弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成17年(ワ)第1104号特許権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日平成18年1月18日
判決
原告シーケーディー株式会社
原告宇部興産株式会社
原告ら訴訟代理人弁護士佐尾重久
被告旭硝子エンジニアリング株式会社
同訴訟代理人弁護士増井和夫
同橋口尚幸
主文
1原告らの請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求
1被告は,別紙物件目録記載の各製品を製造,販売してはならない。
2被告は,前項記載の各製品を廃棄せよ。
3被告は,原告らに対し,金2916万6666円及びこれに対する平成17
年2月3日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,除湿装置についての特許権を共有している原告らが,被告に対し,
別紙物件目録記載の各製品(以下,各製品を総称して「被告製品」といい,各
個別の製品について,同目録の番号に従い「被告製品1「被告製品2」など,」,
という)を製造,販売する被告の行為が,原告らの有する特許権を侵害すると。
して,特許法100条1項に基づく被告製品の製造,販売の差止め,同条2項
に基づく同製品の廃棄,民法703条に基づく不当利得金2916万6666
円の返還及びこれに対する本訴状送達の日の翌日である平成17年2月3日か
ら支払済みに至るまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め
た事案である。
1前提となる事実等(争いがない事実以外は証拠を末尾に記載する)。
(1)原告らの特許権
ア原告らは,以下の特許権(以下「本件特許権」という)を共有している。。
特許番号第2891953号
発明の名称除湿装置
出願年月日昭和63年11月21日
登録年月日平成11年2月26日
イ本件特許権に係る特許については,特許異議の申立てがされたところ
(平成11年異議第74218号,当該異議手続(以下「本件異議手続」)
という)において,特許請求の範囲を含む明細書の訂正の請求がされ,平。
成13年12月20日,訂正を認め,特許を維持する旨の異議の決定(以
下「本件異議決定」という)が確定した。訂正後の特許請求の範囲請求項。
5記載の発明(以下「本件発明」といい,訂正後の明細書を「本件明細
書」という)は,以下のとおりである。。
請求項5「ハウジング内に高分子浸透膜からなる多数本の中空糸膜を束
ねて収容し,中空糸膜の内部を除湿前の圧縮エアを供給する高圧領域とす
るとともに,中空糸膜の外部をパージエアが流通する低圧領域とした除湿
装置において,前記ハウジングは少なくともケースと該ケース端部を閉塞
するキャップとからなり,前記ケース内には,前記中空糸膜の束を収容し,
前記キャップを単一構造により構成するとともに,そのキャップ内には,
少なくとも前記高圧領域を通過した除湿直後の圧縮エアをハウジング外へ
取出すための取出通路と,同取出通路の途中で分岐されるパージエア分岐
部位を含み,前記除湿直後の圧縮エアの一部をパージエアとして前記低圧
領域へ供給するためのパージエア取入領域とを形成し,前記除湿直後の圧
縮エアの一部を前記パージエア取入領域から前記低圧領域へ送るためのパ
ージ通路全体が前記ハウジング内に組み込み形成された除湿装置」。
ウ構成要件の分説
本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである。
Ⅰハウジング内に高分子浸透膜からなる多数本の中空糸膜を束ねて収容
し,
Ⅱ中空糸膜の内部を除湿前の圧縮エアを供給する高圧領域とするととも
に,
Ⅲ中空糸膜の外部をパージエアが流通する低圧領域とした除湿装置にお
いて,
Ⅳ前記ハウジングは少なくともケースと該ケース端部を閉塞するキャッ
プとからなり,
Ⅴ前記ケース内には,前記中空糸膜の束を収容し,
Ⅵ前記キャップを単一構造により構成するとともに,
Ⅶそのキャップ内には,少なくとも前記高圧領域を通過した除湿直後の
圧縮エアをハウジング外へ取出すための取出通路と,同取出通路の途中
で分岐されるパージエア分岐部位を含み,
Ⅷ前記除湿直後の圧縮エアの一部をパージエアとして前記低圧領域へ供
給するためのパージエア取入領域とを形成し,
Ⅸ前記除湿直後の圧縮エアの一部を前記パージエア取入領域から前記低
圧領域へ送るためのパージ通路全体が前記ハウジング内に組み込み形成
された
Ⅹ除湿装置。
(2)被告の行為
被告は,被告製品を業として製造・販売している。
(3)構成要件の充足性
被告製品は,いずれも,本件発明の構成要件ⅠないしⅢ,Ⅴ,Ⅶ,Ⅸ及び
Ⅹを充足する(なお,被告は,被告製品が構成要件Ⅴを充足しない旨を一応
主張するが,これに関する具体的指摘はなく,弁論の全趣旨により実質的な
争いはないものと認められる。同様に,構成要件Ⅶについても,弁論の全趣
旨により実質的な争いはないものと認められる。。)
(4)特許無効審判請求事件
被告は,平成17年4月5日,本件発明の特許を無効にする旨の無効審判
の請求をした(乙15。)
2争点
(1)被告製品は,本件発明の技術的範囲に属するか。
ア構成要件Ⅳの充足性(争点1。)
イ構成要件Ⅵの充足性(争点2。)
ウ構成要件Ⅷの充足性(争点3。)
(2)本件発明についての特許は,特許無効審判により無効にされるべきものと
いえるか。
ア新規性の有無(争点4。)
イ進歩性の有無(争点5。)
(3)被告の不当利得額はいくらか(争点6。)
3争点についての当事者の主張
(1)争点1(構成要件Ⅳの充足性)について
(原告らの主張)
ア被告製品の構成
(ア)被告製品の構成は,別紙原告主張被告製品1説明書,原告主張被告

品2・3説明書及び原告主張被告製品4・5説明書にそれぞれ記載され
ているとおりである。
(イ)そして,本件発明の構成要件Ⅳに対応する被告製品の構成は,次の
とおりである。
(被告製品1の構成ⅣA)
ⅣAハウジング1は,下部構造物4と上部構造物5よりなり,下部
構造物4の上面と上部構造物5の下面は密着させてネジ止めされ,
下部構造物4の端部が閉塞されている。
(被告製品2及び3の構成ⅣB)
ⅣBハウジング21は,下部構造物24と上部構造物25からなり,
下部構造物24の上面と上部構造物25の下面は密着させてネジ
止めされ,下部構造物24の端部が閉塞されている。
(被告製品4及び5の構成ⅣC)
ⅣCハウジング41は,下部構造物44と上部構造物45からなり,
下部構造物44の上面と上部構造物45の下面は密着させてネジ
止めされ,下部構造物44の端部が閉塞されている。
イ構成要件Ⅳの充足
被告製品1の構成ⅣA,被告製品2及び3の構成ⅣB,被告製品4及び
5の構成要件ⅣCは,それぞれ,本件発明の構成要件Ⅳを充足する。
ウ被告の反論に対する再反論
(ア)a被告は,本件発明の構成要件Ⅳの「ケース端部を閉塞するキャッ
プ」は「ケースの先端部側面を包み込む締め付け部材を含んでいる」,
キャップであると主張し,本件明細書に記載された第8実施例(別紙
【図8)に限定して解釈しているが,特許請求の範囲に記載された要】
件においてそのような限定をしていないことは明らかである。側面領
域を包まずに両者を接合することは従来からある技術であり,キャッ
プがケースの先端部側面を包み込むか否かは,極めて単純な設計事項
にすぎず,本件発明の技術思想とは何ら関係のないことであり,限定
解釈すべき根拠はない。
b特開平1-236921号公報(乙7,以下「先願例」という)に。
記載された発明を先願発明とする拒絶理由通知に対して,原告が提出
した意見書(乙9,以下「本件拒絶意見書」という)には,被告が指。
摘しているとおり「先願では・・・当然にヘッド部を構成する本体2,
a及びキャップ2bを単一部材によって構成することを示唆するもの
でもない」と記載されており,本件発明におけるキャップは,先願例。
の本体2a及び2bを単一部材として構成したようにもみえる。しか
し,これは,明らかに本件明細書の記載に反しており,錯誤に基づく
記載である。
すなわち,先願例の2a及び2bで構成される第一ヘッド部2は,
除湿前の圧縮エアの供給側のヘッド部であるから,本件拒絶意見書に
おいて,除湿後の圧縮エアの取出側のキャップに関する本件発明とを
比較対照する必要は全くなかったものである。
出願経過参酌の原則にも,参酌するのに値しない場合があり,本件
のように,明らかに本件発明の内容とは無関係なことを,しかも,本
件明細書の記載からして明らかに事実に反するような記載を参酌すべ
きではない。
cまた,本件異議手続における原告らの意見書(乙13,以下「本件
異議意見書」という)の記載は,単に本件発明と米国特許37355。
58号公報(乙12,以下「本件米国公報」という)との相違を述べ。
たにすぎず,この部分から本件発明におけるキャップについて「ケー,
スの先端部側面を包む締め付け部材が,キャップ部材の一部である」。
との解釈を導き出すことはできない。
(イ)被告は,本件発明における構成要件Ⅳの「ケース端部を閉塞するキ
ャップ」とは,取出口の端部のみを閉塞するキャップに限定して解釈す
るべきであると主張するが,そのように限定解釈すべき根拠はない。
本件明細書の各実施例においては,キャップが中空糸膜の入口側と出
口側にそれぞれ付けられている例が開示されているが,本件発明の構成
要件において「キャップ」につき,筒状のケースの取出口側の端部のみ,
を閉塞する部材などという限定はされておらず,そのような限定解釈を
する理由もない。
本件発明出願前から,中空糸束をケースに直線状に保持する装置も,
U字状に保持する装置も存在したことは,特開昭51-133185号
公報(甲4,特公昭56-46881号公報(甲5)の図面から明らか)
である。直線状に中空糸束を保持するケースを使用するのか,U字状に
中空糸束を保持するケースを使用するのかは設計上の問題にすぎず,当
業者においては極めて容易なことである。
本件発明の特徴は,キャップの中に,パージエア分岐部位を設け,ハ
ウジング内にパージ通路全体を組み込むことを可能にした点に存在する
が,直線状の中空糸束を保持するケースの場合は,取出側キャップ内に
パージエア分岐部位を設けることによって,U字状に中空糸束保持する
ケースの場合は,取出側と供給側を兼ねるキャップの取出側部分にパー
ジエア分岐部位を設けることによって,それぞれパージ通路全体をハウ
ジング内に組み込むことが可能となる点は,当業者であれば直ちに理解
できる。
(被告の反論)
ア被告製品の構成
(ア)被告製品の構成は,別紙被告主張被告製品1説明書,被告主張被告

品2・3説明書及び被告主張被告製品4・5説明書にそれぞれ記載され
ているとおりである。
(イ)そして,本件発明の構成要件Ⅳに対応する被告製品の構成は,次の
とおりである。
(被告製品1の構成ⅣA)
ⅣAハウジング1は,それぞれ複数のパーツからなる下部構造物4
と上部構造物5からなり,前者の上面と後者の下面は,多数のシ
ール6を介して密着させてネジ止めされている。
(被告製品2及び3の構成ⅣB)
ⅣBハウジング21は,それぞれ複数のパーツからなる下部構造物
24と上部構造物25からなり,前者の上面と後者の下面は,多
数のシール26を介して密着させてネジ止めされている。
(被告製品4及び5の構成ⅣC)
ⅣCハウジング41は,それぞれ複数のパーツからなる下部構造物
44と上部構造物45からなり,前者の上面と後者の下面は,多
数のシール46を介して密着させてネジ止めされている。
イ本件発明の構成要件Ⅳと被告製品の構成の対比
(ア)本件発明の構成要件Ⅳの「キャップ」及び「閉塞する」について
a「キャップ」及び「該ケースを閉塞する」の意味
本件発明の特許請求の範囲の記載は,一義的に明確とはいえないか
ら,①本件明細書の記載,②出願経過における原告らの主張,及び③
本件異議手続における原告らの主張を参酌し,その技術的意義を解釈
することが必要である。そして,以下のとおり,構成要件Ⅳの「キャ
ップ」は,ケースの先端部側面を包み込み締め付ける構造のものであ
り「該ケースを閉塞する」とは,上記形状の「キャップ」が,締め付,
け部材によってケースの端部を包み込むように塞ぐことを意味すると
解される。
①まず,本件明細書をみると,本件発明に対応する第8実施例にお
いて,筒状の「ケース」内部に中空糸膜を直線状に保持し,その両端
を,2つの「ケース先端部を包み込む締め付け部材」を有する「キャ
ップ」で「閉塞」した全体構造が示されている。本件発明の構成要件
Ⅳの「ケース端部を閉塞するキャップ」とは,同実施例のように「ケ
ースの先端部を包み込む締め付け部材」を有するものと解釈すべきで
ある。
また,本件明細書には,本件発明の作用効果として「取出通路及び,
そこから分岐されるパージエア分岐部位を含むパージエア取入領域が
キャップ内に形成されていることから,ケースには複雑な通路を形成
する必要がないとともにキャップ外部に別の通路形成部材を設ける必
要もなく,通路設計・製作が簡単になる「更に,単一構造のキャッ。」,
プ内に取出通路及びパージエア取入領域とを形成しているので,キャ
ップ自体の部品点数の低減に加え,通路や分岐部位を設けるシール部
材の数が大幅に低減されて更なる部品点数の低減及びエア漏れの低減
を図ることができる(0014【0062)との記載があるが,。」【】,】
ケースの側面にパージエアの取入口を設ける場合,単一構造のキャッ
プによって部品点数を低減せしめつつ,キャップの端部を閉塞して,
除湿エアの漏出を防止し,低圧領域へ除湿エアを送り込むには,この
取入口を覆うようにキャップがケース端部を包み締め付ける構造が技
術上必須である。
②次に,出願経過についてみると,本件拒絶意見書(乙9)中には,
「・・・本願のキャップに相当する先願の第二ヘッド部3は本体(2
a)とキャップ(2b)から構成されており,キャップ自体の部品点
数が増大してしまう・・・更に,本体2a,キャップ2b,圧力調整。
手段17の各部品間にはエア漏れを防止するためのシール部材が必要
となり,必要なシール部材の数が増大するため,更に部品点数が増え
るばかりかその組み付け作業も煩雑なものとなる。なお,先願では・
・・圧力調整手段17とヘッド部とを単一部材によって構成すること
を示唆するものではなく,又当然にヘッド部を構成する本体2a及び
キャップ2bを単一部材によって構成することを示唆するものでもな
い・・・この点,本願の請求項5に記載の発明によれば,上記した先。
願には開示も示唆もない上記構成要件Aを備えていることから,上述
のとおりの特有の効果Bが得られる(2頁)との記載がある。。」
「上記構成要件A」とは単一構造のキャップを指すところ,ここで
原告らは,先願例記載の2a,2b及び17を単一部材によって構成
したものが,請求項5(本件発明)の「キャップ」であると説明して
いるが,この2aには「ケース先端部を包み込む締め付け部材」が含
まれているから,原告ら自身の主張においても,ケースの先端部側面
を包む締め付け部材が,キャップ部材の一部であることが明らかであ
る。
③さらに,原告らは,本件異議意見書(乙13)において,本件発
明と本件米国公報(乙12)の公知技術との違いについて,同公報
(刊行物3)の「技術は,本件請求項5に係る発明の構成要件Ⅰにお
ける,ハウジングをなすキャップを単一構造に構成する,という点を
開示するものではありません。即ち,刊行物3の技術は,装置の端部
が封止部材26,28および通路の締め付け部材30,32で封止さ
れる構成を採用しています(図3を参照願います。従って,刊行物3)
は,キャップを単一構造に構成することなく,少なくとも2つの部材
によって構成しているため,本件請求項5に係る発明が奏する効果二
を奏し得ません」と述べている。ここでいう「少なくとも2つの部。
材」とは,封止部材26,28と締め付け部材30,32のことであ
り,締め付け部材30,32とは「ケース先端部を包み込む締め付け,
部材」にほかならないから,原告ら自身の主張においても,ケースの
先端部側面を包む締め付け部材が,キャップ部材の一部であることが
明らかである。
b対比
被告製品は,いずれも,上部構造物が,平らな接合面にシールを介
して下部構造物とネジ止めされており,仮に上部構造物が「キャッ
プ」に該当し,下部構造物が「ケース」に該当するとした場合,この
「キャップ」には「ケース先端部を包み込む締め付け部材」が含まれ,
ていないから,本件発明の構成要件Ⅳの「キャップ」という要件を備
えておらず「該ケースを閉塞する」構造となっていないため,構成要,
件Ⅳを充足しない。
(イ)a本件発明における構成要件Ⅳの「ケース端部を閉塞するキャッ
プ」とは,取出口の端部のみを閉塞するものと限定して解釈するべき
である。
すなわち,本件明細書上,すべての実施例において,円筒型のケー
スと,その両端を別々に閉塞するキャップとが組み合わされており,
直線上のケースの両側に別々のキャップを有する構成しか開示されて
いない。そして,この構成を前提として,取出口側キャップの単一構
造に基づく作用効果を述べている。こうした本件明細書の記載に基づ
くと,本件発明の構成要件Ⅳの「キャップ」という用語には,上記の
限定が内在しているものと解すべきである。
b被告製品における上部構造物は,下部構造物と共同して中空糸束を
U字状に保持し,除湿前エアの取出口及び除湿エア取出口を一つの部
材上に設けることにより装置の小型化を実現する技術思想に基づくも
のであり,その技術思想は,中空糸束を収納するケースの両端に別々
にエアの取入口及び取出口を設ける本件発明の技術思想とは異なる。
以上から,本件発明の「キャップ」は,中空糸束の両端面に対する
蓋として機能する被告製品の上部構造物と相違し,被告製品は,いず
れも本件発明の構成要件Ⅳの「ケース端部を閉塞するキャップ」とい
う要件を備えていない。
(2)争点2(構成要件Ⅵの充足性)について
(原告らの主張)
ア被告製品の構成
(ア)被告製品の構成は,別紙原告主張被告製品1説明書,原告主張被告
製品2・3説明書及び原告主張被告製品4・5説明書にそれぞれ記載さ
れているとおりである。
(イ)そして,本件発明の構成要件Ⅵに対応する被告製品の構成は,次の
とおりである。
(被告製品1の構成ⅥA)
ⅥA上部構造物5は,中央部に絞り弁9を備えている。
(被告製品2及び3の構成ⅣB)
ⅥB上部構造物25は,中央部に絞り弁29を備えている。
(被告製品4及び5の構成ⅣC)
ⅥC上部構造物45は,中央部に絞り弁50を備えている。
イ構成要件Ⅵの充足
被告製品1の構成ⅥA,被告製品2及び3の構成ⅥB,被告製品4及び
5の構成要件ⅥCは,それぞれ,本件発明の構成要件Ⅵを充足する。
ウ被告の反論に対する再反論
(ア)被告は,本件発明にいう「キャップ」とは,筒状のケースの先端部

を包み込む締め付け部材を含んだものであり,被告製品には「キャッ
プ」に相当する単一構造の部材は存在しないので,構成要件Ⅵを満たさ
ないと主張するが,本件発明の特許請求の範囲の記載において,キャッ
プについてそのような限定をしていないことは,前記(1)(原告の主張)
ウ(イ)記載のとおりであり,被告の主張は理由がない。
(イ)また,被告は,被告製品において「取出通路」及び「パージエア分,
岐部位」に相当する部分は上部構造物に「パージエア取入領域」に相当,
する部分は下部構造物に,それぞれ組み込まれており,これら3つがす
べて組み込まれた「単一構造」の「キャップ」は存在せず,構成要件Ⅵ
を満たさないと主張する。
,しかし,後記(3)(原告の主張)ウ記載のとおり,被告製品において
「パージエア取入領域」が,上部構造物に形成されていることは明らか
であるから,被告の主張は理由がない。
(ウ)a被告製品の上部構造物には,圧力調整機構が取り付けられている
から,単一構造といえないとの被告の主張は,被告製品における「絞
り弁」を「圧力調整機構」であるとする点で誤っている。被告製品に
,。付けられているものは「絞り弁」であり「圧力調整機構」ではない
一般的に「絞り弁」とは「絞り作用によって流量を規制する圧力補,
償機能がない流量制御弁,すなわち,流量のみを制御するだけで,圧」
力は制御しないものをいう。そして,被告製品1に使用されている
「絞り弁」は,回転するコック1の周面に大中小の穴を設け,このコ
ック1を手動で回転させることにより,大きさの異なる穴を選択し,
もって流量を制御するものであり(特開平6-238119号公報
(甲7,圧力は調整できない。))
bまた,本件特許請求の範囲において,キャップが単一構造であるこ
とは要件とされているが,単一構造のキャップにニードル弁を付加し
てはならないとの要件が存在しないことは,本件異議決定(甲2)で
も認められており,本件明細書の全体の趣旨からも,キャップに他の
ものを取り付けてはならない趣旨と解釈できないことは明らかである。
すなわち,同決定においては「なお,特許異議申立人は,この補正,
事項のうち,少なくともキャップとからなるという点に着目して,こ
の補正は,ハウジングが単一のキャップのみを具備する構成を新たに
規定するものである旨主張するものであるが,この「少なくとも」と
したのは,ハウジングが,ケースとキャップだけでなく,それ以外の
部材を含みうることを規定しただけであって,それ以外のことまで,
規定するものではない。この場合,他の部材としては,例えば,願書
に最初に添付された図1~10及び同明細書のその図面の説明箇所に
おいて,ニードル弁11,カバー23,ねじリング53等が例示され
るものである(15頁「なお,特許異議申立人は,図10につき,。」),
そこには,ニードル弁等を含めて単一構造に構成したキャップが記載
されない旨主張するが,この請求項5においては,キャップがニード
ル弁のような調整部材を保持することについてまでも規定するもので
なく,したがって,キャップがニードル弁等と共に単一構造となるこ
とが必ずしも明細書に記載される必要はない(14頁)と明確に判。」
断している。
c被告は,原告らが,本件拒絶意見書(乙9)において,本件発明と
先願例(乙7)とは異なると主張したことを根拠として,圧力調整手
段が付加されているキャップは,単一構造ではないと主張している。
すなわち,同意見書中の「圧力調整手段17とヘッド部とを単一部材
によって構成することを示唆するものではなく」との文言を「本件発,
明における単一構造のキャップとは,圧力調整手段17とヘッド部と
をすべて兼ね備えて単一構造にしたものである」との趣旨に解釈する
ものである。
しかし,先願例の「圧力調整手段17」は,圧力調整機構としての
ニードル弁18,配管19(圧縮エアの出口通路,パージエア分岐部)
位,パージエア取入領域,透過側通気口12へ導かれるパージエア通
路,圧力計20等から構成され,これらが第2ヘッド部3とは別部材
で構成されるものであり,単純なニードル弁とは,構造も役割も全く
異なったものである。
そして,同意見書の記載は,先願例に開示されている構造において,
本件発明のキャップに相当する部分は,圧力調整手段17とヘッド部
とから構成されていて,単一構造ではなく,かつ,パージエア分岐部
位及びパージエア取入領域も圧力調整手段17の中に存在するのであ
るから,本件発明とは,パージエア分岐部位及びパージエア取入領域
をキャップの中に設けた点で相違するとの趣旨であることは明らかで
ある。
(被告の反論)
ア被告製品の構成
(ア)被告製品の構成は,別紙被告主張被告製品1説明書,被告主張被告

品2・3説明書及び被告主張被告製品4・5説明書にそれぞれ記載され
ているとおりである。
(イ)そして,本件発明の構成要件Ⅵに対応する被告製品の構成は,次の
とおりである。
(被告製品1の構成ⅥA。)
ⅥA上部構造物5は,中央部に複数の部材からなる圧力調整機構9
を備え,圧力調整機構9の切替弁右側及び下側には多孔質金属体
よりなるサイレンサー10が付けられている。
(被告製品2及び3の構成ⅥB)
ⅥB上部構造物25は,中央部に複数の部材からなる圧力調整機構
29を備えている。
(被告製品4及び5の構成ⅦC)
ⅦC上部構造物45は,中央部に圧力調整機構50を備えている。
イ本件発明の構成要件Ⅵと被告製品の対比
(ア)前記(1)(被告の反論)イ(ア)記載のとおり,本件発明にいう「キャ
ップ」とは,筒状のケースの先端部分を包み込む締め付け部材を含んだ
ものである。
被告製品は,上部構造物が,平らな接合面に複数のシールを介して下
部構造物とネジ止めされており「ケース先端部を包み込む締め付け部,
材」を有した「キャップ」に相当する単一構造の部材は存在しないので,
構成要件Ⅵを満たさない。
(イ)後記(3)(被告の反論)記載のとおり,本件発明は,構成要件Ⅵの
「単一構造により構成」された「キャップ」の中に,構成要件Ⅶの「取
出通路」及び「パージエア分岐部位,構成要件Ⅷの「パージエア取入領」
域」がすべて組み込まれたものである。
そして,本件明細書の【0014【0062】に記載されているよ】,
うに,本件発明は「キャップ外部に別の通路形成材料を設ける必要」が,
ないようにした点に特徴を有するのであり,単一構造のキャップ中の通
路部分が,他の部材を介することなく,ケース中の低圧領域に直結しな
ければならない。
しかし,被告製品では「取出通路」及び「パージエア分岐部位」に相,
,,当する部分は上部構造物に「パージエア取入領域」に相当する部分は
下部構造物に,それぞれ組み込まれており,これら3つがすべて組み込
まれた「単一構造」の「キャップ」は存在せず,構成要件Ⅵを満たさな
い。
(ウ)a本件発明の構成要件Ⅵの「キャップを単一構造で構成する」とは,
圧力調整機構が単に内蔵されるだけでは足りず,キャップと単一構造
を構成することを意味する。
,,すなわち,原告らは,本件拒絶意見書(乙9)の中で「先願では
その公報第5頁右上欄第7行~第12行に圧力調整手段17をヘッド
部に内蔵してもよい旨示唆されているが,これは図面第1図に示され
た圧力調整手段17を小型にしてヘッド部内に入れてもよいことを示
唆しているに過ぎず,圧力調整手段17とヘッド部とを単一部材によ
」。って構成することを示唆するものではなく(2頁)と明言している
さらに,本件明細書の第5実施例(別紙【図5)の「キャップ」に】
ついて,原告ら自身が,本件明細書において「取り出し側キャップ5,
6の外端には電空変換器62が連結されており,これら取り出し側キ
ャップ56及び電空変換器62により本発明のキャップが構成されて
いる(0049)として,単一構造の「キャップ」ではないと説。」【】
明している。
そうすると,第8実施例(別紙【図8)のニードル弁82の存在が,】
「単一構造」の要件に反するかどうかはおくとしても,先願例の第1
】,図(別紙【図9)のように大きな圧力調整手段を有するキャップは
「単一構造」のキャップではない。また,同第1図のように,ケース
の端部を2つの部材によって閉塞しているキャップ及び本件明細書の
第5実施例(別紙【図5)のように,やはりケースの端部を2つ(以】
上)の部材で閉塞しているキャップは「単一構造」のキャップではな,
い。
b先願例の第1図(別紙【図9)並びに本件明細書の第5実施例(別】
紙【図5)及び(別紙【図8)と被告製品の上部構造物を比較すれ】】
ば,被告製品の上部構造物に組み込まれた圧力調整機構は,相当程度
に複雑な構造であり「単一構造」のキャップという構成要件Ⅵを充足,
しないというべきである。
(3)争点3(構成要件Ⅷの充足性)について
(原告らの主張)
ア被告製品の構成
(ア)被告製品の構成は,別紙原告主張被告製品1説明書,原告主張被告

品2・3説明書及び原告主張被告製品4・5説明書にそれぞれ記載され
ているとおりである。
(イ)そして,本件発明の構成要件Ⅷに対応する被告製品の構成は,次の
とおりである。
(被告製品1の構成ⅧA)
ⅧA上部構造物5内には,中空糸膜2を通過した除湿直後の圧縮エ
アの一部をパージエアとして前記低圧領域へ供給するためのパー
ジエア取入領域が形成されている。
(被告製品2及び3の構成ⅧB)
ⅧB上部構造物25内には,中空糸膜22を通過した除湿直後の圧
縮エアの一部をパージエアとして前記低圧領域へ供給するための
パージエア取入領域が形成されている。
(被告製品4及び5の構成ⅧC)
ⅧC上部構造物45内には,中空糸膜42を通過した除湿直後の圧
縮エアの一部をパージエアとして前記低圧領域へ供給するための
パージエア取入領域が形成されている。
イ構成要件Ⅷの充足
被告製品1の構成ⅧA,被告製品2及び3の構成ⅧB,被告製品4及び
5の構成要件ⅧCは,それぞれ,本件特許権の構成要件Ⅷを充足する。
ウ被告の反論に対する再反論
被告は,被告製品においては「パージエア取入領域」が,下部構造物に,
設けられていると主張するが「パージエア取入領域」が被告製品の上部構,
造物に形成されていることは明らかであり,被告の主張は理由がない。
(ア)本件発明の明細書には,第1実施例に関して「取り出し側キャップ,
3に形成された取り出し領域3aがパージエア取入領域を兼ねている」
(0020「このキャップ3内の取り出し領域3aはパージエア取【】),
入領域としても機能する(0028)との記載が,第3実施例に関し」【】
て「取り出し領域29aはパージエア取入領域を兼ねている(003,」【
9)との記載があるが「取り出し領域3a」や「取り出し領域29】,
a」がパージエア分岐部位であることは明らかであるから「パージエア,
取入領域」が「パージエア分岐部位」を含むものであることは明らかで,
ある。
ここで「パージエア取入領域」に含まれる「パージエア分岐部位」と
は,本件明細書に「除湿直後の圧縮エアをハウジング外へ取出すための
取出通路と,同取出通路の途中で分岐されるパージエア分岐部位(0」【
009)と記載されているとおり,取出通路中に存在し,パージエアが】
分岐される部位を意味している。
(イ)また,本件発明の特許請求の範囲には「取出通路の途中で分岐され,
るパージエア分岐部位を含み,前記除湿直後の圧縮エアの一部をパージ
エアとして前記低圧領域へ供給するためのパージエア取入領域」との記
載があり「パージエア取入領域」とは,取り出し領域から除湿エアの一,
部を分岐させてパージエアとして取り入れる機能を持った領域を意味す
ることが明らかであるから「パージエア取入領域」には,パージエア分,
岐部位のみならず,分岐部位に隣接したパージ通路も含まれる。これは,
本件明細書の以下の記載からも明らかである。
a本件発明の明細書には,第2実施例に関して「取り出し領域17a,
はパージエア取入領域としてのパージ通路17eを介して環状通路L
2に連通しており(0031)との記載がある。環状通路L2は,」【】
パージエアを通孔15aを経由して低圧領域S2へ送るための「パー
ジ通路」であることは明らかであり,また,パージ通路17eや通孔
15aも「パージ通路」であるが,これらの「パージ通路」のうち,
分岐部位に隣接したニードル弁24までのパージ通路17eを「パー
ジエア取入領域」としている。
b第4実施例に関して「環状通路L5はパージエア取入領域としての,
パージ通路51bを介して出口通路51a及び低圧領域S2に連通し
ており(0043)との記載がある。すなわち,環状通路L5及び」【】
パージ通路51bが「パージ通路」である。このうち,分岐部位に隣
接したパージ通路51bのみを「パージエア取入領域」としている。
cまた,第5実施例に関して「ノズル63を経由するパージエア取入,
領域としてのパージ通路62aが取出通路としての出口通路62bを
介して排出領域56aに連通している・・・排出領域56aから出口。
通路62bへ送り出された除湿エアの一部がパージ通路62a,遮蔽
円筒60内及び通孔60aを経由して低圧領域S2へ送り込まれる」。
(0049)との記載がある。ここで出口通路62bが分岐部位で【】
あり,パージ通路62a,遮蔽円筒60及び通孔60aが「パージ通
路」であり,分岐部位に隣接したパージ通路62aのみを「パージエ
ア取入領域」としている。
(ウ)このように「パージエア取入領域」には,パージエア分岐部位のみ,
ならず,分岐部位に隣接したパージ通路も含まれるが,すべてのパージ
通路が含まれるわけではない。
確かに,本件明細書上,第8実施例について「パージエア取入領域と,
してのパージ通路81a「取り出し領域81bからパージ通路81a」,
へ流入する除湿エア」と記載されていて,分岐部位が取り出し領域81
bであり,取り出し領域81bからニードル弁82を介してパージ通路
81aが接続されていて,このパージ通路81aは,収納円筒79(ケ
ース)に形成された通孔へ直結している。この実施例においては,他の
実施例と比較すると「パージ通路」のうち「パージエア取入領域に該当,
するパージ通路」がほとんどで,それ以外は,収納円筒79(ケース)
,,の通孔のみである。しかし,このことから「パージエア取入領域」が
すべての「パージ通路」を含むものであるとの解釈は成り立たない。
すなわち,本件発明の特許請求の範囲において「前記除湿直後の圧縮,
エアの一部をパージエアとして前記低圧領域へ供給するためのパージエ
ア取入領域」と記載されているとおり,パージエアを取り入れるための
領域のみがパージエア取入領域であり,低圧領域までパージエアを導く
ためのパージ通路全体がパージエア取入領域ではない。また「パージエ,
ア取入領域から前記低圧領域へ送るためのパージ通路全体がハウジング
内に組み込み形成された」と明記されているとおり,パージエアは,パ
ージエア取入領域からパージ通路を介して低圧領域へ送られるのである。
ここにおいては,パージエア取入領域とパージ通路とは,明らかに異な
る概念のものとして記載されているのである。
例えば,本件明細書の第1実施例において,パージエアは,分岐部位
である取り出し領域3aから,流通孔10a,ニードル弁11及び弁座
10,遮断円筒7及び通孔7aを経由して低圧領域S2へ送られるから,
それらがパージ通路であることは明らかである。この実施例では,パー
ジ通路をケース側が担う例として表示されており,第8実施例のように
パージ通路のうちケース側が担う部分がケースである収納円筒79上の
通孔79aのみになっているものに限定されないことを顕著に示してい
る。
(エ)以上「パージエア取入領域」について述べたところからすれば,被

製品において,上部構造物に「パージエア取入領域」が形成されている
ことは明らかである。
被告は「パージ通路81a」に相当する部分は,被告製品においては,
上部構造物中には存在せず下部構造物に存在すると主張するが,被告製
品の上部構造物には,明らかにパージ通路が存在している。被告製品に
おいて,パージエア分岐部位に面した流通孔から下部構造物に形成され
たパージ通路につながっている通路は,パージ通路である。このパージ
通路に,被告製品1ではサイレンサーと絞り弁とが,被告製品2ないし
5では絞り弁のみが,それぞれ組み込まれている。そして,この上部構
造物にパージエア分岐部位が形成されており,このパージエア分岐部位
がそれに隣接したパージ通路を含んでパージエア取入領域を形成してい
ることは明らかである。
(被告の反論)
ア被告製品の構成
(ア)被告製品の構成は,別紙被告主張被告製品1説明書,被告主張被告

品2・3説明書及び被告主張被告製品4・5説明書にそれぞれ記載され
ているとおりである。
(イ)そして,本件発明の構成要件Ⅷに対応する被告製品の構成は,次の
とおりである。
(被告製品1の構成ⅧA)
ⅧA中空糸膜2を通過した圧縮エアは除湿され,その除湿直後の圧
縮エアの一部をパージエアとして前記低圧領域へ供給するための
パージエア取入領域13が,上部構造物5及び下部構造物4の内
部に形成されている。
(被告製品2及び3の構成ⅧB)
ⅧB中空糸膜22を通過した圧縮エアは除湿され,その除湿直後の
圧縮エアの一部をパージエアとして前記低圧領域へ供給するため
のパージエア取入領域32が,上部構造物25及び下部構造物2
4の内部に形成されている。
(被告製品4及び5の構成ⅨC)
ⅨC中空糸膜42を通過した圧縮エアは除湿され,その除湿直後の
圧縮エアの一部をパージエアとして前記低圧領域へ供給するため
のパージエア取入領域53が,上部構造物45及び下部構造物4
4の内部に形成されている。
イ本件発明の構成要件Ⅷと被告製品の構成の対比
本件発明の構成要件Ⅷからすれば,単一構造のキャップ内に「取出通,
路「パージエア分岐部位」及び「パージエア取入領域」のすべてが形成」,
されていることが必要であるが,被告製品においてパージエア取入領域は
下部構造物中に存在するので,構成要件Ⅷを充足しない。
(ア)本件発明は,中空糸膜を使用する除湿装置を対象とするところ,除
湿
の原理は,高圧領域から低圧領域へエア中の水分(湿気)を移行させ,
この水分をパージエアの流れにより装置外に排出することにある。
本件発明にいう低圧領域とは,構成要件Ⅲの「中空糸膜の外部をパー
ジエアが流通する低圧領域とした」との記載からも明らかなように,中
空糸膜の外部で,中空糸を取り囲み,水分の除去を行う領域であって,
かつ,構成要件Ⅴより中空糸膜はケース内に収容されているから,結局,
ケース内で中空糸の外側の領域を意味することになる。
そして,本件発明の除湿装置の内部の圧縮エアは「高圧領域」=「中,
空糸膜の内部」から「取出通路「パージエア分岐部位「パージエア,」,」,
取入領域」を順次通り抜けて「低圧領域」=「中空糸膜の外側」に送ら,
れるから「パージエア取入領域」とは「ケース内の中空糸膜の外側』,,『
の領域に入る直前の通路」を意味することになる。
本件明細書上も,本件発明の実施例である第8実施例において「取り,
出し側キャップ81内のパージエア取入領域としてのパージ通路81a
上にはニードル弁82が介在されている(0055)とされており,」【】
低圧領域である「ケース内の中空糸膜の外側」の領域に入る直前の通路
であるパージ通路81aが「パージエア取入領域」であると説明されて
いる。
(イ)一方,被告製品において「中空糸膜の外側の領域」へと圧縮エアが,
流れ出す直前の通路であるパージエア取入領域に相当する部分は,いず
れも上部構造物の内部には組み込まれておらず,被告製品は,本件発明
の構成要件Ⅷを充足しない。
(ウ)なお,原告らは,本件明細書の第2実施例,第4実施例及び第5実
施例の図面並びに発明の詳細な説明を引用して「パージエア取入領域」
とは,分岐部位に隣接したパージ通路のみを含むものであると主張して
いる。しかし,なぜ「パージエア取入領域」が分岐部位に隣接したパー,
ジ通路のみに限定されるのか明確ではない。
また,原告らの説明は,本件発明についての実施例に基づくものでは
ない。本件発明の実施例である第8実施例においては,他の実施例と異
なり「パージエア取入領域がキャップ内に形成されていることから,ケ,
ースには複雑な通路を形成する必要がない」ことが作用効果上の特徴と
されており,同実施例においては「パージエア取入領域」について,,
「パージエア取入領域としてのパージ通路81a」と明確に説明されて
いる。
そして「パージ通路81a」に相当する部分は,被告製品においては,
上部構造物中には存在せず,下部構造物に存在する。
(4)争点4(新規性の有無)について
(被告の主張)
本件特許権は,実願昭63-151375号(以下「原出願」という)を。
特許出願に変更したものであるが,原出願の明細書(乙1。以下「原明細
書」という)には,本件発明が記載されていないので,原出願の出願日を援。
用することができず,既に公知となっている原出願により,新規性を欠き無
効である。
ア原明細書には「閉塞」という用語は記載されておらず,原明細書におい
て意味が明瞭とはいえないから,本件明細書の特許請求の範囲の請求項5
における「該ケース端部を閉塞するキャップ」との構成要件を含む平成9,
年10月6日付けの手続補正(乙5,以下「第1手続補正」という)は無。
効である。
原明細書の第9実施例に取り出し側キャップ81が存在することは記載
されているが,このキャップが「ケース端部を閉塞する」との記載はない。
「閉塞」という用語は,原明細書のどこにも存在しない。原明細書第10
図(本件明細書の【図8(別紙【図8)と同一)では,キャップ81の】】。
出口側は開放されており,開放口はかなり大きい,したがって,原明細書
第10図からケース端部が閉塞されていると認めることは無理である。
また,本件明細書において,閉塞の意味を合理的に解釈すれば,少なく
ともケースにおけるパージエア取入口などの部分を包む締付部材としての
機能を含むことを要すると解されるが,それだけで「閉塞」の意味が明確
になるとはいえない。
,,以上のように「閉塞」なる事項は,原出願に記載されておらず,かつ
原明細書においてその意味が明らかになし得ないのであるから,このよう
な事項を第1手続補正により請求項に規定したことは,原出願の開示の範
囲を超えるものであり違法である。
イ原明細書においては,単一構造のキャップは一切開示されていないし,
開示されているキャップはニードル弁などを含んでいて単一構造ではない
から,本件特許権の特許請求の範囲の請求項5における「前記キャップを,
単一構造により構成する」との構成を付加する平成10年1月14日付け
の手続補正(乙8,以下「第2手続補正」という)は無効である。。
(ア)本件発明の「キャップ」は,単一構造であって,ケース端部を閉塞

るものでなければならない。ここにいう閉塞とは,ケース側面端部を包
むとともに,ケース端面からの除湿エア出口をも閉塞可能にすることを
必要と解されるが,そのようなキャップは原明細書に記載されていない。
また,原明細書の第9実施例に,キャップが単一構造である旨の記載
はない。原明細書第10図をみると,ニードル弁82を別にすれば,キ
ャップが単一構造であることを積極的に否定する記載はないが,同図は
一つの断面を示したのみであり,この断面以外の部分がすべて単一構造
よりなるかどうかは不明である。
原明細書の他の実施例では,単一構造でないキャップが開示されてお
り,同明細書を読んで,単一構造でないことに実施上問題があるとは理
解されない。すなわち,原出願には,原明細書第10図を単一構造のキ
ャップを意味すると解する根拠はなく,また,キャップを単一構造にす
ることが発明を構成するとの発明思想の開示もない。本件発明において,
キャップを単一構造にしたことに基づく作用効果の記載【0014,】
【0062】は,すべて本件特許の出願後に追加されたものであり,原
出願時には存在しなかった。発明は,課題課題の解決手段,作用効果に
より完成するものであるから,原出願に本件発明が開示されていたとは
認められないことになる。
(イ)原出願において,原明細書第10図以外の実施例のキャップは明ら
かに複数の部材の組合せにより構成されている。同図のキャップは,基
本構造部分は単一構造であるが,別体のニードル弁を含む上,除湿エア
の取出口側が大きく開放されている。キャップの除湿エア取出口側を閉
塞可能にするには,仕切のような別部材を設けなければならないから,
単一構造の要件に反する。
また,本件発明が本件明細書の第8実施例(別紙【図8)に基づくこ】
とを説明した本件拒絶意見書(乙9)において,単一構造とは,先願例
に記載された圧力調節手段を小型化してキャップに内蔵したような場合
も排除すると記載されている。そうすると,原告らの意図した単一構造
のキャップは,原明細書第10図のように別体の圧力調節手段を有する
キャップとも異なるのであり,そもそも原明細書に記載されていないこ
とになる。
以上からすれば,本件発明は原明細書に記載されていないといわざる
を得ない。
ウしたがって,本件特許に係る出願は,原出願の出願日を援用できないこ
とになるから,本件発明は,既に公知となっている原出願により,新規性
を欠き無効である。
(原告らの反論)
ア被告は,原明細書には「閉塞」という用語が使用されていないと主張す
る。
しかし,本件発明の属する技術分野であるハウジング内部に圧縮エアを
流通させる除湿装置においては,エアが漏れるべきでない箇所に適宜のシ
ール機能を有することは明示するまでもないことであるから,本件発明に
照らせば,ケースとキャップとの間に何らのシール機能も有しない方が不
自然であることは,特段説明を要しない。
また,本件明細書の第8実施例(別紙【図8。原出願の第10図)にお】
いて,ケース79の端部は,キャップ81にて「閉塞」されている。キャ
ップとは蓋であり,蓋は,閉塞するために使用されるものであること,圧
縮エアの容器(ハウジング)が閉塞されていなければ,圧縮エアが漏れ,
容器としての意味をなさないことは自明であり,キャップ81内に中空糸
膜の内部の高圧領域と連通した「高圧領域S1」が形成されていることか
らしても「ケース端部を閉塞するキャップ」が原明細書及び図面の開示事,
項であることは明らかである。
さらに,特開昭51-133185号(甲4,特公昭56-46881)
号公報(甲5,実登録3048330号公報(甲6,特開平6-238))
119号公報(甲7)からも,ケースが蓋(キャップ)に閉塞されている
ことは,当業者にとっては周知の事実である。
したがって,閉塞という用語を使用したことは,原明細書に開示されて
いる公知の技術であり,新規事項の追加でもなく,第1手続補正は,適法
な補正である。
イ被告は,キャップが単一構造である旨の第2手続補正が,要旨変更に当
たると主張する。
しかし,この無効の主張は,第三者が申し立てた本件異議手続における
異議申立ての理由と全く同一であり(乙11,本件異議決定において明確)
に否定されている(甲2。)
すなわち,同決定においては「本件明細書につき,平成10年1月14,
日付け手続補正により,請求項5に『・・・,前記キャップを単一構造に,
より構成するとともに・・・』という補正事項が含まれることとなった点,
につき,検討する。確かに,願書に最初に添付された明細書には,キャッ
プを単一構造とすることは直裁されないものの,願書に最初に添付された
図1~10及び同明細書のその図面の説明箇所には,明らかに単一構造で
あるキャップが示されるものである。特に,その図10(特許設定時の図
面では図8)には,単一部材の構造を有するキャップ81が示されるもの
であり,以上のことからすると,キャップを単一構造により構成する点に
ついては,願書に最初に添付された明細書に,実質上,記載されていたと
いえるものである。なお,特許異議申立人は,図10につき,そこには,
ニードル弁等を含めて単一構造に構成したキャップが記載されない旨主張
するが,この請求項5においては,キャップがニードル弁のような調整部
材を保持することについてまでも規定するものでなく,したがって,キャ
ップがニードル弁等と共に単一構造となることが必ずしも明細書に記載さ
れる必要はない。そうすると,キャップに関するその構成を含むために当
該補正事項が要旨変更である,との指摘は成り立たないものである(1。」
4頁)と判断されているのである。
確かに,原明細書には,キャップを単一構造とすることは直接的には記
載されていない。しかし,少なくとも,願書に最初に添付された第10図
(設定登録時の【図8)及び同明細書のその図面の説明箇所には,明らか】
に単一構造であるキャップ81が示されている。特に,構造物がその断面
のみで示されている場合には,当業者によりその断面図から構造物の全体
構成が当然理解できることを意味するから,当業者は,例えば,第10図
(本件明細書の【図8)の断面で示されたものから,キャップの全体構成】
が単一構造であることを当然のこととして理解する。
したがって,キャップを単一構造により構成する点については,原明細
書及び願書に最初に記載された図面に,実質的に記載されていたといえる。
また,単一構造のキャップといった場合に,ニードル弁等を含めて単一
構造であることまでも規定するものではないことは明らかである。
(5)争点5(進歩性の有無)
(被告の主張)
本件発明は,公知文献である本件米国公報(乙12)により進歩性がない
ので,無効である。
本件発明の除湿の原理と機構は,配管をキャップの中に全部収容した点を
除き,すべて上記公報に記載されている。そして,本件発明は,除湿のメカ
ニズムそのものは公知であるときに,公知の機構を単一構造の出口側キャッ
プに収容することによって小型化し,部品数を減少させたという,単なる設
計的事項によって成立したものであるが,単に一体構造のキャップの中に配
管を収容することに進歩性があるとは認められない。
同公報の図3に記載されている,除湿エアの分岐及び取り出しのための配
管の構成と,請求項5におけるキャップ内の通路の構成とは,技術的に等価
であり,単なる外観の差にすぎない。管として配置するか,成形体の中に管
に相当する通路を形成するかで,特許の保護に値する発明が成立するとはい
えない。
(原告の主張)
被告は,本件発明の除湿の原理と機構は,配管をキャップの中に全部収容
した点を除き,すべて本件米国公報に記載されていると主張する。しかし,
この無効の主張も,本件異議決定において明確に否定されている(甲2。)
すなわち,同決定においては「引用例2(米国特許3735558号を指,
す)には,前記(B-2)~(B-4)に記載されるように,製品の一部分。
を生成物排出管20から取出し,還流ライン22を通して,チューブと外壁
の空間60に供給することが示され,このことから,掃引空気として,中空
糸膜内を通過した直後の高圧領域内の除湿エアーの一部を用いることが教示
されるとしても,ここでは,該生成物排出管20及び還流ライン22若しく
はそれに相当するものを装置の外部に設けるものであって,通路全体(生成
物排出管及び還流ライン)を,ハウジング内に組み込むことが示されるもの
ではない。そして,引用例2に記載のものにおいては,訂正発明1のように,
機構の簡素化及びコンパクト化等に配慮するものではなく,したがって,こ
の引用例2に記載の発明からは『中空糸膜内を通過した直後の高圧領域内の,
除湿エアーの一部を低圧領域内へ送るためのパージ通路全体をハウジング内
に組み込み形成する』ことを導き出すことができない(9頁)として,明。」
確に判断している。
また,本件米国公報(乙12)には,製品の一部分を生成物排出管20か
ら取り出し,還流ライン22を通して,チューブと外壁の空間60に供給す
ることが示され,このことから,掃引空気として,中空糸膜内を通過した直
後の高圧領域内の除湿エアの一部を用いることが開示されている。しかし,
ここでは,該生成物排出管20と還流ライン22又はこれに相当するものを
装置の外部に設けているのであって,通路全体(生成物排出管及び還流ライ
ン)を,ハウジング内に組み込むことが示されてはいない。ましてや,パー
ジエア分岐部位を含むパージエア取入領域をキャップ内に形成することなど,
うかがい知る余地もない。
被告も,審判請求書(乙15)において,上記公報に開示されている技術
と本件発明とでは,第1相違点として「パージエア分岐部位を含むパージエ
ア取入領域がキャップ内に形成されている点」が存在し,第2相違点として
「パージエア取入領域から低圧領域へ送るためのパージ通路全体がハウジン
グ内に組み込み形成されている点」が存在することを認めている。
そして,上記公報に開示されている技術は,本件発明のように,機構の簡
素化及びコンパクト化等に配慮するものではなく,上記第1相違点である
「パージエア分岐部位を含むパージエア取入領域がキャップ内に形成されて
いる点」及び第2相違点である「パージエア取入領域から低圧領域へ送るた
めのパージ通路全体がハウジング内に組み込み形成されている点」を導き出
すことができない。
したがって,本件米国公報に開示されている技術から,本件発明を容易に
想到し得ないことは明らかである。
(6)争点6(被告の不当利得額はいくらか)について
(原告らの主張)
被告は,平成6年ころから被告製品の販売を開始した。平成11年以降の
年間売上は,被告製品合計で約5000万円であり,その販売利益は,約1
0%の500万円を下回ることはない。
本件特許権登録の日の後である平成11年3月から平成16年12月まで
の5年10か月間で,被告が得た不当利得の額は,2916万6666円と
なる。
(被告の反論)
原告らの主張は否認する。
第3争点に対する当裁判所の判断
1争点3(構成要件Ⅷの充足性)について
本件では,事案の内容にかんがみ,まず,争点3から判断する。
(1)構成要件Ⅷにおける「パージエア取入領域」の意義について
ア原告らが,構成要件Ⅷの「パージエア取入領域」には,パージエア分岐
部位のみならず分岐部位に隣接したパージ通路も含まれるが,すべてのパ
ージ通路が含まれるわけではないと主張するのに対し,被告は「パージエ,
ア取入領域」とは「ケース内の中空糸膜の外側』の領域に入る直前の通,『
路」を意味すると主張し,被告製品の上部構造物に「パージエア取入領
域」が形成されているか否かについて争いがあるので,まず,構成要件Ⅷ
における「パージエア取入領域」の意義について検討する。
イ「パージエア取入領域」について,本件発明の特許請求の範囲において
は「・・・そのキャップ内には,少なくとも前記高圧領域を通過した除湿,
直後の圧縮エアをハウジング外へ取出すための取出通路と,同取出通路の
途中で分岐されるパージエア分岐部位を含み,前記除湿直後の圧縮エアの
一部をパージエアとして前記低圧領域へ供給するためのパージエア取入領
域とを形成し,前記除湿直後の圧縮エアの一部を前記パージエア取入領域
から前記低圧領域へ送るためのパージ通路全体が前記ハウジング内に組み
込み形成された除湿装置」との記載があるのみで「パージエア取入領域」,
の技術的意義は明確に記載されていない。
ここで,キャップ内に形成されることが要件とされている「パージエア
分岐部位」が「パージエア取入領域」に含まれるか否かの点はおくとして,
「パージエア取入領域」が具体的にどの部分を指すのか,特に「パージ通,
路」との区別は明らかとはいえない。したがって「パージエア取入領域」,
の技術的意義,とりわけ「パージエア取入領域」と「パージ通路」との関
係については,本件明細書の記載及び図面を参酌してその解釈をせざるを
得ない。
(ア)本件明細書にも「パージエア取入領域」の明確な定義は記載されて,
いない。そこで,本件明細書上「パージエア取入領域」の技術的意義に,
関連する記載をみると,以下のとおりである。
a(a)第1実施例に関し「取り出し側キャップ3に形成された取り出し,
領域3aがパージエア取入領域を兼ねている(0020「中。」【】),
空糸膜4を通って取り出し領域3aへ排出されたエアは除湿されて
おり,この除湿エアの大部分は取り出し側キャップ3の出口通路3
bから送り出されると共に,一部が,ハウジングのほぼ中心部に設
けられている流路孔10a,遮蔽円筒7内及び通孔7aを経由して
収納円筒1と遮蔽円筒7との間の低圧領域S2へ送られる(00。」【
22「パージ通路を形成する遮蔽円筒7(0024「パー】),」【】),
ジ通路の通孔7a(0025「中空糸膜4の高圧領域を通過し」【】),
た除湿後の圧縮エアは取出側キャップ3に形成された取出通路とし
ての取り出し領域3a及び出口通路3bを介して即座に外部に供給
されるが,このキャップ3内の取り出し領域3aはパージエア取入
領域としても機能する。そのため,除湿直後の圧縮エアがパージエ
アとして即座に中空糸膜4の低圧領域S2へ供給されることとなり,
パージエアの低湿度とパージ通路の短縮化とが相俟ってパージ効率
が向上する。又,除湿後エアの取出及びパージエア取込のための通
路や領域がキャップ3によって形成されていることから,ケースと
しての収納円筒1には複雑な通路を形成する必要がなく,通路設計
・製作が簡単になる(0028「パージ通路を形成する通孔。」【】),
7a(符号の説明)との記載があり,同実施例を示す側断面図と」【】
して【図1(別紙【図1)が記載されている。,】】
(b)これらの記載によれば,同実施例における「パージエア取入領
域」は,取り出し領域3aを意味することが明らかである。また,
同実施例において「パージ通路」がどの部分を指すのかは,これら
の記載中にも具体的に示されていないが「パージ通路を形成する遮,
蔽円筒7「パージ通路の通孔7a「パージ通路を形成する通孔」,」,
7a」との記載,及びパージ通路が,除湿直後の圧縮エアの一部を
パージエア取入領域から低圧領域へ送る機能を果たすものと考えら
れることからすれば,取り出し領域3aにおいて分岐された除湿後
エアを,流通孔10a,ニードル弁11及び弁座10,遮断円筒7
及び通孔7aを経由して低圧領域S2へ送るまでの部分が「パージ
通路」に該当するものと考えられる。
このように,同実施例においては「パージエア取入領域」は,パ,
ージ通路とは異なる部分を指すものとして用いられているといえる。
b(a)第2実施例に関し「取り出し領域17aはパージエア取入領域と,
してのパージ通路17eを介して管状通路L2に連通しており」,
(0031「中空糸膜18を通って排出領域17aへ排出され【】),
たエアは除湿されており,この除湿エアの大部分は取り出し側キャ
ップ17の出口通路17bから送り出されると共に,一部がパージ
通路17e,環状通路L2及び通孔15aを経由して収納円筒15
内の間の低圧領域S2へ送られる(0034)との記載があり,。」【】
同実施例を示す側断面図として【図2(別紙【図2)が記載され,】】
ている。
(b)ここでは「パージエア取入領域としてのパージ通路17e」との,
記載から,同実施例における「パージエア取入領域」は「パージ通,
路17e」を意味すると解されるが「パージエア取入領域」が「パ,
ージ通路」とすべて同じ部分を指すのか,あるいは「パージ通路」
の一部のみを指すのかは明らかでない。
原告らは,環状通路L2は,パージエアを通孔15aを経由して
低圧領域S2へ送るための「パージ通路」であり,パージ通路17
e及び通孔15aも「パージ通路」であるとして,これらの「パー
ジ通路」のうち,分岐部位に隣接したニードル弁24までの「パー
ジ通路17e」を「パージエア取入領域」としていると主張する。
確かに,パージ通路が,除湿直後の圧縮エアの一部をパージエア
取入領域から低圧領域へ送る機能を果たすものと考えられることか
らすれば,除湿後エアを出口通路17bから分岐し,パージ通路1
7e,環状通路L2及び通孔15aを経由して低圧領域S2へ送る
ための機構全体が「パージ通路」と考えられる。しかし,本件明細
書上,これらの機構すべてを指して「パージ通路」と記載している
わけではなく,むしろ「パージ通路」の語は,除湿後エアを出口通,
路17bから分岐し,環状通路L2に送るまでの部分を「パージ通
路17e」とする箇所しか記載されていない。
そうすると,本件明細書の同実施例の記載から直ちに,原告らが
主張するように,パージエア分岐部位に隣接した「パージ通路」が
「パージエア取入領域」であると解するのは困難であり「パージエ,
ア取入領域」が「パージ通路」とすべて同じ部分を指すのか,ある
いは「パージ通路」の一部を指すのかは明らかでないというほかな
い。
c(a)第3実施例に関し「除湿エアの大部分は取り出し側キャップ29,
の出口29bから送り出されると共に,一部がパージオリフィス3
2aを経由して低圧領域S2へ送られる。前記取り出し領域29a
及び出口29bにより取出通路が構成され,又,取り出し領域29
aはパージエア取入領域を兼ねている(0039)との記載が。」【】
あり,同実施例を示す側断面図として【図3(別紙【図3)が記,】】
載されている。
(b)ここでは,取り出し領域29aをもって「パージエア取入領域」
としていることは明らかであるが「パージ通路」の語は,同実施例,
に関する記載中にはなく,同実施例においては「パージエア取入領,
域」と「パージ通路」の関係は明らかでない。
ただし「シール部材32には定数個のパージオリフィス32aが,
取り出し領域29aと収納円筒27内の低圧領域S2とを連通する
ように透設(0037)され,除湿後エアの一部は,パージオリ」【】
フィス32aを経由して低圧領域S2へ送られるとされており,パ
ージ通路が,除湿直後の圧縮エアの一部をパージエア取入領域から
低圧領域へ送る機能を果たすものと考えられることからすれば,同
実施例においては「パージオリフィス32a」が「パージ通路」に,
該当するともいえる。そうすると,同実施例では「パージエア取入,
領域」と「パージ通路」とは一応異なる部分を指していると解する
ことができる。
d(a)第4実施例に関し「環状通路L5はパージエア取入領域としての,
パージ通路51bを介して出口通路51a及び低圧領域S2に連通
しており(0043「この除湿エアの一部がパージ通路51b」【】),
及び環状通路L5を経由して低圧領域S2へ送られる(004。」【
4)との記載があり,同実施例を示す側断面図として【図4(別】,】
紙【図4)が記載されている。】
(b)ここでは「パージエア取入領域としてのパージ通路51b」との,
記載から,同実施例における「パージエア取入領域」は「パージ通,
路51b」を意味すると解されるが「パージエア取入領域」が「パ,
ージ通路」とすべて同じ部分を指すのか,あるいは「パージ通路」
の一部のみを指すのかは明らかでない。
原告らは,環状通路L5及びパージ通路51bが「パージ通路」
であり,一方で,このうち,分岐部位に隣接したパージ通路51b
のみが「パージエア取入領域」であると主張する。
しかし,前記b(b)で述べたとおり,パージ通路が,除湿直後の圧
縮エアの一部をパージエア取入領域から低圧領域へ送る機能を果た
すものと考えられるにもかかわらず,環状通路L5がパージ通路と
記載されておらず,本件明細書の同実施例の記載から直ちに,原告
らが主張するように,パージエア分岐部位に隣接した「パージ通
路」が「パージエア取入領域」であると解するのは困難であり「パ,
ージエア取入領域」が「パージ通路」とすべて同じ部分を指すのか,
あるいは「パージ通路」の一部を指すのかは,同様に,明らかでな
い。
e(a)第5実施例に関し「取り出し側キャップ56の外端には電空変換,
器62が連結されており,これら取り出し側キャップ56及び電空
変換器62により本発明のキャップが構成されている。そして,電
空変換器62の内部のノズル63を経由するパージエア取入領域と
してのパージ通路62aが取出通路としての出口通路62bを介し
て排出領域56aに連通している。パージ通路62aは連通筒64
を介して遮蔽円筒60内に連通しており,排出領域56aから出口
通路62bへ送り出された除湿エアの一部がパージ通路62a,遮
蔽円筒60内及び通孔60aを経由して低圧領域S2へ送り込まれ
る(0049)との記載があり,同実施例を示す側断面図とし。」【】
て【図5(別紙【図5)が記載されている。,】】
(b)ここでは「パージエア取入領域としてのパージ通路62a」との,
記載から,同実施例における「パージエア取入領域」は「パージ通,
路62a」を意味すると解されるが「パージエア取入領域」が「パ,
ージ通路」とすべて同じ部分を指すのか,あるいは「パージ通路」
の一部のみを指すのかは明らかでない。
原告らは,パージ通路62a,遮蔽円筒60及び通孔60aが
「パージ通路」であり,分岐部位に隣接したパージ通路62aのみ
が「パージエア取入領域」であると主張する。
しかし,前記b(b)で述べたとおり,パージ通路が,除湿直後の圧
縮エアの一部をパージエア取入領域から低圧領域へ送る機能を果た
すものと考えられるにもかかわらず,遮蔽円筒60及び通孔60a
がパージ通路と記載されておらず,本件明細書の同実施例の記載か
ら直ちに,原告らが主張するように,パージエア分岐部位に隣接し
た「パージ通路」が「パージエア取入領域」であると解するのは困
難であり「パージエア取入領域」が「パージ通路」とすべて同じ部,
分を指すのか,あるいは「パージ通路」の一部を指すのかは,前記
と同様,明らかでない。
f(a)第8実施例に関し「収納円筒79の両端には供給側キャップ80,
及びキャップとしての取り出し側キャップ81が嵌められており,
取り出し側キャップ81内のパージエア取入領域としてのパージ通
路81a上にはニードル弁82が介在されている。高圧領域S1の
一部となる取り出し側キャップ81内の取出通路としての取り出し
領域81bからパージ通路81aへ流入する除湿エアは低圧領域S
2を掃気して収納円筒79上の通孔79aから流出する(005。」【
5)との記載があり,同実施例を示す側断面図として【図8(別】,】
紙【図8)が記載されている。】
(b)ここでは「パージエア取入領域としてのパージ通路81a」との,
記載から,同実施例における「パージエア取入領域」は「パージ通,
路81a」を意味すると解されるが「パージエア取入領域」が「パ,
ージ通路」とすべて同じ部分を指すのか,あるいは「パージ通路」
の一部のみを指すのかは明らかでない。
ただし,同実施例において,除湿直後の圧縮エアの一部を前記パ
ージエア取入領域から前記低圧領域へ送るという機能を果たすもの
と考えられる「パージ通路」は,除湿後の圧縮エアを取り出し領域
81bにおいて分岐し,収納円筒79の側面に設けた開口部を経由
して低圧領域S2へ送り込むまでの機構を指すところ,これは,同
開口部を含むかどうかを除き,同実施例における「パージエア取入
領域,すなわち「パージ通路81a」と,ほぼ同じ部分を指してい」
るといえる。
(イ)以上によれば,本件明細書の各実施例の説明において「パージエア,
取入領域」について「パージ通路」との区別は明確でなく,同じ「パー,
ジエア取入領域」の語によって示される部分も,各実施例によって必ず
しも同一ではない。しかも,原告らが,本件拒絶意見書(乙9)及び本
件特許権に係る無効審判事件答弁書(甲8)において,本件発明の実施
例と認めている,第8実施例における「パージエア取入領域」と,その
意味が相違するものもある。このように「パージエア取入領域」の語は,,
本件明細書を通じて一貫した概念として使用されているとはいえない。
したがって「パージエア取入領域」について,本件明細書全体を通じ,
ての一義的な技術的意義を解釈することは妥当でなく,本件では,侵害
の成否が問われている本件発明における「パージエア取入領域」の技術
的意義に限って,これを解釈していくほかない。
そして,本件明細書の特許請求の範囲には,本件発明(請求項5)以
外に,請求項1から請求項4の発明が記載されているところ,本件明細
書に開示されている各実施例の中には,本件発明の実施例であるかどう
かは明らかでないものもあるから,本件発明の構成要件Ⅷの「パージエ
ア取入領域」の解釈に当たっては,本件発明の作用効果についての記載,
及び当事者間において,本件発明の実施例であることにつき争いのない
第8実施例の記載を参酌するのが最も適切である。
(ウ)本件発明の作用効果に関して,本件明細書には,以下の記載がある。
a「0014】請求項5記載の発明では・・・中空糸膜の高圧領域【,
を通過した除湿後の圧縮エアはキャップに形成された取出通路を介し
て即座に外部に供給されるが,このキャップ内の取出通路には,同取
出通路の途中で分岐されるパージエア分岐部位を含み,前記除湿直後
の圧縮エアの一部をパージエアとして前記低圧領域へ供給するための
パージエア取入領域が連通するように形成されている。そのため,除
湿直後の圧縮エアがパージエアとして即座に中空糸膜の低圧領域へ供
給されることとなり,パージエアの低湿度とパージ通路の短縮化とが
相俟ってパージ効率が向上する。又,取出通路及びそこから分岐され
るパージエア分岐部位を含むパージエア取入領域がキャップ内に形成
されていることから,ケースには複雑な通路を形成する必要がないと
ともにキャップ外部に別の通路形成部材を設ける必要もなく,通路設
計・製作が簡単になる。勿論,パージ用の外部配管も不要となってコ
ンパクト化も達成される。更に,単一構造のキャップ内に取出通路及
びパージエア分岐部位を含むパージエア取入領域とを形成しているの
で,キャップ自体の部品点数の低減に加え,通路や分岐部位に設けら
れるシール部材の数が大幅に低減されて更なる部品点数の低減及びエ
ア漏れの低減を図ることができる(0062】にも同様の記載があ。」【
る)。
b「0055[第8実施例]次に,本発明の第8実施例を図8に基【】
づいて説明する・・・収納円筒79の両端には供給側キャップ80及。
びキャップとしての取り出し側キャップ81が嵌められており,取り
出し側キャップ81内のパージエア取入領域としてのパージ通路81
a上にはニードル弁82が介在されている。高圧領域S1の一部とな
る取り出し側キャップ81内の取出通路としての取り出し領域81b
からパージ通路81aへ流入する除湿エアは低圧領域S2を掃気して
収納円筒79上の通孔79aから流出する」。
c「0056】パージ通路81a及びニードル弁82を組み込んで機【
構の簡素化及びコンパクト化を図りつつ外部配管における設置スペー
スの問題も解消する本実施例では・・・」,
(エ)これら本件発明の作用効果の記載からすれば,本件発明において,
キャップ内に「パージエア取入領域」を形成した技術的意義は,ケースに
複雑な通路を形成する必要や,キャップ外部に別通路形成部材を設ける必
要をなくし,通路設計・製作を簡単にすること,また,その結果として,
除湿装置全体のコンパクト化,キャップ自体の部品点数及びシール部材数
の低減,エア漏れの低減,パージ通路の短縮とパージエアを即座に低圧領
域へ供給することによるパージエアの低湿度化及びパージ効率の向上を図
ることにあるといえる。
また,前記(ア)fのとおり,第8実施例において,除湿直後の圧縮エア
の一部を前記パージエア取入領域から前記低圧領域へ送るという「パージ
通路」の機能を果たしているのは,除湿後の圧縮エアを取り出し領域81
bにおいて分岐し,収納円筒79の側面に設けた開口部を経由して低圧領
域S2へ送り込む機構であるが,同実施例では,パージエア分岐部位から
収納円筒側面の開口部に至るパージ通路81aを「パージエア取入領域」
とし,収納円筒には単なる開口のみを設けている。
そして,同実施例においては,このような構成,すなわち「パージ通,
路」のうち,パージエア分岐部位から収納円筒側面の開口部に至るパージ
通路を「パージエア取入領域としてのパージ通路」とし,収納円筒には除
湿後エアの一部を低圧領域S2へ送り込むための単なる開口(通孔)のみ
を設ける構成を採用したことによって,ケース(収納円筒)に複雑な通路
を形成する必要や,キャップ外部に別通路形成部材を設ける必要がなくな
り,通路設計・製作が容易になっているほか,除湿直後のパージエアの一
部が,直ちに,直線状の短いパージエア取入領域81aを通り,ケース
(収納円筒)の開口を経由して低圧領域S2へ送られることによるパージ
効率の向上など,上記本件発明の作用効果を達成していると解される。
こうした本件発明の作用効果の記載及び同実施例の構成からすれば,
本件発明の作用効果のうち「ケースには複雑な通路を形成する必要がな,
い」とは,ケースには単なる開口以上の通路を形成する必要がないという
意味であると考えられ,本件発明の「パージエア取入領域」は,この単な
る開口だけを介して低圧領域に直結していることが必要であると解される。
(オ)以上の検討からすれば,本件発明の構成要件Ⅷの「パージエア取入
領域」とは,ケースには単なる開口以上の通路を形成することなく,パ
ージエア分岐部位からケースに設けた当該開口に至るまでのパージエア
が送られる通路であって,当該開口だけを介して低圧領域に直結してい
るものとの意味に解するのが相当であり,前記(ア)f(b)のとおり,パー
ジ通路とほぼ同じ部分を指しているものと認められる。
なお,原告らは,本件明細書の記載(特に各実施例の説明)から「パ,
ージエア取入領域」について,パージエア分岐部位に隣接したパージ通
路を指し,すべてのパージ通路が含まれるものではないと主張する。
しかし,前記のとおり,原告らがその主張の根拠とする実施例の記載
からは,必ずしも,パージエア分岐部位に隣接した「パージ通路」が
「パージエア取入領域」であると解することはできないし,また,原告
らの主張は,本件発明の実施例であることが明らかな前記第8実施例の
記載から理解される「パージエア取入領域」の解釈とは異なるものであ
るところ,第8実施例とは異なる解釈をすることについての合理的な理
由を示すものでもない。したがって,原告らの主張を採用することはで
きない。
(2)以上を前提に,被告製品が本件発明の構成要件Ⅷを充足するか否かを検討
する。
ア被告製品の構成
被告製品においては,それぞれその下部構造物中央部分にL字型の通路
13,32,53が形成されている。被告製品1では,除湿後の圧縮エア
が,パージエアの分岐部位12に至り,一部,パージエアとして供給され
る。パージエアは,圧力調整機構9内の通路を通り,上記の,下部構造物
4中央部分に形成されたL字型の通路13を通って,中空糸膜2の外の低
圧領域に送られる。被告製品2及び3では,除湿後の圧縮エアが,パージ
エアの分岐部位31に至り,一部,パージエアとして供給される。パージ
エアは,圧力調整機構29内の通路を通り,上記の,下部構造物24中央
部分に形成されたL字型の通路32を通って,中空糸膜22の外の低圧領
域に送られる。被告製品4及び5では,除湿後の圧縮エアが,パージエア
の分岐部位52に至り,一部,パージエアとして供給される。パージエア
は,圧力調整機構50を通り,上記の,下部構造物44中央部分に形成さ
れたL字型の通路53を通って,中空糸膜42の外の低圧領域に送られる。
イ検討
前記アのとおり,被告製品において,パージエア分岐部位で分岐された
パージエアは,圧力調整機構(被告製品4及び5)又は同機構内の通路
(被告製品1ないし3)を通り,下部構造物中央部分に形成されたL字型
の通路を通って,中空糸膜の外の低圧領域に送られる。
原告らは,被告製品におけるパージエア分岐部位から上記各L字型の通
路に至るまでの領域が「パージエア取入領域」に相当する(同L字型通路,
自体は「パージ通路」であるとする)から「パージエア取入領域」は,。,
本件発明のキャップに当たる上部構造物に形成されているということがで
き,被告製品は本件発明の構成要件Ⅷを充足すると主張する。
しかし,被告製品の下部構造物に形成された上記各L字型の通路は,ハ
ウジングケースにおける単なる開口などとは異なる複雑な通路であるし,
上部構造物に形成された取出通路等よりも長いものであるから,原告が
「パージエア取入領域」と主張する領域が,単なる開口だけを介して低圧
領域に直結しているということはできない。原告らの主張に従うと「パー,
ジエア取入領域」に加えて,上記のL字型通路を設けることによって,パ
ージエアを低圧領域に送るという構成を採用したものとなり「パージエア,
取入領域」をキャップ内に設けることにより複雑な通路の形成を不要とす
るなどの前記(1)(エ)の各作用効果を達成できないことになる。
そうすると,前記(1)で検討したところに照らし,被告製品におけるパー
ジエア分岐部位から上記各L字型の通路に至るまでの領域は,本件発明の
「パージエア取入領域」に当たらないというべきである。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
また,被告製品における「パージエア取入領域」に,上記各L字型の通
路が含まれるとすれば,同通路は,被告製品の各下部構造物に形成されて
おり,上部構造物に形成されているといえないことは明らかである。そう
すると,被告各製品の上部構造物は,一応,本件発明のキャップに該当す
ると解されるから,キャップ内に「パージエア取入領域」が形成されてい
るということはできない。
以上からすれば,被告製品は,キャップ内に本件発明の「パージエア取
入領域」を備えているとはいえないから,本件発明の構成要件Ⅷを充足し
ない。
第4結論
よって,原告らの請求は,その余の争点について判断するまでもなくいずれ
も理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官清水節
裁判官山田真紀
裁判官片山信
(別紙)
物件目録
以下の型式の中空糸膜式エアドライヤー
1型式SWC-01-150
断面図は添付第1図(被告製品1)のとおり。
2型式SWC-02-250
断面図は添付第2図(被告製品2及び3)のとおり。
3型式SWC-03-250
断面図は添付第2図(被告製品2及び3)のとおり。
4型式SWC-M08-100
断面図は添付第3図(被告製品4及び5)のとおり。
5型式SWC-M15-100
断面図は添付第3図(被告製品4及び5)のとおり。
原告主張被告製品1説明書
ⅠA.ハウジング1内に,高分子浸透膜からなる多数本の中空糸膜2がU字状に
折り曲げ束ねて収容されている。
ⅡA.中空糸膜2の中に,送気口3から,除湿前の圧縮エアが供給されていて,
高圧領域とされている。
ⅢA.中空糸膜2の外は,パージエアが流通する低圧領域とした除湿装置である。
ⅣA.ハウジング1は,下部構造物4と上部構造物5よりなり,下部構造物4の
上面と上部構造物5の下面は密着させてネジ止めされ,下部構造物4の端部
が閉塞されている。
VA.下部構造物4内には,中空糸膜2の束が収容されていて,その上部に中空
糸膜2の束の入口側及び出口側があり,左右に入口側及び出口側を保持する
中空糸束端部保持部材7がある。
ⅥA.上部構造物5は,中央部に絞り弁9を備えている。
ⅦA.上部構造物5内には,除湿前の圧縮エアが供給される送気口3と,高圧領
域を通過した除湿直後の圧縮エアをハウジング1外へ取り出すための取出通
路11が設けられ,かつ取出通路11の途中で圧縮エアはパージエア分岐部
位12にて分岐されている。
ⅧA.上部構造物5内には,中空糸膜2を通過した除湿直後の圧縮エアの一部を
パージエアとして前記低圧領域へ供給するためのパージエア取入領域が形成
されている。
ⅨA.前記除湿直後の圧縮エアの一部を前記パージエア取入領域から前記低圧領
域へ送るためのパージ通路13全体がハウジング1内に組み込み形成されて
いる。
ⅩA.除湿装置である。
原告主張被告製品2・3説明書
ⅠB.ハウジング21内に,高分子浸透膜からなる多数本の中空糸膜22がU字
状に折り曲げ束ねて収容されている。
ⅡB.中空糸膜22の中に,送気口23から,除湿前の圧縮エアが供給されてい
て,高圧領域とされている。
ⅢB.中空糸膜22の外は,パージエアが流通する低圧領域とした除湿装置であ
る。
ⅣB.ハウジング21は,下部構造物24と上部構造物25よりなり,下部構造
物24の上面と上部構造物25の下面は密着させてネジ止めされ,下部構造
物24の端部が閉塞されている。
VB.下部構造物24内には,中空糸膜22の束が収容されていて,その上部に
中空糸膜22の束の入口側及び出口側があり,左右に入口側及び出口側を保
持する中空糸束端部保持部材27がある。
ⅥB.上部構造物25は,中央部に絞り弁29を備えている。
ⅦB.上部構造物25内には,除湿前の圧縮エアが供給される送気口23と,高
圧領域を通過した除湿直後の圧縮エアをハウジング21外へ取り出すための
取出通路30が設けられ,かつ取出通路30の途中で圧縮エアはパージエア
分岐部位31にて分岐されている。
ⅧB.上部構造物25内には,中空糸膜22を通過した除湿直後の圧縮エアの一
部をパージエアとして前記低圧領域へ供給するためのパージエア取入領域が
形成されている。
ⅨB.前記除湿直後の圧縮エアの一部を前記パージエア取入領域から前記低圧領
域へ送るためのパージ通路32全体がハウジング21内に組み込み形成され
ている。
ⅩB.除湿装置である。
原告主張被告製品4・5説明書
ⅠC.ハウジング41内に,高分子浸透膜からなる多数本の中空糸膜42がU字
状に折り曲げ束ねて収容されている。
ⅡC.中空糸膜42の中に,送気口43から,除湿前の圧縮エアが供給されてい
て,高圧領域とされている。
ⅢC.中空糸膜42の外は,パージエアが流通する低圧領域とした除湿装置であ
る。
ⅣC.ハウジング41は,下部構造物44と上部構造物45よりなり,下部構造
物44の上面と上部構造物45の下面は密着させてネジ止めされ,下部構造
物44の端部が閉塞されている。
VC.下部構造物44内には,中空糸膜42の束が収容されていて,その上部に
中空糸膜42の束の入口側及び出口側があり,左右に入口側及び出口側を保
持する中空糸束端部保持部材47がある。
ⅥC.上部構造物45は,中央部に絞り弁50を備えている。
ⅦC.上部構造物45内には,除湿前の圧縮エアが供給される送気口43と,高
圧領域を通過した除湿直後の圧縮エアをハウジング41外へ取り出すための
取出通路51が設けられ,かつ取出通路51の途中で圧縮エアはパージエア
分岐部位52にて分岐されている。
ⅧC.上部構造物45内には,中空糸膜42を通過した除湿直後の圧縮エアの一
部をパージエアとして前記低圧領域へ供給するためのパージエア取入領域が
形成されている。
ⅨC.前記除湿直後の圧縮エアの一部を前記パージエア取入領域から前記低圧領
域へ送るためのパージ通路53全体がハウジング41内に組み込み形成され
ている。
ⅩC.除湿装置である。
被告主張被告製品1説明書
ⅠA.ハウジング1内に,高分子浸透膜からなる多数本の中空糸膜2の束が,U
字状に折り曲げられて収容されている。
ⅡA.中空糸膜2の中に,送気口3から,除湿前の圧縮エアが供給されていて,
高圧領域とされている。
ⅢA.中空糸膜2の外は,パージエアが流通する低圧領域とした除湿装置である。
ⅣA.ハウジング1は,それぞれ複数のパーツからなる下部構造物4と上部構造
物5からなり,前者の上面と後者の下面は,多数のシール6を介して密着さ
せてネジ止めされている。
VA.下部構造物4の上部には,左右に中空糸膜2の束の入口側及び出口側を保
持する中空糸束端部保持部材7があり,当該保持部材7によって中空糸膜2
は下部構造物内部の蛇腹状管8の内部にU字状に保持されている。
ⅥA.上部構造物5は,中央部に複数の部材からなる圧力調整機構9を備え,圧
力調整機構9の切替弁右側及び下側には多孔質金属体よりなるサイレンサー
10が付けられている。
ⅦA.上部構造物5内には,除湿前エアが供給される送気口3と,高圧領域を通
過した除湿直後の圧縮エアをハウジング1外へ取り出すための取出通路11
が設けられ,かつ取出通路11の途中で圧縮エアはパージエア分岐部位12
にて分岐されている。
ⅧA.中空糸膜2を通過した圧縮エアは除湿され,その除湿直後の圧縮エアの一
部をパージエアとして前記低圧領域へ供給するためのパージエア取入領域1
3が,上部構造物5及び下部構造物4の内部に形成されている。
ⅨA.前記除湿直後の圧縮エアの一部を前記低圧領域へ送るためのパージ通路全
体がハウジング1内に組み込み形成されている。
ⅩA.除湿装置である。
被告主張被告製品2・3説明書
ⅠB.ハウジング21内に,高分子浸透膜からなる多数本の中空糸膜22の束が,
U字状に折り曲げられて収容されている。
ⅡB.中空糸膜22の中に,送気口23から,除湿前の圧縮エアが供給されてい
て,高圧領域とされている。
ⅢB.中空糸膜22の外は,パージエアが流通する低圧領域とした除湿装置であ
る。
ⅣB.ハウジング21は,それぞれ複数のパーツからなる下部構造物24と上部
構造物25からなり,前者の上面と後者の下面は,多数のシール26を介し
て密着させてネジ止めされている。
VB.下部構造物24の上部には,左右に中空糸膜22の束の入口側及び出口側
を保持する中空糸束端部保持部材27があり,当該保持部材27によって中
空糸膜22の束は下部構造物内部の蛇腹状管28の内部にU字状に保持され
ている。
ⅥB.上部構造物25は,中央部に複数の部材からなる圧力調整機構29を備え
ている。
ⅦB.上部構造物25内には,除湿前エアが供給される送気口23と,高圧領域
を通過した除湿直後の圧縮エアをハウジング21外へ取り出すための取出通
路30が設けられ,かつ取出通路30の途中で圧縮エアはパージエア分岐部
位31にて分岐されている。
ⅧB.中空糸膜22を通過した圧縮エアは除湿され,その除湿直後の圧縮エアの
一部をパージエアとして前記低圧領域へ供給するためのパージエア取入領域
32が,上部構造物25及び下部構造物24の内部に形成されている。
ⅨB.前記除湿直後の圧縮エアの一部を前記低圧領域へ送るためのパージ通路全
体がハウジング21内に組み込み形成されている。
ⅩB.除湿装置である。
被告主張被告製品4・5説明書
ⅠC.ハウジング41内に,高分子浸透膜からなる多数本の中空糸膜42の束が,
U字状に折り曲げられて収容されている。
ⅡC.中空糸膜42の中に,送気口43から,除湿前の圧縮エアが供給されてい
て,高圧領域とされている。
ⅢC.中空糸膜42の外は,パージエアが流通する低圧領域とした除湿装置であ
る。
ⅣC.ハウジング41は,それぞれ複数のパーツからなる下部構造物44と上部
構造物45からなり,前者の上面と後者の下面は,多数のシール46を介し
て密着させてネジ止めされている。
VC.下部構造物44の上部には,左右に中空糸膜42の束の入口側及び出口側
を保持する中空糸束端部保持部材47があり,中空糸束保持部材47と,外
保持部材と蓋状部材49の間に位置するケース部が一体化されたものが,箱
状プラスチック成型体48である。
ⅥC.中空糸束保持部材47によって中空糸膜42の束は,箱状プラスチック成
型体48と蓋状部材49で形成される空間内にU字状に保持されている。
ⅦC.上部構造物45内は,中央に圧量調整機構50を備えている。
ⅧC.上部構造物45には,除湿前エアを供給する送気口43と,高圧領域を通
過した除湿直後の圧縮エアをハウジング41外へ取り出すための取出通路5
1が設けられ,かつ取出通路51の途中で圧縮エアはパージエア分岐部位5
2にて分岐されている。
ⅨC.中空糸膜42を通過した圧縮エアは除湿され,その除湿直後の圧縮エアの
一部をパージエアとして前記低圧領域へ供給するためのパージエア取入領域
53が,上部構造物45及び下部構造物44の内部に形成されている。
ⅩC.前記除湿直後の圧縮エアの一部を前記低圧領域へ送るためのパージ通路全
体がハウジング41内に組み込み形成されている。
XIC.除湿装置である。

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛