弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
1原判決を取り消す。
2被控訴人の本件訴えをいずれも却下する。
3訴訟費用は,第1,2審を通じて被控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1控訴人ら
(主位的控訴の趣旨)
主文同旨
(予備的控訴の趣旨)
()原判決を取り消す。1
()被控訴人の請求をいずれも棄却する。2
()訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。3
2被控訴人
()本件控訴をいずれも棄却する。1
()各控訴費用は,控訴人らの負担とする。2
第2事案の概要
1本件は,被控訴人が,X土地区画整理組合(以下「訴外組合」という)を。
施行者とする土地区画整理事業の施行地区内に所在し,控訴人らが共有してい
た原判決別紙物件目録1,2記載の土地(以下「本件土地1,2」という)。
(「」。),の仮換地である同目録3記載の土地以下本件仮換地というを購入し
これをD外4名(以下「本件仮換地の現所有者ら」という)に売却したとこ。
ろ,訴外組合から本件仮換地の現所有者らに対して,平成18年12月20日
限り総額1827万9050円の仮清算金(以下「本件仮清算金」という)。
の支払を求める通知が来たため,被控訴人は本件仮換地の現所有者らとの間で
は被控訴人に本件仮清算金の支払義務があることの合意をしたが,本来,本件
仮清算金は本件仮換地の売主である控訴人らに支払義務があるとして,①控訴
,,,,人Aに対しては平成18年12月20日限り控訴人Aが訴外組合に対し
仮清算金822万5572円の支払義務があることの確認を,②控訴人Bに対
しては,平成18年12月20日限り,控訴人Bが,訴外組合に対し,仮清算
,,金639万7668円の支払義務があることの確認を③控訴人Cに対しては
平成18年12月20日限り,控訴人Cが,訴外組合に対し,仮清算金365
万5810円の支払義務があることの確認をそれぞれ求めた事案である。
原審は,被控訴人の請求をいずれも認容したため,控訴人らがこれを不服と
して控訴した。
2当事者の主張は,以下のとおり,原判決を補正し,当審における控訴人ら及
び被控訴人の主張を付加する他は,原判決「事実及び理由」の「第2原告の
主張」及び「第3被告らの主張」に記載のとおりであるから,これを引用す
る。
(原判決の補正)
()原判決2頁15行目の「原告は」から17行目の末尾までを「被控訴1,
人は,本件仮換地を分譲地として分割し,本件仮換地の現所有者らに対し,
それぞれ売却した」と改める。。
()同2頁18行目から19行目にかけての「本件土地1の現所有者らに対2
し,仮清算金の支払いを求めた」を「本件仮換地の現所有者らに対し,土。
。」。地区画整理法102条1項に規定する仮清算金の支払を求めたと改める
()同2頁20行目の「本件土地1,2の現所有者らとの間で」を「本件3,
仮換地の現所有者らとの間で」と改める。,
()同2頁24行目の「清算金」を「仮清算金」と改める。4
(当審における控訴人らの主張)
()本案前の抗弁1
ア被控訴人の控訴人らに対する本件請求は,控訴人らが訴外組合に対して
本件仮清算金の支払義務があることの確認を求めるものであるところ,土
地区画整理法上の仮清算金納付義務は,その徴収処分(行政処分)がなさ
れたことによる公法上の義務であり,控訴人らがこの義務を負うか否かは
被控訴人の権利関係に何らの影響を与えないのであるから,被控訴人は控
訴人らに対して上記確認を求める法律上の利益を有しない。
被控訴人は,本件仮清算金賦課処分の名宛人である本件仮換地の現所有
者らが本件仮清算金を納付したときは,被控訴人が同人らの請求を受けて
これを負担しなければならなくなるとして,その負担を控訴人らに転嫁す
るために本件訴訟を提起したものであるが,仮にそうなるとしても,それ
は本件仮換地の現所有者らが損害を被ったことにより,これを他に転嫁す
る別の私法上の関係から発生する法律効果としてその様な請求ができるの
であって,控訴人らが本件仮清算金の納付義務を負っているか否かとは法
律上の牽連関係がなく,被控訴人が本件訴訟のような確認を求める法律上
の根拠とはならないものである。
イ本件仮清算金徴収処分は,平成18年3月15日に本件仮換地の現所有
者らに通知されてから6か月が経過しているから,既に確定しているとこ
ろ,確定した行政処分には対世効があり,取り消されない限り裁判所もこ
れに拘束されるから,本件行政処分が確定した段階で,本件請求はその行
政処分と異なる公法上の法律関係の確認を求めるものとなり,不適法なも
のとなった。
ウ上記ア,イのとおり,いずれにしても本件請求は不適法であり却下を免
れない。
()本案に対する主張2
ア訴外組合に対して本件仮清算金の支払義務を負うのは,その徴収処分の
名宛人である本件仮換地の現所有者らであり,控訴人らが訴外組合に対し
て直接支払義務を負うものでないことは土地区画整理法上明らかである。
イ清算金は,本来,換地相互間の不均衡是正を目的とするものであり,そ
の限りにおいては本件仮換地の売主である控訴人らに清算金の支払義務が
あるとしても,本件仮清算金は実質的にみて換地相互間の不均衡是正を目
的とするものではないから,当然に控訴人らが支払義務を負うことにはな
らないものである。すなわち,本件仮換地の過渡し分は0.16㎡にすぎ
ないから,本件のような高額の仮清算金が発生する余地はなく,本件仮清
算金は訴外組合が事業費の不足を補うためとしか考えられないのである。
事業遂行に必要な財源が不足する場合は,土地区画整理法上は,組合員か
ら賦課金,負担金,分担金を徴収することとされているのであるから,組
合員でもない旧土地所有者である控訴人らに事業費の不足分の負担を求め
ることは公平でないというべきである。
(当審における被控訴人の主張)
被控訴人が本件訴訟で問題としているのは,訴外組合に対して本件仮清算
金の支払義務を負っているのは誰かという問題ではなく,順次転売された土
地所有者間において最終的に誰が本件仮清算金を負担すべきかという問題で
ある。控訴人らは,控訴人らが本件仮清算金の納付義務を負うか否かは,被
控訴人の権利関係に影響を与えないので,被控訴人には控訴人らが本件仮清
算金の支払義務を負っていることの確認を求める法律上の利益がないと主張
するが,上記のとおり,被控訴人は,順次転売された土地所有者間における
最終支払義務者を確定する法律上の利益はあることから,本訴提起にいたっ
たものである。被控訴人は,現在,訴外組合に対して分割払いにより本件仮
清算金の支払を履行中であり,支払完了後,控訴人らに対し,給付訴訟を提
起する予定である。
第3当裁判所の判断
当裁判所は,被控訴人の控訴人らに対する本件請求はいずれも確認の利益がな
く,却下を免れないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。
1当事者間に争いがない事実及び証拠(甲1,2の1ないし5,3ないし9の
各1・2)並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
()控訴人らは,訴外組合を施行者とする土地区画整理事業の施行地区内に1
,。,,所在する本件土地12を共有していた控訴人らは平成8年4月12日
本件土地1,2の仮換地(本件仮換地)を被控訴人に売却した。その際,控
訴人らと被控訴人は,訴外組合から清算金の支払を求められた場合,どちら
がこれを負担するかについての定めをしなかった。
()被控訴人は,その後,本件仮換地を分割して,本件仮換地の現所有者ら2
に売却した。
()訴外組合は,平成18年3月15日又は同23日,本件仮換地の現所有3
者らに対し,土地区画整理法102条1項に基づいて,本件仮清算金の支払
を求める旨の仮清算金徴収通知をした。
()上記通知を受けて,被控訴人と本件仮換地の現所有者らは,両者間にお4
いては被控訴人に本件仮清算金の支払義務があることを合意した。
2本件訴訟は,被控訴人が控訴人らに対し,控訴人らが訴外組合に対して本件
仮清算金の支払義務を有することの確認を求めるものであるところ,確認訴訟
における確認の利益は,当事者間に法律上の紛争があり,その紛争を解決する
ために訴訟物である権利又は法律関係の存否について確認判決をすることが有
効かつ適切である場合に認められるものであり,原則として,当事者間の権利
又は法律関係に限られるが,他人間の権利又は法律関係であっても,その存否
を確認することによって,当事者間の法的地位を確定する利益が存在する場合
には,確認の利益があると解するのが相当である。
そこで検討するに,当審における控訴人ら及び被控訴人の主張並びに上記認
定事実によれば,控訴人らと被控訴人の間には,本件仮清算金の最終的な負担
者について法律上の紛争があることが認められる。しかしながら,訴外組合に
対する本件仮清算金の支払義務は,訴外組合の仮清算金徴収通知(行政処分)
によって発生するものであるから,その当否を検討せずに上記支払義務者を論
じることは法律上意味を持たないものである上,仮に控訴人らが訴外組合に対
して本件仮清算金の支払義務を負うとしても,そのことから直ちに本件におい
て控訴人らが本件仮清算金の最終的な負担者となるものではない。けだし,本
件仮清算金の最終的な負担者は,別途,控訴人ら,被控訴人及び本件仮換地の
現所有者らとの間に生じた法律関係によって決せられるべきものであるからで
ある。
したがって,本件においては,控訴人らが訴外組合に対して本件仮清算金の
支払義務を有していることを確認しても,被控訴人の控訴人らに対する法的地
位を確定することにはならないから,本件確認訴訟は,控訴人らと被控訴人間
の上記紛争を解決するために有効かつ適切であるとは認められず,確認の利益
がないといわざるを得ない。
上記説示に反する被控訴人の主張は採用できない。
第4結論
以上のとおり,被控訴人の控訴人らに対する本件請求はいずれも確認の利益
,,がなく却下を免れないところこれと結論を異にする原判決は不当であるから
原判決を取り消して被控訴人の本件各請求を却下することとし,主文のとおり
判決する。
名古屋高等裁判所民事第1部
裁判長裁判官坂本慶一
裁判官林道春
裁判官山崎秀尚

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛