弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主          文
1 被告大阪市長が原告らに対し平成15年12月5日付けでした別紙文書目録
記載の文書のうち別紙非公開部分目録記載の部分を非公開とした処分を取り消す。
2 原告らの被告大阪市に対する請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,原告らに生じた費用の2分の1と被告大阪市長に生じた費用を
被告大阪市長の負担とし,原告らに生じたその余の費用と被告大阪市に生じた費用
を原告らの負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 主文1項と同旨
2 被告大阪市は,原告ら各自に対し,33万円及びこれに対する平成16年3
月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は,被告大阪市長(以下「被告市長」という。)が原告らの公文書公開
請求に対してした非公開決定のうち別紙文書目録記載の文書(以下「本件各文書」
という。)中別紙非公開部分目録記載の部分を非公開とする部分を取り消した判決
が確定した後,被告市長が,原告らに対し,別紙非公開部分目録記載の部分を再度
非公開とする処分をしたため,原告らが,同処分は行政事件訴訟法(平成16年法
律第84号による改正前のもの。以下「行訴法」という。)33条の拘束力に反す
る違法な処分であるとして,その取消しを求める(抗告訴訟)とともに,原告ら
は,各自,上記違法な処分によって知る権利が侵害されたなどとして,被告大阪市
(以下「被告市」という。)に対し,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料30万
円及び弁護士費用3万円の合計33万円並びにこれに対する本件訴状送達の日の翌
日である平成16年3月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅
延損害金の支払を求める事案である。
1 法令の定め
 大阪市公文書公開条例(昭和63年大阪市条例第11号。以下「条例」とい
う。)2条1号は,大阪市長等を実施機関と定め,条例5条1号は,大阪市の区域
内に住所を有する者は,実施機関に対し,公文書の公開を請求することができると
定めている。そして,条例6条は,「実施機関は,次の各号のいずれかに該当する
情報が記録されている公文書については,公文書の公開をしないことができる。」
と定め,その2号は,「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情
報を除く。)で,特定の個人が識別され,又は識別され得るもの。ただし,次に掲
げる情報を除く。ア 法令等の規定により,何人も閲覧することができるとされて
いる情報 イ 本市の機関が作成し,又は取得した情報で,公表を目的とするもの
 ウ 法令等の規定に基づく許可,免許,届出等の際に本市の機関が作成し,又は
取得した情報で,公開することが公益上必要であると認められるもの」と規定して
いる。
2 前提事実
(1) 原告らは,大阪市の住民である。
(2) 原告らは,平成4年6月15日,条例所定の実施機関である被告市長に対
し,条例5条に基づき,昭和63年7月から平成4年3月までの間の大阪市財政局
財務部財務課(以下「財務課」という。)に係る食糧費の支出関係文書の公開を請
求した(以下「本件公開請求」という。)。
(3) 被告市長は,平成4年6月29日付けで,原告らに対し,本件公開請求に
係る公文書の件名を昭和63年7月から平成4年3月までの間の財務課の食糧費支
出に係る支出決議書,支出命令書及び予算差引簿と特定した上,条例6条2号,3
号,7号及び8号に該当することを理由に,上記各文書を全部非公開とする旨の決
定(以下「本件旧非公開決定」という。)をした。
(4) 原告らは,平成4年7月16日,大阪地方裁判所に対し,本件旧非公開決
定の取消しを求める訴え(同裁判所平成4年(行ウ)第47号。以下,この事件の
第1審,控訴審及び上告審を併せて「第1次訴訟」という。)を提起した。
(5) 被告市長は,第1次訴訟第1審係属中の平成8年4月10日付けで,本件
旧非公開決定の一部を取り消し,原告らに対し,本件公開請求に係る前記(3)の各文
書のうち下記部分を墨塗りし,また,食糧費外支出部分の記載には白色マスキング
をし,これらの部分を除くその余の部分(被告市側の出席者の氏名を含む。)を原
告らに公開した。

ア 支出決議書の記載のうち
(ア) 相手方の氏名,団体名(審議会の名称等を含む。),役職名
(イ) 支出先個人名
(ウ) 債権者の印影
イ 支出命令書の記載のうち
(ア) 用途欄中の相手方団体名
(イ) 金融機関コード,振込先金融機関名,預金種目,口座番号,請求者
の印影部分
(ウ) 請求者が個人の場合の個人名
ウ 歳出予算差引簿の記載のうち
(ア) 摘要項目の件名欄中の相手方名
(イ) 同じく人名欄中の支払先個人名
(6) 第1次訴訟の第1審は,平成9年3月25日,本件旧非公開決定のうち下
記部分を非公開とする部分を取り消す旨の判決をした。

ア 支出決議書の記載のうち
(ア) 相手方の氏名,団体名(審議会の名称等を含む。),役職名
(イ) 支出先個人名
イ 支出命令書の記載のうち
(ア) 用途欄中の相手方団体名
(イ) 請求者が個人の場合の個人名
ウ 歳出予算差引簿の記載のうち
(ア) 摘要項目の件名欄中の相手方名
(イ) 同じく人名欄中の支払先個人名
(7) 第1次訴訟第1審判決に対し,被告市長のみが,本件旧非公開決定のうち
支出決議書の記載中相手方の氏名及び役職名並びに歳出予算差引簿の記載中摘要項
目の件名欄中の相手方名を非公開とする部分(以下「非公開部分」という。)を取
り消すとした部分についてのみ大阪高等裁判所に控訴した(同裁判所平成9年(行
コ)第17号)。その結果,本件公開請求のうち第1次訴訟控訴審における控訴人
の控訴に関する請求部分に係る文書(以下「第1次訴訟関係文書」という。)は,
支出決議書で相手方の氏名又は役職名の記載のあるもの及び歳出予算差引簿で摘要
項目の件名欄中の相手方名の記載のあるものとなった。
(8) 被告市長は,第1次訴訟控訴審係属中の平成9年4月18日付けで,本件
旧非公開決定のうち,一部を更に取り消し,原告らに対し,本件公開請求に係る前
記(3)の各文書のうちの前記(5)記の部分のうち,第1次訴訟関係文書に係る上記(7)
の非公開部分及び第1次訴訟第1審判決で取り消されることのなかった前記(5)記の
ア(ウ)及びイ(イ)の部分を除いて,前記(5)記ア(ア)のうちの相手方の団体名(審議
会の名称等を含む。)及び(イ),イ(ア),(ウ)並びにウ(イ)の部分を公開した。
(9) 第1次訴訟の控訴審は,平成10年6月17日,被告市長の控訴を棄却す
る旨の判決をした。
(10) 被告市長は,第1次訴訟控訴審判決に対して上告した(最高裁判所平成
10年(行ヒ)第54号)。
(11) 第1次訴訟上告審は,平成15年11月11日,一部破棄差戻し,一部
破棄自判,一部上告棄却の判決をした。同判決により,前記(7)の非公開部分のうち
後記オの整理番号3の文書等に係る部分に係る本件旧非公開決定は維持され,前
記(7)の非公開部分のうち後記キの整理番号1の文書等に係る部分に係る本件旧非公
開決定は取消しが確定した。第1次訴訟上告審判決の判断の概要は,次のとおりで
ある。
ア 条例6条2号にいう「個人に関する情報」は,個人の思想,信条,健康
状態,所得,学歴,家族構成,住所等の私事に関する情報に限定されるものではな
く,個人にかかわりのある情報であれば,原則として同号にいう「個人に関する情
報」に当たる。
イ 法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。以下「法人等」とい
う。)の代表者又はこれに準ずる地位にある者以外の従業員の職務の遂行に関する
情報は,その者の権限に基づく当該法人等のために行う契約の締結等に関する情報
を除き,条例6条2号にいう「個人に関する情報」に当たる。
ウ 法人等の代表者若しくはこれに準ずる地位にある者が当該法人等の職務
として行う行為に関する情報又はその他の者が権限に基づいて当該法人等のために
行う契約の締結等に関する情報その他の法人等の行為そのものと評価される行為に
関する情報は,条例6条2号にいう「個人に関する情報」に当たらない。
エ 国及び地方公共団体の公務員の職務の遂行に関する情報は,公務員個人
の私事に関する情報が含まれる場合を除き,条例6条2号にいう「個人に関する情
報」に当たらない。
オ 第1次訴訟関係文書のうち第1次訴訟上告審判決添付別紙一覧表(本判
決添付別紙一覧表と同一のもの。以下「一覧表」という。)整理番号3の文書,同
7の文書,同9の文書,同15の文書,同24の文書の(4)から(6)まで及び(8)の部
分,同26の文書,同27の文書,同30の文書,同31の文書,同37の文書並
びに同39の文書の(1),(2)及び(5)から(14)までの部分(以下「整理番号3の文書
等」という。いずれも支出決議書)における同表の「相手方の氏名」欄及び「相手
方の役職名」欄に対応する記載を含む情報については,いずれも国及び地方公共団
体の公務員以外の者が会議等に出席したことに関する情報であることが原審(第1
次訴訟控訴審判決)によって確定されているところ,会議の名称及びこれから推知
される会議の目的,相手方
出席者の所属団体等に照らすと,事務打合せや,非公式の協議,懇談に関する情報
であり,法人等の代表者又はこれに準ずる地位にある者が当該法人等の職務として
そのような会合に出席したとはいい難く,その他の者が権限に基づいて当該法人等
のために契約の締結等をしたということもできないから,条例6条2号にいう「個
人に関する情報」に該当する。
カ 第1次訴訟関係文書のうち一覧表整理番号38の文書(支出決議書)及
び同24の文書(支出決議書)の(1)の部分に記録された情報は,被告市の公務員の
職務の遂行に関する情報として条例6条2号の非公開情報に当たらないと解する余
地がある。また,同40から同43までの文書(いずれも歳出予算差引簿)に記録
された情報は,条例6条2号の非公開情報に当たると解する余地がある。
キ 一覧表整理番号1の文書,同2の文書,同4から同6までの文書,同8
の文書,同10から同14までの文書,同16から同23までの文書,同24の文
書の(2),(3),(7)及び(9)から(12)までの部分,同25の文書,同28の文書,同
29の文書,同32から同36までの文書並びに同39の文書の(3)及び(4)の部分
(以下「整理番号1の文書等」という。)に記録された情報は,国又は地方公共団
体の公務員がその職務として会議等に出席したことに関する情報であり,公務員個
人の私事に関する情報を含むものでないことが原審(第1次訴訟控訴審判決)によ
って確定されているのであるから,上記文書における一覧表の「相手方の氏名」欄
及び「相手方の役職名」欄に対応する記載を含む情報は,国及び地方公共団体の公
務員の職務の遂行に関する情
報であり,条例6条2号の非公開情報に当たらない。
(12) 本件各文書は,一覧表整理番号18の文書(平成2年度支出決議書),
同33の文書(平成3年度支出決議書)及び同36の文書(平成3年度支出決議
書)であり,上記(11)キのとおり,いずれも整理番号1の文書等に含まれるものと
して,第1次訴訟上告審判決によりその非公開部分(相手方の氏名及び役職名)に
係る本件旧非公開決定の取消しが確定したものである。このうち,同18の文書
は,平成2年12月14日実施の大阪府との財政問題に関する協議懇談会に係る経
費の支出決議書であり,うち決議番号15-2に係るものは当該協議懇談会の実施
後に決議番号15による事前の経費の支出決議を変更したものである。同33の文
書は,平成3年9月27日実施の自治省職員の市施設見学に伴う接遇に係る経費の
支出決議書であり,うち決議番号11-2に係るものは当該接遇の実施後に決議番
号11による事前の経費の支出決議を変更したものである。同36の文書は,平成
3年12月24日実施の大阪府との財政問題に関する協議懇談会に係る経費の支出
決議書であり,うち決議番号15-2に係るものは当該協議懇談会の実施後に決議
番号15による事前の経費の支出決議を変更したものである。
(13) 被告市長は,本件各文書に係る本件公開請求について,平成15年12
月5日付けで,原告らに対し,本件各文書のうち別紙非公開部分目録記載の部分
(以下「本件非公開部分」という。)を非公開とする旨の部分公開決定(以下「本
件非公開決定」という。)をした。一覧表整理番号18の文書に係る本件非公開部
分は,平成2年12月14日実施の大阪府との財政問題に関する協議懇談会の出席
(予定)者中大阪府及び大阪市以外の出席(予定)者の氏名及び役職名であり,時
事通信社に所属する職員の氏名及び役職名が記載されている。同33の文書に係る
本件非公開部分は,平成3年9月27日実施の自治省職員の市施設見学に伴う接遇
の出席(予定)者のうち財団法人地方自治情報センター(以下「地方自治情報セン
ター」という。)に所属する職員の氏名及び役職名である。同36の文書に係る本
件非公開部分は,平成3年12月24日実施の大阪府との財政問題に関する協議懇
談会の出席(予定)者のうち時事通信社に所属する職員の氏名及び役職名である。
また,本件非公開決定における非公開理由は,公務員以外の相手方の氏名及び役職
名については,個人にかかわりのある情報であり,法人その他の団体の従業員が職
務として行った行為に関する情報ではあるが,法人等の行為そのものと評価される
行為に関する情報には該当しないから,条例6条2号にいう「個人に関する情報」
であり,同号ただし書ア,イ,ウのいずれにも該当しないというものである。
3 争点
(1) 本件非公開決定の違法性
ア 原告らの主張
  被告市長は,第1次訴訟において,本件各文書に係る相手方の団体名は
省庁又は自治体であり,相手方の役職名は公務員であると主張し,判決において被
告市長が主張するとおりの事実認定がされたにもかかわらず,被告市長は,第1次
訴訟の判決が確定した後になって,本件非公開部分には私人の氏名及び役職名の記
載があるという前訴判決の事実認定と矛盾,抵触する事実主張を行い,本件旧非公
開決定と同一の条例6条2号を理由に,再度の非公開決定(本件非公開決定)をし
た。この決定は,行訴法33条の拘束力に反する違法な処分である。
 すなわち,最高裁昭和63年(行ツ)第10号平成4年4月28日第三
小法廷判決(民集46巻4号245頁。以下「平成4年最判」という。)は,行訴
法33条の拘束力は,判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断に
わたるものである旨判示しており,同判決の射程は特許無効審決取消訴訟に限らず
一般的に及ぶ。そうすると,行政庁は,再度の行政処分を行うに当たっては,取消
判決の拘束力の及ぶ判決理由中の認定判断に拘束され,行政庁がこの認定判断に矛
盾,抵触する認定判断をすることは許されず,行政庁が矛盾,抵触する認定判断を
行った場合,その再度の処分は同条に違反する違法な処分であるというべきであ
る。本件についていうと,第1次訴訟において,確定した判決主文が導き出される
のに必要な事実認定として,本件非公開部分の相手方の団体名が省庁又は自治体で
あり,相手方の役職名が公務員であるという事実認定がされたのであるから,この
事実認定について同条の拘束力が生じ,被告市長はこの事実認定に拘束される。し
かるに,被告市長は,本件非公開部分には私人の氏名及び役職名の記載があるとい
う事実主張に基づいて本件非公開決定を行ったものであり,この事実主張は第1次
訴訟における上記事実認定に一見して明白に矛盾,抵触するものであるから,本件
非公開決定は,第1次訴訟の取消判決の拘束力に違反する違法な処分である。
イ 被告市長の主張
(ア) 本件非公開部分は,一覧表整理番号18の文書については時事通信
社の職員の氏名及び役職名であり,同33の文書については地方自治情報センター
の職員の氏名及び役職名であり,同36の文書については時事通信社の職員の氏名
及び役職名であって,これらの者がいずれも国又は地方公共団体の公務員に当たら
ないことは明らかであるから,本件非公開部分に関する情報は,国及び地方公共団
体の公務員以外の者を特定することができる情報であって,条例6条2号の「個人
に関する情報」に該当することは明らかである。また,本件各文書は,いずれも国
及び地方公共団体の公務員以外の者が懇談会に出席した際の支出についての決裁に
関するものであり,法人等の代表者又はこれに準ずる地位にある者が当該法人等の
職務としてそのような
会合に出席したとはいえない。そうであるとすれば,本件非公開決定は,行訴法3
3条2項に基づき,第1次訴訟上告審判決の趣旨に従って非公開とすべき「個人に
関する情報」を非公開としたものであるから,適法である。
(イ) 被告市長は,本件旧非公開決定をするに当たっては,条例6条2号
に規定する「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除
く。)で,特定の個人が識別され,又は識別され得るもの」について,当該個人が
公務員であるか否かを区別することなく,およそ個人が識別され又は識別され得る
ものをすべて含むとの解釈に従ったものである。これに対し,本件非公開決定につ
いては,同号の解釈について第1次訴訟上告審判決で示された解釈に従い,国及び
地方公共団体の公務員に係る情報並びに法人等を代表する者が職務として行う行為
等当該法人等の行為そのものと評価される行為に関する情報は含まれないとの前提
に立って同号該当性を判断した。したがって,本件旧非公開決定及び本件非公開決
定は,非公開理由としていずれも条例6条2号を挙げているが,第1次訴訟上告審
判決を受けた上記の解釈の変更によってその文言の意味するところが変更されてお
り,本件旧非公開決定と本件非公開決定は,実質的には異なる理由によって非公開
を判断しているのであるから,同一の事情の下で,同一の理由によって,同一人に
対して,同一の内容の処分を行ったものとはいえず,行訴法33条の拘束力に反し
ない。
(ウ) 平成4年最判の射程は本件非公開決定には及ばない。すなわち,平
成4年最判は,特許無効審決取消訴訟における判決であるところ,特許法に基づく
特許無効審決は,準司法手続によって審判官の合議体が行うものであって,行政処
分としては非常に特殊なものである。そして,平成4年最判は,審判において,一
貫して特許法29条2項に規定する特許無効要件である特定の引用例から当該発明
を容易に発明することができたか否かが争点となり,この争点について証拠調べも
含めた準司法的手続によって事実認定がされ,これに基づいて行われた審決につい
て取消訴訟が提起され,当該訴訟において当該審決が取り消された事案について,
当該審決の取消判決の拘束力が及ぶと判示したものであって,当該事案において,
当事者は第1次審判手
続及び審決取消訴訟を通じて攻撃防御の機会を制度上保障され,これを利用して当
事者が攻撃防御を尽くしていた。平成4年最判の判断においては,仮に当該事案に
おいて再度の審決に当初の判決の拘束力が及ばないとすると,手続が特許庁と裁判
所の間を際限なく往復することにもなりかねず,特許紛争の長期化を招くこととな
り,訴訟経済上も好ましくないという考慮も働いていたということができる。した
がって,平成4年最判の趣旨は直ちに一般の行政処分に及ぶとはいえず,その射程
は限定的なものであり,本件非公開決定に当てはまるものではない。
(エ) 仮に平成4年最判の射程が一般の行政処分にも及ぶとしても,本件
においては,以下のような特殊な事情が存在するから,本件には,例外的にその趣
旨は及ばない。すなわち,第1次訴訟において,本件非公開部分に係る情報が公務
員であるか否かの事実認定は,当事者間において争点となっていなかった。第1次
訴訟において,条例6条2号の解釈について,被告市長は,公務員であるか否かを
区別することなく,およそ個人が識別され又は識別され得る情報はすべて同号にい
う個人識別情報に含まれるとの前提で主張を行い,原告らは,公務員であるか私人
であるかを問わず,職務としての行為に係る情報は同号にいう個人識別情報に該当
しないと主張していたのであって,被告市長,原告らのいずれの主張によっても,
非公開とされた情報が公務員であるか否かによって結論が分かれるものではなかっ
た。また,第1次訴訟の第1審及び控訴審の各判決の理由においても,本件非公開
部分に係る情報が公務員であるか否かによって本件非公開部分に係る本件非公開決
定が適法か否かの結論が分かれるものではなかった。このように,本件非公開部分
に係る情報が公務員であるか否かは,判決主文が導き出されるのに必要な事実認定
とはなっていなかった。したがって,当該事実認定については当事者が攻撃防御を
尽くしているとはいい難く,平成4年最判の事案とは全く状況が異なるのであっ
て,同判決の射程は及ばない。
 本件非公開部分は時事通信社の職員及び地方自治情報センターの職員
の氏名及び役職名であり,第1次訴訟上告審判決においては,各種団体の職員及び
報道機関の職員の氏名及び役職名は非公開とされているのであるから,本件非公開
部分を公開すると,同判決と矛盾することとなるのは明らかである。平成4年最判
の射程が本件にも及ぶとすると,前訴判決の拘束力によって,かえって第1次訴訟
上告審判決と矛盾した処分を行うこととなり,結果として行訴法33条1項が拘束
力を認めた趣旨を没却することとなる。よって,平成4年最判は,本件のような特
殊な事情がある場合まで,前訴判決の拘束力を及ぼす趣旨とは考えられない。
(2) 原告ら各自の被告市に対する損害賠償請求権の成否
ア 原告らの主張
(ア) 前記(1)ア及び後記(イ)のとおり,被告市長は行訴法33条に違反し
て違法に本件非公開決定を行い,原告らの知る権利を侵害したものであるところ,
行訴法33条の拘束力については,平成4年最判により判決主文が導き出されるの
に必要な事実認定及び法律判断にわたるものであるとの判断が確立され,それ以
後,同判決に反する判断を明示的に採用する裁判例は存在しないのであるから,被
告市長は,本件公開請求について再度の決定をするに当たっては,平成4年最判の
見解に従って決定をする義務を負っていた。すなわち,被告市長は,本件非公開部
分に係る情報の相手方団体は省庁又は自治体であり,相手方の役職名は公務員であ
るという,判決主文が導き出されるのに必要な認定判断に拘束され,これに従って
決定をする義務を負っていたにもかかわらず,これに矛盾する認定判断をして本件
非公開決定をした。被告市長が上記義務を知らないはずはないから,被告市長には
故意があったというべきである。仮に被告市長が上記義務を知らなかったとして
も,同条の拘束力について調査する義務を怠り,漫然と拘束力に反した本件非公開
決定を行ったのであるから,被告市長には少なくとも過失が認められる。
(イ) 本件非公開決定によって原告らの知る権利が侵害されるとともに,
本件訴訟の提起,訴訟追行のために弁護士費用の出捐を余儀なくされた。その精神
的苦痛を金銭的に評価すれば,各自30万円を下ることはない。この苦痛は,原告
らが,第1次訴訟において訴訟提起から10年以上の訴訟追行を経て判決を得たに
もかかわらず,本件非公開決定がされ,本件訴訟を余儀なくされたという経緯から
すれば,仮に大阪市から本件公文書の公開を受けたとしても,回復されるというこ
とはない。また,原告ら各自の本件訴訟に要した弁護士費用は各自3万円を下らな
い。
イ 被告市の主張
(ア) 上記(1)イ(ア)のとおり,被告市長が行った本件非公開決定は,行訴
法33条2項に反するものではないから,被告市は,原告らに対して損害賠償責任
を負わない。
(イ) 被告市長は,本件非公開決定を行うに当たり,平成4年最判を無視
したのではなく,前記(1)イ(ウ),(エ)のとおり,平成4年最判との事案の相違から
同判決の射程は前訴判決には及ばず,また,前訴判決が各種団体の職員及び報道機
関の職員の氏名及び役職名について一方で非公開とし,他方で公開するという矛盾
した判断を示したものではないとの判断に基づいて,本件非公開決定をしたのであ
って,その判断には十分な合理性がある。よって,仮に平成4年最判の射程が本件
にも及び,本件非公開決定が違法であるとして取り消されたとしても,被告市長に
は国家賠償法1条1項の故意若しくは過失又は同法上の違法性は認められない。
第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(本件非公開決定の違法性)について
(1) 行訴法33条1項は,処分又は裁決を取り消す判決は,その事件につい
て,当事者たる行政庁その他の関係行政庁を拘束する旨規定し,同条2項は,申請
を却下し若しくは棄却した処分又は審査請求を却下し若しくは棄却した裁決が判決
により取り消されたときは,その処分又は裁決をした行政庁は,判決の趣旨に従
い,改めて申請に対する処分又は審査請求に対する裁決をしなければならない旨規
定し,同条3項は,申請に基づいてした処分又は審査請求を認容した裁決が判決に
より手続に違法があることを理由として取り消された場合に同条2項の規定を準用
する旨規定している。これらの規定は,行政庁に対し,処分又は裁決を違法とした
判決の判断内容を尊重し,その事件について判決の趣旨に従って行動しなければな
らないという特別の義務を課すことにより,取消訴訟による権利救済の実効性を期
す趣旨に出たものであると解される。このような趣旨からすれば,同条1項の規定
する処分又は裁決を取り消す判決(以下「取消判決」という。)の拘束力は,取消
判決の主文についてのみ生じるものではなく,同項により取消判決の理由において
示された具体的違法事由についての判断に与えられた通用力として,当該主文が導
き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたり,その限度で生じるものと解
されるのであり(平成4年最判参照),その性質上,当該取消判決に係る訴訟の審
理経過ないし当事者の具体的主張,立証状況等によって拘束力の生じる範囲が左右
されるものではないと解するのが相当である。また,当該事件について行政庁に対
し判決の趣旨に従って行動しなければならない義務を課すことにより取消判決によ
る権利救済の実効性を期すという拘束力の前記趣旨からすれば,判決主文が導き出
されるのに必要な法律判断として判示された法理についても,当該判決主文が導き
出されるのに必要なものとして認定された事実に適用される限りにおいて,当該事
実認定と相まって拘束力が生じるのであって,当該事実認定と離れて一般的に拘束
力が生じるものではないと解するのが相当である。
(2) 前提事実によれば,第1次訴訟の控訴審判決において,本件各文書のうち
一覧表整理番号18の文書に記載された相手方の団体名は自治体,相手方の氏名及
び役職名は公務員であり,同33の文書に記載された相手方の団体名は省庁,相手
方の氏名及び役職名は公務員であり,同36の文書に記載された相手方の団体名は
自治体,相手方の氏名及び役職名は公務員であるという趣旨の事実認定及び本件公
開請求に係る公文書において非公開とされた相手方氏名が公務員の氏名である場合
の当該公務員は,その所属する各省庁や自治体等の職務として財務課との会議,懇
談会等に出席したと推認され,当該公務員が個人の立場で個人的に出席したとの主
張,立証はないとの事実認定がされた上,本件非公開決定のうち本件各文書に係る
本件非公開部分を非公開とした部分は違法として取り消すべきである旨の判断がさ
れ,第1次訴訟の上告審判決において,前提事実(11)キのとおり,本件各文書を含
む整理番号1の文書等に記録された情報は,国又は地方公共団体の公務員がその職
務として会議等に出席したことに関する情報であり,公務員個人の私事に関する情
報を含むものでないことが原審(第1次訴訟控訴審判決)によって確定されている
のであるから,上記文書における一覧表の「相手方の氏名」欄及び「相手方の役職
名」欄に対応する記載を含む情報は,国及び地方公共団体の公務員の職務の遂行に
関する情報であり,条例6条2号の非公開情報に当たらないとして,上記文書にお
ける同表の「相手方の氏名」欄及び「相手方の役職名」欄に対応する記載に関する
部分については被告市長の上告を棄却すべきである旨の判断がされたというのであ
る。
 そうであるとすれば,本件旧非公開決定のうち本件非公開部分に係る部分
を取り消した第1次訴訟の確定判決において,本件各文書に記録された情報が,国
又は地方公共団体の公務員がその職務として会議等に出席したことに関する情報で
あり,公務員個人の私事に関する情報を含むものでないとの事実認定及び本件各文
書における本件非公開部分の記載を含む情報が,国及び地方公共団体の公務員の職
務の遂行に関する情報であり,条例6条2号の非公開情報に当たらないとの法律判
断は,いずれも判決主文が導き出されるのに不可欠な事実認定及び法律判断という
ことができるから,上記確定判決の拘束力は,上記事実認定及び法律判断にわたり
生じるものというべきである。
 しかるところ,前提事実によれば,被告市長は,本件非公開部分に係る本
件旧非公開決定が上記確定判決により取り消された後,公務員以外の相手方の氏名
及び役職名については,個人にかかわりのある情報であり,法人その他の団体の従
業員が職務として行った行為に関する情報ではあるが,法人等の行為そのものと評
価される行為に関する情報には該当しないから,条例6条2号にいう「個人に関す
る情報」であり,同号ただし書のいずれにも該当しないという理由により,本件非
公開部分を非公開とする旨の本件非公開決定をしたというのであるから,たとい本
件非公開部分の記載内容について前提事実(13)のとおり認定することができるもの
であったとしても,本件非公開決定は,第1次訴訟の取消判決の拘束力に反するも
のであって,行訴法33条2項に違反し,違法といわざるを得ない。
 この点,被告市長は,第1次訴訟上告審判決で示された条例6条2号の解
釈に従い,国及び地方公共団体の公務員の職務の遂行に関する情報並びに法人等を
代表する者が職務として行う行為等当該法人等の行為そのものと評価される行為に
関する情報は「個人に関する情報」に含まれないが,法人等の代表者に準ずる地位
にある者以外の従業員の職務の遂行に関する情報はその者の権限に基づく当該法人
等のための契約の締結等に関する情報を除き「個人に関する情報」に該当するとの
前提に立って本件各文書につき同号該当性を判断し,本件非公開決定をしたのであ
るから,本件非公開決定は,第1次訴訟上告審判決の趣旨に添ったものであって,
取消判決の拘束力に反しないといった趣旨の主張をする。しかしながら,第1次訴
訟上告審判決において前提事実(11)アないしエの法理が判決主文が導き出されるの
に必要な法律判断として判示されたとしても,前記のとおり,当該判決主文が導き
出されるのに必要な事実認定と離れて当該判示部分について一般的に拘束力が生じ
るものではないから,本件非公開決定が当該判決主文が導き出されるのに必要な事
実認定と異なる事実認識に基づき上記法理を適用してされたものである以上,本件
非公開決定は第1次訴訟の取消判決の拘束力に反するものといわざるを得ない。
(3) 以上のとおりであるから,被告市長に対し本件非公開決定の取消しを求め
る原告らの請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がある。
2 争点(2)(原告ら各自の被告市に対する損害賠償請求権の成否)について
(1) 前提事実(13)のとおり,本件各文書のうち一覧表整理番号18の文書に係
る本件非公開部分は,平成2年12月14日実施の大阪府との財政問題に関する協
議懇談会の出席(予定)者中大阪府及び大阪市以外の出席(予定)者の氏名及び役
職名であって,時事通信社に所属する職員の氏名及び役職名が記載されており,同
33の文書に係る本件非公開部分は,平成3年9月27日実施の自治省職員の市施
設見学に伴う接遇の出席(予定)者のうち地方自治情報センターに所属する職員の
氏名及び役職名であり,同36の文書に係る本件非公開部分は,平成3年12月2
4日実施の大阪府との財政問題に関する協議懇談会の出席(予定)者のうち時事通
信社に所属する職員の氏名及び役職名であるというのであり,この事実は本件各文
書の該当部分の記載自体から容易に認められるものである。この事実によれば,本
件各文書の本件非公開部分を含む情報は,いずれも国及び地方公共団体の公務員以
外の者が協議懇談会又は接遇に出席したことに関する情報であって,その者の社会
的活動にかかわる情報であり,その氏名及び役職名により特定の個人が識別され,
又は識別され得るものということができる。そして,この情報は,当該協議懇談会
又は接遇の名称及びこれから推知される会議の目的,相手方出席者の所属団体等に
照らすと,法人等の代表者又はこれに準ずる地位にある者が当該法人等の職務とし
て当該協議懇談会又は接遇に出席したと推認するのは困難であり,その他の者が権
限に基づいて当該法人等のために契約の締結等をしたと認めることもできないか
ら,第1次訴訟上告審判決の判示した前提事
実(11)アないしエの法理を適用すると,本件非公開部分に係る情報は,本件非公開
決定の理由のとおり,条例6条2号本文にいう「個人に関する情報(事業を営む個
人の当該事業に関する情報を除く。)で,特定の個人が識別され,又は識別され得
るもの」に該当し,同号ただし書に該当する事実を認めるに足りる証拠はないか
ら,同号により非公開とすることができるものというべきである。
 ところで,行訴法33条1項の規定する取消判決の拘束力は判決主文が導
き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたるものである旨判示した平成4
年最判は,特許出願に係る発明(以下「本件発明」という。)が特許出願前に本件
発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)において特定の
引用例から容易に発明することができたとしてされた特許無効審決(以下「前審
決」という。)について,本件発明に係る特許の権利者がその取消しを求めて訴訟
(前訴)を提起したところ,本件発明は特許出願前に当業者が当該引用例から容易
に発明することができたとは認められないとして前審決を取り消す旨の判決(以下
「前判決」という。)がされ,前判決が確定した後,本件発明は特許出願前に当業
者が当該引用例から容易に発明することができたとはいえないとして,無効審判請
求不成立との審決(以下「本件審決」という。)がされたため,請求人が,本件発
明が当該引用例から容易に発明することができたとはいえないとした本件審決の認
定判断が違法であるとして,その取消しを求めて提訴した訴訟について,当該引用
例から本件発明を特許出願前に当業者が容易に発明することができたとはいえない
とした本件審決の認定判断が前判決の拘束力に従ったものであって適法であるとし
た事案である。
 これに対し,前提事実,証拠(甲1ないし3,乙1ないし25)及び弁論
の全趣旨によれば,第1次訴訟において,原告らは,条例6条2号にいう「個人に
関する情報」とは個人のプライバシーにかかわる情報を意味し,プライバシーに関
係しないことが明らかな情報は「個人に関する情報」に該当しないのであって,財
務課が公務の遂行として食糧費を支出した会合等に出席することは,相手方にとっ
て公務又は職務であって,私的領域にかかわるものでないから,これに出席した相
手方の氏名及び役職名は,それが公務員であると否とを問わず,同号に該当しない
という趣旨の主張をしていたのに対し,被告市長は,第1審から上告審に至るまで
一貫して,特定の個人が識別され又は識別され得る情報は,プライバシーに関係し
ないことが明らかであっても,特定の個人が公務員であると否とを問わず,同号に
該当すると解すべきであり,プライバシーに関係しないことが明らかな情報が同号
に該当しないと解されるとしても,本件公開請求に係る公文書に記載された会議等
の相手方の氏名や役職名は,当該相手方が公務員であると否とを問わず,通常人で
あれば当該会議等に出席したことを一般に知られたくないと考えるものであるか
ら,プライバシーに属する事項であり,同号に該当するといった趣旨の主張をして
いたこと,第1次訴訟の第1審判決及び控訴審判決は,個人に関する情報とされて
いる情報であっても,プライバシーに関係しないことが明らかな情報については,
非公開とすることは許されないところ,大阪市の事務事業に直接関係のある会議等
に相手方出席者が個人としての資格を離れ,公務あるいは所属する団体の職務とし
て出席する限りは,私的な領域の問題とはいえないから,これらに関する情報は,
相手方出席者のプライバシーに関係しないものとして,条例6条2号の非公開情報
に該当しない旨の判断をしており,法人その他の団体(国及び地方公共団体を除
く。)の代表者に準ずる地位にある者以外の従業員の職務の遂行に関する情報は,
その者の権限に基づく当該法人等のために行う契約の締結等に関する情報を除き,
同号にいう「個人に関する情報」に当たるが,国及び地方公共団体の公務員の職務
の遂行に関する情報は,公務員個人の私事に関する情報が含まれる場合を除き,同
号にいう「個人に関する情報」に当たらないといった前提事実(11)アないしエの法
理は,第1次訴訟の上告審判決において初めて判示されたこと,以上の事実が認め
られる。
(2) 以上認定説示したところによれば,本件旧非公開決定のうち本件非公開部
分に係る部分を取り消した第1次訴訟の確定判決において当該判決主文が導き出さ
れるのに必要な法律判断としてされた,本件各文書における本件非公開部分の記載
を含む情報が,国又は地方公共団体の公務員の職務の遂行に関する情報であり,条
例6条2号の非公開情報に当たらないという法律判断は,その前提となる前提事
実(11)アないしエの法理が第1次訴訟上告審判決において初めて判示されたもので
あって,前記認定の第1次訴訟の審理経過にかんがみると,第1次訴訟の第1審及
び控訴審において,当該法理を前提とした要件事実についての主張,立証が尽くさ
れたとはいい難いのであり,とりわけ,第1次訴訟において公務員がその職務とし
て会議等に出席したことに関する情報も条例6条2号にいう「個人に関する情報」
に該当する趣旨の主張を一貫して行っていた被告市長の立場からすれば,第1次訴
訟において,本件各文書を含む第1次訴訟関係文書中の本件非公開部分を含む非公
開部分に公務員の氏名及び役職名が含まれるか否かについて主張,立証等を尽くさ
なかったとしても,やむを得ないものということができる。そうであるとすれば,
この点において,本件は,判決主文が導き出されるのに必要な事実認定(特許出願
前に当業者において本件発明を特定の引用例から容易に発明することができたとは
認められないという事実認定)が前審決に係る審判手続以来一貫して主要な争点と
なり,当該争点についての主張,立証を尽くす機会が十分に存した平成4年最判の
事案とは,その事案を異にするものということができる。他方で,本件各文書の本
件非公開部分には財務課が実施した協議懇談会又は接遇に出席した国及び地方公共
団体の公務員以外の者の氏名及び役職名が記載されている事実は,第1次訴訟の確
定判決が本件旧非公開決定中本件非公開部分に係る部分を取り消す旨の判決主文を
導き出すための前提として認定した事実とは異なるものの,本件各文書の当該部分
の記載自体から客観的に明らかであり,この事実に第1次訴訟上告審判決の判示し
た法理を適用すると,本件非公開部分に係る情報は,条例6条2号により非公開と
することができるものである。
 これらの事情を総合勘案すれば,被告市長において,本件各文書の本件非
公開部分には財務課が実施した協議懇談会又は接遇に出席した国及び地方公共団体
の公務員以外の者の氏名及び役職名が記載されているという客観的に明らかな事実
関係に依拠して,これに第1次訴訟上告審判決の判示した法理を適用して,本件非
公開部分を非公開とすることが,第1次訴訟の上告審判決の判旨に適合するもので
あって,第1次訴訟の取消判決の拘束力に反しないと判断したとしても,そのこと
には相応の根拠があったというべきであるから,前記判示のとおり本件非公開決定
が第1次訴訟の取消判決の拘束力に反するものであるとしても,少なくとも,被告
市長が上記のように判断して本件非公開決定をしたことが,その職務上通常尽くす
べき注意義務を尽くさなかったとして,国家賠償法1条1項にいう違法があったと
までいうことはできないというべきであり,また,少なくとも,被告市長が本件非
公開決定をしたことについて過失があったということはできない。
(3) 以上のとおりであるから,被告市に対し国家賠償法1条1項に基づき損害
賠償を求める原告らの請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がな
い。
第4 結論
 以上のとおり,原告らの被告市長に対する請求は理由があるからこれを認容
すべきであり,原告らの被告市に対する請求はいずれも理由がないからこれを棄却
すべきである。
 よって,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第2民事部
裁判長裁判官     西  川  知一郎
裁判官     田  中  健  治
裁判官     和  久  一  彦

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛