弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
原告らの請求を棄却する。
訴訟費用は、原告らの負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求める裁判
一 原告ら
被告は、京都府に対し、金一二五〇万円及びこれに対する昭和五七年四月六日から
支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決並びに第一項について仮執行の宣言。
二 被告
主文同旨の判決。
第二 当事者の主張
一 本件請求の原因
(一) 原告らは、京都府(以下府ともいう)の住民であり、被告は、京都府知事
である。
(二) 被告は、昭和五五年会計年度中に、京都府知事として、訴外株式会社日本
空港コンサルタンツ(以下訴外会社という)との間で、「京都府下の地方空港立地
可能性に関する調査」(以下本件調査という)の委託契約を締結して支出負担行為
をし、委託料として金一二五〇万円の支出を京都府出納長に命じて訴外会社に支払
わせた(以下本件支出負担行為等という)。
(三) しかし、本件支出負担行為等は、次の理由によつて違法である。
1 本件支出負担行為等は、予算上国鉄輸送力増強推進費として計上されていた経
費を、これとは全く無関係な目的に支出したもので、予算上の根拠のない公金の違
法な支出である。
2 本件調査は、自衛隊の航空基地設置のための調査である。右航空基地の設置
は、日米安保条約の下で、いわゆる三海峡封鎖作戦を実施するために進められてい
るものであり、このような基地の設置は、日本国民と京都府民を、核戦争の危機に
まき込んでゆくことが明らかである。したがつて、府民の生命を守るべき被告が、
憲法の平和主義・戦争放棄・軍隊不保持を投げ捨てて、かような基地の設置を目的
とする本件調査をすることは、明らかに違法である。
(四) 府は、被告の違法な本件支出負担行為等によつて、金一二五〇万円の損害
を被つた。
(五) 原告らは、昭和五七年一月二五日、府の監査委員に対し、右損害を補填す
る措置を講ずるよう請求した。
しかし、監査委員は、同年三月一三日、右請求は理由がないとして原告らに通知し
た。
(六) そこで、原告らは、地方自治法(以下法という)二四二条の二第一項四号
に基づき、府に代位して、被告に対し、損害金一二五〇万円及びこれに対する本件
訴状送達の日の翌日である昭和五七年四月六日から支払ずみまで民法所定の年五分
の割合による遅延損害金を府に支払うことを求める。
二 請求の原因に対する被告の答弁及び主張
(認否)
(一) 請求原因(一)、(三)の各事実は認める。
(二) 同(三)1、2及び(四)の事実はいずれも否認する。
(三) 同(五)の事実は認める。
(主張)
(一) 違法性の不存在
1 本件支出負担行為等は、昭和五五年度補正予算に交通整備調査費(空港関連事
前調査費)として金一二五〇万円を計上した上で、これに基づいてなされたもので
あるから、何ら違法ではない。すなわち、
右経費は、同年度九月補正予算で「款 総務費」「項 総務管理費」二億七九一三
万円の中に他の予算と合わせて計上され、同年九月定例府議会で同年一〇月一六日
可決された。なお、右経費は、「昭和五五年九月京都府議会定例会 予算に関する
説明書」には、「目 一般管理費五二六〇万二〇〇〇円」中の「節 旅費一〇〇万
円」、「同 需用費一三〇万円」、「同 役務費一〇万円」、「同 委託料一〇〇
〇万円」、「同 使用料及び賃借料一〇万円」(以上合計一二五〇万円)として、
他の予算と合わせて計上されていたが、その後、「委託料」一〇〇〇万円だけでは
不足が生じたので、法二二〇条二項の規定により他の節に計上されていた金額を委
託料に流用して、一二五〇万円を支出した。
2 議会の議決の対象となるのは補正予算たる「款」「項」のみであり、予算に関
する説明書中の「目」「節」の記載は、予算成立後における長の予算執行計画を示
すにとどまるものであつて、法律上は長の予算執行を拘束するものではない。
3 また、原告らは、右説明書中の「説明」欄に「4国鉄輸送力増強推進費」とい
う記載がなされていることを問題にするが、右の記載は、もともと法の要求するも
のではなく、もとより予算の一部となるものではないから、従来から、類似性又は
関連性のある事項をまとめて記載するのが通例であり、本件でも、昭和五五年度当
初予算の説明項目をそのまま使用したものにすぎない。
仮に、右の表現が適切でなかつたとしても、それは議決された予算の効力を左右す
るものではなく、また、予算の議決に至る過程における先行行為に属する事柄であ
つて、その違法は、予算の執行の違法には含まれない。
4 さらに、原告らの主張するような点は、昭和五六年一一月の府議会決算特別委
員会で指摘され、府当局との間で質疑応答が重ねられ、これらを踏まえて、同委員
会及び本会議で昭和五五年度決算が認定された。
そうすると、仮に原告らの主張する瑕疵が予算執行上あつたとしても、それは、府
議会の追認によつて治癒されたというべきである。
(二) 損害の不存在
府では、「第二次京都府総合開発計画」以来、地方空港の設置の必要性等について
調査・検討を行うことが、行政上の課題となつていた。
訴外会社は、本件調査の委託を受けて、昭和五五年三月三一日、府に対して「京都
空港立地可能性調査報告書に(乙第二一号証)を提出した。
本件調査の委託契約は、有償双務契約であるところ、府は、右のとおり本件調査委
託料の支払と引換えに、訴外会社から必要な調査の成果を取得しているのであるか
ら、府は、何ら損害を被つていない。
(三) 故意又は重過失の不存在
1 法二四三条の二は、地方公共団体の長にも適用があるから、長が地方公共団体
に対して財務会計上の行為について損害賠償の義務を負うのは、「故意又は重大な
過失により法令の規定に違反して当該行為をした」場合に限られる。
2 被告は、昭和五五年度補正予算案査定の際、本件交通網整備調査費(空港関連
事前調査費)一二五〇万円について、所管の企画管理部長らから説明を受け、右調
査を行うことを決定し、その予算の計上を承認した。その後の予算書及び予算に関
する説明書等の作成事務は、予算所管の総務部長の下で財政課が中心になつて行つ
たもので、被告は、以上の経過により本件調査の委託料等が補正予算に計上されて
いることを認識していた。
したがつで、被告は、本件調査の委託契約及び支出命令にあたつて、これを予算及
び関係法令に従つて適正に執行しているものと認識していたものであつて、違法な
支出をするといつた故意はもちろん重過失もなかつた。
三 原告の反論
(一) 昭和五五年九月補正予算には、本件調査の委託料が計上されていない。す
なわち、
右補正予算の審理の際提出された資料、府議会での担当部長の説明及び国鉄輸送力
推進に関する従前の運動経過からすると、右補正予算中の「国鉄輸送力増強推進費
一四二五万円」は、その段階では文字通りの目的のために支出されることを予定し
て議会の議決を得たのである。被告は、その後、何らかの事情で空港立地可能性の
調査を思い立ち、以上の経過を十分承知しながら、右経費を本来の目的以外に支出
したもので、被告の主張(一)1は、違法な公金の支出の責任を免れるための事後
の辻褸合わせにすぎない。
また、仮に被告の主張(一)1を前提とすると、被告は、本来の使途を明示して本
件調査の経費を予算に計上したのでは、予算が議会で議決されないとの判断から、
右事実を隠ぺいすべく、予算に関する説明書の「説明」欄に虚偽の説明を記載し
た。そのため、議会は、空港関連事前調査費が国鉄輸送力増強推進費中の大部分の
金額を占めて計上してあることなど全く認識のないまま説明どおりの具体的事項の
支出金額と理解して、補正予算を議決した。
したがつて、議会の議決した補正予算には、本件調査の委託料等は計上されていな
いというべきである。
(二) 法は、地方公共団体の予算の民主性を確保するため、予算の事前議決(法
二一一条)、予算の公開(法二一九条)、予算の執行状況その他の公表(法二四三
条の三)を定めている。また、予算の提出にあたつては、「予算に関する説明書」
をあわせて提出するよう定めて歳入歳出の各事項の具体的内容を説明させて、議会
の審議の充実をはかつている。このような法の趣旨、及び、予算において「目」
「節」の総計が「項」を形成し、「項」の総計が「款」を形成していること、「説
明」欄記載の事項及び金額が「節」と一体となつて予算の内容を具体化し、その全
体の形成に与つていること等からすると、「説明」欄の記載事項は、予算の目的・
金額を明示したものであり、地方公共団体の長の予算執行を基本的に拘束する効力
がある。
そうすると、本件の補正予算の支出目的は、国鉄輸送力増強推進であり、それ以外
ではないから、被告の本件支出負担行為等は、目的外の予算執行であり、違法であ
る。
(三) 訴外会社からの報告書は、昭和五五年会計年度中には提出されず、出納閉
鎖日である昭和五六年五月末日を経過した同年六月中旬以降に提出された。しか
も、このとき提出された報告書(甲第一六号証)は、本件調査委託契約の仕様書通
りのものではなく、一部(第IV章)が欠落した未完成なものであつた。
したがつて、府は、右により委託料相当額(少くとも欠落部分相当額)の損害を被
つている。
(四) 法二四三条の二第一項の職員には、地方公共団体の長は含まれず、長の地
方公共団体に対する損害賠償義務は、民法七〇九条の軽過失で足りる。
もつとも、被告は、本件支出負担行為等が予算の目的外のものであることを十分認
識していたのであるから、故意があつたというべきである。
○ 理由
一 当事者間に争いがない事実
請求の原因(一)(当事者の地位)、(二)(本件調査の実行及び本件支出負担行
為等)及び(五)(監査請求)の各事実は、当事者間に争いがない。
二 本件の判断に必要な前提事実(本件調査及び支出負担行為等の経緯)の認定
成立に争いがない甲第五ないし第九号証、同第一六号証、同乙第一ないし第四号
証、同第一〇ないし第一四号証、証人Aの証言によつて成立が認められる同第五、
六号証、同第一六ないし第一八号証や同証言及び証人Bの証言によると、次の事実
が認められ、この認定に反する証人Aの証言は採用しないし、ほかにこの認定に反
する証拠はない。
(一) 府では、昭和四六年三月策定にかかる「第二次京都府総合開発計画」で、
北部地域の開発構想の一環として、地方空港の設置及び緊急連絡用のヘリポートの
設置が調査・検討の課題とされていた。府は、その後、昭和五四年六月から、京都
府総合開発審議会に第三次京都府総合開発計画について審議をさせたが、同審議会
の討議の過程で、委員から右地方空港等の設置についての調査・検討がなされてい
ないことが指摘された(その後、昭和五六年一二月に府知事に答申された「第三次
京都府総合開発計画」には、地方空港等の必要性について検討することを重ねて提
言している)。
他方、国の「第三次全国総合開発計画」により、福知山市外一六市町が京都府北部
モデル定住圏に指定されたことから、府は、その計画を具体化するため、昭和五五
年一月、京都府北部定住圏計画策定委員会を設け、同年八月「京都北部モデル定住
圏計画」が策定された。この計画でも、その方策の一つとして、地方空港及びヘリ
ポートの必要性などについて検討することが取りあげられた。
(二) 以上のような状況を受けて、府の企画管理部は、昭和五五年、交通対策課
に担当させて、地方空港の設置問題についての具体的検討を開始することとした。
交通対策課は、行政内部の検討素材として、専門機関に委託して空港立地可能性調
査(必要性調査及び概略適地調査)を行うことを企画し、交通網整備調査費(空港
関連事前調査費)の項目で金一二五〇万円の予算の見積りをし、昭和五五年九月の
補正予算に計上することを要求した。
右の予算要求は、最終的には知事(被告)の復活査定を経て、原案通り昭和五五年
九月補正予算案に計上されることになつたが、その際、被告及び担当の野中副知事
は、右調査は、行政内部での検討素材とするために行うものであるから、調査の事
実を外部に公表しないように指示した。
(三) 右補正予算案は、同年九月京都府議会定例会議に第一号議案として提出さ
れたが、右調査費一二五〇万円は、補正予算のうち「款 総務費」「項 総務管理
費」二億七九一三万円中に他の経費分と合わせて計上された。
また、右調査費は、右補正予算案とあわせて提出された「昭和五五年九月京都府議
会定例会予算に関する説明書」では、「款 総務費」「項 総務管理費」「目 一
般管理費」中の各「節」に、被告の主張(一)1のとおり区分されて計上された
が、同説明書の「説明」欄には、委託料一〇〇〇万円のみが、京都府国鉄山陰本線
複線電化促進協議会及び京都府南部地域国鉄線等整備促進協議会に対する事業補助
金四二五万円と合わせて「国鉄輸送力増強推進費 一四二五万円」として記載さ
れ、他は、「知事部局一般管理事務費」等に分けて記載された。
さらに、補正予算の審議にあたつた京都府議会総務常任委員会に府側から提出され
た資料に基づいて作成された「補正予算主要事項の説明書」には、右国鉄輸送力増
強推進費一四二五万円の内訳が「国鉄線等整備促進費(南部線・宮福線) 一〇〇
〇万円」、「国鉄線整備促進協議会助成費四二五万円」として具体的に示され、所
管の企画管理部長は、右予算は、国鉄線整備促進費、主として南部線の調査・研究
に使用する旨を総務常任委員会で説明した。
(四) 府では、その当時、山陰線複線電化事業が一応軌道に乗つたことから、次
には府南部地域の国鉄線(これを南部線と総称した)の建設ないし複線電化が重要
な課題になつており、同年六月には、関係市町村を糾合して「京都府南部地域国鉄
線等整備促進協議会」が設立され、南部線の整備のための調査研究を行うことが決
められたところであり、前記企画管理部長の説明は、そのような事態に符合してい
たことから、総務常任委員会では、特に質議もなく全員がこれに賛成した。
(五) 前記補正予算案(第一号議案)は、同年一〇月一六日、本会議で可決され
た。
(六) 府(交通対策課)は、空港立地可能性調査の委託先について検討し、他県
での調査に実績をもつ空港関係調査業務の専門会社である訴外会社を選定し、交渉
の上、昭和五六年一月二〇日付で、訴外会社と本件調査の業務委託契約を締結し
た。委託料は、訴外会社の要求や他県の事例等をも参考にして金一二五〇万円に約
束された。そこで、委託料不足額金二五〇万円は、前記調査費のうち委託料以外の
「節」に予算計上された費目を流用して捻出することとした。委託期間は、同年一
月二〇日から三月三一日までと定められ、調査内容は、必要性調査、概略適地調
査、立地可能性調査に区分され、仕様書により詳細にその内容が規定された。
(七) 訴外会社は、右契約に基づいて調査を進め、昭和五六年、府に対して、本
文二〇〇頁に及ぶ「京都空港立地可能性調査報告書」(乙第二一号証)を提出し
た。右報告書の表紙には、「昭和五六年三月」と記載されている。
訴外会社は、右の報告書の外に、府に対し、同年六月九日付で「京都空港立地可能
性調査中間報告資料」と称する手書きの報告書(甲第一六号証)も提出した。
(八) 府の出納長は、被告の支出命令に基づき、昭和五五年度出納閉鎖日に先立
つ昭和五六年五月二二日、訴外会社に委託料金一二五〇万円を支払つた。
(九) 昭和五五年会計年度の決算は、昭和五六年九月府議会に提出され、決算特
別委員会に付託されて審議されたが、そこでは、金一二五〇万円の具体的使途が秘
匿されたし、同年度の主要な施策の成果に関する報告書にも、国鉄輸送力増強推進
事業として右予算が執行されたように記載された。
(三) 決算特別委員会副委員長府議会議員訴外Bは、同委員会の席上、地方空港
に係る調査の有無について質問をしたところ、府側は、被告の指示に従い本件調査
の事実自体を否認したが、後に、前記甲第一六号証の報告書が同議員の手元にある
ことを知り、調査の事実を認めたうえ、所要の委託料が昭和五五年九月補正予算の
国鉄輸送力増強推進費の項目から支出された旨本件調査の経過を説明した上、さら
に、昭和五六年度以降も調査を継続する方針であることを表明した。
同委員会では、以上の経過を踏まえて決算の審議がなされたが、空港の必要性ある
いは立地可能性について調査・検討を加えることの必要性自体は格別問題となら
ず、本件調査の委託料の支出を含む昭和五五年度決算が認定され、さらに、昭和五
六年一二月二四日、本会議でもこれがそのまま認定された。
(二) 府は、昭和五六年度以降も、空港立地可能性調査を訴外会社に委託する等
して調査を継続し、昭和五六年度四〇〇万円、昭和五七年度七〇〇万円等の予算を
要求し(但し、昭和五六年度は昭和五五年度と同じ項目、昭和五七年度以降は交通
網整備調査費として要求)、府議会は、これを認めて予算を可決した。
三 以上認定の事実に基づいて、本件請求の当否について検討する。
(一) 被告は、予算に関し議会の議決の対象となるのは「款」「項」のみであ
り、予算に関する説明書の「目」「節」の記載は審議資料にすぎず、また、本件説
明書の「説明」欄の記載は、法定の予算説明に当たらないから、共に地方公共団体
の長の予算執行を拘束せず、本件支出負担行為等は何ら違法ではないと主張する。
しかし、法二一一条二項が予算を提出するときに予算に関する説明書をあわせて提
出するよう定め、法の施行令がその様式を定めた趣旨、ひいては議会の予算審議権
に鑑みると、知事が、空港調査という一定の施策に要する経費を予算に計上しなが
ら、議会に対しては、これをことさらに国鉄輸送力増強推進という他の施策に要す
るものとして虚偽の説明をして、いわば議会を欺罔して予算の議決を得ている場合
にも、なお、この予算の流用支出を、地方公共団体の長の予算執行権の範囲に属す
る適法な財務会計行為に属するとすることは、このような脱法行為を正当視するこ
とになり、到底是認されないと解するのが相当である。そして、このことは、本来
の使途を明らかにした場合に議会が予算を議決したであろうと考えられる場合で
も、同様である。
(二) しかし、仮に本件支出負担行為等がこの点で違法であつたとしても、これ
によつて府に具体的な損害が生じていないことは明らかである。すなわち、
府では、従前から地方空港設置の可能性について調査・検討を加えることが懸案に
なつており、その検討資料を得るために本件調査を行う必要があつたこと、右の必
要性自体は、府議会においても異議がなく、そのため本件調査の委託料金一二五〇
万円の支出を含む昭和五五年度決算が府議会で認定され、かつ、昭和五六年度以降
も、引続いて、本件調査の継続に要する経費が予算に計上され議決されたこと、及
び、本件調査委託料金一二五〇万円の支出に対して、訴外会社からは、調査委託契
約所定の仕様に見合つた調査報告書が府に提出され、その後の施策の検討に利用さ
れていること、以上のことからすると、右の調査報告書(本件調査の結果)は、府
にとつて有用であり、かつ、その金銭的な価値は、その対価である調査委託料金一
二五〇万円に見合うものであると推認される(原告は、この点を積極的に争つてい
ない)から、右調査委託料の支出によつて、府は、何らの損害も被つていないとい
うほかはない。
なお、右調査報告書が昭和五六年三月末日までに提出されたかどうかについて、当
事者間に争いがあり、本件証拠上必ずしもこれを認定し難い(この点に関する乙第
六号証、同第一五号証及び証人Aの証言は、前記甲第一六号証の内容や乙第一七、
一八号証に記載された調査予定期間(最短)に照らして直ちに採用できない)が、
仮にその提出が昭和五五年会計年度を超えていたとしても、予算執行手続上の問題
が生ずることは格別、そのことから直ちに府に現実に損害が生ずるものではないか
ら、このことは、前記の結論を左右しない。
さらに、原告らは、本件調査は自衛隊の航空基地の設置を目的とする調査であると
主張するが、本件に顕われた証拠を仔細に検討しても、このことが認められる的確
な証拠がないばかりか、却つて、本件調査の必要性自体は前記のとおり明らかであ
り、かつ、予算の議決権を有する府議会もこれを認めているのである。したがつ
て、原告らのこの主張も採用できない。
(三) まとめ
本件支出負担行為等によつて府が損害を被つたことが認められない以上、府に代位
してなす本件損害賠償請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がな
いことに帰着する。
四 むすび
以上の次第で、本件請求は理由がないから棄却することとし、行訴法七条、民訴法
八九条に従い、主文のとおり判決する。
(裁判官 古嵜慶長 小田耕治 長久保尚善)

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