弁護士法人ITJ法律事務所

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         主    文
     原告の請求を棄却する。
     訴訟費用は原告の負担とする。
         事    実
 第一、原告の請求の趣旨及び請求の原因。
 原告代理人は、「原告に対する昭和二十四年(判)第五号事件につき、被告が、
昭和二十五年五月九日にした審決を取り消す」との判決を求め、請求の原因として
次のように陳述した。
 一、 被告は、昭和二十五年五月九日原告を被審人とする昭和二十四年(判)第
五号事件について、別紙審決書写のとおり審決をした。
 二、 原告は、この審決に不服であつて、次の諸点について争うものである。
 (一) 適用法律が改正されたから審決は取り消さるべきである。
 被告は、審決において認定した原告の行為が事業者団体法(以下団体法と略称す
る)第五条第一項第一号中の「原材料の割当に関する原案を政府のために作成
し」、「これを政府に提出」したものであり、同条同項第六号中の「特定の事業者
に利益又は不利益を与え」たものであり、同条同項第八号中の「構成事業者の機能
を制限し」たものであるとして、排除措置を命じたが、昭和二十七年七月三十一日
公布、即日施行の法律第二百九十一号事業者団体法の一部を改正する法律により、
被告は団体法第八条に規定する必要な措置を命ずる根拠を失うに至つた。従つて審
決はその拘束力を失い、被告は審決の執行処分を行うことができない。よつて審決
は速かに取り消さるべきである。
 (二) 原告の行為は連合国最高司令官の指令に基くものである。
 原告の行為は、かりに審決認定のとおりであつたとしても、降伏文書附属一般命
令第一号第十二項にいう「連合国軍官憲」の発した指示に従つたもので、法律違反
とならない。すなわち、連合国最高司令官(以下最高司令官と略称する)が、昭和
二十年十月二十六日日本政府に対し「用紙配給に関する新聞及び出版協会の統制の
排除に関する覚書」(以下「用紙配給覚書」と略称する)を発したため、連合国最
高司令官総司令部(以下総司令部と略称する)民間情報教育局情報部長Aは、国務
大臣Bらと右覚書に基く用紙割当に関し協議した結果、成案を得て、これをフアイ
ナル・ドラフト・オブ・ぺーパー・アロケーシヨン・オーデイナンス(以下フアイ
ナル・ドラフトと略称する)と名付け、昭和二十一年十月十八日これをB国務大臣
に交付し、口頭でこれを実施すべきことを指示した。しかるに、日本政府は、右指
示を誠実に守らず、ただ昭和二十一年十一月二十二日公布の勅令第五百六十六号
「新聞出版用紙割当事務局臨時設置制」に基き新聞出版用紙割当事務局(以下割当
事務局と略称する)を設置しただけで、その他の関係法令を制定しなかつた。そこ
で総司令部の指示である前記フアイナル・ドラフトに基き、総司令部から直接指揮
命令を受ける特殊の民間団体として、用紙割当委員会(以下割当委員会と略称す
る)が組織された。割当委員会は新聞部会、書籍雑誌部会の二部会から成り、各部
会がそれぞれ審査決定した用紙割当原案は、各部会の議長から直接総司令部に提出
して、その承認を求めた。一方政府機関である割当事務局は、割当委員会の各部会
が決定し、総司令部が承認した用紙割当原案に従つて用紙割当を実施した。しかし
て割当委員会はフアイナル・ドラフトに基いて、昭和二十二年五月二十四日原告に
対し書籍雑誌出版に対する用紙割当の原案の作成方を依頼し、原告はこれを承諾し
て、以来右用紙割当原案を割当委員会に提出してきた。
 その間政府機関に変動があり、昭和二十三年八月三日公布の法律第二百十一号新
聞出版用紙割当事務庁設置法、同月十七日公布の政令第二百三十二号新聞出版用紙
割当事務庁設置法施行令の施行により割当事務局が廃止せられ、新聞出版用紙割当
事務庁(以下割当事務庁と略称する)が設置せられ、割当事務庁が割当委員会によ
つて審査決定され総司令部の承認を経た用紙割当を実施するに至つた。
 しかるに、昭和二十三年七月二十九日団体法が公布され、即日施行されたので、
割当委員会書籍雑誌部会議長Cは、Aに対し団体法の施行が用紙割当手続に及ぼす
影響について若干の質問を提出したところ、Aは同年九月十三日右C議長に対し
「第三、四半期の用紙割当」と題する覚書(以下A覚書と略称する)を発し、政府
の作成する用紙割当の原案に原告の批判(Comment)を求めることは差支な
い旨を指示し、もつて、団体法の施行に伴うフアイナル・ドラフトの適用上の変更
を命じた。よつて割当委員会は、原告に対し団体法施行後は用紙割当原案の提出を
求めないで、政府(割当事務庁)の作成した用紙割当の原案について原告の批判を
求めることを通告したので、原告はそれ以来右通告に基き用紙割当に関する政府の
原案について批判し、割当委員会の参考に供したのである。なお、割当委員会は、
昭和二十四年八月四日政令第二百九十四号新聞出版用紙割当審議会令の公布施行に
より廃止せられ、原告の割当委員会に対する協力はここに終つたのである。
 その間、日本政府はフアイナル・ドラフトを飜訳して用紙割当規程と称して運用
したのであつて、日本政府のいう用紙割当規程は原告主張の連合国軍官憲の指示の
内容であるフアイナル・ドラフトと同一のものであつて、指示そのものである。
 Aは、総司令部民間情報教育局情報部長であつて、新聞及び出版用紙割当に関す
る権限を有し、その権限に基いて、最高司令官の発した用紙配給覚書の実施として
なされる新聞及び出版用紙の統制に関する補足運用命令として、フアイナル・ドラ
フト及びA覚書を発したものであるから、この両者はひとしく権限ある連合国軍官
憲の指示である。原告は、割当委員会を通じて受けた権限ある連合国軍官憲の指示
に従つたものであつて、占領下においては、指示は日本の法律に優先したのである
から、原告の行為は適法である。
 (三) 団体法第五条第一項第一号の規定及びこれに基いた審決は憲法に違反す
る。
 団体法第五条第一項第一号は国民が政府に対し情報を提供すること、政府のため
に意見を開陳することを制限し、また禁止し、その結果政府に対しても国民から情
報をとり集めることを制限しているのであるから、次のように憲法の各規定に違反
する無効な法律である。また右法律が無効であるからには、右法律に基いて原告に
対し割当委員会に情報意見、批評、計画を提供することを禁止した審決主文もまた
憲法に違反するものである。
 (1) 政府が国民から情報をとり集めることを制限することは、憲法第五章に
規定された行政部の権限の侵害である。憲法第七十三条第一号は内閣に対して国務
を総理することを委託している。内閣、すなわち政府は国務を行う上において、判
断の基礎となる事実を知らなければならぬ。従つて政府が国民から情報を受けた
り、あるいは国民に情報を要請したりすることを禁止する法律は、国務を行う上に
必要な権能を政府から奪うものであつて、憲法第七十三条第一号の規定と相い容れ
ないものである。
 (2) 憲法第十五条第二項は、「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一
部の奉仕者ではない」と規定した。全体に奉仕するためには、公務員又は政府は、
全体の意見を聞き、また意見を述べることを促すことを許されなければならない。
それ故社会の一部分である事業者団体に情報を要請すること、及び情報を受けるこ
とを禁止することは、社会の一部分に対し差別待遇をすることに外ならない。それ
故政府が事業者団体に情報を要請したり、また情報を受けたりすることを禁止する
団体法第五条第一項第一号の規定は、憲法第十五条第二項に違反するものである。
 (3) 憲法第十六条は、請願の権利、すなわち政府に対し意見を述べる権利を
保障している。政府に対し請願し、示唆又は情報を与える権利は民主政治にとつて
必須の権利である。しかも、憲法は請願する者の動機について何らの制限をも加え
ていない。あらゆる事項について、あらゆる人について請願の権利を認めているの
であるから、事業者団体に対し原材料等の割当に関して政府に請願する権利を拒否
している団体法第五条第一項第一号の規定は、憲法第十六条に違反するものであ
る。
 (4) 憲法第二十一条は、言論の自由を保障している。従つて事業者団体とい
えども、他の者と同じようにその意見を口頭又は書面で発表する権利を持つてい
る。もちろん、言論が、公共の福祉に反するときは、制限されることもまたやむを
得ないところであるけれども、政府に対しその意見を述べることが、公共の福祉に
反することはあり得ない。従つて事業者団体に対し原材料等の割当に関する意見を
表明することを禁ずる団体法第五条第一項第一号の規定は憲法第二十一条にもまた
違反する。
 (四) 原告は出版用紙の割当に関する原案を政府のために作成し、又はこれを
政府に提出したことはない。
 (1) 原告は用紙割当の原案を作成又は提出したものではない。
 団体法施行後は、政府(割当事務庁)において、用紙割当の原案を作成し、割当
委員会にこれを提出して、審議を求め、割当委員会は政府作成の用紙割当原案を審
議するにあたつて、その参考としてこれに対する原告の批判を求めたのである。
 そこで、原告は割当委員会の要求があつた場合だけ、原告の担当職員を同委員会
書籍雑誌部会の下見審議及び本会議に出席せしめたのである。右の会議において、
原告の職員は、割当委員から要求のあつた場合だけ発言し、文化委員会(原告の費
用を以て会合を開催する各方面の学識経験者をもつて組織する団体)の用紙割当の
原案に対する批判意見に基いて純粋に文化的見地から当該雑誌及び書籍についての
文化的社会的価値判断を加えた批判的意見を述べたのである。
 団体法第五条第一項第一号にいう「割当に関する原案」とは、個別的、具体的な
割当の案を指すのであつて、提出を受けた政府がそれをそのまま実施すると否とを
問わないが、実施しようと思えばできる程度に具体化したもりであることが必要で
あろう。
 しかるに、原告のなした本件「批判」は、割当委員会が特に求めたものについて
りみなされたのであるから、個別的でない。また各個の書籍雑誌について数字をあ
げたものでなく、その内容の文化価値に、需要度を考慮した社会的価値判断をなし
たのであるから具体的でない。また書類を提出するのでなく、部分的に口頭で批判
するだけであるから、実施しようと思えばできる程度に具体化したものでもない。
以上いずれの観点から見ても、原告のなした批判は、「割当に関する原案」の作成
又は提出とはならないものである。
 (2) 原告のなした批判は、政府のために、又は政府になしたものでない。
 原告に対し、政府の作成した用紙割当の原案につき批判を求めたのは、割当委員
会であつて、政府機関である割当事務庁ではない。元来割当事務庁は前掲新聞出版
用紙割当事務庁設置法によつて設置せられたもので、同法律によれば、割当事務庁
は新聞出版用紙割当審議会の議決に従つて、用紙割当を実施することになつてい
た。しかるに、同法律施行後同法律に規定せられた、新聞出版用紙割当審議会は設
けられず、同法律は、右審議会に関する部分のみがその運用を停止されていたので
ある。そのため、割当委員会が右審議会に代る法律上の根拠がないのに拘らず、割
当事務庁は同法律施行前と同じように割当委員会の審議決定した結果に基いて用紙
の割当を実施していた。すなわち、割当委員会は、さきに述べたように総司令部の
直接指示を受けて、用紙割当の原案を審議していたのである。いつたい、割当委員
会は、総司令部の指示によつて組織された特殊の民間団体であつて直接総司令部の
指揮命令を受けてその業務を執行していたのである。それ故割当委員会は、新聞出
版用紙の割当について、いわば総司令部の代理人のような立場にあつたのであつ
て、日本政府の機関ではなかつたのである。
 原告は、このような性格を有する民間団体である割当委員会に対して政府の作成
した用紙割当原案に関する批判をしたのであつて、原告と政府機関との間には何ら
の直接関係がなかつたのであるから、原告のなした批判は「政府のために又は政府
に」なしたものではない。
 (五) 原告は、出版業者に利益又は不利益を与えかつ出版業者の機能もしくは
活動を制限したことはない。
 審決は、原告が原材料の割当に関する原案を政府のために作成し、かつこれを口
頭をもつて政府に提出する方法によつて出版業者に利益、不利益を与えかつ構成事
業者である出版業者の機能を制限したものと認定したがそのような事実はない。
 (六) 用紙の配給統制が撤廃せられたから排除措置の必要がない。
 昭和二十四年十二月二十九日公布同二十五年一月一日施行の農林、通商産業省令
第十号「指定生産資材割当規則の一部を改正する省令」により、出版用紙に関する
統制は撤廃せられた。従つて、被告は原告に対し審決主文の排除措置を命ずる必要
はない。
 (七) 審決の基礎となつている事実を立証する実質的な証拠がない。
 被告が審決の基礎として認定した事実(審決書の「事実と証拠」と題する部分中
一、二、三、四記載の事実)中、次の(1)(2)(3)の諸事実については、こ
れを立証する実質的な証拠がない。
 (1)「事実と証拠」の二の事実。
 二つの事実認定中「新聞出版用紙割当事務庁設置法の施行により、新聞出版用紙
割当審議会の議決に従つて新聞出版用紙割当事務庁が行うことになつた」とある
が、新聞出版用紙割当事務庁設置法は、その施行後、昭和二十四年八月四日公布の
政令第二百九十四号新聞出版用紙割当審議会令が施行されるまでは、審議会に関す
る部分のみ運用を停止され、用紙割当委員会が総司令部の直接指示を受け、従前通
りの運営を続けていたのである。また「昭和二十一年頃閣議決定を経た用紙割当の
機構及び手続に関する用紙割当規定(未公布)に基いて、用紙割当の決定機関とし
て事実上設けられた新聞及び出版用紙割当委員会」とあるが、用紙割当委員会は閣
議決定によつて設置ぜられたものでなく、用紙割当規程は連合国軍官憲の指令の内
容であるフアイナル・ドラフトの飜訳である。
 (2) 「事実と証拠」の三の事実。
 (イ) 三の(1)末尾に、「文字・符号・数字等をもつて記入し」とあるが、
これは、文字・符号・数字を以て記入したこともあるに過ぎない。
 (ロ) 三の(2)中「割当審議表を作成し」とあるが、これは割当審議表メモ
を作成したのであり、「割当に当つて諸種の考慮すべき事項を文章で……記入し」
たことはない。
 (ハ) 三の(3)第二行目「割当審議表」は割当審議表用紙であり、第八行目
「審議表」は審議表メモである。
 (ニ) 三の後段の「審議表を所持した」とあるのは、審議表メモを所持したの
であり、「主として」とあるのは削除さるべきであり、「具体的意見を述べ」とあ
るのは、批判的意見を述べたのである。
 (3) 「事実と証拠」の四の事実。
 四の末尾に「割当部数は自ら定まることになつていたものである」とあるが、割
当部数は四に認定してあるような経過で、決定的に定つたのではない。
 なお、「被告の認定した事実を立証する実質的な証拠がある」というためには、
(い)被告の認定事実を立証するところの、少くとも信じ得る証拠が審判手続にお
ける調書の中に見出されること、(ろ)被告の認定に反する別の証拠が圧倒的に対
抗し難い証拠でないこと、及びこのような反証を提出する公平な機会が審判手続中
に与えられたことが調書の中で見出されることの二要件が必要である。何となれ
ば、被告の事実認定を支持する実質的な証拠が一つさえあれば、他に被告の事実認
定と矛盾するところの、より信用すべき証拠が百あろうとも、裁判所が被告の事実
認定に拘束されるとすれば、行政機関たる被告が事実に関する限り終審として裁判
を行うことに帰着し、憲法第七十六条第二項に違反するからである。しかして、前
段主張の(1)(2)(3)に摘示したかつこ内の認定事実は、このような意味の
実質的な証拠によつて立証されていないものである。
 第二 被告の答弁。
 被告代理人は原告の請求を棄却するとの判決を求め、次のとおり陳述した。
 一、 被告が原告主張の審決をしたことは認める。
 二、 (一) 適用法律が改正されたから審決は取り消さるべきであるとの主張
について。
 裁判所が被告の審決を審査するにあたつて、基準とすべき法令は審決時の法令で
なければならない。裁判所による審決の審査の本質は、審決の適否の判断に外なら
ないのであつて、裁判所は、審決の時に違法であり、又は不当である審決について
のみこれを取り消し、又は変更し得るに過ぎない。それ故審決後の法律の改正は審
決取消の理由とはならないものであり、この点の原告の主張は理由がない。
 (二) 原告の行為は最高司令官の指令に基くものであるとの主張について。
 総司令部民間情報教育局がB国務大臣に対しフアイナル・ドラフトを交付したこ
とは認めるが、フアイナル・ドラフト自体が指示であること、フアイナル・ドラフ
トを実施することを命ずる口頭の指示があつたことは、ともに否認する。フアイナ
ル・ドラフトは、その名の示すように案であつて、その内容に指示たることを示す
表現はなく、右は連合国軍官憲の日本政府に対するしようようあるいは示唆、すな
わち命令の意味を有しない一種の助言であつたのである。
 総司令部民間情報教育局情報部長Aが原告の主張の覚書を発したことは争わない
が、右A覚書が指示であることは否認する。右は連合国軍官憲の団体法の解釈に対
する個人的見解の表明であろう。
 右Aが昭和二十一年から昭和二十三年に至るまでの間新聞及び出版用紙割当に関
して権限ある連合国軍官憲であつたことは知らない。
 およそ、連合国軍官憲の指示には直接指示(日本政府を通じることなしになされ
る日本政府機関以外の人又は団体に対する指示)と間接指示(日本政府に対する指
示で、日本政府がこれを法制化することにより日本政府機関以外の人又は団体が拘
束される指示)とがあるが、フアイナル・ドラフト及びA覚書はそのいずれにも当
らないものである仮に右フアイナル・ドラフト及びA覚書が何らかの意味で連合国
軍官憲の指示であるとしても右指示に基いて何ら日本法令の改正等の措置がとられ
ず、また右指示自体に何ら日本法令の適用を排除する旨の文言もないのであるから
その指示の効力たるや何ら日本法令の効力を左右し得る程度のものではない。
 日本政府はフアイナル・ドラフトを受け取つた後、これを飜訳して、用紙割当規
程と名付け、昭和二十一年十一月頃内閣総理大臣の決裁を経たが(審決には閣議決
定を経たと認定したが、これは誤であつた。)正式の法令とはせずに、実際上この
用紙割当規程に基いて用紙の割当をして来たのである。この用紙割当規程は原告主
張のフアイナル・ドラフトそのものではなくフアイナル・ドラフトに基いて日本政
府の作成したものであるから、フアイナル・ドラフトとは別個のものである。
 (三) 団体法第五条第一項第一号及びこれに基いた審決が憲法に違反するとの
主張について。
 (1)憲法第七十三条の「内閣は国務を総理する」というのは国の行政事務は各
省大臣がこれを分担するが、内閣はその全体に対し監督者たる地位に在ることを示
したものであり、各主務大臣の職務に属する行政事務を総括して指導監督すること
を意味するのである。また憲法第十五条第二項は、その第一項と同じように国民主
権主義の根本原則を表明したもので、公務員は一部少数者の利益のためにその職務
を行つてはならないという意味であつて、いずれも政府又は公務員が常に国民全体
の意見を聞いて事を処理しなければならぬことを直接に規定しているものではな
い。憲法の右二条項に、国民の総意をできる限り参酌して国政を行うべきことを要
求する趣旨が含まれているとしても、政府又は公務員が国民の意見を聞くに付て
は、法規に従つた方法でなすべきであつて、違法な方法に訴えるべきではない。従
つて団体法が公益の立場から私人の統制行為参加を禁止している場合に、その限度
において政府又は公務員が国民の意見を聞くことを制限せられたとしても、右憲法
の条項に違反するものではない。
 (2) 憲法の保障する基本的人権は侵すことのできない永久の権利であつて、
立法によつてひだりに制限することのできないものであることはいうまでもない。
しかしながら国民は憲法の保障する自由及び権利を濫用してはならないのであつ
て、公共の福祉に反しない限度においてこれを利用しなければならない。従つて言
論の自由といえども、絶対無制約なものでなく、請願もまた違法の事項を内容とす
ることは許されない。団体法第五条第一項第一号に、経済統制のような権力的行為
は公益の代表者である政府の専権に属するもので、これを私的団体をして行わせる
ことは公共の利益を害するという理由で、事業者団体の経済統制行為を禁止してい
るのである。従つて経済統制行為の禁止によつて、事業者団体の表現の自由が害さ
れる一面があつたとしても、同条項を目して憲法違反となすは当らない。また配給
統制の目的を以てする割当原案の提出を請願の形式ですることは、請願の権利の濫
用であつて公共の福祉に反するものというべく、かかる請願をなすことはもとより
許されないところであるから、団体法第五条第一項第一号及び審決主文は、ともに
憲法第十六条に違反するものではない。
 (四) 原告は出版用紙の割当に関する原案を政府のために作成し、又はこれを
政府に提出したことはないとの主張について。
 (1) 原告は用紙割当の原案を作成又は提出しないとの主張について。
 原告は、団体法施行前においては、内閣総理大臣の決裁を経た用紙割当規程及び
昭和二十二年五月二十四日附の「新聞及出版用紙割当委員会と社団法人日本出版協
会との協定事項」に基いて、予め商工省(或は通産省)から発表される当期の用紙
割当可能総量の枠内で割当審議表に個々の割当申請書籍雑誌についての割当部数又
は頁数を記入した割当原案を割当委員会に提出し(形式的提出行為)、かつ割当委
員会の審議の際に担当職員をして自由にこれについて説明させて(実質的提出行
為)来たのであつた。なお、割当原案は、原告の附属機関である文化委員会の審議
を経て決定されたものであるが、原告の名において作成、提出したものであり、か
つその内容も単に文化的な価値判断をなしているものではなく、同時に用紙の経済
統制に関するものであつた。
 ところが、団体法の施行により従来のような原案の作成、提出ができなくなつた
ため原告はA覚書による示唆に従つて、従来のように個々の書籍雑誌全部について
部数、又は頁数を割当審議表に記入することはやめたが、従来からの慣習によつて
直ちに割当部数又は頁数が定まるような記号又は内容批判に関する文字等を割当審
議表に記入し、(一部については従来のまま数字を記入し)、これを批判案と称し
て、割当委員会の審議の際に、従来と同様に職員をして持参させ、審議に参加させ
た。しかるに割当委員会における審議は、個々の書籍雑誌毎に事務庁作成の原案を
もとにして検討され、原告職員は、割当委員に要求された時ばかりでなく、自発的
にも右批判案を参照しつつ、時に具体的な数字をあげながら、割当についての意見
を口頭て述べたのであつて、原告職員が積極的に発言しなかつたのは、原告側と事
務庁原案とが一致している場合であつた。もちろん原告の職員は、割当審議表記載
の書籍全部について、その割当部数又は頁数を一々口頭伝達したというのではなか
つたけれども、その所持したいわゆる批判案の内容は十分に、個別的に割当委員会
に口頭で伝達したのである。
 団体法施行に伴つて、原告が改めた主要な点は、
 (イ) 割当審議表記載の書籍雑誌の全部について割当部数又は頁数を記入する
ことはやめたが、数字の代りに直ちに数量の決定できるような記号・文字を記入
し、これを批判案と称することとしたこと。
 (ロ) 右批判案と称するものを割当委員会に提出するという形式的行為をやめ
て、批判案の内容を個別的に口頭伝達するという実質的な提出行為のみにしたこ
と、の二点で、実質的には何ら異るところがなく、出版業の原材料である用紙の割
当について個別的でかつ具体的な内容を作成し、提出したものである。
 団体法第五条第一項第一号で、「原材料の割当に関する原案を政府のために作成
し、又はこれを政府に提出すること」を禁止している趣旨は、統制のような権力行
為は、公益の代表者である政府が自らの責任で実施すべきものであつて、私的団体
の具体的介入を許さないというにある。従つて事業者団体の作成又は提出する原材
料の割当案は、政府により実施せらるべき意図を持つていることを要すると共に、
政府がこれに基き個別的な割当統制を実施し得る程度に具体化したものであること
は必要である。しかし、その案がそのまま実施されるか、修正を要するかは問わな
い。またかならずしも当該割当の全範囲にわたる内容を有することも必要でない。
たとい、割当の一部であつても、実施可能な要素を持つものであれば足りるし、ま
た政府のための唯一の案であることも要しない。
 従つて原告の行為は団体法第五条第一項第一号に規定する「原材料の割当に関す
る原案を作成し、又は提出することに」該当するものである。
 (2) 原告のなした批判は、政府のために、又は政府になしたものでないとの
主張について。
 団体法第五条第一項第一号にいう「政府」とは直接経済統制を実施するところ
の、法制上の根拠を有する行政官庁を指すばかりでなく、当該統制についての当該
行政官庁の意思決定に関与する権能を有する当該行政官庁と密接な関係を有する国
家機関をも含むものと解すべきである。
 これを本件について考えるに、割当委員会は、直接には昭和二十一年十一月五日
閣議決定を経た新聞出版用紙割当委員会規程(同年十二月二十日附官報五九八二号
に官庁事項として発表)に基いて、内閣に設置されたものであり、その権能は新聞
及び出版用紙の割当に関する決定をなすにあつた。右決定に従つて用紙の割当を実
施する官庁は、新聞出版用紙割当事務局臨時設置制(昭和二十一年十一月二十五日
勅令第五百六十六号)によつて内閣に設けられた割当事務局であつたが、新聞出版
用紙割当事務庁設置法(昭和二十三年八月三日法律第二百十一号)によつて、割当
事務庁と名称を変更し、更に新聞出版用紙割当局と再び名称を変更した。割当委員
会は新聞出版用紙割当審議会令(昭和二十四年政令第二百九十四号)によつて政府
機関たる審議会にそのまま移行し、審議会令附則2によつて、割当委員会のなした
議决は、審議会がなした議決と同一の効力を有するものとみなされるに至つた。そ
の間割当委員会は、厳格な意味では、法制上の根拠を有する行政官庁といい難いも
のであつたが、用紙割当規程に基く用紙割当の実施官庁である新聞出版用紙割当事
務局(同割当事務庁、同割当事務局)と密接な関係を有し、事実上用紙割当の決定
機関としての機能を果し、両者は一体となつて用紙の配給統制を行つて来たもので
あるから、割当委員会は国家機関たる実質を有するものであり、団体法第五条第一
項第一号の政府に該当するものである。
 もし仮に団体法第五条第一項第一号の政府とは法制上の根拠を有する政府機関を
指するものと解するものとしても、原告は、割当委員会の決定が直ちに法制上の根
拠を有する政府機関である割当事務庁の決定事項として実施せらゆることを認識し
ながら、割当委員会に対し、原告のいわゆる批判案を伝達したのであるから、右の
原告の行為は、割当委員会を通じて、割当事務庁すなわち政府のために、又は政府
に対してなしたものといわなければならない。
 (五) 原告は、出版業者に利益又は不利益を与え、かつ出版業者の機能もしく
は活動を制限したことはないとの主張について。
 原告は審決において認定したように、割当委員会の席上原案の割当数量に対する
具体的意見を述べこれによつて書籍及び雑誌の割当部数がおのずから定められる関
係にあつた以上、原告は特定の事業者に利益又は不利益を与え、また同時に構成事
業者の機能を制限したといい得るのである。
 (六) 用紙の配給統制が撤廃せられたから排除措置の必要がないとの主張につ
いて。
 出版用紙に関する統制が一時撤廃されたことは、原告主張のとおりであるが、昭
和二十五年二月七日公布即日施行の通商産業省令第九号によつて、出版用紙の再統
制が実施されているから、統制撤廃の事実に基く原告の主張は理由がない。
 (七) 審決の基礎となつている事実を立証する実質的な証拠がないとの主張に
ついて。
 審決の認定事実中「昭和二十一年十一月頃閣議決定を経た用紙割当の機構及び手
続に関する用紙割当規程」とあるのを「昭和二十一年十一月頃内閣総理大臣の決裁
を経た用紙割当の機構及び手続に関する用紙割当規程」と訂正する。
 その余の審決認定事実中、原告の争う部分は、すべて審決掲記の証拠によつて認
め得るものであり、右は、すべて実質的な証拠によつて立証されているものであ
る。
 なお、実質的な証拠によつて立証されているか否かは、裁判所が、審判手続中に
あらわれたすべての証拠を綜合的に比較検討した上で、決定することであるから、
最終事実認定権は裁判所にあるものというべく、憲法第七十六条第二項を援用する
原告の主張は当らない。
 第三 証拠関係
 一、 引用証拠。
 (一) 原告代理人は引用甲第一号証(フアイナル・ドラフト、B国務大臣が連
合国軍官憲から交付を受けた原本に基き、写を作成し、用紙割当委員会の委員各自
に交付したものの一つ)、同第二号証(A覚書)、同第三号証(第五国会衆議院内
閣委員会昭和二十四年四月十一日速記録)、及び審判手続における参考人C、D、
E、F、G、H、I、Jの各陳述を引用し、引用乙第一、第二号証の成立を認め、
引用乙第一、第二号証に記載された参考人の陳述が審判手続における同一参考人の
陳述と牴触する部分の引用については異議があると述べた。
 (二) 被告代理人は、引用乙第一号証(Gの口供書)、同第二号証(Hの口供
書)、審判手続における参考人F、G、J、Cの各陳述を引用し、引用甲第一号証
につきB国務大臣が作成し、用紙割当委員会の委員各自に交付したものの一である
ことは認めるが、その原本が同国務大臣において連合国軍官憲から交付を受けたも
のであることは知らない。引用甲第二号証の原本の存在は認めるが、その成立は不
知、引用甲第三号証の成立は認めると述べた。
 二、 あたらしい証拠の申出。
 (一) 原告代理人は、あたらしい証拠として、新甲第一号証の一(K中佐の書
翰)、同号証の二(Aに関する職務証明書)、同第二号証(K中佐の書翰)の提
出、参考人B、Lの尋問の申出をなし、その申出の理由として、フアイナル・ドラ
フト及びA覚書が権限ある連合国軍官憲の指示であることを立証せんとするもので
あつて、連合国軍官憲の指示に関する証拠の取調は私的独占禁止法第八十一条第一
項の制限外であると述べた。
 (二) 被告代理人は、参考人M、Nの尋問の申出をなし、その理由として、フ
アイナル・ドラフトが連合国軍官憲の指示でないことを立証せんとするものであ
る。なお連合国軍官憲の指示は、それが直接管理としてなされる限り一の法源と解
すべきであるから、私的独占禁止法第八十一条の規定に拘らず、裁判所自らこれを
調査する権限があると述べた。
 (三) 当裁判所は、原告提出の新甲第一号証の一、二、第二号証について証拠
調をなしたところ、被告代理人は、新甲第一号証の一、二の成立は認める。同第二
号証の成立は不知と述べた。
         理    由
 (一)適用法律が改正されたから審決は取り消されるべきであるとの主張につい
て。
 被告は本件審決において、原告は(1)原材料の割当に関する原案を政府のため
に作成し、これを政府に提出ししかもこの行為により(2)特定の事業者に利益を
与え、かつ(3)構成事業者である出版業者の機能を制限したものであると認定
し、右(1)は団体法第五条第一項第一号、(2)は同項第六号、(3)は同項第
八号に各違反するものとし、同法第八条に則り右各違反行為を排除するための必要
な措置として被審人たる原告に対し「一、被審人は今後政府機関の作成した割当原
案を批判するため、又は右原案による割当決定の参考に供するため、割当申請の全
部は勿論、その一部についても、用紙割当数量又は出版物の総合的価値判断を数字
記号その他で表示した批判案、参考案その他これに類するものを作成し、又はこれ
を政府に提出したり割当手続の過程に参加して用紙割当数量又は出版物の総合的価
値判断に関する具体的意見を陳述する等どんな方法によつても出版用紙の配分の統
制的行為をし又はそれに着手してはならない。」(審決主文第一項)「二、被審人
は今後前項のような行為その他どんな方法によつても特定の事業者に利益又は不利
益を与えたり構成事業者の機能若しくは活動を制限してはならない。」(同第二
項)との事項を命じたものである。しかるに、昭和二十七年七月三十一日公布即日
施行の「事業者団体法の一部を改正する法律(昭和二十七年法律第二百九十一
号)」によつて、従前の団体法第五条第一項第一号中「及び原材料、商品若しくは
施設の割当に関する原案若しくは計画を政府のために作成し又はこれを政府に提出
すること」が削除され、同項第六号中「特定の事業者を公認し」を「特定の事業者
を不当に公認し」に、「特定の事業者を排斥するための表」を「特定の事業者を不
当に排斥するための表」に、「その他の方法により」を「その他不当な方法によ
り」に、「特定の事業者に利益又は不利益を与えること。」を「特定の事業者に不
当に利益又は不利益を与えること。」に改められ、同項第八号中「機能若しくは活
動を」の下に「不当に」を加えられ、第四条第十号に「前各号に掲げるものの外第
五条第一項各号及び私的独占禁止法の規定に違反しない行為」との一項目が設けら
れ、第八条の「第四条第一項各号の許容活動の範囲をこえる行為又は」が削除され
た。すなわち、右改正法律によれば原材料の割当に関する原案を政府のために作成
し又はこれを政府に提出する行為は、事業者団体にとつてもはや禁止行為ではな
く、許容活動となつたものであり、公正取引委員会はかかる行為についてなんら排
除措置を命ずべきものではなくなつたものである。また特定の事業者に利益又は不
利益を与える行為は、改正法によれば不当な方法により不当に利益又は不利益を与
えるものだけが禁止され、排除措置の対象となるもので、かようなものでないもの
は、特定の事業者に利益又は不利益を与えるものであつてもそれは禁止行為ではな
く許容活動とされることとなり、さらに構成事業者の機能若しくは活動を制限し又
はその制限に着手する行為は、改正法によれは不当にかかる制限をし又は制限に着
手する行為のみが禁止され、排除措置の対象とされるものでかかるものでないもの
は、構成事業者の機能若しくは活動を制限し又はその制限に着手するものであつて
も、それは禁止行為ではなく、許容活動とされるにいたつたものであることが明ら
かである。
 審決主文第一項は一見団体法第五条第一項第一号前段の統制行為の禁止と同様の
事項の禁止を宣言しているようであり、従つて前記法律の改正とは無関係のものの
ようてあるが、決審が被審人たる原告の行為として認定したのはもつぱら同号後段
の割当原案の作成提出ということにあつたことは前記のとおりであつて、審決はこ
の行為の排除に必要な措置として前記のような事項を命じたもので、その例示する
内容も被告が審決において割当原案の作成提出にあたるとしている行為を指摘して
いるところであるから、右主文の趣旨は結局被告の認定した原告の違反行為と同種
の行為を繰り返さしめないことにあるものと解して差し支えない。主文第二項は明
らかに違反行為と同種の行為の繰り返しを禁じたものである。これらの審決が右団
体法改正の結果いかなる影響を受けるかが本件の問題である。
 この点について改正法は附則第五項において「この法律の施行前にした行為に対
する罰則の適用についてはなお従前の例による」と規定した外、なんらの経過的措
置を規定してはいない。思うに被告公正取引委員会は一の行政庁であり、その審決
は一の行政処分であるから、審決の取消又は変更を求める訴は本質的には一の行政
事件訴訟である。いつたい裁判所に対して違法な行政処分の取消又は変更を求める
訴を提起することを得させたのは、法による行政を担保し、行政庁の恣意によつて
国民の権利又は利益が違法に侵害されることのないようにするためである。この場
合に裁判所が判断すべきことは係争の行政処分が違法に行われたかどうかの点であ
り、行政処分の行われた後法律が改正されたからといつて、行政庁は改正法律によ
つて行政処分をしたのではないから裁判所は改正後の法律によつて行政処分の当否
を判断することはできないのである最高向裁判所<要旨第一>昭和二五年(オ)第二
二〇号同二七年一月二五日第二小法廷判決参照)。本件においても、団体法第九条
によつて準用される独占禁止法第八十二条第一項第二号によれば、審決
が憲法その他の法令に反する場合には、裁判所は審決を取り消すことができ、同条
第二項によれば、裁判所は審決の内容が憲法その他の法令の適用につき独断に過ぎ
又は不当であると認めるときは審決を変更することができるとされているが、ここ
にいう憲法その他の法令とは被告が審決をした時におけるそれと解すべきものであ
ることは右と同様である。従つて本件審決が、改正された団体法に照せばこれに反
するとしても、そのことの故に審決を取り消すことはできないものといわなければ
ならない。また旧法の下で適法に成立した審決が改正法の施行によつて当然に形式
的にも無効に帰するということはあり得ないものといわなければならない。しかし
ながら、審決がその内容として基いている旧法の規定が廃止変更された結果、この
審決の内容が実質的に改正法律によつて影響されることのあり得ることはこれを肯
認しなければならない。
 <要旨第二>原材料等の割当に関する原案若しくは計画を政府のために作成し又は
これを政府に提出する行為は旧法においては禁止されていたが改正法に
よつては無条件に適法行為となつたものであり、改正法施行後は事業者団体は自由
にかかる行為を行い得ることとなつたものであるから、被審人たる原告にこれが禁
止を命じている審決主文第一項は、右改正法律自体の効力によつて、将来に向つて
当然その内容のもつ実質的な拘束力を失い、爾後原告に対し禁止の効力を持続する
ことなきにいたつたものと解するのを相当とする。法は一方において現に適法な行
為として許すものを、同時に他方において違法として禁止することは原則としてあ
り得ないところである。審決の内容のこの拘束力は法の改正そのものによつて、他
になんらの手続をまたず当然に失われるものと解すべきであつて、そのために公正
取引委員会ないし裁判所で特にその意味の審決の取消又は無効宣言を要するもので
はないし、またかかる審決の内容としての拘束力が失われることの故に審決そのも
のを取り消すことはできないものというべきである。従つてこの点に関する原告の
主張はすべて失当である。
 しかしながら審決は形式的に存在してもその内容はすでに当事者を拘束せざるに
いたつているのであるから、現在の状態においては審決が始めから存在せず又は他
の事由で取り消された場合と異なるところはなく、右審決が形式的に存在すること
はなんら原告に不利益をもたらすものではない。従つてこれか取消を求める原告の
本訴請求は、この部分に限り、原告主張の他の諸点について審理するまでもなく、
訴の利益を欠くものとして請求棄却を免れない。
 次に審決主文第二項に関して検討する。審決当時における団体法は事業者団体が
特定の事業者に利益又は不利益を与えること、構成事業者の機能もしくは活動を制
限すること自体を禁止していたものであつて、その利益不利益の与え方ないし機能
活動を制限するし方が不当であると否とを問わなかつたのであり、本件審決主文第
二項もそこに掲げた方法が不当であるか否かを問わず全面的にこれが禁止を命じた
ものである。いいかえれば旧法の禁止したものの中には改正法においても禁止する
不当なそれと、改正法では適法行為となつた不当でないそれとが含まれていたとい
うべきであり、本件審決の命じた禁止行為の中にも改正法のなお禁止する不当なも
のと改正法によつて適法行為とされている不当でないものとがあり得るわけであ
る。改正法はこれらのうち不当なものだけを特に禁止し、その余のものを適法とす
るにいたつたものであるから、審決がその主文第二項で命じた禁止行為中改正法に
よつても依然禁止の対象とされる不当なものだけについて、審決はその実質的拘束
力をなお持続し改正法によつては適法行為となつた不当なものでないものについて
は前記審決主文第一項に関してのべたと同一の理由により、その内容のもつ実質的
拘束力を失つたものといわなければならない。その実質的拘束力をなお持続する部
分について、法の改正を理由として審決の取消をすべきものでないことは前記のと
おりであり、その拘束力の失われたものについてもそのことの故に審決そのものを
取り消すことを得ないことは前記審決主文第一項についてのべたところと同様であ
るから、この点に関する原告の主張は失当である。もつとも審決の拘束力の失われ
た部分については原告は訴の利益を欠くものというべきことも前同様たるべき筋合
であるが、審決は団体法がその当不当の区別なく前記諸行為を禁止していたときに
これを根拠としてなされたものであり、その認定した原告の行為につきあえて当不
当を区別しないと同時に、その主文で命じた将来の禁止についても当不当を区別し
てはいないのであるから、結局審決主文第二項のどの範囲がなおその拘束力を有
し、どの範囲がこれを失つたかを確定する方法がないのである。従つてこの点につ
いては原告はこれを全体としてなおその取消を求めるについて訴の利益があるもの
というの外はない。よつて右審決主文第二項に関係する限度においてなお原告の他
の主張について順次判断しなければならない。
 (二) 原告の行為は最高司令官の指令に基くものであるとの主張について。
 原告は、原告の行為が、かりに審決認定のとおりであつたとしても、右は権限あ
る連合国軍官憲の指示であるフアイナル・ドラフト及びA覚書に従つたもので、占
領下においては、指示は日本国の法律に優先したのであるから、原告の行為は適法
であつたと主張する。よつて、フアイナル・ドラフト及びA覚書が権限ある連合国
軍官憲の指示であるか否かについて検討する。フアイナル・ドラフトが総司令部民
間情報教育局からB国務大臣に交付せられたものであること、A覚書が総司令部民
間情報教育局情報部長Aから割当委員会書籍雑誌部会議長Cに交付せられたもので
あることは当事者間に争のない事実である。しかして、右フアイナル・ドラフト及
びA覚書が権限ある連合国軍官憲によつて発せられたものであることは、成立に争
のない新甲第一号証の一、二、当裁判所が文書の体裁、文言、署名などにより真正
に成立したものと認める新甲第二号証によつて認められるけれども、右ファイナ
ル・ドラフト及びA覚書は、右文書受領者であるB国務大臣、又は日本政府及び割
当委員会書籍雑誌部会議長Cに対する連合国軍官憲の指示とは解し難い。まずこれ
をフアイナル・ドラフト(引用甲第一号証)について見れば、「用紙割当規程最終
案」と題してあるだけでそれが日本政府を拘束する意味の何らの記載がなく、かつ
これが作成せられるに至つた事情に関する原告の主張(被告の明らかに争わないと
ころである)に照らせば、右フアイナル・ドラフトそのものは最高司令官の日本政
府宛「用紙配給覚書」に基き政府が最高司令官に対し自ら決定すべき責任をもつ用
紙割当に関する具体的措置について、Aのしようようを受けたものに過ぎないと解
すべきものである。従つて被告が右フアイナル・ドラフトを連合国軍官憲の指示で
はないとしたのは相当である。この点に関し原告の引用する参考人C、同D、同E
の陳述を参酌しても、右認定を変更し難い。次にA覚書(引用甲第二号証)につい
て考えるに、右覚書中に、「事業者団体法の効果に関し、従来日本出版協会が書籍
雑誌部会の職務に関連して協力したことについて千九百四十八年九月四日附提出さ
れた質問について、(中略)これを明らかにするために連絡を必要とする経済科学
局の係官が現在東京を離れているので、今直ちにこれを明白にすることができな
い。」ことを明らかに記載し、更に「一週間の余裕が与えられるならば、その時ま
でには九月四日附の質問(前掲事業者団体法の効果に関する質問)に対する回答が
与えられるであろう。」と附言しているのであつて、C議長の質問に対するAの中
間的回答と目すべく、これをもつて連合国軍官憲の指示なりとする原告の主張は根
拠のないものというの外はない。よつて、審決認定の原告の行為が権限ある連合国
軍官憲の指示に従つたもので、結局最高司令官の指令に基くものであるとの主張
は、排斥を免れないものである。
 (三) 団体法第五条第一項第一号及びこれに基いた審決が憲法に違反するとの
主張について。
 原告の団体法第五条第一項第一号及びこれに基いた審決が憲法に違反するとの主
張は、団体法第五条第一項第「号後段の「原材料、商品若しくは施設の割当に関す
る原案若しくは計画を政府のために作成し、又はこれを政府に提出すること」を禁
止することが憲法に違反すること、及びこれに基く主張であるところ、右禁止規定
が昭和二十七年法律第二百九十一号団体法の一部を改正する法律によつて削除さ
れ、事業者団体が自由に右の行為を行い得ることとなつたことは、理由(一)にお
いて説示したとおりであるから、原告の右主張は、審決主文第一項にのみ関するも
ので、原告はこの部分に関しては訴の利益を有しないものであるから、原告の右主
張については判断を加えない。
 (四) 原告は出版用紙の割当に関する原案を政府のために作成し、又はこれを
政府に提出したことはないとの主張について。
 原告の右主張は、結局、審決認定の事実をもつて、団体法第五条第一項第一号に
いう「割当に関する原案を政府のために作成し、又はこれを政府に提出すること」
にあたるものとした審決の法律の適用を攻撃するものと解すべきである。従つて右
主張は審決主文第一項のみに関するものであるから、理由(三)において説示した
と同一の理由によつて、原告の右主張についても判断を加えない。
 (五) 原告は、出版業者に利益又は不利益を与え、かつ出版業者の機能もしく
は活動を制限したことはないとの主張について。
 審決認定事実によれば、出版業者に対する出版用紙割当の実施機関である割当事
務庁のため、用紙割当の可否及びその数量を決定する割当委員会書籍雑誌部会の下
見審議及び本会議に、原告の職員が出席して、割当事務庁の作成したところの出版
用紙割当の原案につき具体的意見を述べたことが明らかで、右は出版用紙の割当を
申請した出版業者中の特定の者に対し出版用紙の割当の有無、その数量について、
利益に又は不利益に影響を及ぼす行為であり、右はまた同時に出版業者の事業活動
に分量的な制限を加えることになる。しかして、右出版業者中に原告の構成事業者
である出版業者が包含されていることは、審決認定事実の全趣旨から明らかである
から、審決認定の原告の行為は、改正前の団体法第五条第一項第六号及び第八号に
該当するものというべきである。
 (六) 用紙の配給統制が撤廃せられたから排除措置の必要がないとの主張につ
いて。
 出版用紙の配給統制が原告主張のとおり昭和二十四年農林、通商産業省令第十号
により一旦撤廃せられ、次で被告主張のとおり昭和二十五年通商産業省令第九号に
より復活したが、更に昭和二十六年五月一日公布即日施行の通商産業省令第三十一
号により教科書用紙を除いて撤廃せられ、教科書用紙についても同年十月二十日公
布即日施行の通商産業省令第六十六号により配給統制が撤廃ぜられたことは、当裁
判所に明らかなところであ<要旨第三>る。しかして、原告の主張は、要するに、団
体法第九条によつて準用ぜられる私的独占禁止法第六十六条第二項にい
うところの、「経済事情の変化その他の事由により、審決の基礎となつた事実が消
滅し、若しくは変更した」ことを指すものに外ならないが、かかる事由は、審決の
取消又は変更を求める訴において、裁判所が審決の当否を判断する資料たり得ない
ことは、審決後の法律の改正の場合と同様である(理由(一)参照)。従つて被告
自らが団体法第九条、私的独占禁止法第六十六条第二項によつて、審判手続を経
て、審決を以て、前審決を取り消し、又は変更することは格別、裁判所がかかる理
由によつて、審決を取り消し、又は変更することはできないものというべきである
から、原告の右主張は理由がない。
 (七) 審決の基礎となつている事実を立証する実質的な証拠がないとの主張に
ついて。
 原告は、被告が審決の基礎として認定した事実中、二、三、四の事実(審決書の
「事実と証拠」と題する部分の二、三、四の事実)は、これを立証する実質的な証
拠がないと主張しているので、原告の右主張の当否について検討する。
 (1) 「事実と証拠」の二の事実。
 原告が実質的な証拠によつて立証されていないとする「新聞出版用紙割当事務庁
設置法の施行により、新聞出版用紙割当審議会の議決に従つて、新聞出版用紙割当
事務庁が行うことになつた」という事実認定は、昭和二十三年八月三日公布の昭和
二十三年法律第二百十一号新聞出版用紙割当事務庁設置法の明文(同法第五条、第
六条参照)に基くものであることが明らかである。
 次に「昭和二十一年十一月頃閣議決定を経た用紙割当の機構及び手続に関する用
紙割当規定(未公布)に基いて用紙割当の決定機関として事実上設けられた新聞及
び出版用紙割当委員会」とある部分は、本訴において被告は「昭和二十一年十一月
頃内閣総理大臣の決裁を経た用紙割当規定(未公布)に基いて用紙割当の決定機関
として事実上設けられた新聞及び出版用紙割当委員会」と訂正した。しかして被告
が訂正したとおりの事実は、審判手続における参考人Eの陳述によつて認められる
から、審決認定事実宙の「閣議決定」とは「内閣総理大臣の決裁」の誤記と認めて
差支ない。
 (2) 「事実の証拠」の三の事実。
 原告が実質的な証拠によつて立証されていないとする(イ)三の(1)末尾の
「文字、符号、数字等をもつて記入し」、(ロ)三の(2)の「割当審議表を作成
し」「割当に当つて諸種の考慮すべき事項を文章で、……記入し、」(ハ)三の
(3)の第二行目、「割当審議表」、第八行目「審議表」、(二)三の後段の「審
議友を所持した」「主として……具体的意見を述べ」とある部分を含む「事実と証
拠」の事実は、成立に争のない引用乙第一、第二号証「G、Hの各口供書)及び審
判手続における参考人F、G、J、Cの各陳述によつて認定することができる。
 (3) 「事実と証拠」の四の事実。
 原告が実質的な証拠によつて立証されていないとする四の事実の末尾の「割当部
数は自ら定まることになつていたものである」とある部分を含む四の事実は前掲引
用乙第一号証(Gの口供書)によつて認定できる。
 これを要するに、審決認定事実中、一の事実(「事実と証拠」の一の事実)は原
告の争わない事実であり、二ないし四の事実は、前段(1)ないし(3)に引用し
た証拠で認定できる。しかして、右事実認定は合理的な認定であつて、理性ある人
が、合理的に考えれば、結局到達するところのものである。引用甲第一ないし第三
号証、審判手続における参考人C、D、E、F、G、H、I、Jの各陳述は、右の
結論を左右するに足りない。よつて被告の事実認定はすべてこれを立証する実質的
な証拠があるものというべきである。
 原告は、被告の認定した事実を立証する実質的な証拠があるというためには、
(い)被告の認定事実を立証するところの少くとも信じ得る証拠が審判手続におけ
る調書の中に見出されること、(ろ)被告の認定に反する別の証拠が圧倒的に対抗
し難い証拠でないこと、及びこのような反証を提出する公平な機会が審判手続中に
与え<要旨第四>られたことが調書の中で見出されることの二要件が必要であると主
張する。思うに、審決認定の事実について実質的な証拠の存することが
必要なことは、いまさら言うをまたないところであるが、かかる証拠は必ずしも当
該事件の審判手続開始以後の記録中に見出されなければならないものと限定する理
由はなく、審判開始前のものをも含めて当該事件に関する一切の記録中、いやしく
も私的独占禁止法第七十八条にいう「当該事件の記録」として被告の送付にかかる
ものの中に存すれば足りるのである。しかして、実質的な証拠とは、審決認定事実
の合理的基礎たり得る証拠の意味である。すなわち、その証拠に基き、理性ある人
が合理的に考えてその事実認定の到達し得るところのものであれば、その証拠は実
質的な証拠というべきである。しかして、ある証拠が経験則上とうてい信ずること
ができないかどうか、及び当該事件の記録中に相矛盾する証拠がある場合に被告の
した証拠の取捨選択が経験則に反していないかどうかの問題は、ともに当然裁判所
の審査すべきことである。すなわち、被告は特殊の分野の問題を取り扱うための専
門的な知識経験を有する委員その他の職員から成り立つていることから事実認定を
被告の権限に委ね裁判所は被告の証拠調が不十分な場合にも自ら証拠調をなさず当
該事件を被告に差し戻してあたらしい証拠の取調をなさしめる私的独占禁止法第八
十一条(団体法第九条により本件に準用)の規定から言つて、証拠の取捨選択は、
事実認定について権限を有する被告のなすべきことであり、被告の証拠判断か経験
則に反せず、合理的であるならば、裁判所もこれに拘束されるのであるが、その然
らざるときは、裁判所はそのことの故に、これを違法のものとして被告の審決を取
り消すことができるのである。従つて私的独占禁止法第八十二条第一項第一号は、
何ら憲法第七十六条第二項に違反するものではない。もとより、被告が審判手続に
おいて証拠の取捨選択をするについては、原告をしてその欲する証拠を提出する機
会を与えなければならないけれども、本件記録上原告が証拠を提出することを被告
が抑制した形跡がない。
 なお、被告が本訴において引用した引用乙第一、第二号証につき、原告は、右口
供書に記載されたG、Hの陳述中、審判手続における同一参考人の陳述と牴触する
部分の引用につき異議があると述べているけれども、右引用乙第一、第二号証は、
いずれも被告が本件記録として当裁判所に送付した書類中に包含されているのであ
るから、実質的な証拠の有無の判断に際してこれを斟酌し得ることは、前段説示す
るところにより明らかである、
 (八) 結論。
 以上説示したように、審決主文第一項の取消を求める部分は、訴の利益を欠くも
のとして、また審決主文第二項の取消を求める部分は、原告がその原因として主張
するところがすべて理由がないものとして、審決の取消を求める原告の請求を棄却
し、訴訟費用は敗訴の当事者たる原告の負担とし、主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 垂水克己 判事 藤江忠二郎 判事 浜田潔夫 判事 猪俣幸一
 判事浅沼武)

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71期修習生 72期修習生 求人
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