弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を原裁判所に差戻す。
         理    由
 弁護人吉永嘉吉の控訴趣意は、同人名義の控訴趣意書に記載のとおりであるか
ら、ここに之を引用する。
 控訴趣意第一点について
 論旨は、原判決はその判示第一の事実を賍物収受の罪に問擬したが賍物収受の罪
は賍物であることの情を知つて之を無償で収得すること即ちその所有権を取得する
行為であつて、本件の場合のように単に一時使用の目的を以つて借受くるが如きは
他の犯罪が成立するは格別、賍物収受罪は成立しないのであるから法令の解釈適用
を誤つた違法があるというにある。
 <要旨>賍物収受の罪は賍物であることの情を知りながら之を無償で収得すること
例えばその情を知りながら賍物の贈与を受け又は無利息消費貸借によつて借
受ける場合のように無償でその所有権を取得することによつて成立し、単に一時使
用の目的で借受けるが如きは、賍物寄蔵の罪となることはあつても、賍物収受の罪
とならないことは、所論の正当に指摘するとおりである。
 而して原判決がその挙示する証拠により認定した事実は、被告人は判示の日時判
示の場所に於てAより同人が窃取した空気銃一挺をその情を知りながら使用の目的
で借受けたというのであつて、その所有権を取得したものでないことは明らかであ
るから、被告人の右所為を賍物収受罪に問擬した原判決は刑法第二五六条第一項の
解釈適用を誤つたもので、この誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであるか
ら、論旨は理由かありこの点で到底破棄を免かれない。
 仍て尓余の論旨に対する判断を省略し、刑事訴訟法第三九七条第四〇〇条本文に
則り、主文のように判決する。
 (裁判長裁判官 筒井義彦 裁判官 柳原幸雄 裁判官 岡林次郎)

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