弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各控訴を棄却する。
         理    由
 被告人Aの弁護人山中唯二、同Bの弁護人杉村逸楼、同Cの弁護人長崎祐三が陳
述した各控訴の趣意は夫々同人等提出の各同趣意書に記載の通りであるから、これ
を引用する。
 第一、 特別調達庁(支局)の雇員は刑法第七条に所謂公務員ではないとの主張
(各弁護人共通)に付いて。
 <要旨>刑法第七条に公務員とは法令により公務に従事する者(職員)一般を指称
する。本犯行当時の特別調達庁は国家の事務を担当する公法人(昭和二二、
四、二八法第七八号特別調達庁法第一条、第十五条等参照)で被告人B、Cは刑法
第七条に所謂法令と解し得べき同庁職制(同庁総裁が総理大臣の許可を受け同庁内
部組織に関する通則を定めたもの)により雇として任命され判示の如き同庁の事務
を担当していたものであるから原審が右被告人両名を同条に所謂公務員と解したの
は正当である。
 尤も特別調達庁法(前同)第十四条、同庁職制第二十九条、同第三十条の規定を
比較検討すると同庁雇員は右第十四条に所謂職員の内に包含されていないこと所論
の通りではあるが右法条その他同庁関係法規において職員としからざるものとを区
別しているのは主として給与等の待遇関係の必要に基くものであること証人Dの供
述からもこれを看取できる。要するに右の職員は刑法第七条に所謂職員とはその範
囲を異にすること明であるから被告人が同庁法その他の職員に該当しないからと言
つて直ちに刑法第七条の職員でないとは言えない。又苟も公務を担当している以上
その公務が主として機械的事務に属するか又は頭脳的事務に属するかの如きは職員
たるや否やを区別する標準とはならない。従つて本論旨は理由がない。
 弁護人長崎祐三の趣意(二)の(1)に付いて。
 被告人Cの職務権限に付いて起訴状には……主事補として占領軍工事に対する予
算要求及び関係業者に対する工事費等の支払に従事しとあるに対し原判決には……
主事補として占領軍関係工事に対する予算の請求及工事請負業者に対する工事代金
の支払に関する事務を担当しとあつてこの点に関する訴因と認定事実とは全く符節
を合せ所論のようなくいちがいは全くない。従つて論旨は前提において失当であ
る。
 同(2)及弁護人山中唯二の趣意第一点の(1)に付いて。
 原判決挙示の証拠の内各関係部分を綜合すれば同判決認定通りの事実を認め得べ
く記録を精査するも所論のような事実誤認の違法はない。従つて本論旨も理由がな
い。
 山中弁護人の同第二点に付いて。
 記録に現われている犯情によると原判決の量刑は相当と思われるので本論旨もま
た理由がない。
 よつて刑事訴訟法第三百九十六条により主文の通り判決する。
 (裁判長判事 下川久市 判事 青木亮忠 判事 鈴木進)

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