弁護士法人ITJ法律事務所

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         主    文
原判決中、上告人ら(上告人Aを除く。)に関する部分を破棄し、右部分につき本
件を東京高等裁判所に差し戻す。
上告人Aの上告を棄却する。
前項の上告費用は上告人Aの負担とする。
         理    由   
 上告代理人吉田繁實の上告理由一について
一 原審が確定した事実関係の概要等は、次のとおりである。
 1 被上告人は、テニスコート、ゴルフコース等の総合スポーツ施設と宿泊・研
修施設が一体となった大規模な会員制レジャークラブである「E」を経営する会社
である。
   被上告人は、昭和五一年ころから本件クラブの施設工事に着手し、昭和五六
年当時の施設は、テニスコート数面と木造建物だけであったが、そのころ、テニス
コート二四面、ゴルフコース(ナイター照明設備付きの本格的アメリカンショート
コース九ホール)、プール、体育館、コンドミニアム、クラブハウス等の施設を設
置する旨を説明して、本件クラブの会員を募集した。そして、昭和五七年には、総
距離一〇五〇ヤード、九ホール、パー二八のゴルフコース(以下「旧ゴルフコース」
という。)を設置し、昭和五八年には、テニスコート一八面、プール、クラブハウ
ス、メインホール、宿泊棟、スポーツサウナ等の施設を設置したほか、体育館、ア
スレチック等の施設を徐々に拡充させていった。その結果、昭和六一年当時の施設
は、これらにクラブハウス二棟、研修センターを加えたもので、更に、被上告人と
しては、将来的にはゴルフコースを一八ホールのものにする計画を有していた。
 2 上告人ら(上告人Aを除く。以下同じ。)は昭和五六年から昭和六一年六月
までの間に数十万円から百数十万円の入会金、保証金を支払って、上告人Aは昭和
六二年六月に二〇〇万円の保証金を支払って、それぞれ被上告人との間で本件クラ
ブの入会契約を締結したものである。本件クラブの会員には、個人正会員、個人平
日会員、家族会員、法人記名式正会員等があるところ、上告人らはいずれも、原則
として、本件クラブの休日を除くすべての日(以下「全日」という。)において施
設を優先的に利用する権利を有する個人正会員又はこれと同一の利用資格を有する
家族会員である。
   被上告人においては、会員との間で入会契約書等を作成しておらず、会員の
本件クラブ内の施設利用等に関する基本的権利関係は、本件クラブの会則において
定められているところ、上告人らが入会した当時の会則六条には、「会員は、会社
が別に定める施設利用料及びその他の料金を支払って施設を使用することができる。
但し、会社は会社の主催する競技会の開催その他必要やむを得ないと認めた場合に
限り一定期間施設利用を制限することができる。」と規定されていた。
 3 しかし、被上告人は、昭和六一年九月、旧ゴルフコースの改造、変更を念頭
に置いて、被上告人が選任した理事から成る理事会において、本件クラブの施設利
用権に関する前記会則を改定し、細則を制定した。前記会則六条に相当する改定後
の会則五条には、「個人平日会員を除く会員は、会社が定めたクラブの休日を除く
すべての日において施設を優先的に利用することができる。但し、細則において上
記と別途に制約がある場合には、これを遵守するものとする。」と規定されている。
そして、新たに制定された細則五条には、「会員が利用できる施設は、昭和六一年
六月三〇日現在完成している以下の記載の施設をいう。」として、ホテルF外一〇
の施設を列挙し、そのうちの一つであるゴルフ場施設については「Gゴルフ場(但
し、九ホールに限定)」と施設を明記した規定が置かれ、さらに、同六条には、「
ゴルフ施設が増設若しくはこれに準ずる大改造がなされた場合で会社が指定すると
きは、会社の別に定める追加金を支払うものとし、支払わないときはゴルフ場の利
用権は、平日会員と同内容に変更されるものとする。」という、利用権の変更に関
する規定が置かれた。
 4 被上告人は、昭和六三年一月、会員に対し、「九ホール増設工事」のため旧
ゴルフコースを一時閉鎖する旨通知した上、旧ゴルフコースを廃止し、平成二年五
月までの間、その跡地等に約一五億円の工費等をかけて総距離二四六〇ヤード、九
ホール、パー三四の新ゴルフコースを完成し、これを本件クラブの唯一のゴルフコ
ースとして開設した。
   被上告人は、同年四月から六月までの間、前記の細則を根拠にして、個人正
会員又はその家族会員に対し、三五〇万円あるいは四一〇万円の追加金を支払わな
ければ新ゴルフコースについて全日利用できる権利を確保することができない旨通
知し、右通知において、これを支払って権利を確保するか、支払わないでゴルフ場
施設については平日のみ利用できる権利に変更するか、又は退会するかを選択する
よう要請した。
   そして、被上告人は、個人正会員又はその家族会員のうち、所定の期間内に
追加料金の支払をした会員に対してのみ、新ゴルフコースの全日利用権を認め、追
加金の支払をしなかった会員に対しては、平日しかその利用を認めていない。
 5
上告人らは、右通知を受けたものの、所定の期間内に追加金の支払をしなかったた
め、被上告人から休日のゴルフコースの利用を拒絶されている。
二 上告人らの本件請求は、本件クラブの個人会員又はその家族会員として新ゴル
フコースについても全日利用権を有することの確認を求めるものである。

原審は、右の事実関係の下において、次のとおり判断し、上告人らの本件請求を棄
却すべきものとした。
1 昭和六一年九月に改正された本件クラブの会則や細則は、本件クラブの会員の
施設利用権の範囲について明示しているが、右以前に入会した上告人らには、何ら
の効力をも生じない。
 2 上告人らの施設利用権については、当初の会則、被上告人の入会時における
説明、その当時存在した施設の内容等から、その範囲を判定すべきものである。
 3 昭和五七年に完成した旧ゴルフコースは、それ以前から、被上告人が本件ク
ラブのゴルフ場施設として設置する旨説明していたショートコースそのものであり、
他方、新ゴルフコースは、旧ゴルフコースと比較して二倍以上の距離を有し、一般
のゴルフコースに近いとみられるものである。右事実及び新ゴルフコースの建設資
金も高額であることを考慮すると、上告人らの施設利用権は新ゴルフコースにまで
は及ばないものと認めざるを得ない。
三 しかしながら、原審の右二の1、2の判断は是認することができるが、同3の
判断は直ちに是認することができない。その理由は、次のとおりである。 
1 本件のようなクラブに入会したいわゆる個人正会員又はその家族会員は、特段
の事情のない限り、入会契約に基づき、クラブ内のすべての施設を原則として全日
利用することができる権利を有するものであって、その利用権の対象となる施設は、
入会契約において定められるのが通常であるが、契約書等に明記されていない場合
は、原則として、当時既に設置されていた施設のほか、いまだ設置されていないが
将来設置が予定され、完成後に会員の無条件での利用に供することが暗黙のうちに
了解されていた施設も含まれ、また、一見新たに設置された施設と思われるもので
あっても既存の施設を改造するなどして造られたものと評価できるものも、これに
含まれると解するのが相当である。

そして、このようにして当初成立した被上告人と会員との間の施設利用に関する権
利義務関係は、後に、一方的にその内容を変更することはできないものであって、
被上告人が、本件クラブにおけるこれらの施設の利用について会員に対して一方的
にその権利を制限することができないことは、原審の前記二1の判示するとおりで
ある。
 2 前記一の事実によれば、上告人ら本件クラブの個人正会員ないしその家族会
員が入会した当時、入会契約において利用し得る施設の範囲について具体的な定め
はなかったが、入会時期が早く、旧ゴルフコースが完成する前に入会した者であっ
ても、入会当時、既に九ホールのゴルフコースが設置されることは確定的となって
おり、被上告人においてもそれを約して会員を募集していたものであるし、旧ゴル
フコースが完成した後入会した上告人ら会員はその利用を前提として入会契約を締
約したというのであるから、上告人らは、その入会時期が右コースの完成の前であ
るか後であるかを問わず、いずれも本件クラブの個人正会員又はその家族会員とし
て、当然に九ホールである旧ゴルフコースを優先的に利用する権利を有していたも
のということができる。
 3 ところで、原判決は、新ゴルフコースは、旧ゴルフコースと比較して総距離
が二倍以上あり、旧ゴルフコースがショートホール中心のショートコースであった
のに対し、ミドルホール中心でかなり本格的なプレーが楽しめるコースであり、ま
た、新ゴルフコースを完成させるのに被上告人は一五億円余という高額の出費をし
ているものであって、旧ゴルフコースと比較すると質的に相当程度向上した施設で
あるとして、上告人らの施設利用権はこれに及ばないと判示している。しかしなが
ら、新ゴルフコースも、その規模は九ホールに止まり、その距離等からしていまだ
本格的コースというには足りず、当初設置を約していたいわゆるショートコースと
いう点で変わるところがない。その上、被上告人は、旧ゴルフコースを閉鎖してこ
れに代わるものとしてその跡地等にこれを建設したもので、本件クラブにおいては
唯一のゴルフコースであるから、旧ゴルフコースより質的に向上した施設であるか
らといって、直ちに、既存の施設とは別個独立の施設を増設したものといえるかは
問題である。

確かに、被上告人は新ゴルフコースの建設のために高額の建設費を要してはいるが、
だからといって、当然には、これらの費用を従前の会員が負担し又は援助すべき理
由はないから、被上告人が、右の高額の建設費の支出を理由として、一方的に、会
員の施設利用権の内容を変更することができるものとはいえない。事実、本件記録
によれば、被上告人は、新ゴルフコースの建設計画の当初においては、将来入会す
る新会員の預託金から新設コースの資金を調達し、旧会員から追加預託金を徴収し
ない旨の通知を発していたことがうかがえるのであって、会員の同意がないのに、
追加預託金を支払わないことを理由に新ゴルフコースの利用を当然に制限できると
はいい難い。
 5 加えて、被上告人が入会契約に当たりその利用に供することを約定していた
ゴルフコースの特色としては何が明示されていたのか、さらには、上告人らの入会
当時、被上告人としては将来どのようにこれを改造しようと考え、それを新入会員
らに公表していたのか、そうした事情について、原判決には十分な判示を見いだし
難いが、それらの事情いかんによっては、新ゴルフコースも入会契約の対象に含ま
れていたと解する余地がないとはいえない。事実、原審の認定した前記事実によれ
ば、被上告人は、旧ゴルフコースを設置した当初から将来的にはより敷地面積の広
いゴルフコースを設置する計画を有していたというのであり、また、本件記録によ
れば、被上告人が右計画を早くから公表し、本件クラブ内には旧ゴルフコース以上
のゴルフコースが設置されることになっているかのように宣伝していたことがうか
がわれるのである。それらの事情からすれば、被上告人が設置することを公表して
いた新設ゴルフコースの利用について、被上告人と会員との間でいかなる合意がで
きていたのかについても検討を要するものといわなければならない。
四 したがって、【要旨】これらの事情について判断することなく、新ゴルフコー
スが旧ゴルフコースと質的に異なるというだけでその利用権を否定した原判決には、
契約に関する法令解釈を誤り、その結果、審理を尽くさなかった違法があり、右の
違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由があり、原判
決は、破棄を免れない。そこで、被上告人と上告人らとの入会契約に基づく施設利
用権の具体的内容について、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこ
ととする。
 上告理由二について
原審の適法に確定した事実関係の下においては、上告人Aの本件請求を棄却すべき
ものとした原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法
はない。論旨は、独自の見解に立って原判決を非難するものにすぎず、採用するこ
とができない。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 千種秀夫 裁判官 元原利文 裁判官 金谷利廣 裁判官 奥田
昌道)

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