弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件上告を棄却する。
理由
1弁護人福島晃の上告趣意のうち,即決裁判手続に関して違憲をいう点につい

(1)所論は,即決裁判手続において事実誤認を理由とする控訴を制限する刑訴
法403条の2第1項は,裁判を受ける権利を侵害し,憲法32条に違反する旨主
張する。
しかしながら,審級制度については,憲法81条に規定するところを除いては,
憲法はこれを法律の定めるところにゆだねており,事件の類型によって一般の事件
と異なる上訴制限を定めても,それが合理的な理由に基づくものであれば憲法32
条に違反するものではないとするのが当裁判所の判例とするところである(最高裁
昭和22年(れ)第43号同23年3月10日大法廷判決・刑集2巻3号175
頁,最高裁昭和27年(テ)第6号同29年10月13日大法廷判決・民集8巻1
0号1846頁。なお,最高裁昭和55年(あ)第2153号同59年2月24日
第二小法廷判決・刑集38巻4号1287頁,最高裁昭和62年(し)第45号平
成2年10月17日第一小法廷決定・刑集44巻7号543頁参照)。
そこで即決裁判手続について見るに,同手続は,争いがなく明白かつ軽微である
と認められた事件について,簡略な手続によって証拠調べを行い,原則として即日
判決を言い渡すものとするなど,簡易かつ迅速に公判の審理及び裁判を行うことに
より,手続の合理化,効率化を図るものである。そして,同手続による判決に対
し,犯罪事実の誤認を理由とする上訴ができるものとすると,そのような上訴に備
えて,必要以上に証拠調べが行われることになりかねず,同手続の趣旨が損なわれ
るおそれがある。他方,即決裁判手続により審判するためには,被告人の訴因につ
いての有罪の陳述(刑訴法350条の8)と,同手続によることについての被告人
及び弁護人の同意とが必要であり(同法350条の2第2項,4項,350条の
6,350条の8第1号,2号),この陳述及び同意は,判決の言渡しまではいつ
でも撤回することができる(同法350条の11第1項1号,2号)。したがっ
て,即決裁判手続によることは,被告人の自由意思による選択に基づくものである
ということができる。また,被告人は,手続の過程を通して,即決裁判手続に同意
するか否かにつき弁護人の助言を得る機会が保障されている(同法350条の3,
350条の4,350条の9)。加えて,即決裁判手続による判決では,懲役又は
禁錮の実刑を科すことができないものとされている(同法350条の14)。
刑訴法403条の2第1項は,上記のような即決裁判手続の制度を実効あらしめ
るため,被告人に対する手続保障と科刑の制限を前提に,同手続による判決におい
て示された罪となるべき事実の誤認を理由とする控訴の申立てを制限しているもの
と解されるから,同規定については,相応の合理的な理由があるというべきであ
る。
そうすると,刑訴法403条の2第1項が,憲法32条に違反するものでないこ
とは,当裁判所の前記各大法廷判例の趣旨に徴して明らかであって,所論は理由が
ない(なお,所論にかんがみ記録を調べても,本件の即決裁判手続について被告人
の裁判を受ける権利にかかわるような法令違反は認められない。)。
(2)所論は,即決裁判手続は,刑の執行猶予の言渡しが必要的であるために安
易な虚偽の自白を誘発しやすいから,憲法38条2項に違反する旨主張する。
しかしながら,前記のような被告人に対する手続保障の内容に照らすと,即決裁
判手続の制度自体が所論のような自白を誘発するものとはいえないから,憲法38
条2項違反をいう所論は前提を欠く。
2同上告趣意のその余の主張について
同上告趣意のその余の主張は,単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴
法405条の上告理由に当たらない。
よって,同法408条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決す
る。なお,裁判官田原睦夫の補足意見がある。
裁判官田原睦夫の補足意見は,次のとおりである。
即決裁判手続は,法廷意見にて判示するように,被告人の自由意思による選択に
よってなされるものであり,刑事訴訟法は,被告人の意思の確認につき書面化を求
め(350条の2第2項,3項),また,必要的弁護事件とする(350条の9)
と共に,弁護人の同意を必要とする(350条の2第4項,350条の6)等,そ
の意思確認につき慎重な手続を定めている。
本件では,記録上,弁護人は,被疑者段階で選任され,また,公訴提起の前日付
で被告人及び弁護人の即決裁判手続によって公訴を提起することについての同意書
が提出されているのであって,訴訟手続上,全く瑕疵は存しない。
それにも拘わらず,本件で,控訴,上告までなされているということは,被疑者
段階並びに一審公判手続の過程において,被告人が即決裁判手続の制度について十
分な理解をしていなかったことを示すものであって,一審弁護人と被告人間の意思
疎通が十分でなかったことを窺わせるものであり,本件においても上告趣意書にお
いて,種々主張がなされている。
刑事訴訟法は,弁護人が被疑者(被告人)に対して,弁護活動の一環として,即
決裁判手続の意義及びその内容について,適切な助言がなされていることを前提と
して制度を組み立てているのであり,弁護人の弁護活動の内容如何についてまで,
公判手続で立ち入ることは,法が想定していないところである。
言うまでもないことであるが,弁護人が被疑者(被告人)との意思疎通に十全を
期し,本件の如き上訴が提起されることがないことを願うものである。
(裁判長裁判官藤田宙靖裁判官堀籠幸男裁判官那須弘平裁判官
田原睦夫裁判官近藤崇晴)

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