弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原略式命令を破棄する。
     被告人を罰金二万五〇〇〇円に処する。
     右罰金を完納することができないときは、金一〇〇〇円を一日に換算し
た期間、被告人を労役場に留置する。
         理    由
 記録によると、千葉簡易裁判所は、被告人に対する傷害被告事件(同庁昭和四七
年(い)第一九九九号)について、昭和四七年七月二七日付の略式命令により、被
告人の傷害の事実を認定し、刑法二〇四条、六〇条、一八条、罰金等臨時措置法二
条一項、三条一項、刑法六条、刑訴法三四八条を適用して、被告人を罰金四万円(
その不完納の場合は金一〇〇〇円を一日に換算、仮納付命令付。)に処し、右略式
命令は同年八月一一日確定したことが認められる。
 ところで、傷害罪(刑法二〇四条、罰金等臨時措置法三条一項一号)の法定刑の
うち罰金の額は、昭和四七年法律第六一号による罰金等臨時措置法の改正により、
従前の「二万五千円以下」が「十万円以下」に改められ、右法律は同年七月一日施
行されたものであるところ、被告人の本件傷害の所為は右改正前の行為であり、犯
罪後の法律により刑の変更があつた場合であるから、刑法六条、一〇条により軽い
行為時の同法二〇四条、罰金等臨時措置法三条一項一号を適用すべきものである。
そして、行為時の刑法二〇四条、罰金等臨時措置法三条一項一号によれば、傷害罪
の罰金の法定刑の最高額は二万五〇〇〇円であるから、これを超過して被告人を罰
金四万円に処した右略式命令は、法令に違反していることが明らかであり、しかも、
被告人にとつて不利益であるといわなければならない。
 よつて、刑訴法四五八条一号但書により、主文第一項のとおり原略式命令を破棄
し、被告事件についてさらに判決することとする。
 原略式命令によつて確定された傷害の事実に法令を適用すると、右事実は、行為
時においては刑法二〇四条、六〇条、昭和四七年法律第六一号による改正前の罰金
等臨時措置法三条一項一号に、裁判時においては刑法二〇四条、六〇条、改正後の
罰金等臨時措置法三条一項一号に該当するが、犯罪後の法律により刑の変更があつ
たときにあたるから、刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、
所定刑中罰金刑を選択し、その金額の範囲内で被告人を罰金二万五〇〇〇円に処し、
右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一〇〇〇円を一日に
換算した期間被告人を労役場に留置することとし、主文のとおり判決する。
 この判決は、裁判官全員一致の意見によるものである。
 検察官別所汪太郎 公判主席
  昭和四八年二月二七日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    坂   本   吉   勝
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    関   根   小   郷
            裁判官    天   野   武   一
            裁判官    江 里 口   清   雄

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