弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 被告人本人の上告趣意第一点について。
 原判決の挙示する各証拠を綜合することによつて、判示犯罪事実は優に立証でき
る。そうして原判決が判示犯罪事実を住居侵入及び強盗致死の罪にあたるものとし
たのは正当であつて、所論のような違法はない。論旨は原判決の認定しない事実を
主張し、それを前提として原判決の擬律錯誤を非難するものであるから、採用する
ことができない。
 同第二点について。
 所論Aは本件の検証に立会つているが証人ではない。検証調書を調べてみても、
Aが本件被害者宅の間取その他について指示説明した旨の記載はあるが、原審にお
いて同人を訊問した形跡は見当らない。のみならず被告人は同人を審問する以上に
自ら詳細に本件犯行当時の模様について指示説明している。従つて右の検証にあた
り原審の採つた処置には所論のような違法はない。仮りにそのような違法があつた
としても、原判決は事実を認定するにあたり右の検証調書を罪証に供していないか
ら、そのことは原判決に何等の影響もない。次ぎに論旨は、証人Bに対しても、こ
れを審問する機会が被告人に与えられなかつたと主張しているが、右の証人訊問調
書を調べてみても所論のような事実は認められないのみならず、却つて裁判長は被
告人に対し、証人に訊ねたいことがあるかどうかを問うた旨の記載があることから
みれば、被告人は右の証人を訊問する機会を充分に与えられたものであることがわ
かる。
 右の次第で原判決の憲法違反を主張する所論は、いずれもその前提を欠くから、
採用することができない。
 同第三点について。
 論旨は原判決の量刑不当を主張するものであるから適法な上告理由とはなり得な
い。
 弁護人本木正美の上告趣意第一点について。
 論旨の理由なきことは被告人本人の上告趣意第一点について述べたとおりである。
 同第二点について。
 原判決の量刑不当を主張する論旨は上告適法の理由となり得ない。
 同第三点について。
 記録を調べてみると、被告人は、昭和二三年一〇月二五日に勾留状の執行を受け
てから引続き勾留更新決定によつてその勾留を更新されて来たところ、原審におい
て昭和二四年一〇月二五日からの勾留更新決定がなされた後同年十二月二五日から
勾留更新決定がなされるまで、その間一箇月分の勾留更新決定がなされていないこ
と所論のとおりである。しかし右の期間並にその以後の勾留が違法であつたとして
も、勾留更新手続上の違法に対しては、別途に救済の手続を履践すべきものであつ
て、そのことが直ちに原判決自体の違法を来すものでないことは既に当裁判所の判
例(昭和二三年(れ)第六五号同年七月一四日大法廷判決及び昭和二三年(れ)第
五一〇号同年九月一一日第二小法廷判決)の示すとおりであるから、論旨は採用す
ることができない。
 同第四点について。
 所論の各訊問調書には、被告人がそれぞれの証人訊問に立会つた旨の記載がある
のみで、その際被告人が身体の拘束を受けなかつたとの記載のないこと、所論のと
おりである。しかし被告人がその身体の拘束を受けていた旨の記載もなく、又かか
る事実を推認し得るような記載もない。元来かかる調書に被告人が身体の拘束を受
けなかつたという記載がないからといつてそれだけで直ちに被告人が身体の拘束を
受けたということにはならないこと、当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第一五七
七号同二四年五月一八日大法廷判決)の示すとおりであるのみならず、寧ろ前記各
訊問調書によれば、その訊問には被告人と共に検事及び弁護人も立会つておりなが
ら、そのいずれからも被告人が身体の拘束を受けていることに関する異議の申立が
なされていないことから考えてみて、被告人は身体の拘束を受けていなかつたもの
と認められる。従つて論旨は採用できない。
 同第五点について。
 論旨の理由なきことは被告人本人の上告趣意第二点について説明したとおりであ
る。
 同第六点について。
 「裁判官」という用語は判事、判事補等裁判の職務を行う官吏の総称であること、
既に当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第一、一八〇号同年一二月二四日第三小法
廷判決)の示すとおりであり、又同様に「検察官」という語も、検事、副検事等検
察事務を行う官吏の総称である。そうだとすれば、所論の公判調書や判決書等に裁
判官と記載されていようと判事と記載されていようと、又検察官と記載されていよ
うと検事と記載されていようと、単に表示上の問題に過ぎないのであつて、そのた
めに裁判所の構成その他に差違を生ずる訳のものではない。従つてかような表示方
法を論拠として、原審裁判所の憲法違反を主張する論旨は理由がない。
 以上の理由により旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。
 検察官 橋本乾三関与
  昭和二五年一二月五日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介

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