弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主    文
被告人を懲役2年2月に処する。
未決勾留日数中70日をその刑に算入する。
理    由
(罪となるべき事実)
 被告人は,Aの商号で不動産管理業を営んでいたものであるが,平成5年4月1
日,株式会社B(代表取締役C)との間で賃貸借管理委託契約を締結し,同契約に
基づき同会社所有の神戸市a区bc丁目d番所在のマンション「B1」並びに同区
fg丁目h番,i番及びj所在の賃貸マンション「B2」の入居者との契約手続,賃
料管理等の業務に従事し,同市l区m町n番地所在の株式会社D銀行E部B管理者
被告人名義の普通預金口座に振込入金された賃料等を,前記株式会社Bのため,業
務上預かり保管中,別紙犯罪事実一覧表記載(別紙省略)のとおり,平成13年6
月11日ころから平成15年7月4日ころまでの間,50回にわたり,同銀行E部
ほか5か所において,ほしいままに,自己の用途に費消する目的で,合計金884
万7206円を引き出して着服し,もって,横領したものである。
(証拠の標目)-括弧内の甲,乙に続く数字は検察官請求証拠番号-
 省略
(弁護人の主張に対する判断)
 弁護人は,被告人が株式会社Bと締結した管理委託契約によれば,本件各犯行当
時,被告人は,自ら各マンションの清掃等の建物維持管理をしていたから,清掃費
等として,マンション「B1」については毎月3万5000円宛,マンション「B
2」については毎月2万5000円宛の合計6万円を正当な報酬として受け取るこ
とができたのであるから,本件公訴事実に横領金額として記載されている金員中,
毎月6万円宛の26か月分合計156万円の清掃費相当額については横領したもの
とはいえない旨主張し,被告人もこれにそう供述をする。
 関係証拠によれば,平成5年4月から,株式会社B(委託者)は被告人(受託
者)との間で,マンション「B1」及び「B2」について,それぞれ賃貸借管理委
託契約を締結し,被告人は各マンションの管理人としてその運営等の受託業務に従
事していたこと,各契約書の内容はほぼ同一であって,委託業務の範囲として,企
画仲介業務,運営委託業務及び建物維持管理業務が掲げられ(第2条),企画仲介
業務については企画広告料として賃貸借契約締結時に賃料の1か月分を,運営委託
業務については,運営委託料として月額総賃料の10パーセントを,建物維持管理
業務については,清掃費等建物維持管理費として月額4万9955円(B1分),
3万0900円(B2分)を株式会社Bが被告人に払うものとする(第5条)旨規
定されていたこと,しかしながら,当初から,企画仲介業務については仲介業者
に,建物維持管理業務については清掃業者に委託しており,被告人固有の業務は運
営委託業務に限られ,実態としては,被告人の取り分は運営委託の報酬のみであっ
たこと,仲介業者に支払うべき報酬は個々の賃貸借契約締結時に清算した上で残額
が判示B管理者被告人名義の普通預金口座に振込入金されたこと,清掃費等建物維
持管理費は同口座から直接清掃業者に支払われていたこと,平成13年1月ころ,
被告人は株式会社BのC社長の了承を得た上で,清掃業者の変更を行い,これに伴
い,前記建物維持管理費はそれぞれ月額3万5000円(B1分),2万5000
円(B2分)に減額され,前記口座から支払われていたこと,以上の事実が認めら
れる。以上の事実に,被告人自身,捜査段階においては運営委託費のみが報酬であ
る旨自認していたことや,業者を変更する際には前記Cの了解を得た被告人が,そ
の後自ら清掃業務を行ってその報酬を自ら収受することにしたとしながら,その旨
を敢えて前記Cに告げていないこと等の事実を併せ考慮すると,前記契約書上の文
言とは異なり,被告人及び前記C双方が,当初から清掃費等建物維持管理費につい
ては被告人が受領権限を有するものではないことを当然の前提にしていたものと認
められ,したがって,両者の契約内容は,少なくとも本件各犯行当時においては,
その旨のものであったと認められる。弁護人及び被告人の主張は理由がない。
(法令の適用)
被告人の判示の各所為は犯罪事実一覧表番号欄毎に刑法253条にそれぞれ該当
するが,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条によ
り犯情の最も重い同一覧表番号34の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被
告人を懲役2年2月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中70日をその刑
に算入することとする。
(事案の概要並びに量刑の理由)
本件は,賃貸マンションの管理人の地位にあった被告人が,金員に窮し,平成1
3年6月11日ころから平成15年7月4日ころにかけて,マンションの賃料等が
入金されたB管理者被告人名義の普通預金口座から,前後50回にわたり,合計約
880万円を引き出して着服横領した業務上横領の事案であるところ,その動機に
斟酌すべき事情は認められないこと,横領金額が多額であること,その発覚に至る
経過や犯行発覚後の経緯に照らしても犯情は良くないこと,被害弁償は後記一部弁
済を除きなされておらず,その見込みも乏しいことを併せ考慮すると,被告人の刑
事責任は重いといわねばならず,被害弁償金の一部として金30万円を支払ったこ
と,被告人に懲役前科がないこと,稼働実績があり,更生の意欲もあること,反省
服罪の態度等被告人のために斟酌すべき事情を十分考慮しても,実刑は免れないも
のであるが,被害回復に努めさせるためにも,早期の社会復帰に対する配慮をした
上,主文のとおり量定した。
よって,主文のとおり判決する。
 平成16年10月19日
神戸地方裁判所第1刑事部
裁判官 杉森研二

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