弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人A弁護人高橋正平上告趣意第一点について。
 原審の認定した事実によれば、被告人等は共謀の上、被告人Bにおいて被害者C
の顔面を殴打して反抗できないようにした上同人の腹巻の中から、同人所有の現金
一万三千円を奪つたというのである。そして、その原審の事実認定は原判決挙示の
証拠に照らしこれを肯認するに難くないのである。記録によれば、被告人A等は、
原審公判において被害者Cの酩酊して寝ている間に金品を窃取したに過ぎない旨弁
解していること、及び原審が証人Cの喚問及び犯行現場の検証についての弁護人の
申請を却下したことは、所論の通りである。弁護人は右の争点に関し原審は何等審
理をしなかつたと主張するのであるが、その然らざることもまた記録上明白である。
しかも、所論証人Cは既に第一審公判において訊問されており、また犯行の場所に
ついては昭和二三年五月一九日付司法警察官警部代理の実況見分書が記録に編綴さ
れているのである。原審が所論の証拠申請を却下したのも本件における証拠関係そ
の他諸般の事情を斟酌して、その取調を必要でないと裁定した結果と認められるの
であつて、これを原審審理の内容経過に徴し、必ずしも不合理に弁護人の立証を阻
止したものとはいい得ないのである。そして如何なる限度まで証拠調をなすべきか
は、事実審裁判所が各事件における訴訟状態証拠関係その他諸般の事情を考慮して
合理的に裁定するところに委ねられているのであるから、所論は畢竟事実審である
原審が裁量権の範囲内で適法になした証拠調の限度の裁定を論難し延いてその事実
認定を非難するに帰着し上告適法の理由とならない。
 同第二点について。
 原審の認定した事実は、論旨第一点に対する説明において説示した通りであり、
その判示被告人等の所為が強盗罪を構成するものたることは多言を要しないところ
であるから原審が被告人を強盗罪に問擬したのは当然である。原判決には所論のよ
うな違法はなく、所論は結局事実審である原審の裁量権に属する事実の認定を非難
するに外ならないのであつて上告適法の理由とならない。
 同第三点及び被告人B弁護人小野久吉の上告趣意について。
 所論は原審の裁量権に属する刑の量定を非難するものであり上告適法の理由とな
らない。
 よつて旧刑訴四四六条に従い主文の通り判決する。
 この判決は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 竹原精太郎関与
  昭和二五年一二月二一日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    澤   田   竹 次 郎
            裁判官    齋   藤   悠   輔

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