弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人を懲役3年に処する。
この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1公共用地等の取得・管理・処分等を行うことにより地域の秩序ある整備と地
域住民の福祉の増進に寄与することを目的とするA町土地開発公社の理事長と
して,同公社の業務を総理し,同公社の現金・預貯金等の出納・管理等の業務
に従事していたものであるが,
1平成16年7月13日,奈良県橿原市(以下略)所在の株式会社B銀行(現
株式会社C銀行)D支店において,同銀行E支店に開設されたA町土地開発公
社名義の普通預金口座(口座番号省略)から,現金300万円を出金し,これ
を同公社のために業務上預かり保管中,そのころから同年12月ころまでの間
に,ほしいままに町長選挙資金として費消し,もって,上記300万円を横領
した
2同月30日,前記D支店において,前記普通預金口座を解約して,現金93
5万5203円の払出しを受け,これを同公社のために業務上預かり保管中,
同日,同市(以下略)所在のF証券株式会社G支店において,ほしいままに,
これを自己の用途に費消する目的で,そのうち500万円をF証券株式会社に
開設された被告人名義の口座(口座番号省略)に入金し,もって,上記935
万5203円を着服して横領した
第2A町の長として,同町が発注する各種工事に関し,予定価格及び最低制限比
較価格の決定並びに請負契約締結等の事務を管理・執行していたものであるが,
土木建築工事の設計施工及び請負等の業務を目的とする株式会社Hの代表取締
役Iと共謀の上,同町が平成18年10月27日に執行する「地方特定道路整
備事業道路改良工事(1工区)」の一般競争入札に関し,同工事を特定の業
者に落札させて株式会社Hがその下請業者になることを企て,同月26日ころ,
被告人が,同町(以下略)所在のA町役場において,Iの求めに応じ,同町
(以下略)所在の株式会社H事務所にいるIに対し,電話で,前記入札におけ
る最低制限比較価格が請負対象設計金額の85パーセントの金額である旨内報
し,よって,同月27日,同町役場において執行された前記工事の入札の際,
株式会社Jの従業員をして,最低制限比較価格と同額の3億9998万600
0円で入札させて同工事を同社に落札させ,もって,偽計を用いて公の入札の
公正を害すべき行為をした
ものである。
(証拠の標目)(省略)
(法令の適用)
被告人の判示第1の各所為はいずれも刑法253条に,判示第2の所為は同法6
0条,96条の3第1項にそれぞれ該当するが,判示第2の罪について所定刑中懲
役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10
条により刑及び犯情の最も重い判示第1の2の罪の刑に法定の加重をした刑期の範
囲内で被告人を懲役3年に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が
確定した日から5年間その刑の執行を猶予することとする。
(量刑の理由)
1本件は,A町長であり,同町土地開発公社の理事長であった被告人が,2度に
わたって,同公社のために保管していた現金を横領し(判示第1),また,土木
建築工事請負等を営む株式会社の代表取締役であった共犯者と共謀し,同町が執
行した道路改良工事の一般競争入札において最低制限比較価格を内報し,同価格
と同一価格で特定の会社に落札させた(判示第2)という業務上横領及び偽計競
売入札妨害の事案である。
2まず,業務上横領の犯行について,その目的は選挙資金等への充当であり,自
己中心的で動機に酌量すべきものはない。その態様も,公社の帳簿外の借入金を
返済するなどした残金が自己の管理する預金口座に入金されたことを契機として,
公社の最高責任者である自らの立場を利用し,横領したものであり,被害金額も
合計で1230万円余りと多額であって,悪質な犯行である。同公社に対する社
会的信用を大きく損なった点も看過できない。
次に,偽計競売入札妨害の犯行については,被告人らは,特定の入札参加業者
に落札させるべく,本来秘密が厳守されなければならない最低制限比較価格を漏
示したものであり,自由な業者間の競争により,町にとって最も有利な条件での
工事施工を可能にしようとする競争入札の公正を害する犯行である。犯行の社会
的影響の大きさ,町民らが受けた衝撃の大きさの点も看過できない。被告人は,
その職責と権限からすれば,法令遵守を第一とし,法令に違反する行為をむしろ
是正すべき立場にありながら,多額の資金をA町の土地開発事業に拠出している
会社の代表者である共犯者と適切を欠く関係を継続する中で,共犯者の求めを拒
むことができず犯行に至ったというものであって,そのような経緯にも酌むべき
ものはない。
被告人の地位や職責の重さにも照らすと,本件各犯行に対しては強い非難が妥
当するところであり,その刑事責任は重大である。
3しかしながら,他方,業務上横領の犯行については,被告人は横領金額の全額
である1230万円余りをA町土地開発公社に支払い,同公社との間で示談が成
立していること,偽計競売入札妨害の犯行については,被告人自身の利益を追求
した犯行ではなく,利得も得ていないこと,被告人は各犯行を認めて反省の弁を
述べていること,被告人には古い罰金前科以外に前科はなく,A町長として同町
の発展に取り組み,周囲からもその仕事振りを評価されてきたこと,本件により
町長の職を辞していること,A町の自治会長ら証人3名が被告人のために証言し,
町民の一部が寛刑を求める嘆願書に署名していることなどの,被告人のために有
利に斟酌すべき事情も認められる。
4そこで,当裁判所は,これら諸事情一切を総合考慮の上,被告人を主文の刑に
処した上,今回に限り社会内更生の機会を与えることとし,その刑の執行を猶予
することとした。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑懲役3年)
平成20年8月19日
大阪地方裁判所第5刑事部
中川博之裁判長裁判官
仁藤佳海裁判官
村木洋二裁判官

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