー」の称呼をも
生ずるというべきである。
③ 一方、引用A商標は、前記のとおり、欧文字の大文字で、「NEW」と「HY
PER」が一文字程度の間隔を置いて接続されているものである。
 そして、構成前半の「NEW」の文字は、「新しい、新型の」等の意味を有する
語であって、商品の品質を表示するものとして通常使用されているといえるから、
自他商品識別機能を果たすといえず、引用A商標で自他商品識別機能を果たす部分
は、後半の「HYPER」にあると認められる。
 そうすると、引用A商標からは、構成全体より生ずる「ニューハイパー」の称呼
のほか、単に「ハイパー」の称呼をも生ずるというべきである。
 他方、引用B商標は、前記のとおりの構成よりなり、図形の上部2箇所に楕円白
抜き内に2段に横書きして、上段に小文字(語頭のみ大文字)で商標権者の代表的
出所標識である「National」が、下段に該商標権者が商品「電池」につい
て広く使用していることについて当事者間に争いのない個別商品標識といえる「H
YPER」が表記されており、この場合、「National」と「HYPER」
の各文字が各々独立して自他商品の識別力を有すると認められる。
 そうすると、引用B商標からは、構成全体より生ずる「ナショナルハイパー」の
称呼のほか、単に「ナショナル」又は「ハイパー」の称呼をも生ずるというべきで
ある。
④ 原告は、アルファベットを一連に横書きした商標は、これを分離して観察すべ
き特段の事情が認められない限り、これを一体としてみるべきである旨主張する
が、前示のとおり、本願商標は、外観上の構成及びその結合度等を斟酌して分離し
て観察できるものであって、アルファベットを一連に横書きした商標であれば常に
これを一体として観察すべきであるとの主張はとり得ず、また、原告は、本願商標
は、一連一体のものとして出所表示機能、識別機能を発揮し得るのであり、これを
分離してしまったのでは全く意味がない旨主張するが、必ずしも一連一体とみるこ
とができないことは前示判断のとおりである。
(2)① 原告は、「HYPER」ないし「ハイパー」を含む無数の既存登録が存
在し、これらは分離して観察されていないと主張する。
 しかしながら、被告の主張するように、原告が例示する登録商標中の「HYPE
RTRON」、「Hypernet」、「HIPERSYNC」、「Hipers
hot」、「HYPERREFILL」、「HyperLook」、「HYPER
WINDOWS」、「HyperToucH」、「Hyperman」、「HYP
ERWORK」、「HYPERSTAR」の商標は、一部に語頭のみが大文字より
なり、これに続く文字が小文字である場合があるとしても、全体として同じ書体、
同じ間隔、同じ大きさで一連に書されたと看取されるものである。
 また、その主張に係る商標登録中の「HIPER―VAC」、「HYPER―P
LAN」、「Hyper―Sonic」、「HyPer―MEDLAS」の登録商
標は、左右前後の文字をハイフンをもって結合を強める構成により一体感が付与さ
れているといえるものである。
 同じくその主張に係る商標登録中の「Hyper Mail」、「HYPER 
BOX」、「HYPER DRUMMER」、「HYPER DRAW」、「HY
PER PAINT」の登録商標は、「HYPER」又は「Hyper」の文字と
これに続く構成文字との間に1文字程度の間隔が存するけれども、結合する左右の
文字が同じ書体、同じ大きさからなっており、英語の通常の表記方法が採られてい
ることと相まって、一体感を看取させるものである。
 このように、原告の挙げる既存登録商標例と本願商標とを同一に論ずることはで
きない。
② 原告は、電子計算機関連商品では、大文字と小文字の語を一連に横書きしてな
る商標が頻繁に使われる傾向がある旨主張し、その例として「NetWare」、
「SPARCstation」、「DynaBook」等を挙げるが、成立に争い
のない甲第4号証(「日経コンピュータ」1994年7月4日発行)によれば、こ
れらの商品名の商品がコンピュータ関連商品として掲載されていることは認められ
るものの、これによっても、未だ電子計算機関連商品について大文字と小文字の語
を一連に横書きしてなる商標が頻繁に使われているとまで認定するに至らない。
 また、原告は、電子計算機関連分野においては、「HYPER」ないし「ハイパ
ー」を語頭に冠した用語、商標が広範に使用されており、電子計算機関連商品を取
り扱う取引者、需要者は、これらの言葉、商標をそれぞれ識別して使用していると
いえる旨主張するところ、本件全証拠によっても、未だその事実を認めるに至らな
いのであるが、さらに、被告も主張する如く、本願商標の指定商品中には、電子計
算機以外の商品も包含されており、その需要者も、必ずしも電子計算機に精通する
者のみではないといえるから、本願指定商品の一般的、平均的需要者において、本
願商標の構成中の「HYPER」の文字を電子計算機の用語として常に必ず認識す
るということはできない。
(3)① 原告は、「HYPER」の文字のみでは、自他商品識別力を有しないと
主張する。
 原告のいうように「HYPER」ないし「ハイパー」を語頭に冠した用語が電子
計算機関連分野で使用されているとしても、「HYPER」ないし「ハイパー」の
文字が現時点で「スーパー」よりさらに優れたものを表す語として社会生活に浸透
し極く親しく使用されているものであると認めることはできない。すなわち、成立
に争いのない甲第3号証(「現代用語の基礎知識」自由国民社1994年1月1日
発行)によれば、その「ハイパー(hyper)」の項には、「「スーパー」のさ
らに上をゆく超越的が響きがするため最近よく使われる。」(1365頁)と記載
されていることが認められるが、他方、成立に争いのない乙第2号証(「広辞苑」
岩波書店1991年11月15日発行)、同第3号証(「大辞林」三省堂1988
年11月3日発行)、同第4号証(「国語大辞典」小学館1988年11月10日
発行)、同第5号証(「国語辞典」集英社1993年4月30日発行)、同第6号
証(「JIS 工業用語大辞典」日本規格協会1991年11月20日発行)、同
第7号証(「コンピュータ用語辞典」講談社昭和60年8月15日発行)によれ
ば、これらの辞典類において、「スーパー」はより優れたという意味を表す語とし
て広く使用されているのが、「ハイパー」の語は「スーパー」よりさらに優れたも
のとして使用されていることは少なく、「ハイパー」という語が掲載されていない
場合もあることが認められる。
 また、原告主張の「HYPER」を含む商標の登録例が多く存するという一事を
もって「HYPER」の欧文字が商品の品質を表示する語として取引上普通に使用
されているとはいえないし、ほかにかかる事実を認めるにたりる証拠もない。
 そして、成立に争いのない乙第8号証ないし第38号証(いずれも商標公報)に
よれば、本願商標とは指定商品の異なる分野であるが、多数の類で「HYPER」
ないし「ハイパー」又は「HYPER」と「ハイパー」の組合せの各文字よりなる
商標が登録されている事実を認めることができる。
 さらに、「HYPER」の欧文字よりなる商標が、旧第11類の指定商品につい
て登録されていた(登録第1558050号)ことは、当事者間に争いがない事実
である。
 このような事実からして、「HYPER」の文字よりなる商標は、自他商品識別
力を有しないとする原告の主張は、採用することができない。
② 原告は、引用A商標と引用B商標とが互いに連合商標となっていない旨主張す
るが、本件においては、本願商標と引用両商標との類否を検討すべきであるから、
引用両商標間が連合関係にないことを理由として、本願商標を引用商標と類似しな
い商標であるとすることはできない。
(4) 以上により、本願商標と引用両商標とは、共通の「ハイパー」の称呼にお
いて互いに相紛れるおそれがあり、また、前示(1)①認定のとおり、同一又は類
似の商品を指定商品とするものである。
 したがって、本願商標と引用両商標とは、外観、観念の異同について検討するま
でもなく、称呼において類似する商標であり、商標法4条1項11号に該当し、登
録することができない。
(5) 以上のとおりであって、審決の判断に、原告主張の違法はない。
第2 よって、原告の本訴請求は、理由がないからこれを棄却することとし、訴訟
費用の負担及び附加期間の定めについて、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89
条、158条2項を各適用して、
主文のとおり判決する。
(裁判官 竹田稔 関野杜滋子 持本健司)
別紙目録(イ)
別紙目録(ロ)
引用A商標
引用B商標
<30334-001>

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