弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2本件を東京地方裁判所に差し戻す。
第2事案の概要
1控訴人は,平成▲年▲月▲日に東京都内で自動車を運転中,進路の変更の禁
止を表示する道路標示によって区画されている車両通行帯において法定の除
外事由なくその道路標示を越えて進路を変更し,道路交通法(以下「道交法」
という。)26条の2第3項に違反する行為(以下「本件違反行為」という。)
をしたとして,東京都公安委員会により,基礎点数1点を付され(以下「本件
点数付加」という。),本件違反行為の違反経歴(以下「本件経歴」という。)
の記録(以下「本件記録」という。)がされた。
本件は,控訴人が被控訴人に対し,主位的に,本件点数付加及び本件記録が
行政事件訴訟法3条2項の「処分」に該当すると主張して,その取消し(この
取消請求に係る訴訟を,以下「本件取消訴訟」という。)を求め,予備的に,
本件点数付加に係る基礎点数の無効及び本件経歴の不存在の確認(この確認請
求に係る訴訟を,以下「本件確認訴訟」という。)を求める事案である。
原判決は,本件取消訴訟及び本件確認訴訟に係る各訴え(以下「本件訴え」
という。)が不適法であるとして,いずれも却下し,控訴人が控訴した。
2事案の概要の詳細は,次のとおり補正し,当審における控訴人の主張を後記
3のとおり加えるほかは,原判決の「事実及び理由」中「第2事案の概要」
1ないし4に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決3頁1行目の「1項」の次に「柱書・」を加える。
(2)同4頁1・2行目の「優良運転者」及び「一般運転者」を「優良運転者
及び一般運転者」と改める。
(3)同5頁5行目の「4」の次に「,施行令33条の7第2項」を加える。
(4)同5頁8行目の「第1項」の次に「本文」を加え,同9行目の「その者
が提出した更新申請書の内容及び適性検査の結果」を「適性検査の結果又は
適性検査の結果を記載した書面の内容」と改め,同18・19行目の「いず
れの点でも,講習を受ける者にとって負担の更に重い」を「一般運転者に対
する講習に「自動車等の運転について必要な知識に関する討議及び指導」の
講習方法が加わった2時間の」と改める。
(5)同5頁25行目の「道交法」の次に「101条の4第1項,」を加える。
3当審における控訴人の主張
(1)控訴人は,個人情報保護条例によって,誤った個人情報を保有されない
法的地位を有しており,その訂正を求める権利は,まさに個人情報保護条例
1条において規定する「個人の権利利益」である。本件点数付加により,控
訴人の個人の権利利益が直接侵害されており,控訴人の法的地位に直接に影
響を及ぼしているから,本件取消訴訟が適法であることは,本件点数付加や
本件記録の処分性を論ずるまでもなく,明らかであり,また,控訴人による
異議申立て及び審査請求の却下決定を経て,誤った基礎点数の情報が保有さ
れていることによる不利益が現実化しているから,処分性のあることも明ら
かである。
(2)控訴人は,個人情報保護条例によって,誤った個人情報を保有されない
法的地位を有しているところ,誤った本件点数付加がされて,本件経歴が存
在することにより,客観的,具体的に権利利益が侵害されており,本件確認
訴訟において,判決の既判力をもって,法律関係を確定することが控訴人の
法的地位の不安,危険の除去をするために有効かつ適切であるといえるか
ら,確認の利益を肯定できる。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,本件訴えは不適法であり,いずれも却下すべきものと判断する。
その理由は,当審における控訴人の主張に対する判断を後記2に加え,次のと
おり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」中「第3当裁判所の判断」
1ないし3に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決16頁24・25行目の「いえないものの,」の次に「当該違反行
為によって付された違反点数も,その後,別の違反行為がなければ,累積点
数として合計されないことがあり,」を加える。
(2)同17頁20行目の「侵害されている」を「侵害され,また,控訴人は個
人情報保護条例に基づき被控訴人に対し基礎点数1点の情報を訂正すること
ができる法的地位を有するのであり,誤った上記情報を行政機関に保有され
ることによって,この法的地位が侵害されているのであるから」と改める。
(3)同19頁3行目の「なお,」の次に「行政機関の保有する」を加え,同4
行目の「同条例」を「個人情報保護条例」と改める。
(4)同19頁9行目の「解されない」を「解されないし,控訴人に対し,同条
例の定める要件に従って認められる自己を本人とする個人情報の開示請求す
る権利,開示決定を受けた自己を本人とする保有個人情報の訂正や利用停止
を請求する権利を与えることを超えて,控訴人の主張するように本件点数の
付加や本件記録の取消請求を基礎付ける法的地位まで与えるものであると解
することもできない」と改める。
(5)同19頁14行目の「観念できる」を「観念でき,それらを個人情報保護
条例が保障していると解した」と改める。
(6)同21頁10行目の「義務付け訴訟」を「義務付けの訴え(行訴法37条
の2第1項参照)」と,同行目の「差止訴訟」を「差止めの訴え(行訴法3
7条の4第1項参照)」とそれぞれ改める。
2控訴人は,個人情報保護条例に規定する個人の権利利益として,本件点数付
加により,控訴人の個人の権利利益が直接侵害されて法的地位に直接に影響を
及ぼしており,本件点数付加や本件記録の処分性を論ずるまでもなく,本件取
消訴訟に係る訴えが適法であると主張するようである。
しかし,控訴人は,本件取消訴訟に係る訴えにおいて,「処分の取消しの訴
え」(行訴法3条2項)として,本件点数付加と本件記録の取消しを求めてい
るのであるから,訴訟の対象とされた本件点数付加と本件記録について,「行
政庁の処分その他公権力の行使に当たる」ことを要することが明らかであり,
本件点数付加や本件記録が行政事件訴訟法3条2項にいう「処分」に当たるも
のではないことは,前記1に判示のとおりである。そして,仮に,本件点数付
加と本件記録に係る情報について,個人情報保護条例上,開示請求権,訂正請
求権,利用停止請求権の対象に当たるとしても,同条例が,控訴人に対し,同
条例の定める要件に従って認められる自己を本人とする個人情報の開示を請求
する権利,開示決定を受けた自己を本人とする保有個人情報の訂正や利用停止
を請求する権利を与えることを超えて,控訴人の主張するように本件点数付加
や本件記録の取消請求を基礎付けるような法的地位まで与えるものであると解
することはできず,本件点数付加と本件記録が同項所定の処分に当たるものと
解することはできないことも,前記1判示のとおりである。
また,控訴人は,異議申立て及び審査請求の却下決定を経たことにより,誤
った基礎点数情報が保有されていることによる不利益が現実化して,処分性が
肯定されるとも主張するようであるが,前記1判示の点に照らせば,行政不服
審査の申立ての有無やその結果によって,本件点数付加と本件記録が同項所定
の処分に当たらないとした前記1の判断が左右されるものではない。
さらに,控訴人は,本件確認訴訟について,個人情報保護条例によって誤っ
た個人情報を保有されない法的地位を有しており,誤った本件点数付加と本件
経歴によって客観的,具体的に権利利益が侵害されているから,本件確認訴訟
には,確認の利益があると主張するようである。
しかし,同条例によって控訴人の主張する権利ないし法律上の地位が保障さ
れていると解することはできず,被控訴人が誤った基礎点数情報を保有し,本
件経歴が記録されることにより,控訴人に生じているという法律上の地位の不
安,危険は,結局,主観的・抽象的なものといわざるを得ないのであって,本
件点数付加の無効と本件経歴の不存在を即時に判決の既判力をもって確定する
必要性があるとは認められず,本件確認訴訟において,確認の利益が認められ
ないことは,前記1に判示のとおりである。
控訴人の主張は,いずれも採用することができない。
3以上によれば,控訴人の本件訴えは,いずれも不適法であるから,却下を
免れないことになる。
4よって,原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから棄却することと
して,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第5民事部
裁判長裁判官大竹たかし
裁判官栗原壯太
裁判官平田直人

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