弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
一 本件訴えのうち、被告品川区建築主事が、富洋モータース株式会社に対し、確認済証番号第H15確認
-工品川区YYYYYY号により建築確認をした擁壁について、平成16年1月29日付けでした検査済証(第
H15確済-工品川区ZZZZZZ号)の交付の取消しを求める部分を却下する。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、原告の負担とする。
事実及び理由
第一 当事者の求める裁判
一 請求の趣旨
1 被告品川区建築主事が、富洋モータース株式会社に対し、確認済証番号第H15確認-工品川区YY
YYYY号により建築確認をした擁壁について、平成16年1月29日付けでした検査済証(第H15確済-工品
川区ZZZZZZ号)の交付を取り消す。
2 被告品川区建築審査会が、原告に対し、平成16年6月9日付けでした裁決を取り消す。
二 被告らの本案前の答弁
 本件訴えをいずれも却下する。
第二 事案の概要
一 事案の骨子
 本件は、被告品川区建築主事が、富洋モータース株式会社に対して建築確認をした擁壁について、平
成16年1月29日付けで検査済証(第H15確済-工品川区ZZZZZZ号)を交付したため、上記擁壁によって
生命、身体及び財産の危険を被るおそれがある旨主張する原告が、被告品川区建築審査会に対し、上記検
査済証の交付の取消しを求めて審査請求したところ、同被告が同年6月9日付けでこれを却下する旨の裁決
をしたので、原告が、被告品川区建築主事に対し、上記検査済証の交付処分の取消しを求めるとともに、被
告品川区建築審査会に対し、上記裁決の取消しを求める事案である。
二 関係法令の定め
1 平成16年法律第111号による改正前の建築基準法(以下「建築基準法」という。)
(一) 1条
 この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康
及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする。
(二) 6条(なお、同条1項1号にいう別表は省略した。)
1項  建築主は、第1号から第3号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合
においては、建築物が増築後において第1号から第3号までに掲げる規模のものとなる場合を含む。)、これら
の建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合…(中略)…においては、当該工事に
着手する前に、その計画が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建
築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地、構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命
令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。以下同じ。)に適合するものであることについて、確認の申請
書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない。当該確認を受けた建築物
の計画の変更(国土交通省令で定める軽微な変更を除く。)をして、第1号から第3号までに掲げる建築物を
建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第1号から第3号までに掲
げる規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする
場合…(中略)…も、同様とする。
1号  別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合
計が100平方メートルを超えるもの
2号  木造の建築物で3以上の階数を有し、又は延べ面積が500平方メートル、高さが13メートル若
しくは軒の高さが9メートルを超えるもの
3号  木造以外の建築物で2以上の階数を有し、又は延べ面積が200平方メートルを超えるもの
(以下省略)
2項から5項まで (省略)
6項  第1項の確認済証の交付を受けた後でなければ、同項の建築物の建築、大規模の修繕又は大
規模の模様替の工事は、することができない。
(以下省略)
(三) 7条
1項  建築主は、第6条第1項の規定による工事を完了したときは、国土交通省令で定めるところによ
り、建築主事の検査を申請しなければならない。
2項  前項の規定による申請は、第6条第1項の規定による工事が完了した日から4日以内に建築主
事に到達するように、しなければならない。(以下省略)
3項 (省略)
4項  建築主事が第1項の規定による申請を受理した場合においては、建築主事又はその委任を受
けた当該市町村若しくは都道府県の吏員(以下この章において「建築主事等」という。)は、その申請を受理し
た日から7日以内に、当該工事に係る建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合しているかどうかを検
査しなければならない。
5項  建築主事等は、前項の規定による検査をした場合において、当該建築物及びその敷地が建築
基準関係規定に適合していることを認めたときは、国土交通省令で定めるところにより、当該建築物の建築主
に対して検査済証を交付しなければならない。
(四) 7条の2
1項  第77条の18から第77条の21までの規定の定めるところにより国土交通大臣又は都道府県知
事が指定した者が、第6条第1項の規定による工事の完了の日から4日が経過する日までに、当該工事に係
る建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合しているかどうかの検査を引き受けた場合において、当
該検査の引受けに係る工事が完了したときについては、前条第1項から第3項までの規定は、適用しない。
2項及び3項 (省略)
4項  第1項の規定による指定を受けた者は、同項の規定による検査の引受けを行ったときは、当該検
査の引受けを行った第6条第1項の規定による工事が完了した日又は当該検査の引受けを行った日のいず
れか遅い日から7日以内に、第1項の検査をしなければならない。
5項  第1項の規定による指定を受けた者は、同項の検査をした建築物及びその敷地が建築基準関
係規定に適合していることを認めたときは、国土交通省令で定めるところにより、当該建築物の建築主に対し
て検査済証を交付しなければならない。この場合において、当該検査済証は、前条第5項の検査済証とみな
す。
6項  第1項の規定による指定を受けた者は、国土交通省令で定めるところにより、同項の検査の結果
を特定行政庁に報告しなければならない。
7項  特定行政庁は、前項の規定により第1項の検査をした建築物及びその敷地が建築基準関係規
定に適合しない旨の報告を受けたときは、遅滞なく、第9条第1項又は第7項の規定による命令その他必要な
措置を講ずるものとする。
(五) 7条の6第1項本文
 第6条第1項第1号から第3号までの建築物を新築する場合又はこれらの建築物(共同住宅以外の住
宅及び居室を有しない建築物を除く。)の増築、改築、移転、大規模の修繕若しくは大規模の模様替の工事
で、廊下、階段、出入口その他の避難施設、消火栓、スプリンクラーその他の消火設備、排煙設備、非常用の
照明装置、非常用の昇降機若しくは防火区画で政令で定めるものに関する工事(政令で定める軽易な工事
を除く。以下この項、第18条第13項及び第90条の3において「避難施設等に関する工事」という。)を含むも
のをする場合においては、当該建築物の建築主は、第7条第5項の検査済証の交付を受けた後でなければ、
当該新築に係る建築物又は当該避難施設等に関する工事に係る建築物若しくは建築物の部分を使用し、又
は使用させてはならない。
(六) 9条
1項  特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反し
た建築物又は建築物の敷地については、当該建築物の建築主、当該建築物に関する工事の請負人(…(中
略)…)若しくは現場管理者又は当該建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者に対し
て、当該工事の施工の停止を命じ、又は、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増
築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために必要
な措置をとることを命ずることができる。
2項から6項まで (省略)
7項  特定行政庁は、緊急の必要がある場合においては、前5項の規定にかかわらず、これらに定め
る手続によらないで、仮に、使用禁止又は使用制限の命令をすることができる。
8項から11項まで (省略)
12項  特定行政庁は、第1項の規定により必要な措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた
者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき、又は履行しても同項の期限までに完了する見込
みがないときは、行政代執行法(…(中略)…)の定めるところに従い、みずから義務者のなすべき行為をし、
又は第三者をしてこれをさせることができる。
(以下省略)
(七) 12条
1項及び2項 (省略)
3項  特定行政庁、建築主事又は建築監視員は、建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若
しくは占有者、建築主、設計者、工事監理者若しくは工事施工者又は第77条の21第1項の指定確認検査機
関に対して、建築物の敷地、構造、建築設備若しくは用途又は建築物に関する工事の計画若しくは施工の状
況に関する報告を求めることができる。
4項 (省略)
5項  特定行政庁は、建築基準法令の規定による処分に係る建築物の敷地、構造、建築設備又は用
途に関する台帳を整備するものとする。
6項  前項の台帳の記載事項その他その整備に関し必要な事項は、国土交通省令で定める。
(八) 88条1項
 煙突、広告塔、高架水槽、擁壁その他これらに類する工作物で政令で指定するもの及び昇降機、ウォ
ーターシュート、飛行塔その他これらに類する工作物で政令で指定するもの(以下この項において「昇降機
等」という。)については、第3条、第6条(…(中略)…)、第6条の2、第6条の3(…(中略)…)、第7条、第7条
の2、第7条の3、第7条の4、第7条の5(…(中略)…)、第8条から第11条まで、第12条第3項から第6項ま
で、第13条、第18条(…(中略)…)、第20条、第32条、第33条、第34条第1項、第36条中第33条及び第3
4条第1項に関する部分、第37条、第40条、第3章の2(…(中略)…)、前条、次条並びに第90条の規定を、
昇降機等については、第7条の6、第12条第1項及び第2項並びに第18条第13項の規定を準用する。
(九) 93条の2
 特定行政庁は、確認その他の建築基準法令の規定による処分に関する書類のうち、当該処分に係る
建築物又はその計画が建築基準関係規定に適合するものであることを表示している書類であって国土交通
省令で定めるものについては、国土交通省令で定めるところにより、閲覧の請求があった場合には、これを閲
覧させなければならない。
(一〇) 94条1項
 建築基準法令の規定による特定行政庁、建築主事若しくは建築監視員又は指定確認検査機関の処
分又はこれに係る不作為に不服がある者は、行政不服審査法第3条第2項に規定する処分庁又は不作為庁
が、特定行政庁、建築主事又は建築監視員である場合にあっては当該市町村又は都道府県の建築審査会
に、指定確認検査機関である場合にあっては当該処分又は不作為に係る建築物又は工作物について第6条
第1項(第87条第1項、第87条の2又は第88条第1項若しくは第2項において準用する場合を含む。)の規定
による確認をする権限を有する建築主事が置かれた市町村又は都道府県の建築審査会に対して審査請求を
することができる。
(一一) 95条
 建築審査会の裁決に不服がある者は、国土交通大臣に対して再審査請求をすることができる。
(一二) 96条
 第94条第1項に規定する処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する建築審査
会の裁決を経た後でなければ、提起することができない。
2 平成10年法律第100号による改正前の建築基準法7条
1項  建築主は、第6条第1項の規定による工事を完了した場合においては、その旨を工事が完了した
日から4日以内に到達するように、建築主事に文書をもって届出なければならない。
2項  建築主事が前項の規定による届出を受理した場合においては、建築主事又はその委任を受けた
当該市町村若しくは都道府県の吏員は、その届出を受理した日から7日以内に、届出に係る建築物及びその
敷地が第6条第1項の法律の法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定に適合しているかどうかを検査し
なければならない。
3項  建築主事又はその委任を受けた当該市町村若しくは都道府県の吏員は、前項の規定による検査
をした場合において、当該建築物及びその敷地が第6条第1項の法律の法律並びにこれに基づく命令及び
条例の規定に適合していることを認めたときは、当該建築物の建築主に対して検査済証を交付しなければな
らない。
(以下省略)
3 建築基準法施行令138条1項(なお、同項にいう「法」とは、建築基準法をいう。)
 煙突、広告塔、高架水槽、擁壁その他これらに類する工作物で法第88条第1項の規定により政令で指
定するものは、次に掲げるもの(…(中略)…)とする。
1号から4号まで (省略)
5号  高さが2メートルを超える擁壁
4 建築基準法施行規則
(一) 6条の2(なお、同条の2第3項にいう「法」とは、建築基準法をいう。)
1項及び2項 (省略)
3項  法12条第5項に規定する台帳(…(中略)…)は、当該建築物が滅失し、又は除却されるまで、保
存しなければならない。
4項  指定確認検査機関から台帳に記載すべき事項に係る報告を受けた場合においては、速やかに
台帳を作成し、又は更新しなければならない。
(二) 11条の7
1項及び2項 (省略)
3項  特定行政庁は、前2項の書類を当該建築物が滅失し、又は除却されるまで、閲覧に供さなけれ
ばならない。
(以下省略)
5 宅地造成等規制法1条
 この法律は、宅地造成に伴いがけくずれ又は土砂の流出を生ずるおそれが著しい市街地又は市街地
となろうとする土地の区域内において、宅地造成に関する工事等について災害の防止のため必要な規制を
行なうことにより、国民の生命及び財産の保護を図り、もって公共の福祉に寄与することを目的とする。
6 東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)1条
 建築基準法(以下「法」という。)第40条(法第88条第1項において準用する場合を含む。)による建築
物の敷地、構造及び建築設備並びに工作物に関する制限の附加、法第43条第2項による建築物の敷地及
び建築物と道路との関係についての制限の附加並びに建築基準法施行令(昭和25年政令第338号。以下
「令」という。)第128条の3第6項による地下街に関する令と異なる定めについては、この条例の定めるところ
による。
三 前提となる事実
 本件の前提となる事実は、次のとおりである。なお、証拠若しくは弁論の全趣旨により容易に認めることが
できる事実又は当裁判所に顕著な事実は、その旨付記してある。
1 別紙3の物件目録記載1の土地(以下「207番15の土地」という。)上には、同目録記載2の建物(以下
「本件建物」という。)が存在している。原告は、本件建物に居住している。(甲第3号証から第5号証まで、弁
論の全趣旨)
2 別紙3の物件目録記載3の土地(以下「207番4の土地」という。)の東側には、同土地から分筆された同
目録記載4の土地(以下「207番27の土地」という。)があり、207番4の土地には、207番27の土地との境界
線に沿って、別紙4の工作物目録記載の擁壁(高さ2.800メートル。以下「本件擁壁」という。)が築造されて
いる。207番4の土地の所有者は、富洋モータース株式会社(以下「富洋モータース」という。)であり、富洋モ
ータースは、原告との間で、平成15年9月30日、富洋モータースが本件擁壁を設計仕様のとおり瑕疵なく完
成させた後に、207番27の土地を代金1550万円で売却する旨の契約を締結した。207番27の土地は、そ
の東側において、207番15の土地と接している。(甲第1、第6及び第7号証、第23号証の1及び2)
3 被告品川区建築主事(以下「被告建築主事」という。)は、富洋モータースに対し、確認済証番号第H1
5確認-工品川区YYYYYY号により建築確認をした本件擁壁について、平成16年1月29日付けで、検査
済証(第H15確済-工品川区ZZZZZZ号)を交付した(以下、これを「本件交付」という。)(甲第1号証)。
4(一) 原告は、被告品川区建築審査会(以下「被告審査会」という。)に対し、平成16年3月28日、本件交
付の取消しを求めて審査請求(以下「本件審査請求」という。)をした。
(二) 被告審査会は、平成16年6月9日付けで、「請求人には、本件審査請求を提起するについての利
益を認めることはできないので、本件審査請求は不適法である」として、本件審査請求を却下する旨の裁決
(以下「本件裁決」という。)をした。本件裁決を記載した書面(以下「本件裁決書」という。)の謄本は、同月17
日、原告に到達した。
(甲第2及び第8号証、弁論の全趣旨)
5 原告は、平成16年9月15日、本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。
四 本案前の当事者の主張の要旨
 本案前の争点に関する当事者の主張の要旨は、別紙1記載のとおりである。
五 本案に関する原告の主張の要旨
 本案に関する原告の主張の要旨は、別紙2記載のとおりである。
第三 当裁判所の判断
一 本件訴え1について
1 本件交付の処分性について
(一) 処分の取消しの訴えとは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(行政事件訴訟法3条
3項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいい(同条
2項)、処分とは、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利
義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうと解される(最高裁昭和37年
(オ)第296号同39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照)。
(二)(1) 建築基準法によると、同法6条1項1号から3号に定められている学校等の特殊建築物や木造以
外の建築物で2以上の階段を有する建築物等については、①建築主は、建築等の工事をしようとする場合に
は、その工事に着手する前に、その計画が同項にいう建築基準関係規定に適合するものであることについ
て、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受けなければならず(同項)、同項の確認済証の交付を受け
た後でなければ、同項の建築物の建築等の工事をすることができず(同条6項)、②建築主は、同条1項の規
定による工事を完了した場合には、建築主事の検査を申請しなければならず(同法7条1項)、建築主事が同
項による申請を受理した場合には、建築主事等は、その申請を受理した日から7日以内に当該工事に係る建
築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合しているかどうかを検査し(同条4項)、適合していることを認
めたときは、建築主に対し検査済証を交付しなければならず(同条5項)、③同法7条の2第1項による指定を
受けた指定確認検査機関が同項の検査をし、建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合していること
を認めて、建築主に検査済証を交付した場合には、当該検査済証は、同法6条5項の検査済証とみなし(同
法7条1項、5項)、他方、④建築主は、当該建築物については、検査済証の交付を受けた後でなければ、工
事の完了した当該建築物を使用することができず(同法7条の6第1項本文)、⑤特定行政庁は、同法6条1項
にいう建築基準法令の規定に違反した建築物又は建築物の敷地については、建築主等に対し、当該建築物
の除却その他これらの規定に対する違反を是正するために必要な措置をとることができ(同法9条1項)、⑥上
記⑤の措置を命じられた者がその措置を履行しない等のときは、行政代執行法の定めるところに従い、特定
行政庁は、みずから義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる(同条12項)とさ
れている。
 そうすると、建築基準法6条1項1号から3号までの建築物の場合には、当該建築物の建築主は、検
査済証の交付を受けた後でなければ、これを使用し又は使用させてはならないのであるから、言い換えれば、
当該建築物の建築主は、検査済証の交付を受けて初めて当該建築物を使用し又は使用させる権利ないし法
律上の地位が認められることになる。したがって、当該建築物についての検査済証の交付行為には建築基準
法上当該建築物の使用を開始することができるという法的効果が認められているものということができる。
 しかし、建築基準法88条1項、建築基準法施行令138条1項5号によると、高さが2メートルを超える
擁壁については、建築基準法6条、7条、7条の2等が準用され、建築主は前述した確認や検査を受けなけれ
ばならないものの、同法7条の6は準用されていないから、当該擁壁についての検査済証の交付行為には、
前述した当該擁壁の使用を開始することができるという法的効果が認められているということはできない。
(2)ア また、建築基準法9条1項の規定に基づく違反是正命令は、当該建築物及びその敷地が建築基
準関係規定に適合しているかどうかを基準とするものであって、これを発するかどうかは、特定行政庁の裁量
にゆだねられているものと解するのが相当である(最高裁昭和58年(行ツ)第35号同59年10月26日第二小
法廷判決・民集38巻10号1169頁参照)。具体的には、特定行政庁において、同法が規定する行政目的を
達成するために、建築物又は建築物の敷地について、①違反の有無、内容及び程度、②違反によって阻害
される行政目的の内容及び程度、③違反により近隣住民等の受ける被害ないし危険の内容及び程度、④違
反是正命令により建築主の受ける不利益の程度、⑤建築主による自発的な違反解消措置のとられる見込み、
⑥建築主に対する指導など他の手段による違反解消の見込みなどの諸般の事情を考慮した上で、その合理
的な判断に基づいて発せられるものであって、違反是正命令権限を行使するとした場合も、どのような内容の
違反是正命令を発令するか、いつ違反是正命令を発するか、どのような手続を経て違反是正命令を発令する
か等を決定した上で、行使されるものである。
 そうすると、建築基準法88条1項、建築基準法施行令138条1項により検査の対象とされた擁壁及
びその敷地が建築基準関係規定に適合しないにもかかわらず、適合するものとして検査済証が交付された場
合に、仮に、検査済証の交付行為が違法であるとして判決で取り消されたとしても、違反是正命令は、確認に
おける誤りや検査における誤り等が基準となるのではなく、あくまで建築基準関係規定との適合が基準となる
以上、最終的にこれを発するかどうかは、特定行政庁の裁量にゆだねられているのであるから、検査済証の
交付の取消判決によって、特定行政庁に対し、違反是正命令の発付、さらには代替執行権の行使を義務付
ける法的拘束力が生ずるものではない。
イ もっとも、行政庁に裁量がゆだねられた行為についても、具体的事情の下において、当該権限が
付与された趣旨・目的に照らし、当該権限を行使しないことが著しく不合理であり、裁量権の濫用・逸脱と認め
られるような特段の事情がある場合には、当該権限を行使すべき一義的に明白な義務があるということができ
るから、そのような場合には、建築基準法上、特定行政庁は、違反是正命令を発付しなければならないことに
なる。
 しかし、そのような場合も、特定行政庁が違反是正命令を発するのは、建築基準法9条1項による
と、築造された擁壁及びその敷地が建築基準法令の規定等に違反していることと、前述したようなその違反の
程度、内容等諸般の事情を理由とするのであり、検査済証の交付に違法や無効事由があったことによるので
も、その検査済証の交付が取り消されたことによるものでもないというべきである。したがって、仮に、本件にお
いて前記のような特段の事情があったとすれば、本件擁壁について違反是正命令が発せられるべきであると
いうことができるが、それをもって、本件交付の取消判決によって特定行政庁に対し違反是正命令の発付や
代替執行権の行使を義務付ける法的拘束力が生じたということはできない。
ウ また、検査済証の交付は、前述のとおり、一定の場合には、当該建築物等の使用を開始することが
できるという法的効果を有するものであり、本件擁壁についての検査済証の交付にはそのような法的効果もな
いのであるが、いずれにせよ、上記を超えて、当該建築物等が建築基準法等に適合することを公定力をもっ
て確定するという効果があると認めるべき根拠は存しない。
 したがって、検査済証の交付は、特定行政庁が違反是正命令を発する上において、法的障害にな
るということもできない。
(3) そのほか、建築基準法、建築基準法施行令及び建築基準法施行規則等を子細に検討しても、高さ
が2メートルを超える擁壁についての検査済証の交付行為に、法律上何らかの法的効果が生ずることが定め
られていると解すべき根拠は見当たらない。
(4) そうすると、高さが2メートルを超える擁壁についての検査済証の交付行為は、直接国民の権利義
務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものではないから、抗告訴訟の対象となる
処分には該当しないというべきである。
(三)(1)ア これに対し、原告は、①行政手続法2条2号及び3号によると、申請とは、自己に対し何らかの
利益を付与する処分、すなわち行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為を求める行為であるところ、
検査済証の交付処分の前提となる完了検査について建築基準法7条1項が「建築主は、…(中略)…建築主
事の検査を申請しなければならない。」と規定していること等からすると、検査済証の交付処分は行政庁の処
分その他公権力の行使に当たる、②同法94条にいう「指定確認検査機関の処分」とは、同法77条の18第1
項に規定する「第6条の2第1項の規定による確認又は第7条の2第1項及び第7条の4第1項…(中略)…の
検査」を指し、これらは、いずれも処分に当たる、③行政処分には、実体的行政処分と形式的行政処分との区
別はなく、行政の一定の行為について法規範が抗告訴訟で争うべき公権力性を付与しているか否かによっ
て、当該行為が行政処分であるか否かを判断すべきであり、このような考え方によると、検査済証の交付処分
には処分性がある旨主張する。
イ 確かに、行政手続法2条2号は、「処分 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をい
う。」と規定し、同条3号は、「申請 法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの
利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応
答をすべきこととされているものをいう。」と規定しているから、行政手続法における申請とは、法令に基づき、
行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分、すなわち行政庁の処分その
他公権力の行使に当たる行為を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が許否の応答をすべきことと
されているものをいうと解することができる。
 また、建築基準法77条の18第1項が、指定確認検査機関について、「第6条の2第1項の規定によ
る確認又は第7条の2第1項及び第7条の4第1項…(中略)…の検査…(中略)…の業務を行おうとする者」と
規定していることからすると、同法94条にいう「指定確認検査機関の処分」とは、同法77条の18第1項に規定
する「第6条の2第1項の規定による確認又は第7条の2第1項及び第7条の4第1項…(中略)…の検査」を指
しているということができる。
 しかし、行政手続法や建築基準法上の「処分」という用語がすべて行政事件訴訟法上の「処分その
他公権力の行使に当たる行為」と同じ意味を有すると限らないのであり、後者は、前述したとおり、直接国民の
権利義務を形成し又はその範囲を確定するものか否かという観点からの検証を経て、これに当たるか否かを
決しなければならない。そうすると、行政手続法における申請が上記のとおりであること、建築基準法7条1項
が「建築主は、第6条第1項の規定による工事を完了したときは、国土交通省令で定めるところにより、建築主
事の検査を申請しなければならない。」と規定していること、及び同法94条にいう「指定確認検査機関の処
分」とは、同法77条の18第1項に規定する「第6条の2第1項の規定による確認又は第7条の2第1項及び第7
条の4第1項…(中略)…の検査」を指していることから、直ちに同法88条1項、7条5項に基づく検査済証の交
付行為が、行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たるという
ことはできない。
 建築基準法88条1項、7条5項に基づく検査済証の交付が「行政庁の処分その他公権力の行使に
当たる行為」に当たるか否かは、前示したとおり、検査済証の交付によって、直接国民の権利義務を形成し又
はその範囲を確定することが法律上認められているか否かによって決せられるべき問題である。そして、同法
88条1項のほか、同法、建築基準法施行令及び建築基準法施行規則を子細に検討しても、高さが2メートル
を超える擁壁についての検査済証の交付行為に法律上何らかの法的効果が生ずることが定められていると
認めることができないことは、前示のとおりである。
ウ また、申請に係る根拠法規が、その趣旨、目的に照らし、申請に対し、適法な手続で、かつ内容的
にも適法な判断をすべきことを申請人の権利ないし法的利益として保障する趣旨のものと解すべき場合があ
り、そのような場合に申請を違法に却下し又は棄却する行為は、申請人の権利ないし法的利益を侵害するも
のとして抗告訴訟の対象となる処分に当たると解することができる(最高裁昭和34年(オ)第1187号同36年3
月28日第三小法廷判決・民集15巻3号595頁参照)。
 しかし、本件交付は、建築基準法88条1項、7条5項に基づく検査済証の交付であって、検査済証
の交付の拒否処分ではないから、本件交付の根拠となる建築基準法7条の規定が、建築主の申請に対し、適
法な手続で、かつ内容的にも適法な検査を行うべきことを建築主の権利ないし法的利益として保障する趣旨
の規定であると解することができるか否かについて検討するまでもなく、本件交付が抗告訴訟の対象となる処
分に当たると解することはできない。
 また、原告の前記ア③の主張は、公権力性の有無のみによって、抗告訴訟の対象となる処分か否
かを画するというに等しいものであり、このような考え方では、原告の権利、利益に影響しない行為を対象とす
るいわゆる客観訴訟も抗告訴訟の枠内に含まれるということになり、到底採用することはできない。
エ 以上によれば、原告の前記アの主張は、いずれも採用することができない。
(2)ア また、原告は、平成17年4月1日から施行された行政事件訴訟法が3条6項1号において義務付
けの訴えを法定したことは、裁量権の収縮又は裁量権の消極的濫用に対する介入請求権の存在により、法令
に基づく申請権がない建築基準法9条の違反是正命令は特定行政庁の自由裁量であるという見解が否定さ
れたことを意味する旨主張する。
イ しかし、違反是正命令の発令の基準や、これについて特定行政庁の裁量の範囲等は、建築基準
法等の実体法によって画されるのであって、訴訟手続法によって影響されるものではない。前示のとおり、具
体的事情の下において、当該権限が付与された趣旨・目的に照らし、当該権限を行使しないことが著しく不合
理であり、裁量権の濫用・逸脱と認められるような特段の事情がある場合には、違反是正命令について特定
行政庁の裁量は否定されるべきであるというにすぎない。平成17年4月1日から施行された行政事件訴訟法
が3条6項1号において義務付けの訴えを法定したことをもって、違反是正命令についての特定行政庁の裁
量が収縮ないし否定されるものではない。
ウ 以上によると、原告の前記アの主張は、独自の見解というほかなく、採用することはできない。
(四) そして、前記前提となる事実のとおり、原告が本件訴え1において取消しを求めている本件交付は、
高さ2.800メートルの本件擁壁についての検査済証の交付行為であるから、前示したところに照らし、本件交
付は、抗告訴訟の対象となる処分には該当しないものというべきである。
 したがって、本件訴え1は、抗告訴訟の対象となる処分に該当しない行為の取消しを求めるものとし
て、不適法であるというべきである。
2 訴えの利益について
(一) 処分の取消しの訴えにおいて訴えの利益が認められるためには、処分の取消しによって回復される
べき法律上の利益が存在することが必要である。
 本件では、原告は、本件擁壁には構造学的に倒壊又は破損の危険が存在又は潜在するから、被告
建築主事による違法な検査済証の交付処分によって、自己の生命若しくは身体の安全又は財産という法律
上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがあることを前提に、本件交付の取消しが必要
である旨主張している。
(二) しかし、本件においては、仮に、原告が主張するように、本件擁壁に構造学的に倒壊又は破損の危
険が存在又は潜在すると仮定しても、既に判示したところに照らせば、本件擁壁の検査済証を交付することに
よって、本件擁壁が設置され、あるいは存続、使用されることになるというわけではないのであるから、本件交
付を取り消しても、本件擁壁に存在又は潜在する構造学的な倒壊又は破損の危険が除去されるという法的効
果が生ずるということはできない。
 また、仮に、検査済証の交付行為が違法であるとして判決で取り消されたとしても、その取消判決によ
って特定行政庁に対し違反是正命令の発付、さらには代替執行権の行使を義務付ける法的効果が生ずるも
のではないことも、前示のとおりである。
 したがって、本件交付が取り消されたとしても、本件擁壁に存在又は潜在する構造学的な倒壊又は破
損の危険が除去されるという結果が招来されるということはできない。
 なお、原告は、建築基準法7条の2第6項等を根拠として、特定行政庁は、建築物等が建築基準関係
規定に適合しないとの報告を受けたときは、違反是正命令を発しなければならない旨主張するが、同条は本
件には適用がない上、当該建築物等が建築基準関係規定に適合しないとの報告の有無が違反是正命令発
付の基準となるものではなく、また、当該建築物等が実際に建築基準関係規定に適合しないからといって当
然に違反是正命令が発せられるというわけではないことは、既に判示したところから明らかである。さらに、原
告は、台帳整備や書類閲覧制度の新設も、訴えの利益を基礎付けるための根拠として援用するが、これらの
制度は、特定行政庁による違反是正命令の発付や、その際の裁量の有無及び範囲とは法的関係がなく、上
記台帳や書類も、それ自体、近隣住民等に対する法的効果を有するものではない。したがって、台帳の整備
や書類閲覧の制度の新設を根拠として、本件訴え1の訴えの利益を認めることはできない。
(三) 以上によると、本件交付の取消しによって原告の法律上の利益が回復されると認めることはできな
い。
 したがって、本件訴え1は、訴えの利益を欠く訴えとしても、不適法であるというべきである。
3 小括
 以上によれば、本件訴え1は、その余の点について判示するまでもなく、抗告訴訟の対象となる処分に
該当しない行為の取消しを求め、また、訴えの利益がないものとして、いずれにせよ不適法な訴えであるという
べきである。
二 本件訴え2について
1 被告適格について
(一) 建築基準法94条1項及び96条は、建築基準法令の規定による特定行政庁、建築主事若しくは建
築監視員又は指定確認検査機関の処分に対する不服申立ての方法として、審査請求を経た後でなければ
上記各処分の取消訴訟を提起することができない旨定めている。しかし、行政事件訴訟法3条3項、10条2項
の各規定の文言からすると、上記各処分の取消しを求めてした審査請求に対する建築審査会の裁決につい
ては、当該裁決に固有の瑕疵が存するときは、その違法を理由として上記各処分に対する取消訴訟とは別に
裁決の取消訴訟を提起することができることは、明らかである(最高裁昭和44年(行ツ)第68号同49年7月19
日第二小法廷判決・判例時報752号21頁参照)。
(二)(1) これに対し、被告審査会は、建築基準法94条1項、95条及び96条を根拠に、そもそも原告は被
告審査会がした本件裁決の取消しを求める訴えを提起することはできないのであり、同訴えについて被告審
査会には被告適格がない旨主張する。
(2) しかし、建築基準法94条1項は、建築基準法令の規定による特定行政庁等の処分等に対する不
服申立てとしての審査請求について定めた規定であって、行政不服審査法5条1項2号にいう法律に審査請
求をすることができる旨の定めに相当し、また、建築基準法95条は、同法94条による審査請求に対する建築
審査会の裁決に対する不服申立てとしての再審査請求について定めた規定であり、行政不服審査法8条1項
1号にいう法律に再審査請求をすることができる旨の定めに相当し、また、建築基準法96条は、行政事件訴
訟法8条1項ただし書にいう「当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消し
の訴えを提起することができない旨の定め」に相当する。したがって、これらの規定を根拠に、建築審査会がし
た裁決の取消しを求める訴えを提起することができないと解することはできない。
 そして、建築基準法、行政不服審査法、行政事件訴訟法等を子細に検討しても、建築審査会がした
裁決の取消しを求める訴えを提起することができない旨を定めた規定は見当たらない。
 そうすると、建築審査会がした裁決の取消しを求める訴えを提起することができないということはでき
ない。
(3) そうすると、本件訴え2は、被告審査会を被告として本件裁決の取消しを求める訴えであり、前記前
提となる事実のとおり、本件裁決をしたのは被告審査会であるから、被告審査会に本件訴え2の被告適格が
あることは明らかである。
(三) 以上によれば、被告審査会の前記(二)(1)の主張は、採用することができない。
2 本件裁決について
(一) 行政不服審査法2条1項は、「この法律にいう『処分』には、各本条に特別の定めがある場合を除く
ほか、公権力の行使に当たる事実上の行為で、人の収容、物の留置その他その内容が継続的性質を有する
もの(以下「事実行為」という。)が含まれるものとする。」と規定し、同法4条1項本文は、「行政庁の処分(この
法律に基づく処分を除く。)に不服がある者は、次条及び第6条の定めるところにより、審査請求又は異議申
立てをすることができる。」と規定している。このように、行政不服審査法が行政庁の処分その他公権力の行使
に当たる行為に対して不服申立てを認めているのは、この種の行為が国民の権利義務に直接関係し、その
違法又は不当な行為によって国民の法律上の利益に影響を与えることがあるという理由に基づくものであり、
したがって、行政庁の行為であっても、性質上上記のような法的効果を有しない行為は、行政不服審査の対
象となり得ないものと解するのが相当である(同法2条1項にいう事実行為が、行政庁の処分に類似する法的
効果を招来する事実上の行為を指すものであることにつき、最高裁昭和42年(行ツ)第47号同43年4月18日
第一小法廷判決・民集22巻4号936頁参照)。
(二) また、行政不服審査法4条1項本文は、「行政庁の処分(この法律に基づく処分を除く。)に不服が
ある者は、次条及び第6条の定めるところにより、審査請求又は異議申立てをすることができる。」と規定してい
る。このように、行政不服審査法は、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に対して不服がある者
に限って不服申立てを認めているが、現行法制のもとにおける行政上の不服申立制度は、原則として、国民
の権利・利益の救済を図ることを主眼としたものであり、行政の適正な運営を確保することは行政上の不服申
立てに基づく国民の権利・利益の救済を通じて達成される間接的な効果にすぎないものと解すべきである。し
たがって、行政庁の処分に対し不服申立てをすることができる者は、法律に特別の定めがない限り、当該処
分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがあり、その
取消し等によってこれを回復すべき法律上の利益を持つ者に限られるべきである(最高裁昭和49年(行ツ)第
99号同53年3月14日第三小法廷判決・民集32巻2号211頁参照)。
(三) そうすると、行政不服審査法40条1項は、「審査請求が法定の期間経過後にされたものであるとき、
その他不適法であるときは、審査庁は、裁決で、当該審査請求を却下する。」と規定しているが、前記(一)及び
(二)において説示したところに照らすと、同項で審査請求の適法要件として例示されている法定期間の順守
(同法14条参照)のほかに、審査請求の対象が国民の権利義務に直接影響するものであること及び当該審
査請求をする法律上の利益があることは、いずれも審査請求の適法要件に当たるものと解すべきである。
(四)(1) 本件交付が、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国
民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものに該当しないこと、及び原
告が本件交付の取消しを得ても法律上の利益を回復することができるものではないことは、前示のとおりであ
る。
 また、建築基準法94条1項は、建築基準法令の規定による特定行政庁等の処分等に対する不服申
立てとしての審査請求について定めた規定であるが、同項が、当該処分等により国民の権利、利益が侵害さ
れ又は必然的に侵害されるおそれがあり、その取消しによってこれを回復することができる場合以外について
も、審査請求をすることができる旨を定めた特別の定めであると解すべき根拠はない。
 そうすると、本件審査請求は、審査請求の対象が国民の権利義務に直接影響すること及び審査請
求をする法律上の利益があることという審査請求の適法要件を欠いているというべきである。
(2) そして、本件裁決が、原告には本件審査請求について審査請求を提起するについての利益を認
めることはできないので、本件審査請求は不適法であるとして、本件審査請求を却下していることは、前記前
提となる事実のとおりである。
 そうすると、前示したところに照らすと、本件裁決が本件審査請求を却下したことは正当であるという
ことができる。
3 小括
 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、本件訴え2は、理由がない。
三 文書提出命令について
1 原告は、本件交付の理由を明らかにする報告書等の資料であって被告建築主事が保有するものの全
部及び本件審査請求に係る事件の記録であって被告建築主事が所有するすべての文書(以下「本件文書1」
という。)、並びに本件裁決の理由を明らかにする議事録等の資料であって被告審査会が保有するものの全
部及び本件審査請求に係る事件の記録であって被告審査会が所有するすべての文書(以下「本件文書2」と
いう。)について文書提出命令を申し立てている。
2 しかし、本件交付の取消しを求める本件訴え1は、不適法として却下すべきものであり、本件裁決の取
消しを求める本件訴え2は、原告の主張に係る手続的瑕疵等について判断するまでもなく、理由がないものと
して棄却すべきものであることは、前示のとおりであるから、本件文書1及び本件文書2は、上記各結論に影響
を及ぼすものではない。
3 したがって、原告の文書提出命令の申立ては、いずれも必要性を欠くものとして却下する。
四 結論
 以上によれば、本件訴え1は、不適法であるからこれを却下し、本件訴え2は、理由がないからこれを棄
却することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり
判決する。
東京地方裁判所民事第38部
裁判長裁判官  菅   野   博   之
裁判官  鈴   木   正   紀
裁判官  小   田   靖   子  
別紙1
1 原告の主張
(一) 本件交付の処分性について
(1) 処分とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいい(行政手続法2条2号)、申請と
は、法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許
認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているも
のをいう(同条3号)ことからすると、申請とは、自己に対し何らかの利益を付与する処分、すなわち行政庁の
処分その他公権力の行使に当たる行為を求める行為であるということになる。
 検査済証の交付処分の前提となる完了検査について、建築基準法7条1項は、「建築主は、…(中
略)…建築主事の検査を申請しなければならない。」と規定している。そして、行政手続法が平成6年10月1
日に施行される前の建築基準法、すなわち平成10年法律第100号による改正前の建築基準法7条1項は、
「建築主は、第6条第1項の規定による工事を完了した場合においては、その旨を工事が完了した日から4日
以内に到達するように、建築主事に文書をもって届け出なければならない。」と規定していたが、行政手続法
の施行後は、上記のとおり、届出から申請へと改められたのである。
 以上によれば、検査済証の交付処分が行政庁の処分その他公権力の行使に当たることは明らかで
あるというべきである。
(2) また、建築基準法77条の18第1項は、指定確認検査機関について、「第6条の2第1項の規定によ
る確認又は第7条の2第1項及び第7条の4第1項…(中略)…の検査…(中略)…の業務を行おうとする者」と
規定していることからすると、同法94条にいう「指定確認検査機関の処分」とは、同法77条の18第1項に規定
する上記3つの行為を指し、これらは、いずれも「行政庁の処分」に当たるものというべきである。
(3) さらに、行政処分には、実体的行政処分と形式的行政処分との区別はなく、行政の一定の行為に
ついて法律を筆頭とする法規範が、当該行政庁の行為に抗告訴訟で争うべき公権力性を付与しているか否
かによって、行政処分であるか否かを判断すべきである。この考え方によると、行政処分とは、公定力とは無
関係であり、抗告訴訟で争うべき公権力が存在する行為という形式的な概念ということになる。検査済証の交
付処分については、建築基準法7条1項において処分期間が規定されているなど、一連の法的な仕組みが
設けられていることからすると、処分性があることは明らかである。
(二) 本件訴えのうち本件交付の取消しを求める請求(前記第一の一1)に係る訴え(以下「本件訴え1」と
いう。)の原告適格について
(1) 行政事件訴訟法9条1項にいう「当該処分…(中略)…の取消しを求めるにつき法律上の利益を有
する者」とは、①当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害さ
れるおそれのある者をいい、②当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公
益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものと
する趣旨を含むと解される場合には、かかる利益も法律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵
害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有し、③当該
行政法規が個々人の個別的利益として保護すべきとする趣旨を含むか否かは、当該行政法規の趣旨、目的
等、当該行政法規が当該処分を通して保護しようとしている利益の内容、性質等を考慮して判断すべきであ
る。
(2) 行政事件訴訟法が平成16年に改正されたことに伴い、同法9条1項のかっこ書に規定する「法律
上の利益を有する者」の範囲は拡大されているのであり、同条2項に照らせば、次のとおり、原告が本件交付
について「法律上の利益を有する者」に当たることは、明らかである。
ア 本件交付の根拠となる法令の趣旨及び目的、並びに本件交付において考慮されるべき利益の内
容及び性質について
 建築基準法1条は、建築物の敷地、構造等に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び
財産の保護を図ることなどを目的としているが、同条は、同法の制定過程を調査したところによると、ユニフォ
ーム・ビルディング・コードのSec.102を借用したものである。ユニフォーム・ビルディング・コードは、建築物自
体の安全、防火、避難及び衛生などに関する技術的基準を定めた規定の総称であり、これらの技術的基準を
定めた規定が守られず、建築物自体の安全が守られなければ、その建築物に居住する者のみならずその近
隣に居住する住民にも危険が及ぶのであり、したがって、これらの技術的基準を定めた規定は、近隣住民をも
保護する目的を持っている。
 そして、建築基準法が定める規制基準ないし内容は、極めて具体的であるため、これによって隣接
地住民等限られた範囲の者にもたらされる利益も具体的であるということができるから、隣接地の住民等限ら
れた範囲の住民は、同法に基づく規制によって具体的な利益を受けているものと認められる。
イ 本件交付の根拠となる法令と目的を共通にする関係法令の趣旨及び目的について
(ア) 関係法令について
 検査済証は、建築工事が竣工した際に建築主事等が実施する完了検査において、当該建築工
事に係る建築物が建築基準法並びにこれに基づく命令及び条例に適合している場合に交付されるものであ
り、本件擁壁についていえば、別紙5の規定目録記載の各条項にすべて適合して初めて交付されるものであ
る。
(イ) 東京都建築安全条例の趣旨について
 東京都建築安全条例1条は、建築基準法40条を根拠に、建築物の安全、防火又は衛生の目的
を達するために、建築基準法を含む法律、政令の規定よりも制限を強化することを明らかにしている。
(ウ) 東京都建築安全条例の目的について
 建築基準法が昭和25年11月に施行されたのに伴い、市街地建築物法施行令、市街地建築物
法施行規則、市街地建築物法施行細則及び特殊建築物規則の一部は建築基準法施行令に取り入れられた
が、取り入れられなかった規定のうち必要なものについては、地方公共団体の条例で定めることができるもの
とされた。そこで、東京都は、同年12月、建築安全条例を制定し、市街地建築物法施行規則及び市街地建
築物法施行細則のうち敷地やがけの安全に関する規定等を引き継いだ。その後、建築安全条例は東京都建
築安全条例に改定された。市街地建築物法は、無意味に諸種の建築物に対して制限を加えるものではなく、
市民の生活に即してその幸福利便を図ることを唯一の目標として制定されたものであり、公益の実現のみを目
的とした法律ではなかった。また、同法に設けられた隣人規定によると、同法の法益は、建築主のみならずそ
の隣人にも及ぶものであった。以上のような経緯を踏まえて制定された東京都建築安全条例は、建築物の隣
人保護の目的が受け継がれたものと解すべきである。
(エ) 宅地造成等規制法の趣旨について
 造成宅地の中には、排水施設や擁壁が不完全であるために宅地そのものが危険であるばかりで
なく、周囲の土地を巻き添えにするおそれがあるものがあり、これを放置したままにすれば、他人の行った宅
地造成によってその周囲の者は生命及び財産を脅かされることになる。また、昭和36年6月には豪雨が全国
を襲い、集中豪雨のために神奈川県や兵庫県などの丘陵地ではがけ崩れや土砂の流出が起こった。がけ崩
れや土砂の流出は、最近宅地造成が行われたところや現に宅地造成が行われていたところで多く発生し、宅
地造成が原因となったと見られる被害は、約90件(28パーセント)であり、家屋の全半壊は45戸、死傷者27
人に上った。以上のような経緯を踏まえて、宅地造成の基準を定めることを目的として、宅地造成等規制法が
制定された。
(オ) 宅地造成等規制法の目的について
 宅地造成等規制法1条によると、同法が保護しようとしているのは災害からの人の生命、身体、財
産の保護であるが、その保護の対象は、宅地造成を行う者や造成された宅地を利用する者というよりは、むし
ろその周辺に居住する第三者の生命、身体、財産であって、第三者への危険、すなわち公益の侵害が起こる
ことを防止することに主たる目的がある。
(カ) 小括
 本件擁壁の築造に関して、建築基準法並びにこれを受けた建築基準法施行令、宅地造成等規
制法及び東京都建築安全条例において、擁壁の設置義務、構造、施すべき措置について具体的かつ詳細
に規定した上、完了検査においてこれらを検査すべきものとしているのは、擁壁の倒壊又は破損による被害
が直接及ぶことが想定される近隣住民の生命、身体の安全等を個々人の個別的利益として保護すべきであ
るとする趣旨を含むものと解される。
ウ 本件交付がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質
並びにこれが害される態様及び程度について
(ア) 本件擁壁は、宅地造成工事の一環として築造されたものである。宅地造成工事とは、敷地利用
の最終目的物である邸宅などの建築物を建設するための敷地を準備する工事であり、擁壁とは、がけがある
敷地の利用において最終目的物である建築物の土台作りに当たる建築行為である。そして、土台にある危険
を放置すれば、最終目的物である建築物自体を安全に建設しても、危険な建築物を出現させることになり、建
築物の土台に違法で危険な擁壁があれば、危険な土台の上に建築物を建設するという新たな危険を出現さ
せることになる。
(イ) 違法で危険な擁壁の検査済証交付処分を放置すれば、違法な検査済証の存在により、後述す
る台帳の効果もあって、擁壁が適法とされるため、建築物の確認検査時にその危険性が見過ごされ、危険な
土台の上に建築物を建設するという新たな危険を出現させることとなる。そして、危険な擁壁のある敷地の上
に建築物が出現すれば、隣接地に居住する者の生命、身体に受ける危険は、その二乗を超えて高まる。この
ように違法な検査済証交付処分を放置すると、その隣接地に居住する者は、更に重大な損害を受けることに
なる。
エ 小括
 以上述べた点に、本件擁壁の築造に関して、建築基準法並びにこれを受けた建築基準法施行
令、宅地造成等規制法及び東京都建築安全条例において、擁壁の設置義務、構造、施すべき措置について
具体的かつ詳細に規定した上、完了検査においてこれらを検査すべきものとしていることを勘案すると、擁壁
についての建築確認及び検査済証交付の制度は、擁壁の倒壊又は破損による被害が直接及ぶことが想定さ
れる近隣住民の生命、身体の安全等を個々人の個別的利益として保護する趣旨を含むものと解される。そう
すると、擁壁の倒壊又は破損による被害が直接及ぶことが予想される範囲の地域に居住する者は、検査済証
交付処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有すると解するのが相当である。
(3) 原告が本件擁壁の周辺住民であることは、不動産登記簿、公図及び住民票(甲第3号証から第7号
証まで)によって明らかである。また、鑑定意見書(甲第22号証の1)において、2名の一級建築士が、本件擁
壁には構造学的に倒壊又は破損の危険が存在及び潜在する旨指摘している。したがって、原告は、被告建
築主事による違法な本件交付によって、自己の生命若しくは身体の安全又は財産という法律上保護された利
益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者であるということができる。
(4) 以上によれば、原告は、本件交付の取消しを求めるについて「法律上の利益を有する者」に当たる
から、本件訴え1について原告適格を有する。
(三) 本件訴え1の訴えの利益について
(1)ア 建築基準法は、「阪神・淡路大震災を踏まえた安全確保の要請」及び「経済社会の構造変革と規
制緩和、行政のあり方の見直しの要請」に対応することを目的として、平成10年法律第100号により改正さ
れ、①建築確認・検査の民間への開放、②建築基準の性能規定化の見直し、③中間検査の導入、④土地の
有効利用に資する建築規制手法の導入、⑤確認検査等に関する図書の閲覧について新たに規定を設け
た。
イ(ア) 阪神・淡路大震災によって、建築物の安全性を確保するためには、着工前に行われる建築確
認により建築計画を審査するだけでなく、実際の施工が建築基準に適合して行われたかどうかの検査を充実
することが改めて認識されたが、建築物の大型化、複雑化により地方公共団体の確認事務の負担が増大する
とともに、厳しい財政事情を背景に行政改革が強く求められていることから、建築物の安全性の確保のための
検査の充実を地方公共団体による対応のみで実現することは著しく困難な状況となっている。一方、民間で
は、建築関係専門技術者の充実を背景に、住宅の性能保証事業の一環として建築計画の審査や施工検査
を実施し、又はコンピューター技術・情報通信技術を駆使して柔軟かつ迅速に審査を実施するなど、多様な
サービスの提供が可能となっている。そこで、以上のような状況を踏まえ、21世紀を見据えて官民の役割分担
の見直しを行うこととし、建築主においては、民間による多様なサービスの活用のみちを開き、自主的な建築
物の安全性の確保を促進するとともに、行政においては、違反是正等本来行政でしか行い得ない業務にそ
の能力を集中させることにより、建築規制の実効性の確保を図ることとして、建築確認・検査の民間への開放
を行ったのである。
(イ) 建築基準法は、前記(ア)の建築確認・検査の民間への開放の趣旨・目的に基づき、国土交通
大臣又は都道府県知事が指定した民間機関(以下「指定確認検査機関」という。)による完了検査について7
条の2を定め、7条の2第6項は、指定確認検査機関には完了検査の結果を特定行政庁に報告することを義
務付け、7条の2第7項は、特定行政庁には建築基準関係規定に適合しない旨の報告を受けたときは遅滞な
く違反是正命令等の行為を行うことを義務付けている。
(ウ) 検査済証の交付前に使用制限が課される建築物(建築基準法7条の6第1項に掲げる建築物)
以外の建築物は、仮に完了検査の結果が不合格であっても、建築主には使用制限が課されるものではない
が、特定行政庁は、違反是正命令等を行うことになる。
(エ) 建築主事は、特定行政庁の指揮監督下にあるから、建築主事は、当然に特定行政庁に対して
建築基準関係規定に適合しない旨の報告を行うのであり、建築基準法7条の2第6項のような規定がなくとも、
特定行政庁は、その旨の報告があれば、当然に違反是正命令等を行うことが義務付けられているのである。
ウ(ア) 指定確認検査機関による確認・検査制度の創設に伴い、建築主事のほか、複数の指定確認
検査機関が建築確認及び検査を行うこととなり、特例許可、建築確認及び検査が異なる機関によって実施さ
れることから、特定行政庁が建築物について既に行われた建築基準法令による処分を円滑かつ迅速に把握
するために、当該処分に係る建築物の敷地、構造、建築設備又は用途に関する台帳の整備を特定行政庁に
義務付ける(建築基準法12条5項及び6項)とともに、市場ルールにより建築物の質が適切に評価されるため
の制度的整備を図り、建築規制の実効性を確保するために、前記処分に関する書類のうち当該処分に係る
建築物又はその計画が建築基準関係規定に適合するものであることを表示している書類であって国土交通
省令で定めるものの閲覧を特定行政庁に義務付けた(同法93条の2)。
(イ) 特定行政庁は、台帳整備の過程で建築物が適法であることを把握することになり、この情報は、
当該建築物が滅失し又は除却されるまで保存され(建築基準法施行規則6条の2第3項)、必要に応じて更新
することが求められている。したがって、違法な検査済証交付処分が取り消された場合、特定行政庁は、建築
主事からの報告により当該建築物の台帳の更新を行うとともに、当該建築物が違反建築物であることを把握
することになり、違反是正命令等を行うことになる。
(ウ) 特定行政庁は、建築物が滅失し又は除却されるまで前記書類を閲覧に供する(建築基準法施
行規則11条の7第3項)が、違反建築物の違法な検査済証交付処分が放置され、当該建築物が建築基準関
係規定に適合するものであるという誤った表示が継続された場合、市場ルールによる建築規制の実効性の確
保という書類の閲覧の機能が妨げられることになり、その結果、違反建築物の隣接地の住民は、違反建築物
の発生を防止するという書類閲覧の効果を受けることができない状況に置かれることになる。
エ これに対し、最高裁昭和58年(行ツ)第35号同59年10月26日第二小法廷判決・民集38巻10号
1169頁は、違反是正命令が特定行政庁の自由裁量である旨判示しているが、同判決が言い渡されてから2
1年が経過した現在において同判示を無批判に採用することはできない。そして、平成17年4月1日から施行
された行政事件訴訟法は、3条6項1号において義務付けの訴えを法定したが、このことは、裁量権の収縮又
は裁量権の消極的濫用に対する介入請求権の存在により、法令に基づく申請権がない建築基準法9条の違
反是正命令は、特定行政庁の自由裁量であるという見解が否定されたことを意味する。
オ そして、違法な検査済証交付処分を放置すると、その隣接地に居住する者が、更に重大な損害を
受けることになることは、前記のとおりである。
カ 以上によれば、検査済証の交付前に使用制限が課される建築物以外の建築物は、完了検査の結
果が不合格であっても、建築主には使用制限が課されるものではないが、特定行政庁が違反是正命令等を
行うことになり、その結果、違反が是正されることとなるから、原告は、本件交付の取消しを求めるについて訴
えの利益を有する。
 また、建築基準法令による処分に係る建築物の敷地、構造、建築設備又は用途に関する台帳の整
備及び書類の閲覧制度が義務化された結果、検査済証交付処分によって生み出された上記台帳及び閲覧
の対象とされる書類の法的効果は、永続性を有することになる。したがって、取消判決によって除去すべき法
的効果、又は処分を取り消すことによって回復すべき権利利益が存するということができるから、原告は、本件
交付の取消しを求めるについて訴えの利益を有する。
 さらに、本件交付の対象が擁壁であることから、違法な本件交付をそのまま放置すると、違法な土
台の上に最終目的物である建築物を出現させ、それによって隣接地に居住する者に重大な法益の侵害を生
じさせる蓋然性が高いから、原告は、本件訴え1について訴えの利益を有する。
(2) そもそも原告適格とは区別されたいわゆる訴えの利益とは、処分の効果がなくなった場合に問題と
されるものであるが、本件交付の効果には現在に至るまで何らの変化も生じていないから、本件訴え1には訴
えの利益がある。
(四) 本件訴え1の審査請求前置について
 本件裁決は、被告審査会が適法な本件審査請求を誤って不適法なものとして却下したにすぎないか
ら、本件訴え1は、裁決を経たものとして適法である。
(五) 本件訴えのうち本件裁決の取消しを求める請求(前記第一の一2)に係る訴え(以下「本件訴え2」と
いう。)の被告適格について
(1) 原告は、被告審査会を被告として被告審査会がした本件裁決の取消しを求めているのであるから、
本件訴え2の被告適格が被告審査会にあることは明らかである(平成16年法律第84号による改正前の行政
事件訴訟法11条1項本文)。
(2) 被告審査会は、建築審査会の裁決の取消しを建築審査会と建築主事とに求めることができることは
予定されていない旨主張している。しかし、原告は、被告審査会を被告として本件裁決の取消しを求めている
のであり、被告建築主事及び被告審査会の双方を被告として本件裁決の取消しを求めているわけではない。
(3) また、被告審査会は、同被告には本件裁決の取消しの訴えの被告適格がない旨主張しているが、
これは、建築基準法には、再審査請求の規定(同法95条)があるが、裁決取消しの訴えに関する規定がない
ことによるものと考えられる。しかし、同法95条の規定は、行政不服審査法8条1項1号に基づいて置かれた規
定であり、また、建築基準法96条の規定は、行政事件訴訟法8条1項ただし書に基づいて置かれた規定であ
るから、これらの規定を根拠に、建築基準法が建築審査会の裁決の原処分である建築主事の処分の取消し
の訴えを専ら予定しているということはできない。
(六) 本件訴え2の訴えの利益について
 そもそも原告適格とは区別されたいわゆる訴えの利益とは、処分の効果がなくなった場合に問題とさ
れるものであるが、本件裁決の効果には現在に至るまで何らの変化も生じていないから、本件訴え2には訴え
の利益がある。
2 被告らの主張
(一) 本件訴え1の原告適格について
(1) 建築基準法7条1項、2項本文、4項及び5項並びに9条によると、建築主事が完了検査をした場合
に行う検査済証の交付は、当該建築物を適法に使用せしめる法律効果を有する行政処分であるから、検査
済証の交付を受けないで同法6条1項1号から3号までに定める建築物を使用することは禁止される。このよう
に検査済証の交付の拒否により付与される法的効果は、当該建築物を建築主が使用することを禁止し、又は
使用することを制限するにとどまり、特定行政庁に対し、違反是正命令を発せさせる法的拘束力を有するもの
ではない。したがって、検査済証の交付を拒否することによって、当該建築物の近隣居住者の日照、眺望、プ
ライバシーといった生活上の利益を直接回復するものではなく、その回復は直接当該建築物の建築主に対し
て行うべきである。
(2) 原告は、本件擁壁が建築基準法令の規定又はこれに基づく基準に違反しているため、土砂崩れに
よって本件擁壁が容易に崩落しやすい状況にあり、それによって原告の生命若しくは身体の安全又は住居な
どの財産権を侵害する具体的な危険が生じている旨主張しているが、本件交付が取り消されることによる法的
効果は、富洋モータースに対し、本件擁壁の使用を禁止し、又はその使用を制限するにとどまり、本件擁壁の
改修工事又は修繕工事を義務付けるものではないから、原告が本件交付の取消判決を得たとしても、本件擁
壁が崩落するおそれがない平穏な状態で生活する権利・利益を回復することはできない。
(3) 以上によれば、原告は、本件訴え1について原告適格を有するということはできないから、本件訴え
1は、不適法である。
(二) 本件訴え2の被告適格について
(1) 建築基準法令の規定による特定行政庁、建築主事若しくは建築監視員又は指定確認検査機関の
処分又はこれに係る不作為に不服がある者は、建築審査会に対し、審査請求をすることができ(建築基準法9
4条1項)、建築審査会の裁決に不服がある者は、国土交通大臣に対し、再審査請求をすることができる(同
法95条)が、法令上は、建築審査会の裁決の取消しを建築審査会と建築主事とに求めることができることは予
定されていない。かえって、同法94条1項に規定する処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求
に対する建築審査会の裁決を経た後でなければ、提起することができないのであり(同法96条)、建築審査会
の裁決の原処分である建築主事の処分の取消しの訴えを予定している。そうすると、建築審査会の裁決の取
消しを求める訴えを提起することはできないのであり、同訴えについて建築審査会には被告適格がないという
べきである。
(2) 以上によれば、本件訴え2は、被告適格を欠く者を被告としたものとして、不適法である。
別紙2
1 本件交付の違法性について
(一) 本件交付が建築基準法7条4項及び5項に違反していることについて
(1) 原告は、東京都品川区(以下「品川区」という。)建築指導課に対し、平成16年1月16日、依頼書と
題する書面(甲第12号証の1)を内容証明郵便により送付して、本件擁壁の耐圧盤コンクリートのかぶり厚さの
不足及び本件擁壁の壁配筋に対するコンクリートのかぶり厚さの不足を理由に、本件擁壁がかぶり厚さ6セン
チメートルを要求する建築基準法施行令79条に違反していること、及び本件擁壁の南側にある既存のRC擁
壁との取り合い部分が東京都建築安全条例6条3項に違反していることを指摘した。
(2)ア 原告は、品川区まちづくり事業部建築課構造係長であったP1及び同部建築課の職員であったP
2に対し、平成16年2月4日、品川区役所内において、本件擁壁の工事現場の写真集(甲第13号証の1から
50まで)及び資料(甲第14号証の1及び2)を提示して、本件擁壁の耐圧盤内部の鉄筋が破損していて東京
都建築安全条例6条3項に違反していること、及び本件擁壁が直接基礎と杭基礎の併用構造となっていて、
基礎の併用を禁止する建築基準法施行令38条2項に違反していることを指摘した。
イ しかし、P2は、担当者として本件交付にかかわっていた(甲第21号証)にもかかわらず、原告の指
摘について、現に検査を行っていれば容易に答えることができるはずであろうし、また、原告も回答を期待した
建築基準関係規定に関する適法・違法の判断、解釈等を一切示さなかった。
(3) P1及びP2は、前記(2)の際に、次の①から⑧までの説明をした。これらの説明が真実であることは、
被告建築主事が本件審査請求において提出した平成16年4月15日付け弁明書(以下「本件弁明書」という。
甲第10号証)において次の①から⑧までを否認していないことから、明らかである。
① 依頼書を受け取り、建築基準法12条3項に基づき、工事施工者に報告を求めた。
② 行政は報告を受けた場合、その報告に虚偽がないものとして処理するので、本件交付をした。
③ 原告が提示した現場写真及び資料は、工事施工者の報告と相違する。
④ 現場での検査は、平成16年1月28日に約10分間行った。依頼書において本件擁壁が建築基準
法に違反している旨指摘されている点については、既に地中に埋まっている部分であったので、検査してい
ない。
⑤ 行政としては、中間検査をしていないので、構造や施工方法の本当のところは分からない。
⑥ 擁壁の現況が良いものとはいえない。
⑦ 今回の擁壁は、良いものではないが、品川区内にある古い擁壁と比べればましな方である。
⑧ 現場検査としては、擁壁の高さのみを測定した。
(4) 本件擁壁の壁体の設計曲げモーメントは、平成15年8月に作成された本件擁壁の構造計算書(以
下「本件構造計算書1」という。甲第15号証)の7枚目(表紙を1枚目と数える。)では、約5.85(tm)であるのに
対し、平成16年1月27日付けの「建築基準法第12条3項に基づく報告(審査・構造・設備)」と題する書面(以
下「本件報告書」という。甲第16号証の3枚目から10枚目まで)中の、平成15年11月に作成された本件擁壁
の構造計算書(以下「本件構造計算書2」という。甲第16号証の7枚目から10枚目まで)では、3.10(tm)であ
り、本件構造計算書1の数値の約半分となっているが、その算出の過程は不明である。
(5) 平成16年4月1日、品川区αで擁壁の崩壊事故が発生した(甲第17号証)。この崩壊事故の現場
は、品川区役所から直線距離で約500メートル離れていた(甲第18号証)。
(6)ア 前記(3)②は、建築基準法12条3項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は20万
円以下の罰金に処せられる旨定める同法100条4号及び101条を無視し、虚偽の申告を積極的に黙認する
姿勢を示すものであり、また、そもそも建築基準法に違反するものであり、また、被告建築主事が報告を受け
たときに行うべき検査作業を放棄したことの明らかな証拠である。
イ また、前記(4)のように本件構造計算書1と本件構造計算書2とで数値がかけ離れているのは、被告
建築主事が報告を受けたときに行うべき検査作業を放棄したことの明らかな証拠である。
ウ また、前記(3)④及び⑤は、被告建築主事が建築基準法12条3項による報告書の検証作業を行わ
なかったことを明らかにし、本件交付が建築基準法の規定と無関係にされたことを示している。
エ また、前記(2)イは、本件交付に至る判断が建築基準法の規定と無関係にされたことを示している。
オ また、前記(3)④及び⑧は、平成16年1月28日に行われた検査と称する行為が本件擁壁の回りを
散歩したにすぎず、現地検査の実態がなかったことを明らかにするものというべきである。
カ また、前記(5)及び前記(3)⑦に照らすと、前記(5)は、P2が知っていた古い危険な擁壁が崩壊事故
を起こしたものとも考えられ、前記(3)⑥及び⑦は、本件交付が合理性を欠き、建築基準法とは無関係にされ
たことの危険性を明らかにしている。
キ さらに、原告の調査によると、品川区の職員2名が平成16年1月28日に行った現地調査とは、1名
が擁壁の寸法を計測し、残りの1名がこれを書面に書き留めるという方法によって行われたが、本件擁壁の上
下に分かれる測定ポイントを行き来するだけでも10分以上の時間を要する。したがって、前記(3)④のとおり約
10分間の調査では、本件弁明書に記載されているような現地調査をすべて行うことは不可能である。
(7) 以上によれば、被告建築主事が、建築基準法に定められた検査を行わずに、建築基準法7条4項
及び5項と関係なく、本件交付をしたことは、前記(3)②、④、⑤から⑧まで、(4)及び(5)から明らかであるから、
本件交付は、建築基準法7条4項及び5項に違反しており、違法である。
(二) 本件擁壁が建築基準法施行令79条1項に違反していることについて
(1)ア 本件擁壁の工事施工者は、株式会社雄人(以下「雄人」という。)であったが、原告は、平成15年
10月12日、雄人の取締役であったP3から、本件擁壁の耐圧盤コンクリート全体の厚さが不足している旨の説
明を受けた。原告が同月13日午前及び同日午後4時に撮影した写真(甲第22号証の2の№2及び№3)によ
ると、本件擁壁の耐圧盤コンクリートの厚さは26センチメートルであり、本来あるべき耐圧盤コンクリートの厚さ
である30センチメートル(甲第15号証の5枚目、第23号証の1の6枚目)より4センチメートルも不足している。
そして、資料(甲第14号証の1)及び擁壁の構造に関する意見書(甲第22号証の1)によると、耐圧盤コンクリ
ートの厚さの不足が耐圧盤コンクリート全体に及んでいると判断することは、合理的である。そうすると、本件擁
壁の耐圧盤コンクリート上部のかぶり厚さは、設計かぶり厚さ6センチメートルから耐圧盤コンクリート全体の厚
さ不足分4センチメートルを減算すると、2センチメートルしかない。
イ 富洋モータースは、被告建築主事に対し、平成16年1月27日、本件報告書により、本件擁壁の耐
圧盤の先端部のみ厚さが不足している旨報告した。本件擁壁の耐圧盤の厚さを確認するためコア抜き調査を
実施した5箇所は、いずれも建築基準法施行令に規定されている数値を上回ったが、0.4ミリメートルや0.3
1ミリメートルといった極小の余裕しかない箇所が2箇所もあった。
ウ 原告が本件擁壁の写真を撮影した平成15年10月13日には午後2時ころから午後4時ころまでの
約2時間に69.0ミリメートルの雨が降った(甲第25号証)が、これは、本件擁壁の耐圧盤全体に3500リットル
以上の雨が降ったことを意味し、本件擁壁の耐圧盤の傾斜、すなわち本件擁壁の耐圧盤の厚さ不足を検証
する水量としては十分であった。
 コア抜き調査の数値が真実であれば、本件擁壁の耐圧盤は、耐圧盤の先端部から1メートル辺りの
地点を頂点として、先端部及び山留め側の双方に向かって傾斜しているはずであるから、本件擁壁の耐圧盤
の先端部と山留め側の双方に水たまりができるはずである。ところが、写真(甲第13号証の6、7及び10)によ
ると、本件擁壁の耐圧盤の山留め側には水たまりができているが、先端部には水たまりができていないのであ
り、これは、本件擁壁の耐圧盤が先端部から山留め側に向かって傾斜していることを示している。また、コア抜
き調査を撮影した写真(以下「本件コア写真」という。甲第28号証の1から9まで)のうちコア①を撮影した写真
(甲第28号証の2及び3)によると、コア①の中心は、工事写真用スケール基点から明らかに2センチメートル
以上先端部に寄っているが、これは、本件擁壁の耐圧盤が傾斜しているため、コア①の採取場所が1.04セ
ンチメートル(上記写真上は2センチメートル)ずれていることによるものと考えられる。以上によると、コア抜き
調査の数値は虚偽であるというほかない。
エ また、次の(ア)から(オ)までのとおり、本件コア写真には、客観性も合理性も認められない。
(ア) 本件コア写真によると、だれがどこで何をどうやって撮影したのかの説明が欠落しており、本件
コア写真には客観性がない。
(イ) また、銀塩、デジタルカメラを問わず、レンズには必ずゆがみが生じるから、これを補正した上、
解像度の問題を解消しない限り、コア抜き調査におけるコア①やコア②のような0.31ミリメートルといった極小
誤差を撮影することは不可能である。ところが、原告が調査したところによると、本件コア写真は、民生品カメラ
で撮影され、レンズ補正や解像度の向上などといった対策は全く取られていないから、0.31ミリメートルといっ
た極小誤差を撮影することができるはずがない。
(ウ) また、本件コア写真によると、採取されたコアをコンベックスルールを用いて計測しているが、1
級コンベックスルールの長さの許容差からすると、計測が可能であるのは、0.327ミリメートルから0.727ミリメ
ートルの範囲となり、2級コンベックスルールの長さの許容差からすると、計測が可能であるのは、0.3905ミリ
メートルから0.7905ミリメートルの範囲となる。そうすると、1級コンベックスルールを用いても、0.31ミリメート
ルを計測することは不可能であるから、0.31ミリメートルという数値は、根拠のある数値であるということはでき
ない。
(エ) また、コンベックスルールの基点は、移動フックか、固定フックかによって異なり、また、引っ掛け
測定か、突当て測定かによっても異なるが、本件コア写真によると、コア①の測定は突当て測定によりされ、コ
ア②の測定は引っ掛け測定によりされている。また、本件コア写真によると、コア②を測定した際のコンベック
スルールには張力が加わって曲がっているから、測定結果は、実際の値よりも大きくなっている。したがって、
コア①及びコア②の測定結果は無効である。
(オ) コア抜き調査では、本件擁壁の耐圧盤コンクリートとともに捨コンクリート部分が5センチメートル
分だけ連続して円筒状に採取されたが、連続した耐圧盤コンクリート部分と捨コンクリート部分の境をどこに設
定するかによって、耐圧盤コンクリートの厚さを簡単に変えてしまうことができる。また、コンクリート硬化後は目
視でその境を判断することは難しくなる。耐圧盤コンクリートの打設は平成15年10月6日にされ、コアの採取
は同年11月19日にされているが、これは、一般的に普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートの硬化の目
安と考えられている材齢28日間を超えている。したがって、耐圧盤コンクリート部分と捨コンクリート部分の境
を写真撮影することは不可能である。
オ 以上によれば、本件擁壁の耐圧盤コンクリートのかぶり厚さは、2センチメートルしかないと認める
べきであり、これは、かぶり厚さ6センチメートルを要求する建築基準法施行令79条1項に違反している。
(2)ア 被告建築主事は、本件弁明書において、設計かぶり厚さには施工誤差に対する配慮は不要であ
る旨主張している。しかし、国土交通省住宅局内建築基準法研究会編集「建築基準法質疑応答集」819ペー
ジから824ページまで、及び第7回コンクリート工学年次講演会論文集(昭和60年5月)「実際の鉄筋コンクリ
ート造建築物における鉄筋のかぶり厚さの実態」(甲第47号証)によると、設計かぶり厚さについても施工誤
差に対する配慮が必要であることは明らかである。そして、コア抜き調査を実施した5箇所のうち2箇所は、い
ずれも建築基準法施行令に規定されている数値を上回っていたものの、0.4ミリメートルや0.31ミリメートルと
いった極小の余裕しかなかったことは、前述のとおりであるから、本件擁壁の耐圧盤コンクリートは、施工誤差
に対する配慮が欠落しており、建築基準法施行令79条1項が要求する品質に達しておらず、同項に違反して
いるというべきである。
イ 田中峯子編「建築関係紛争の法律相談」(平成16年。青林書院)232ページ(甲第49号証)及び
「建築工事標準仕様書」の「JASS5鉄筋コンクリート工事2003」(甲第53号証)によると、ある部材についての
鉄筋のかぶり厚さとはその部材の最も外側に配置された鉄筋についてのかぶり厚さをいうから、コンクリートに
目地がある場合には目地底からの厚さを指すところ、現況工作物目地位置写真(甲第50号証の1から4まで)
によると、本件擁壁には目地と思われる箇所が2箇所あり、目地の深さは15から13ミリメートルであることが確
認された。そして、本件擁壁は、建築基準法施行令79条1項が定めるかぶり厚さ60ミリメートルと同じ設計か
ぶり厚さを採用しているから、目地の部分については目地の深さ15から13ミリメートルの分だけかぶり厚さが
不足していることになり、同項が要求する品質に達しておらず、同項に違反しているというべきである。
ウ 東京都において建築物の構造設計及び施工についての取扱いを定めた東京都審査要領の一つ
である擁壁構造審査要領(甲第32号証)の第3(7)は、「鉄筋等の設計かぶり厚さは、令第79条に規定する数
値を確保するために必要な施工誤差を考慮して定めるものとする。この場合において、以下の数値を参考に
して定めることができる。①工場生産等で良好な品質管理による場合は、令第79条に規定する数値に1.0㎝
を加えた値。②①以外の場合は、令第79条に規定する数値に1.5㎝を加えた値。」と規定している。そうする
と、擁壁構造審査要領の観点からも、本件擁壁の耐圧盤コンクリートは、施工誤差に対する配慮が欠落してお
り、建築基準法施行令79条1項が要求する品質に達しておらず、同項に違反しているというべきである。
 また、建築構造設計指針(監修東京都建築構造行政連絡会)413ページには、その地方の気候風
土、都市防災上の負荷の大小によって、何らかの補正を加える必要を考慮した前記の取扱い等によらずに他
の方法等により設計することを妨げるものではないが、その場合には相応の説得力を有する情報を別に提供
する必要がある旨記述されている。しかし、被告建築主事は、本件弁明書において、設計かぶり厚さには施工
誤差に対する配慮は不要である旨主張するのみで、前記取扱いによらない場合に必要とされる相応の説得
力を有する情報を提供していない。そうすると、この観点からも、本件擁壁の耐圧盤コンクリートは、施工誤差
に対する配慮が欠落しており、建築基準法施行令79条1項が要求する品質に達しておらず、同項に違反して
いるというべきである。
エ コア抜き調査におけるコア①及びコア②は、建築基準法施行令79条1項に定める数値を0.31ミリ
メートル上回ったにすぎない。建築基準法施行令は、かぶり厚さの単位としてセンチメートルを採用し、日本建
築学会編集のJASS5は、かぶり厚さの単位としてミリメートルを採用していることからすると、0.31ミリメートル
という数値は、一般建築工事について論じる数値には値しないものというべきであり、この数値では、設計上の
厚さの確保を確認することはできない。
オ 覚書(甲第23号証の1)、本件弁明書に添付された書類(甲第16号証)及び配筋検査表(甲第24
号証)によると、本件擁壁の耐圧盤には異型鉄筋が使用されたことを確認することができる。異型鉄筋は、ふ
し・リブの突起があるため、その実径は図る場所で様々に異なり、公称外形15.9ミリメートルに対し、ふし・リブ
がある部分の最外径は、異型鉄筋を製造する6社の平均で17.5ミリメートルであり、公称外形との差は1.6ミ
リメートルにも及ぶ。異型鉄筋はふし・リブを横にして配筋されるが、写真(甲第33号証の1から5まで)による
と、本件擁壁の耐圧盤ではふし・リブを横にして配筋していない。そうすると、異型鉄筋の公称外形と最外径と
の差が1.6ミリメートルあるのに対し、コア①及びコア②は、建築基準法施行令79条1項に定める数値を0.3
1ミリメートル上回ったにすぎないことからして、本件擁壁の耐圧盤は、建築基準法施行令79条1項に規定す
るかぶり厚さを確保していないものと考えられるから、同項に違反しているというべきである。
カ コア①及びコア②が採取された平成15年11月19日は、コンクリート材齢約40日であり、いまだ収
縮過程の時期である。また、その約60日後である平成16年1月27日には工事完了届が提出されたが、この
時点では、コア①及びコア②が採取された時点よりも更に収縮が進んでいる。したがって、本件擁壁は、コンク
リートの収縮により、建築基準法施行令79条1項に規定するかぶり厚さを確保しておらず、同項に違反してい
るというべきである。
(3)ア 原告は、平成15年10月12日、P3から、本件擁壁の壁配筋に対するコンクリートのかぶり厚さが
不足している旨の説明を受けた。原告が同月13日午前及び同日午後4時に撮影した写真(甲第22号証の2
の№6及び№7)によると、壁配筋と型枠が接した状態でコンクリートが打設され、地上高約0センチメートルの
位置においては、部分的には0ミリメートルに近い状態であることを確認することができる。本来あるべき壁配
筋に対するコンクリートのかぶり厚さは6センチメートル(ただし、これには設計誤差は加味されておらず、建築
基準法施行令79条1項に規定する数値のそのままである。甲第23号証の1の6枚目)であり、6センチメートル
も不足している。
イ また、原告が平成15年12月3日に撮影した写真(甲第33号証の1)によると、型枠と鉄筋との間の
スペースを確保するために円盤状のスペーサーが耐圧盤から地上高約1.2メートルの位置に取り付けられて
いることを確認することができるが、この写真からは部分的に地上高約0センチメートルの位置において0ミリメ
ートルに近かった壁配筋コンクリートのかぶり厚さの不足が解消されたか否かを確認することはできない。なぜ
なら、スペーサーは、その設置された場所及びその周辺部のコンクリートのかぶり厚さの確保にしか役立たな
いのであり、また、上記写真によると、型枠及び型枠の補強のための鉄パイプなどの重量物が倒れかかるよう
に壁配筋に寄りかかっており、地上高1.2メートルの配筋は、D13φの鉄筋が上下ピッチ250ミリメートル、左
右ピッチ@200ミリメートルしか組まれていないから、重量物が寄りかかれば鉄筋が変形してしまうことは容易
に推測されるのであり、そこで、そのような鉄筋の変形を考慮に入れると、かぶり厚さ不足を確実に解消するた
めには地上高約10センチメートルの位置にスペーサーを設置する必要があるにもかかわらず、スペーサーが
設置されているのは地上高約1.2メートルの位置であるからである。
ウ そして、本件擁壁は、片持ち梁式逆T形擁壁に種別され、この種別の擁壁は、転倒しないために、
横向きの応力と下向きの応力が働き、縦壁と耐圧盤が接する部分には大きな圧縮方向の応力が加わる。鉄筋
コンクリート構造では、圧縮力はコンクリートが受け持ち、引張力は鉄筋が受け持つが、縦壁と耐圧盤が接す
る部分のコンクリートのかぶり厚さが不足すると、コンクリートは、圧縮方向の応力に屈して倒壊、破損する危険
がある。
エ 本件報告書では、部分的に0ミリメートルに近い状況の壁配筋に対するコンクリートのかぶり厚さの
不足は解消した旨報告されている。しかし、壁配筋に対するコンクリートのかぶり厚さの不足が解消したとする
根拠は、スペーサーを取り付けたことであるが、前述したところからすると、スペーサーを取り付けたことをもっ
て、壁配筋に対するコンクリートのかぶり厚さの不足が解消したということはできない。そして、他に壁配筋に対
するコンクリートのかぶり厚さの不足が解消したことを明らかにする資料はないのであるから、現状では壁配筋
に対するコンクリートのかぶり厚さの不足は解消していないといわざるを得ない。したがって、本件擁壁の壁配
筋は、建築基準法施行令79条1項に違反しているというべきである。
(三) 本件擁壁が東京都建築安全条例6条3項に違反していることについて
(1)ア 原告は、平成15年10月12日、P3から、本件擁壁のうち南側の既存RC擁壁との取り合い部分が
危険である旨の説明を受けた。原告が同月13日午前及び同日午後4時に撮影した写真(甲第22号証の2の
№1)によると、南側の既存RC擁壁と本件擁壁との間隔が広いにもかかわらず、補強のための配筋が何もされ
ていない状況を確認することができる。また、原告が同年11月28日に撮影した写真(甲第13号証の18)によ
ると、折り曲げた鉄筋を耐圧盤上に並べただけの配筋をしている状況を確認することができる。
イ ところが、P3は、原告に対し、平成15年9月9日、本件擁壁のうち南側の既存RC擁壁との取り合
い部分について、本件擁壁の建築確認申請時の設計者で工事監理者でもある一級建築士のP4の指導を仰
いだ良い選択である旨述べていたが、原告が同月11日に確認したところでは、既存RC擁壁と本件擁壁との
間には補強のための配筋はされていなかった。このようなP3の矛盾する言動からすると、本件擁壁の工事施
工者であった雄人は、本件擁壁とその南側の既存RC擁壁との取り合い部分についての安全な施工方法を理
解していたとは考えられない。
ウ 本件報告書では、本件擁壁のうち南側の既存RC擁壁との取り合い部分については是正を行い、
危険はない旨報告されている。しかし、P3は、本件擁壁とその南側の既存RC擁壁との取り合い部分につい
ての安全な施工方法を理解していないのであるから、そのような者による報告は意味のないものであり、本件
報告書の記載は到底信用することができず、上記危険が是正されたとはいい難い。したがって、本件擁壁のう
ち南側の既存RC擁壁との取り合い部分については、依然として危険が存在し、東京都建築安全条例6条3
項に違反しているというべきである。
(2)ア 鉄筋コンクリート構造の躯体についてボーリング調査を行う場合には、ボーリング調査によって鉄
筋が破断されると、直ちに躯体の強度の低下につながることから、鉄筋がない箇所においてボーリング調査を
行い、やむを得ず鉄筋を含む箇所においてボーリング調査を行うときには、躯体上で最も応力が掛からないと
想定される位置において、超音波等を用いてコンクリート内の鉄筋の位置を確認し、鉄筋を破断させないよう
に注意深く鉄筋を避けるようにして行うものとされている。
イ 雄人は、本件擁壁の耐圧盤の厚さを確認するためコア抜き調査を実施したが、その際に、前記ア
のボーリング調査における原則を無視し、躯体上でも大きく応力の掛かる位置、すなわちコア①及びコア②を
含む少なくとも5箇所において、超音波等を用いた調査もせずにボーリング調査を行って、耐圧盤コンクリート
の主筋を少なくとも1本は切断した。そうすると、本件擁壁の耐圧盤コンクリートは、少なくとも主筋1本が破断し
た状態であり、本件構造計算書1に当てはめてみても、本件擁壁には倒壊、破損の危険が存在しており、東
京都建築安全条例6条3項に違反しているというべきである。
(3)ア 本件擁壁の建築確認の申請時の設計図(甲第23号証の1の6枚目)によると、本件擁壁につい
て直接基礎を採用していた。ところが、原告は、平成15年10月12日、P3から、本件擁壁の山留め側にコンク
リート止め枠を設置しなかった旨の説明を受けた。原告が同月13日午前及び同日午後4時に撮影した写真
(甲第22号証の2の№4及び№5)によると、本件擁壁の山留め側にコンクリート止め枠を設置しなかったの
で、コンクリートが山留め側に流れ出し、上記設計図に記載されたような直方体状の断面形状ではなく、でこ
ぼこの不整形となっている。また、山留めの親杭に使用された使用済みの鉄道レールは、横矢板の前方に位
置し、本件擁壁の耐圧盤と無筋状態のコンクリートによって接合して一体化している。
イ でこぼこで不整形な断面形状を持つ耐圧盤は、コンクリートの中のセメントと水が地盤に吸収され
てコンクリート自体の耐力が損なわれる危険がある。
 また、鉛直に使用した使用済みの鉄道レールは、地震等の外力を受けると、耐圧盤と異なった動き
をし、その動きの差によって無筋コンクリート部分が破断し、それに伴い躯体鉄筋が地中に露出し、水分浸透
による鉄さびから鉄膨張を起こし、躯体自体の耐久性を著しく低下させ、危険である。
 さらに、本件擁壁の耐圧盤の支持層と、本件擁壁の耐圧盤と無筋状態のコンクリートによって接合
して一体化している山留めの親杭の支持層とは異なるので、両者の沈下量には差が生じる。そして、親杭とコ
ンクリートとの摩擦抵抗によって無筋状態のコンクリートに割れが生じるとともに、底盤断面が欠損する可能性
がある。割れが生じる位置によっては、その部分から水が浸透し鉄筋のさびを誘発し、その結果、本件擁壁の
耐力が低下する。
ウ 上記イの危険を回避するには、埋め戻し前に本件擁壁の耐圧盤躯体と、上記鉄道レールと無筋の
状態で接合しているコンクリート部分とを切り離す是正工事及び山留めの除去が必要であった。しかし、現在
に至るまで、仮設物たる山留めは、長期的に使用される本件擁壁と一体化し、上記危険が是正されない状態
のままで埋め戻された。本件擁壁の以上のような状態は、東京都建築安全条例6条3項に違反しているという
べきである。
(四) 本件擁壁が建築基準法施行令38条2項に違反していることについて
(1) 前記のとおり、山留めの親杭に使用された使用済みの鉄道レールが、横矢板の前方に位置し、本
件擁壁の耐圧盤と無筋状態のコンクリートによって接合して一体化していることによって、本件擁壁は、直接
基礎と杭基礎が併用された状態となっている。異種基礎が併用されると、不同沈下が発生し、地震時の水平
力の算定が行えないことから、これが禁止されており、一級建築士の鑑定意見書(甲第57号証の1)も、不同
沈下が発生する旨指摘している。
(2) 建築基準法施行令38条4項にいう「国土交通大臣が定める基準」とは、平成12年建設省告示第1
347号第2であり、建築物の構造、形態及び地盤の状況を考慮した構造計算又は実験によって構造耐力上
安全であることを確認した場合は、異種の基礎を用いることができるものとされている。しかし、本件擁壁につ
いては、上記構造計算又は実験は行われていない。
(3) したがって、本件擁壁は、直接基礎と杭基礎という異なる構造方法を併用する現状にあるものとし
て、基礎の併用を禁止する建築基準法施行令38条2項に違反しているというべきである。
(五) 本件擁壁が平等原則又は信頼保護の法原則に違反し、裁量権を逸脱していることについて
 擁壁構造審査要領の観点からも、本件擁壁の耐圧盤コンクリートは、施工誤差に対する配慮が欠落し
ていることは、前述のとおりであるが、擁壁構造審査要領は、行政手続法5条にいう審査基準に当たり、あたか
も詳細な法令のように整備されているから、これから外れる本件交付は、平等原則又は信頼保護の法原則に
違反し、裁量権を逸脱しており、違法である。
2 本件裁決の違法性について
(一)(1) 建築基準法94条3項は、公開による口頭審理の開催を義務付けており、口頭審理を要しないの
は、審査請求が一見明白にして不適法である場合のみである。
(2) 本件審査請求は適法であるにもかかわらず、被告審査会は誤って不適法なものとして、口頭審理
を開催しないまま、本件審査請求を却下する旨の本件裁決をしている。したがって、本件裁決は、口頭審理を
経ていないものとして違法である。
(二)(1) 建築審査会における審理は、原則として審査請求人及び処分庁から提出される書面に基づいて
行う(以下、この審理方式を「書面主義」という。)ものとされている。したがって、本来審理に反映されるべき書
面が審理に反映されないまま裁決がされた場合には、当該裁決は、書面主義に反するものとして、違法であ
るというべきである。
(2) 原告は、被告審査会に対し、審査請求書、反論書、平成16年3月30日付け準備書面(以下「本件
準備書面1」という。甲第38号証の1)、同月31日付け第二準備書面(以下「本件準備書面2」という。甲第9号
証の1)及び第三準備書面から第八準備書面まで並びに甲第1号証から第35号証までを提出した。ところが、
本件裁決書の2枚目には、「審査請求人の主張」として原告から提出された書面が挙げられているが、その中
には、本件準備書面1及び本件準備書面2が挙げられていない。
 したがって、本件裁決は、書面主義に反し、違法である。
(3) 被告審査会の事務局が本件準備書面1及び本件準備書面2を紛失したか、隠匿したかを問わず、
被告審査会が本件裁決において本件準備書面1及び本件準備書面2を無視したことは、裁決庁として行政不
服審査法の全条文の趣旨から求められる審理・裁決の公正さを担保すべき責任から生じる書面の存在に関
する調査・解明の義務を怠っており、書面の存在は知らなかったという理由で自己の責任を免れることはでき
ないというだけではなく、さらに、被告審査会が書面の存在を意図的に隠匿したものというべきである。
 すなわち、原告が、被告審査会に対し、電話番号を明らかにしたことはないにもかかわらず、被告審
査会の事務局の職員であるP5が原告宅に電話を架けてきたということがあったが、これは、P5が「適法かつ
公正な手段により収集しなければならない」等を定めた品川区情報公開・個人情報保護条例22条に違反した
ものであることは明らかである。そして、事務局の職員を管理・監督すべき立場にある被告審査会には、事務
局の職員の監督の責任があるというべきであり、被告審査会は、P5の違法行為について責任問題を逃れるた
めに、本件準備書面1及び本件準備書面2を隠匿したものというべきである。したがって、被告審査会は、P5
の違法行為及びこれについての監督責任の追及を免れるために、口頭審査を開かずに本件審査請求を却
下したのであり、不正な動機をもってした裁量権の行使として違法であるというべきである。

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