弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件抗告を棄却する。
         理    由
 本件抗告の要旨は、
 「原審判は、抗告人等の本件遺産分割の請求を却下した理由として、「申立人等
(抗告人等)と、その父Aの養父Bとの間の親族関係は、Aの離縁(昭和十七年六
月八日)により消滅したから、抗告人等はB(昭和二十三年二月十三日死亡)の遺
産につき相続権あるものとはいえない」と判示しているのであつて、右判示は、新
民法の解釈としては相当と考えられるが、本件は、旧民法時代より新民法時代まで
の間に生じた事柄であり、旧民法によれば、その第七百三十条第二項が示す如く、
養子Aが離縁により養家を去つても、その直系卑属たる抗告人等が養家に留まる限
り、養父Bと抗告人等間の親族関係は消滅しないのであるから、抗告人等は、依然
藤告の孫であり、従つて旧民法上、抗告人等はBの遺産相続人として相続権を有し
ているのである。殊に本件においては、抗告人等にBの遺産を相続させるため、A
は、離縁に際し、抗告人等を養家に残しておき、養家に対し、殊更従来の労力に対
する報酬を求めなかつたばかりでなく養家の借財約四百円を負うて去つたのであつ
て、このような事情にある抗告人等が、新民法の下では、Bとの間の親族関係が消
滅したからといつて、同人の遺産に対し、何等の権利がないということは、旧民法
時代に当事者の予期しない変更であり、このような権利の急激な変更は、個人の尊
厳と公共の福祉竝びに信義誠実を原則とする新民法のよく忍ぶところではない。さ
ればこそ、新民法は、その附則第四条に経過的規定を設け、新民法遡及の原則を掲
げると共に、その但し書において「旧法及び応急措置法によつて生じた効力を妨げ
ない」と規定しているのであつて、右但し書によれば、抗告人等とBとの間の親族
関係及び抗告人等の相続権は、新民法時代の今日においても、その効力は保護され
るものと解すべきであるから、抗告人等のBの遺産に対する本件分割の請求は、正
当というべきであり、これを排斥した原審判は失当たるを免れないと信ずるので、
本件抗告に及ぶ。」というのである。
 よつて記録について本件の事実関係を調べてみると、抗告人両名の父Aは、昭和
十年九月九日相手方及びその夫Bの養子となり、昭和十六年六月二日Cと婚姻し、
抗告人等は右A夫婦の間に生れた子であること及びAは、昭和十七年六月八日B夫
婦と協議上の離縁をなし、抗告人両名を養家に残して、妻Cと共に養家を去り、実
家に復籍したこと竝びにBは、昭和二十三年二月十三日死亡し、その配偶者である
相手方においてBの遺産を相続したことが明かである。しかし応急措置法(昭和二
十二年法律第七十四号日本国憲法の施行に伴う民法の応急的措置に関する法律)施
行前に養子が離縁した場合、その養子を通じて養親と親族関係にあつた養子の直系
卑属と養親との間の親族関係は、新民法と同様の立場において法律上の制度として
の家を廃止し、且つ親族関係に対する家の制約を否定した応急措置法の建前上、そ
の直系卑属が養子離縁の際、養子と共に養家を去らなかつたとしても、同法律の施
行と同時に当然消滅するものと解すべきであるから、本件において、抗告人等とB
との間の親族関係は、昭和二十二年五月三日応急措置法の施行と同時に終了したも
のという外はない。抗告人等は、旧民法第七百三十条第三項に基く抗告人等とBと
の間の親族関係の存続は、新民法施行後においても、同法附則第四条但し書の規定
により、その効力を妨げられ<要旨>ない、と主張するけれども、右但し書の規定
は、新民法の遡及効に対し、同法施行前の家族制度上認められた一定の身分
関係に伴い、既に法律的に処理された事項の効力をくつがえすことによつて法律関
係の安定を害することを防ぐ趣旨の制限規定であつて、新民法により否定された旧
来の身分関係そのものの法律的効力を維持しようとするものではないから、抗告人
等の前記主張は、理由がない。
 そうだとすれば、抗告人等は、新民法施行後死亡したBの遺産につき相続権を有
しないこと明白であり、従つてBの相続人たる前提の下に、同人の遺産の分割を求
める本件請求は失当たるを免れないもので、これを却下した原審判は結局相当であ
るから、本件抗告を理由なきものとして、これを棄却することとし、主文のとおり
決定する。
 (裁判長裁判官 野田三夫 裁判官 川井立夫 裁判官 天野清治)

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