弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
特許庁が、昭和57年審判第13104号事件について、平成6年2月16日にし
た審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
       事実及び理由
第1 当事者の求めた判決
1 原告
主文と同旨
2 被告
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
 被告は、「関ノ孫六」の文字を縦書きした別紙1表示の構成からなり、平成3年
政令第299号による改正前の商標法施行令別表の商品区分第30類「菓子、パ
ン」を指定商品として、昭和49年6月12日に登録出願、同52年10月3日に
設定登録、その後更新登録され、現に有効に存続する登録第1302812号商標
(以下「本件商標」という。)の商標権者である。
 原告【A】は、「孫六」の文字を左横書きした別紙2A表示の構成からなり、商
品区分旧43類「カステーラ、飴、餅その他干菓子、蒸菓子」を指定商品として、
昭和8年5月27日に登録出願、同年11月17日に設定登録、その後更新登録さ
れ、現に有効に存続する登録第248636号商標(以下「引用商標A」とい
う。)の商標権者である。
 原告会社は、上記商標の専用実施権者であり、また、本件商標の登録出願日前よ
り、「孫六煎餅」の文字を横書き又は縦書きした別紙2B表示の各構成からなる各
標章(以下、両標章をあわせて「引用商標B」という。)を、商品「せんべい」に
使用している。
 原告らは、昭和57年6月22日、被告を被請求人として、本件商標は、①引用
商標Aに類似しかつその指定商品も類似し、②その出願前岐阜県関地方において商
品「せんべい」につき広く知られた引用商標Bに類似し、かつ商品も類似している
から、商標法(平成3年法律第65号による改正前のもの、以下同じ。)4条1項
10号及び11号に該当するとし、同法46条1項に基づき、本件商標につき登録
無効の審判を請求した。
 特許庁は、同請求を同年審判第13104号事件として審理したうえ、平成6年
2月16日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、
同年3月17日、原告らに送達された。
2 審決の理由
 審決は、別添審決書写し記載のとおり、本件商標は、室町後期の美濃の関の著名
な刀鍛冶「孫六兼元」という人あるいは同人の作になる刀剣を想起させるものとい
うべく、特定の商品又は商品の産地、販売地等を具体的に表示するものと直ちに理
解しえず、構成全体をもって一体不可分のものと認識し把握されると見るのが自然
であるから、その構成文字全体に相応して「セキノマゴロク」の称呼、「関の孫
六」の観念のみを生ずると判断したうえ、本件商標より「マゴロク」の称呼、「孫
六」の観念をも生ずることを前提として本件商標と両引用商標が類似するとする請
求人の主張は妥当でなく、本件商標は、両引用商標の周知度にかかわらず、非類似
であるとした。
第3 原告ら主張の審決取消事由の要点
 審決の理由中、本件商標及び引用各商標の認定、請求人及び被請求人の主張の要
旨は認めるが、本件商標を無効とすべき理由の有無についての判断はすべて争う。
1 本件商標「関ノ孫六」は、刃物工業の町として著名な地理的名称「関」と、所
有格を表す格助詞「ノ」と「孫六」の文字を縦書きに表したものである。
 商標において、このように地名を冠するときは、その商標が使用される商品の生
産地・販売地を示すばかりでなく、その商標を使用する者の営業所の所在地を示す
ものと認識するのが社会通念に照らして相当である。
 すなわち、この地名以外の部分において、他の商標と類似する部分があれば、こ
の地名の部分は、単に当該他の商標の付された商品の製造・販売地あるいは製造・
販売業者の営業の所在地を単に付加したにすぎないと認識され、互いに誤認混同さ
れるのが普通である。
 特に、この地名が著名な行政区画名である場合には、上述のように認識される傾
向が高いものとなることはいうまでもない。
 したがって、本件商標は、その前段の「関ノ」の部分は行政区画名であって、指
定商品に使用しても、取引の実情、経験則に照らせば、単に商品の生産地・販売地
を表すにすぎないものであって、識別力を有しないものであり、商標としての要部
は後段の「孫六」の部分にある。
 そして、引用商標Aからは、「マゴロク」・「孫六」の称呼、観念が生じ、ま
た、引用商標Bも、煎餅という普通名称を除いた「孫六」の部分が要部というべき
であり、同様に、「マゴロク」・「孫六」の称呼、観念が生ずるものである。
 そうすると、本件商標と引用各商標とは、「孫六」という外観・観念・称呼のい
ずれにおいても類似するものである。
2 仮に、本件商標が「関ノ」と「孫六」という構成に分離しえない一体のもので
あるとしても、本件商標「関ノ孫六」と引用各商標「孫六」・「孫六煎餅」とは、
共に著名な刀匠「孫六兼元」に由来するものであり、同じ「刀匠としての孫六兼
元」の観念を生ずることは明らかであり、両者は観念において類似する。
 特に、「刀匠孫六兼元」は、世人一般において、「関ノ孫六」のみならず「孫
六」と通称され(むしろ「孫六」の略称のほうが一般的である。)、広く知られて
おり、しかも、原告会社と被告の営業は、同じ関市内の同じ町内においてなされて
いるものであり、このような取引の実情にかんがみれば、本件商標も引用各商標も
共に「関在住の孫六という人」あるいは「関ノ」の有無にかかわらず「刀匠として
の孫六兼元」の観念を生じ、出所の混同を招来することは否定できない。
3 なお、本件商標「関ノ孫六」と引用商標A「孫六」との類否判断に関連し、特
許庁の登録例として、指定商品が酒類に関するものではあるが、漢字で「孫六」と
縦書きした横に小さく平仮名で「まごろく」と併記した商標(登録第488659
号)と漢字で「関の孫六」と表した商標(登録第1641237号)が連合商標と
して登録された例などがある。
第4 被告の反論の要点
 審決の認定判断は正当であるから、原告ら主張の取消事由はいずれも理由がな
い。
1 本件商標の語頭の「関」の文字が地理的名称である「関市」を意味するもので
あるとしても、それが直ちに、本件商標の指定商品である「菓子、パン」の生産
地、販売地等を表すというよりは、むしろ「孫六」の文字部分と結合することによ
り、全体で一体的なものとして認識され、「関(に在住)の孫六」ひいては「関の
刀鍛冶である孫六兼元」の一体的な意味あいで観念され、決して「関ノ」と「孫
六」の二つの部分に分離して認識・観念されるようなことはない。
 すなわち、本件商標は、取引の実際においてその構成どおり「関ノ孫六」として
一体不可分に認識されるものであって、その構成に対応して「セキノマゴロク」と
のみ称呼され、また、「関(に在住)の孫六」ひいては「関の刀鍛冶である孫六兼
元」との一体的意味合いで観念される。このため、本件商標は、単に「マゴロク」
の称呼及び「孫六(人の名)」の観念が生ずるにすぎない引用商標Aとは明らかに
非類似の商標である。
 また、本件商標は、同様の理由で、「マゴロクセンべイ」の称呼及び「孫六(人
の名)の煎餅」の観念もしくは「マゴロク」の略称及び「孫六(人の名)」の観念
が生ずるにすぎない引用商標Bとも非類似の商標である。
2 引用商標「孫六」から生ずる観念についていえば、「孫六」の名が刀剣あるい
は刀匠に関連して名を知られるようになったとしても、それは「孫六」の名の一面
にすぎず、「孫六」という名から刀匠「兼元」のみが想起されるわけではない。
 すなわち、著名な作家「井出孫六」もいれば書家の「竹田孫六」もおり、また、
小説上の登場人物や商人の屋号にも「孫六」という名が用いられていることにかん
がみると、「孫六」という名からは種々の人物等が想起され、特定の人物のみが連
想され観念されるわけではない。
 特に、刀匠とは全く関係のない「菓子、パン」という商品の分野においては、刀
匠との観念的関連性は希釈化され、「孫六」という名からは、種々の「孫六」を網
羅した「孫六という人名」という程度の意味あいが想起されるにすぎない。
 一方、本件商標「関ノ孫六」は、「孫六兼元」、「志津兼氏」、「和泉守兼元」
等の著名な刀匠を輩出して刀鍛冶の町として広く知られている「関」の文字を語頭
に冠している。したがって、たとえ、「菓子、パン」という商品分野においてさえ
も、観念的に刀匠との関連性が強まって構成全体が一体不離のものと看取され、種
々の「孫六」の中から、特定の「孫六」、とりわけ、名匠として名高く「関の孫
六」と通称される「関の刀鍛冶である孫六兼元」の意味あいが想起される。
 よって、本件商標と引用各商標とから生ずる観念が同一であるということはでき
ない。
3 なお、本件商標「関ノ孫六」と引用商標A「孫六」との類否判断に関連し、特
許庁の登録例として、指定商品が産業機械器具等に関するものではあるが、「孫
六」(登録第914437号)と「関孫六」(登録第1289324号)が非類似
とされ、また、指定商品が食肉・卵等に関するものではあるが、「まごろく」(登
録第1714895号)と「関の孫六」(登録第1779666号)が非類似とさ
れ、いずれも登録された例などがある。
第5 証拠(省略)
第6 当裁判所の判断
1 審決は、本件商標から、「室町後期の美濃の関の著名な刀鍛冶『孫六兼元』と
いう人あるいは同人の作になる刀剣を想起させるものというべく、たとえ構成中の
『関ノ』の文字部分が刃物工業の町として知られた『岐阜県関市』の『関市』を意
味する語であるとしても、かかる構成においては特定の商品または商品の産地、販
売地等を具体的に表示するものとして直ちに理解し得るものともいい難いところで
あるから、むしろ構成全体をもって一体不可分のものと認識し把握されるとみるの
が自然である。そうとすれば、本件商標は、その構成文字全体に相応して『セキノ
マゴロク』の称呼、『関の孫六』の観念のみを生ずるものと判断するのが相当であ
る。」(審決書7頁12行~8頁6行)とし、それに続けて、「してみれば、本件
商標より『マゴロク』の称呼、『孫六』の観念をも生ずるとし、そのうえで本件商
標と両引用商標が類似する旨の請求人の主張は妥当ではなく、本件商標は、両引用
商標の周知度にもかかわらず、非類似の商標といわなければならない。」(同8頁
7~12行)と判断している。
 しかし、審決のこの判断は、本件商標から生ずる称呼、観念についての判断は是
認できるとしても、原告(請求人)らの「『孫六』は、本来当地において広く知ら
れ、かつ、親しまれている著名な刀鍛冶『孫六兼元』の略称であり、本件商標は著
名な刀鍛冶の氏名に由来するから、称呼のみならず観念においても類似することは
否定できない。」(同3頁15~19行)から、本件商標「関ノ孫六」と引用各商
標の「孫六」から生ずる観念が類似するとの主張に関しては、引用各商標の「孫
六」から想起される観念についての検討、判断が欠落しており、この点において審
理不尽といわざるをえない。
 なお、審決は、前記のとおり、「本件商標より『マゴロク』の称呼、『孫六』の
観念をも生ずるとし、そのうえで本件商標と両引用商標が類似する旨の請求人の主
張は妥当ではなく」としており、原告の主張がそのような主張を主としていること
は、審判請求書及び手続補正書(成立に争いのない甲第3号証の1、2)から認め
られるが、本件商標及び引用各商標から生ずる観念の異同を論ずる場合には、本件
商標から生ずる観念についてのみならず、引用各商標から生ずる観念についても検
討したうえ、その類否判断をすべきことは当然であるから、審決は、その判断を欠
落したものというべきである。
2 被告は、引用各商標の「孫六」という名からは種々の人物等が想起され、特定
の人物のみが連想され観念されるわけではなく、特に、刀匠とは全く関係のない
「菓子、パン」という商品の分野においては、刀匠との観念的関連性は希釈化さ
れ、「孫六」という名からは、種々の「孫六」を網羅した「孫六という人名」とい
う程度の意味あいが想起されるにすぎない旨主張する。
 しかし、關信用利用購買組合発行の「美濃関町名勝案内」と題するパンフレット
(成立に争いのない乙第80号証、その文中に「今より四百五十年餘年前文明十一
年」とあること及び被告代表者尋問の結果により、遅くとも昭和15年以前に発行
されたものと推認できる。)には、「刀都關町」と題する紹介記事の冒頭に、「関
町は、古より『關は千軒鍛冶屋の名所』と唄はれた名刀の産地で、彼の『孫六』を
始め關鍛冶の業物と惟然坊の風韻とは、歴史を飾る好箇の証左である。」と記載さ
れ、「關音頭」に「關の孫六三本杉は水もしたたる玉もちる、志津の三郎も関の鍛
冶」と唄われていることが紹介されており、昭和60年10月岐阜県博物館編集発
行の「美濃の刀剣」と題する小冊子(原本の存在及び成立に争いのない甲第136
号証)に、「兼元」に関する項(同6頁)において、「世上『孫六』と呼ばれて名
高い。兼元は通称が孫六で代々これを名乗っており」との記載があり、また、平成
5年11月20日雄山閣出版株式会社発行、福永酔剣著「日本刀大百科事典」第5
巻(原本の存在及び成立に争いのない甲第137号証)にも、「孫六」と題する項
目(同73~74頁)が設けられ、「濃州関鍛冶の通称。もっとも有名なのは兼元
で、・・・榎本其角の句碑に、『さぞきぬた孫六屋敷志津やしき』、とある孫六
も、兼元を指したものである。」と記載されていることが認められる。これによれ
ば、「孫六」が関の刀鍛冶を代表する名前の一つであることは、本件商標の出願の
はるか以前から世上一般に知られていたものと認められる。後二者の書籍の発行が
本件商標の出願後であることは、その記載の内容に照らして、上記認定の妨げにな
らない。
 この事実によれば、本件商標の出願前から、「孫六」が関地方に在住した刀匠
「孫六兼元」の通称もしくは同人の作による刀剣を指す名称であること、あるい
は、「孫六兼元」の通称とまでは知らなくとも、関地方に在住した著名な刀匠もし
くはその作による刀剣を指す名前であることは、すでに広く知られていたことと認
められ、したがって、一般には、「孫六」との名称から「関の孫六」の名称が想起
されることが最も普通であると認められる。
 そうすると、「関ノ孫六」の文字を縦書きした構成の本件商標から、審決認定の
ように、「室町後期の美濃の関の著名な刀鍛冶『孫六兼元』という人あるいは同人
の作になる刀剣を想起させるもの」であれば、「孫六」からも、同じことが想起さ
れることになり、本件商標と引用商標Aとは観念を同じくするものといわなければ
ならず、また、そうである以上、両者における要部は「孫六」の部分にあるという
べきであるから、両者は、その外観、称呼においても類似するものというべきこと
になる。
 被告は、「孫六」という名からは種々の人物等が想起され、特定の人物のみが連
想され観念されるわけではないと主張するが、上記事実によれば、被告の主張を前
提にしても、「孫六」という名から著名な「孫六兼元」が想起されることを否定す
ることにはならないことは明らかである。
 特許庁の登録例として、被告主張のとおり、指定商品が産業機械器具等に関する
ものにつき、「孫六」(登録第914437号)と「関孫六」(登録第12893
24号)が、また、指定商品が食肉・卵等に関するものにつき、「まごろく」(登
録第1714895号)と「関の孫六」(登録第1779666号)が、いずれも
登録された事実があることは、挙示の乙号各証から認められるが、一方、原告主張
のとおり、指定商品が酒類に関するものにつき、漢字で「孫六」と縦書きした横に
小さく平仮名で「まごろく」と併記した商標(登録第488659号)と漢字で
「関の孫六」と表した商標(登録第1641237号)が連合商標として登録され
た例があることが、挙示の甲号各証から認められ、これらによると、特許庁におけ
る登録例が一貫していないことが窺われるのみであって、その他の乙号各証から認
められる登録例、審決例を含め、もとより上記判断を左右するものではない。
 そして、本件商標の指定商品と引用商標Aの指定商品が類似の範囲にあることは
明らかであるから、本件商標は、商標法4条1項11号の規定に違反してされたも
のといわなければならず、引用商標Aから生ずる観念についての検討を欠いたま
ま、両商標が類似するものとはいえないとした審決の判断は違法であり、引用商標
Bとの関係で本件商標に登録無効事由があるかどうかについて判断するまでもな
く、審決は取消しを免れない。
3 よって、原告らの請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につ
き、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 牧野利秋 押切瞳 芝田俊文)
別紙1
<30109-001>
別紙2
<30109-002>
(別添審決書の結論及び理由)
審   決
結   論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理   由
1.本件登録第1302812号商標(以下、本件商標という)は、「関の孫六」
の文字を縦書きしてなり、第30類「菓子、パン」を指定商品として、昭和49年
6月12日に登録出願、同52年10月3日登録、現に有効に存続しているもので
ある。
2.請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第248636号商標(以
下、「引用商標A」という。)は、「孫六」の文字を左横書きしてなり、第43類
「カステーラ、飴、餅その他干菓子、蒸菓子」を指定商品として、昭和8年5月2
7日に登録出願、同8年11月17日登録、現に有効に存続しているものである。
3.請求人は、「登録第1302812号商標の登録を無効とする。」との審決を
求め、その理由を以下のように述べ、甲第1号証乃至甲第86号証を提出してい
る。
(1).請求人の所有する引用商標Aは、前記に表示したとおりの構成よりなり、
旧第43類に属する商品を指定商品とするものである。
 これに対し、本件商標は「関の孫六」の文字を縦書きしてなるところ、構成中
「関ノ」の文字部分は、日本国内はもとより世界的にも有名な刃物工業の町として
知られた関市を表わすにすぎないから、「関ノ」の文字を含む商標をその指定商品
に使用した場合には、この種商品の取引界においてはもとより、一般需要者間にお
いても、該商品が単に「関市」で生産され、または販売されている商品を表わすも
のにすぎないものである。したがって、本件商標の要部は「孫六」の部分にあると
認められるから、結局、本件商標は引用商標Aと類似し、かつ、互いにその指定商
品が類似することは言うまでもない。
 なお、「孫六」は、本来当地において広く知られ、かつ、親しまれている著名な
刀鍛冶「孫六兼元」の略称であり、本件商標は著名な刀鍛冶の氏名に由来するか
ら、称呼のみならず観念においても類似することは否定できない。
(2).次に、本件商標は、その商標登録出願の際、出願日前より商品「せんべ
い」について使用され、岐阜県関地方の名産品・土産品として需要者の間に広く認
識された横書きの標章「孫六煎餅」と縦書きの標章「孫六煎餅」の両標章(以下、
両標章をまとめて、単に「引用商標B」という。)と類似する商標であって、かつ
商品もまた類似するものである。
 よって、本件商標は商標法第4条第1項第10号および同第11号の規定に該当
し、同法第46条第1項の規定によってその登録は無効にされるべきである。
4.被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べて
いる。
(1).本件商標と、引用商標A及び引用商標Bとは、何れも全く相違し各々別異
で非類似の商標である。
 因に、本件商標の構成文字中の「関」とは、岐阜県南部のほぼ中央に在る地区で
あり、昔は東山道の宿駅で関所が置かれていたことに由来する地方区域の「関」の
謂である。
 本件商標の「関ノ孫六」の文字は、その構成態様に徴し、(1)漢字に片仮名を
交えた縦書きの「関ノ孫六」の態様に係るの外観を有し、(2)「セキノマゴロ
ク」の7音による称呼を生ずるのを自然とし、(3)『地方区域としての「関」に
所在(或いは住人)の孫六』の観念を有している。
 ところが、請求人の提示に係る引用商標Bの「孫六煎餅」の文字は、その構成の
態様に徴し、(1)4字の漢字を横書きまたは縦書きとした「孫六煎餅」の態様に
係るの外観を有し、(2)「マゴロクセンベイ」の8音による称呼を生ずるのを自
然とし、(3)『「孫六」という名の煎餅』の観念を有する。また、引用商標Aの
「孫六」の文字は、その構成の態様に徴し、(1)2字の漢字を横書きとした「孫
六」の態様に係るの外観を有し、(2)「マゴロク」の4音による称呼を生ずるの
を自然とし、(3)「孫六」(人名)の観念を有する。
 そこで、本件商標の「関ノ孫六」の文字と、引用商標Bの「孫六煎餅」の文字中
の「孫六」の2文字並びに引用商標Aの「孫六」の文字とは、何れも全く相違し各
々別異で非類似の商標であることは、例えば、「太郎」と「八幡太郎」、「太郎」
と「阪東太郎」・・・・等の例示のように、何れも地名もしくは地域名の有無によ
って、前者と後者を明確判然と区別して認識し、称呼されているところの日常の慣
習あるいは実験則である。
 よって、以上の各実例のものとその事案の軌を一にすると目されるところの、本
件商標の「関ノ孫六」の文字、即ち『「孫六」に地方区域としての「関ノ」を結合
した「関ノ孫六」の文字』についての認識、観念およびその称呼の「セキノマゴロ
ク」と、引用商標Bの「孫六煎餅」の文字についての認識、観念およびその称呼の
「マゴロクセンベイ」並びに引用商標Aの「孫六」の文字についての認識、観念お
よびその称呼の「マゴロク」とは、何れも各々その観念と称呼において明確に相違
しているものであることは理の当然である。
 そして、本件商標の「関ノ孫六」の文字と、引用各商標とは、いずれも各その外
観においても明確に相違している。
 上記のとおり、本件商標と請求人の提示に係る引用商標A及び引用商標Bとは、
各その外観、称呼、観念の何れの点においても全く相違し、それぞれ紛れるおそれ
のない別異の商標である。
 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号および同第11号の規定
に該当しないものである。
5.そこで、本件商標の登録を無効とすべき理由の有無について判断するに、本件
商標は、前記の構成よりなるものであるところ、構成各文字は外観上まとまりよく
一体的に表現されていて、しかも、全体をもって称呼してもよどみなく一連に称呼
し得るものである。そして、これよりは室町後期の美濃の関の著名な刀鍛冶「孫六
兼元」という人あるいは同人の作になる刀剣を想起させるものというべく、たとえ
構成中の「関ノ」の文字部分が刃物工業の町として知られた「岐阜県関市」の「関
市」を意味する語であるとしても、かかる構成においては特定の商品または商品の
産地、販売地等を具体的に表示するものとして直ちに理解し得るものともいい難い
ところであるから、むしろ構成全体をもって一体不可分のものと認識し把握される
とみるのが自然である。
 そうとすれば、本件商標は、その構成文字全体に相応して「セキノマゴロク」の
称呼、「関の孫六」の観念のみを生ずるものと判断するのが相当である。
 してみれば、本件商標より「マゴロク」の称呼、「孫六」の観念をも生ずると
し、そのうえで本件商標と両引用商標が類似する旨の請求人の主張は妥当ではな
く、本件商標は、両引用商標の周知度にもかかわらず、非類似の商標といわなけれ
ばならない。かつまた、本件商標をその指定商品について使用しても、これに接す
る取引者、需要者をして当該請求人の業務に係る商品であるかの如く商品の出所に
ついて混同を生じさせるおそれもないものである。
 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第11号の規定に
違反して登録されたものでないから、同法第46条第1項の規定により、その登録
を無効にすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。

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職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
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経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
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